第3章 株式会社の機関(ガバナンス)

この章のねらい 会社という「入れ物」の中で、誰が意思決定をし(株主総会・取締役会)誰が業務を執行し(取締役・代表取締役)誰がそれを監視するか(監査役・会計監査人など)——この役割分担のしくみを「機関(きかん)」と呼びます。 経営法務の会社法分野で毎年もっとも多く出題される、いちばんの主戦場がこの章です。

過去問での出方:ほぼ毎年、第1問〜第7問あたりに2〜4問が集中します。出題パターンは ①機関設計の組み合わせ(何を置かなければならないか)、②株主総会の決議要件(普通・特別決議)、 ③取締役・監査役の任期・選任・解任・報酬、④監査役の権限(会計限定監査役)、⑤委員会型の会社、の5系統。 数字(人数・年数・割合)と「誰の権限か」の取り違えを狙う引っかけが定番です。丸暗記ではなく、 「なぜそうなっているのか(趣旨)」をつかむと、選択肢の正誤がスッと見分けられるようになります。


3-0 この章の地図

株式会社の機関は、大きく「決める人」「やる人」「チェックする人」の3グループに分けて考えると整理できます。

                    ┌─────────────────────────────┐
                    │      ① 決める(意思決定)        │
                    │  株主総会 … 会社の最高(万能)機関  │
                    │  取締役会 … 業務執行の意思決定      │
                    └───────────┬─────────────┘
                                │ 選任・監督
                    ┌───────────▼─────────────┐
                    │      ② やる(業務執行)          │
                    │  取締役/代表取締役               │
                    └───────────┬─────────────┘
                                │ 監査(チェック)
                    ┌───────────▼─────────────┐
                    │      ③ チェックする(監査)       │
                    │  監査役/監査役会/会計監査人/会計参与 │
                    └─────────────────────────────┘

この章は、次の順で進みます。

3-1 機関設計のルール    … どの機関を「置かなければならないか」(★土台)
   │
3-2 株主総会            … 権限・招集手続・決議要件(普通/特別/特殊)★頻出
   │
3-3 取締役・取締役会・代表取締役 … 選任・任期・義務・責任
   │
3-4 監査役・監査役会・会計監査人・会計参与 … 役割と監査範囲の限定 ★頻出
   │
3-5 指名委員会等設置会社・監査等委員会設置会社 … 委員会型のガバナンス

💡 まず覚える「3つのキーワード」:この章は全部が 「公開会社かどうか」「大会社かどうか」「取締役会を置くかどうか」 の3つの軸で決まります。 この3軸を押さえると、機関設計も任期も監査役の要否も、すべてつながって見えてきます。


3-1 機関設計のルール

まず「言葉の土台」を3つ

会社法の機関の問題は、次の3つの用語の意味が分かっていないと、選択肢がまったく読めません。 最初にここだけは正確に覚えましょう。

用語 意味(かみくだき) 判断基準
公開会社 発行する株式の全部または一部について、譲渡(他人に売ること)に会社の承認が要らない会社 1株でも自由に譲渡できる株式があれば「公開会社」
非公開会社(株式譲渡制限会社) すべての株式に「譲渡には会社の承認が必要」という制限がついている会社 全株式が譲渡制限つき
大会社 ①資本金5億円以上、または②負債の合計200億円以上のどちらかにあてはまる会社 資本金5億 or 負債200億

⚠️ 混同注意:「公開会社」=上場会社ではありません 日常語の「公開=株式を証券取引所に上場している」というイメージは、会社法ではまちがいです。 会社法の「公開会社」は、株式を自由に譲渡できる(承認不要の)会社という意味。上場しているかどうかは無関係です。 中小企業の多くは「全株式に譲渡制限あり」の非公開会社です。

機関設計の「4つのルール」

会社法では、機関の組み合わせがかなり自由になりました(=機関設計の柔軟化)。ただし、 最低限守るべきルールがあります。試験で問われるのは、次の4つです。

ルール①  株式会社には、必ず「株主総会」と「取締役(1人以上)」を置く(絶対)
ルール②  取締役会を置くなら、取締役は「3人以上」必要
ルール③  取締役会を置くなら、原則「監査役」も置く
          (例外:非公開会社は会計参与を置けば監査役を省ける / 委員会型は別ルール)
ルール④  公開会社かつ大会社は、監査役会(または委員会型)+会計監査人が必要

H22 第2問は、まさにこのルール②③の組み合わせを問いました。 「株主総会の決議事項を制限して、業務執行を経営陣に任せたい」→ そのためには取締役会を置く必要があり (取締役会非設置会社では、株主総会が"何でも決められる万能機関"のまま。会社法295条1項)、 取締役会を置けば取締役3人以上+原則監査役が芋づる式に必要になる、という論理です。

取締役会を「置くか置かないか」で世界が変わる

初学者がいちばんつまずくのが、取締役会設置会社取締役会非設置会社のちがいです。 ここが分かれ目なので、表で対比します。

取締役会非設置会社 取締役会設置会社
取締役の人数 1人でもよい 3人以上必要
株主総会の権限 万能(あらゆる事項を決議できる。295条1項) 法律・定款で定めた事項に限定(295条2項)
監査役 原則不要 原則必要(例外あり)
イメージ 家族経営の小さな会社 組織的に運営する会社

💡 覚え方:「取締役会を置く=会社が"大人"になる」。 大人になると、①取締役は3人以上そろえる、②何でも株主総会で決めるのはやめて経営を取締役会に任せる、 ③そのぶん監査役でチェックする——と義務が増えます。逆に非設置会社は身軽(1人でOK・株主総会が万能)です。

📝 過去問はこう出る(R02 第6問) 「非公開・非大会社で取締役会を設置する」という設定。 設問1の正解は「取締役は甲氏を含め3人以上必要(会社法331条5項)」——取締役会を置く以上、3人は絶対。 「2人でよい」「取締役は法人でもよい(→取締役は自然人のみ・331条)」はバツ。 設問2の正解は「監査役会を置かない場合、定款で監査役の権限を会計監査に限定できる(389条1項)」。 非公開会社ならではの"会計限定監査役"(→3-4)が問われました。 → R02 第6問

📝 過去問はこう出る(H24 第18問/H19 第4問/H22 第2問) いずれも機関設計ルールの応用。H24 第18問の正解は「(指名)委員会型の会社は監査役を置いてはならない (327条4項)」——委員会型は監査委員会が監査を担うので監査役と役割がダブるためです。 H19 第4問・H22 第2問は、「将来の追加設置を最小にするには最初からどう設計するか」を会話から逆算させる問題。 どちらも取締役会+監査役を最初から置く形が正解でした。 → H24 第18問H19 第4問H22 第2問


3-2 株主総会

株主総会とは——会社の「最高意思決定機関」

株主総会は、会社の所有者である株主が集まって、会社の基本的な事項を決める場です。 株主は「1株=1議決権」を原則として、頭数ではなく持っている株式の数で発言力が決まります。

  • 取締役会非設置会社では、株主総会は万能機関(あらゆる事項を決議できる。会社法295条1項)。
  • 取締役会設置会社では、株主総会が決めるのは法律・定款で定めた重要事項に限定されます(295条2項)。 日常の業務執行は取締役会・代表取締役に任せる、という役割分担です。

招集手続——「いつまでに知らせるか」がよく出る

株主総会を開くには、事前に株主へ「開きますよ」と通知します(招集通知)。 いつまでに発送するかが頻出です。「公開か非公開か」「書面投票を認めるか」で期限が変わります。

会社の種類 招集通知の発送期限(原則)
公開会社 総会の日の2週間前まで
非公開会社(書面・電磁的投票を認めない) 総会の日の1週間前まで
非公開会社かつ取締役会非設置 定款で1週間より短くすることもできる
  • 書面・電磁的方法による議決権行使(書面投票など)を認める会社は、非公開でも2週間前まで必要になります。
  • 株主全員の同意があれば、招集手続そのものを省略して総会を開けます(300条。公開・非公開を問わず)。

⚠️ 混同注意:「2週間前」と「1週間前」 - 公開会社 → 2週間前(覚え方:公開=株主が多く外部にいる → 早めに知らせる) - 非公開・書面投票なし → 1週間前 - さらに非公開+取締役会非設置なら、定款で1週間より短縮も可。

決議の3つの種類——ここが最重要

株主総会の決議には、大きく3種類あります。「どの決議が必要か」の取り違えが最大の出題ポイントです。

決議の種類 定足数(出席の要件) 可決に必要な賛成 主な対象
普通決議 議決権の過半数を持つ株主が出席(定款で軽減・排除可) 出席株主の議決権の過半数 役員の選任、役員の報酬、計算書類の承認 など
特別決議 議決権の過半数を持つ株主が出席(定款で1/3まで軽減可) 出席株主の議決権の2/3以上 定款変更、監査役の解任、合併、事業譲渡、募集株式の有利発行 など
特殊決議 総株主の半数以上かつ議決権の2/3以上(さらに厳しい類型も) 全株式に譲渡制限をつける定款変更 など、株主に重大な影響を与える事項

⚠️ 混同注意:「役員の選任・解任」の決議はどれ?——ここが超頻出 - 取締役の選任 → 普通決議取締役の解任 → 普通決議 - 監査役の選任 → 普通決議監査役の解任 → 特別決議(!)

監査役だけは、解任が特別決議(2/3以上)という点が特別扱いです。 理由は、監査役は取締役を監視する立場なので、簡単にクビにできると独立性が保てないから。 なお、選任・解任の普通決議の定足数は、定款でも1/3未満には下げられません(341条)。

📝 過去問はこう出る(R05 第2問) 「監査役会設置会社での取締役・監査役の選任・解任の決議要件」。正解(エ)は 「選任は普通決議(定款に別段の定めがなければ、議決権の過半数の株主が出席し、出席株主の過半数で可決)」。 引っかけ:「取締役も監査役も解任を1/3出席・過半数でできる(→監査役の解任は特別決議だからバツ)」、 「定足数を1/5まで下げられる(→1/3未満には下げられないからバツ)」。 → R05 第2問

議決権行使のこまかいルール

R07 第1問では、議決権行使や招集の細部が問われました。次の3点は押さえておきましょう。

  • 議決権の不統一行使ができる(313条)。1人の株主が持ち株を「賛成◯株・反対△株」と分けて投じられます。 「常に統一して行使しなければならない」はバツ。
  • 特別利害関係のある株主も、株主総会では議決権を行使できる(取締役会とはちがう点)。 行使の結果、著しく不当な決議がされたら決議取消しの問題になるだけです(831条1項3号)。
  • 開催地の制限はない(かつての「本店所在地で開催」の制限は、会社法で撤廃済み)。

決議・報告の省略(書面決議)

株主全員の同意があれば、実際に集まらなくても決議・報告を"あったこと"にできます。

  • みなし決議(書面決議):議決権を行使できる株主全員が書面・電磁的方法で提案に同意すれば、 可決の決議があったものとみなされる(319条1項)。公開・非公開を問わず使えます。
  • みなし報告:報告事項を株主全員が「報告不要」と同意すれば、報告があったものとみなされる(320条)。
  • ただし議事録の作成・備置きは必要(省略できるのは"集まって決議する手続"であって、記録ではない)。

📝 過去問はこう出る(R05 第1問/R07 第1問) R05 第1問の正解(イ)は「株主全員の書面同意による書面決議(みなし決議)は、公開・非公開を問わず可能(319条)」。 「議事録の作成も不要になる(→議事録は必要)」「公開会社では書面決議できない(→公開でも可)」はバツ。 R07 第1問の正解(エ)は招集通知の短縮の例外を正しく述べたもの。 → R05 第1問R07 第1問

スケジュール問題(計算書類の備置き)

定時株主総会の前後で「いつまでに何をするか」を日付で問う問題も出ます(→計算の第4章とも関連)。

  • 計算書類等の本店備置きの開始日:定時株主総会の日の1週間前取締役会設置会社は2週間前)から、 5年間備え置く(442条)。取締役会設置会社は2週間前が起算点、という点が引っかけどころ。

📝 過去問はこう出る(H20 第3問/R01 第6問) H20 第3問は、取締役会設置会社の計算書類備置き開始日を問い、正解は総会日の2週間前の日。 R01 第6問は招集通知の期限(非公開・書面投票なし=1週間前)と、株主提案の再提案制限 (同一議案で議決権の1/10以上の賛成を得られなかった日から3年は拒絶できる)を問いました。 → H20 第3問R01 第6問


3-3 取締役・取締役会・代表取締役

取締役——業務を「やる人」

取締役は、会社の業務執行の意思決定に関わり、実際に会社を動かす役員です。基本ルールは次のとおり。

  • 資格:取締役は自然人(人間)に限る法人は取締役になれません(331条)。
  • 人数:取締役会非設置会社は1人でもよい。取締役会設置会社は3人以上(331条5項)。
  • 選任:株主総会の普通決議で選任(341条)。
  • 解任:株主総会の普通決議で解任できる(339条1項)。いつでも解任できるのが原則です。

任期——「取締役2年・監査役4年」を絶対に覚える

任期の数字は、ほぼ毎年どこかで問われます。基本の対比は次のとおり。

役員 原則の任期 非公開会社での伸長 短縮
取締役 選任後2年以内に終了する事業年度の最終の定時株主総会終結時まで 定款で10年まで伸ばせる 定款・株主総会決議で短縮できる
監査役 選任後4年(同上) 定款で10年まで伸ばせる 短縮できない(独立性確保のため)
  • 公開会社でない(非公開)会社では、取締役も監査役も定款で最長10年まで任期を伸ばせます(332条2項・336条2項)。
  • 短縮は取締役ならOKですが、監査役は短縮不可(=取締役に都合よくクビ・入れ替えできないようにする趣旨)。

💡 覚え方:「取(2)締役、監(4)査役」。取締役は2年、監査役は4年。 非公開ならどちらも10年まで伸ばせる。縮めていいのは取締役だけ

📝 過去問はこう出る(R04 第2問) 取締役・監査役の任期を表で問う問題。正解(エ)は「A(取締役の原則)=2年、B(監査役の伸長後)=10年、 C(監査役の短縮)=不可」。取締役2年・監査役4年、非公開なら両方10年まで、監査役だけ短縮不可、が骨格です。 → R04 第2問

取締役の義務と責任

取締役は会社との間で委任の関係に立ち、次の重い義務を負います。

  • 善管注意義務・忠実義務:会社のために、注意深く・誠実に職務を行う義務。
  • 競業避止義務:会社の事業と競合する取引をするときは、承認を得る必要がある。 取締役会設置会社では取締役会の承認、非設置会社では株主総会の承認(356条・365条)。
  • 利益相反取引の制限:取締役が会社と取引したり(直接取引)、会社が取締役の債務を保証したり(間接取引) する場合、取締役会(非設置なら株主総会)の承認が必要(356条・365条)。
  • ただし、会社に損害を与えるおそれがない取引(取締役が会社へ無利息・無担保で貸す、負担なしで贈与する等、 もっぱら会社が得をする取引)は、実質的に利益相反がないので承認不要と解されます。

📝 過去問はこう出る(H21 第5問) 利益相反取引にあたるか(=取締役会の承認が必要か)を問う問題。正解(イ)は 「代表取締役が自己の土地を会社に貸し、借地料を引き上げる契約」——会社に不利益を与えうる典型的な直接取引で、 承認が必要。逆に「取締役が会社へ無利息・無担保で貸す」(もっぱら会社が得)は承認不要でバツ。 → H21 第5問

取締役会——業務執行の「意思決定と監督」

取締役会は、取締役全員で構成し、①業務執行の意思決定、②取締役の職務執行の監督、 ③代表取締役の選定・解職を行う機関です。運営ルールがよく出ます。

論点 ルール
決議 議決に加われる取締役の過半数が出席し、出席取締役の過半数で決する(369条1項)
特別利害関係取締役 その決議に利害関係のある取締役は議決に加われず、定足数からも除外(369条2項)
招集通知 原則、会日の1週間前まで。定款で短縮できる(368条1項)。議題(目的事項)の記載は不要
通知の宛先 各取締役および各監査役に発する(監査役も出席義務があるため)
代理出席 できない(取締役の職務は一身専属的。委任状による議決権行使は不可)
報告 代表取締役・業務執行取締役は3か月に1回以上、職務執行状況を取締役会に報告(363条2項)

⚠️ 混同注意:株主総会と取締役会の「決議」のちがい - 株主総会:特別利害関係株主も議決権を行使できる/代理(委任状)OK/通知に議題の記載が必要 - 取締役会:特別利害関係取締役は議決に加われない/代理NG/通知に議題の記載は不要

「誰の会議か」で真逆になる点が、狙われます。

📝 過去問はこう出る(R07 第2問/R05 第3問) R07 第2問の正解(イ)は「取締役会の定足数は、特別利害関係で議決に加われない取締役を除いて計算できる(369条)」。 引っかけ:「代表取締役の3か月報告を書面で省略できる(→現実の取締役会での報告が必要でバツ)」、 「委任状で議決権行使できる(→代理不可でバツ)」、「招集通知は定款でも短縮できない(→短縮できるでバツ)」。 R05 第3問の正解(ウ)は「招集通知は各取締役と各監査役に発する」。 「招集通知に目的事項(議題)を記載しなければならない(→取締役会は記載不要でバツ)」が引っかけです。 → R07 第2問R05 第3問

代表取締役——会社を「代表する人」

代表取締役は、対外的に会社を代表し、日常の業務を執行する取締役です。 取締役会設置会社では、取締役会が取締役の中から選定します(362条2項3号)。ここで解職の論点が重要です。

⚠️ 混同注意:「解職」と「解任」はまったく別物 - 代表取締役の"解職"(代表権をはずす)→ 取締役会の決議で行う(362条2項3号)。ただし取締役の地位は残る。 - 取締役の"解任"(取締役をやめさせる)→ 株主総会の普通決議で行う(339条1項)。

「代表取締役をやめさせる」でも、代表権だけはずす(取締役会)か、取締役ごとやめさせる(株主総会)かで、 手続が変わります。

📝 過去問はこう出る(H25 第18問) 「公私混同の激しい代表取締役Aを、①解職して代表権をはずし、②さらに取締役から解任したい」という問題。 正解(イ)は「①代表取締役の解職は取締役会の決議(議決に加われる取締役の過半数出席・出席者の過半数)」。 「解職を株主総会でやる(→取締役会の権限でバツ)」「取締役の解任に2/3以上必要(→普通決議で足りるでバツ)」が引っかけ。 → H25 第18問

議事録のちがい(株主総会 vs 取締役会)

議事録の「署名義務・備置き・閲覧」の差も出ます(R02 第3問)。

株主総会議事録 取締役会議事録
署名・押印 不要 出席取締役・監査役の署名または記名押印が必要(369条3項)
本店での備置き 10年 10年
株主の閲覧・謄写 営業時間内いつでも請求可(318条4項) 監査役設置会社では裁判所の許可が必要(371条3項)

📝 過去問はこう出る(R02 第3問) 正解(イ)は「株主総会議事録・取締役会議事録とも、開催日時・場所を記載しなければならない」。 「取締役会議事録の備置きは5年(→10年でバツ)」「どちらも署名不要(→取締役会は署名必要でバツ)」が引っかけ。 → R02 第3問

社外取締役——「社外」の要件

社外取締役は、会社の外部から経営を監督する取締役です。近年ガバナンス強化で重視されています。 「社外」といえるための要件(2条15号)は、ざっくり次のイメージです。

  • その会社・子会社の業務執行取締役・使用人でない(現在も、就任前一定期間も)
  • 親会社等の関係者でない
  • 業務執行取締役等の近親者(配偶者・二親等内の親族)でない

📝 過去問はこう出る(H27 第1問/H24 第1問) H27 第1問で社外取締役の要件を満たさない者は「親会社の業務執行取締役」(親会社等の関係者はダメ)。 一方「15年前まで勤務していた者」「甥(=三親等で近親者にあたらない)」「主要取引先の取締役」は要件を満たします。 H24 第1問は、子会社の取締役を兼ねている親会社取締役が社外性を満たさない、というグループ会社の応用問題。 → H27 第1問H24 第1問


3-4 監査役・監査役会・会計監査人・会計参与

監査役——取締役を「チェックする人」

監査役は、取締役の職務執行を監査(チェック)する機関です。独立性が命なので、 取締役側の都合で動かされないためのルールがいろいろあります。

論点 ルール(+趣旨)
任期 原則4年短縮できない(独立性確保)
選任・解任 選任は普通決議解任は特別決議(343条4項・309条2項)。かんたんにクビにできない
兼任禁止 その会社・子会社の取締役・使用人を兼ねられない(335条2項)。子会社の使用人も不可
報酬 定款の定めがなければ株主総会で決める(387条1項)。取締役会では決められない
調査権 いつでも取締役・使用人に報告を求め、業務・財産の状況を調査できる(381条2項)
違法行為の差止め 各監査役が単独で差止請求できる(385条1項)。監査役会の決議は不要
意見陳述 取締役会に出席し意見を述べる義務(383条1項)。辞任した監査役も、辞任後最初の総会で理由を述べられる(345条)

💡 なぜ監査役は「独立性」がこんなに強調されるの? 監査役は"取締役の見張り役"。もし取締役が自由に監査役の任期を縮めたり、報酬を決めたり、 過半数(普通決議)でクビにできたら、見張りとして機能しません。だから ①解任は特別決議、②任期は短縮不可、③報酬は株主総会、④兼任禁止——これらは全部 「取締役から監査役を守る」ための仕組みだと理解すると、まとめて覚えられます。

📝 過去問はこう出る(R07 第3問/R05 第4問) R07 第3問の正解(エ)は「辞任した監査役は、辞任後最初の総会に出席して辞任の理由を述べられる(取締役会の同意不要)」。 引っかけ:「任期を定款で2年に短縮できる(→監査役の任期短縮は不可でバツ)」、 「取締役会の同意で子会社の取締役を兼ねられる(→兼任禁止でバツ)」、 「解任は普通決議(→特別決議でバツ)」。 R05 第4問の正解(イ)は「監査役は会社の業務・財産の状況を調査できる(381条)」。 「報酬を取締役会で決める(→株主総会でバツ)」「子会社の使用人は兼ねられる(→兼任禁止でバツ)」 「差止めに監査役会の決議が必要(→各監査役が単独ででバツ)」が引っかけ。 → R07 第3問R05 第4問

監査役会——3人以上・半数以上が社外・常勤を置く

監査役会は、監査役が集まって組織する機関です。大会社かつ公開会社などで設置が求められます。 数字の要件が定番です。

監査役会 = 監査役 3人以上
            ├─ その「半数以上」が社外監査役(← 過半数ではない!)
            └─ その中から「常勤の監査役」を1人以上選ぶ

⚠️ 混同注意:「半数以上」と「過半数」 監査役会の社外監査役は「半数以上」(例:4人なら2人でOK)。「過半数」ではありません。 一方、監査等委員会・指名委員会等の社外取締役は「過半数」(→3-5)。この差がよく狙われます。

📝 過去問はこう出る(R06 第2問/R03 第6問) R06 第2問の正解(ア)は「監査役会では常勤監査役を選ばなければならないが、社外監査役を常勤にしてもよい」。 引っかけ:「社外監査役は過半数(→半数以上でバツ)」、「監査役の報酬は定款で定められない (→定款または株主総会で定められるのでバツ)」、「解任に正当な理由が必要(→正当理由は要件でなく、 正当理由なき解任は損害賠償の問題になるだけ)」。 R03 第6問は取締役会と監査役会の比較。正解(ア)は「議事録に異議をとどめない出席者は 決議に賛成したと推定される」(取締役会369条5項・監査役会393条4項の両方に共通)。 → R06 第2問R03 第6問

会計監査人——プロによる会計のチェック

会計監査人は、公認会計士または監査法人が就任し、計算書類を専門家として監査します。 大会社や委員会型の会社では設置が義務です。監査役(業務全般+会計)とちがい、会計に特化します。

会計参与——取締役と「一緒に」計算書類を作る

会計参与は、公認会計士・税理士(またはその法人)が就任し、 取締役と共同で計算書類を作成する機関です(374条)。中小企業の計算書類の信頼性を高めるために作られました。

  • 役員である(329条1項の「役員」=取締役・会計参与・監査役の一つ)。
  • 任期は取締役と同じ(原則2年)(334条)。監査役と同じ「4年」ではない点が引っかけ。
  • 監査役の代わりになれる場合がある:非公開会社の取締役会設置会社では、会計参与を置けば監査役を省ける(327条2項ただし書)。
  • あくまで作る側。監査役・会計監査人のように「適正かどうかの意見を表明する(監査する)」立場ではありません。

⚠️ 混同注意:「会計参与」と「監査役(会計限定)」 どちらも会計まわりの役員ですが—— - 会計参与=取締役と一緒に計算書類を作る人(作成者側)。任期は取締役と同じ2年。 - 会計限定監査役=でき上がった会計をチェックする人(監査側)。任期は監査役の4年。 「作る人」か「チェックする人」かで区別しましょう。

📝 過去問はこう出る(H23 第18問/H20 第1問) H23 第18問(不適切なものを選ぶ)の正解は、設問1が「会計参与の任期は監査役と同様(→取締役と同様の2年でバツ)」、 設問2が「会計参与は適正表示の意見を付した報告を作る(→会計参与は作成側で、意見表明=監査ではないのでバツ)」。 H20 第1問は、会計参与・会計限定監査役・限定なし監査役を4項目で比較する表問題。 誤りを含む行(正解ウ)は「会計限定監査役に取締役会への出席義務がある」——会計限定監査役には業務監査権限がなく、 取締役会出席義務の規定(383条)が適用されない(389条7項)ので誤りでした。 → H23 第18問H20 第1問

監査範囲の限定——「会計限定監査役」

非公開会社(委員会型・会計監査人設置会社を除く)では、定款で監査役の権限を「会計監査」に限定できます(389条1項)。 これを会計限定監査役と呼びます。中小企業で非常に多いパターンです。

  • 業務監査(取締役の職務全般のチェック)はしない。会計のチェックだけを行う。
  • そのため取締役会への出席義務がない(383条の適用がない)。
  • 旧「小会社」からのみなし:会社法施行の直前に旧制度の小会社だった非公開会社は、 定款に定めがなくても「会計に限定する定めがある」とみなされます(整備法)。

📝 過去問はこう出る(H25 第5問) 会計限定監査役の問題。設問1(A)の正解(ウ)は「会社法施行直前に小会社だった非公開会社は、 会計限定の定めがあるものとみなされる」。設問2(B)の正解(イ)は「会計限定監査役は、 取締役が提出する会計に関する議案を調査し、その結果を株主総会に報告する義務がある(389条)」。 → H25 第5問H24 第18問


3-5 指名委員会等設置会社・監査等委員会設置会社

3つのガバナンス類型

会社法は、監査役を置く伝統的な形(監査役会設置会社)のほかに、委員会型を2つ用意しています。 上場企業を中心に、次の3つから選べます。

類型 監査を担うのは 執行役の有無 特徴
監査役(会)設置会社 監査役・監査役会 なし 伝統的な形。中小企業に多い
指名委員会等設置会社 監査委員会 執行役・代表執行役あり 指名・監査・報酬の3委員会を置く。経営(執行役)と監督(取締役会)を分離
監査等委員会設置会社 監査等委員会 なし(代表取締役を置く) 2015年に導入。監査役を置かず、監査等委員である取締役が監査。社外取締役を確保しやすい

委員会型に共通する重要ポイント

共通① 監査役を置かない(=置いてはならない)。監査は「委員会」が担う
共通② 会計監査人の設置が必須(大会社かどうかを問わない!)
共通③ 委員会のメンバー(取締役)の「過半数」が社外取締役
  • 指名委員会等設置会社:3つの委員会(指名・監査・報酬)を置き、各委員会は取締役3人以上・過半数が社外。 業務執行は執行役が担い、その代表が代表執行役。取締役会は監督に専念します。
  • 監査等委員会設置会社:監査等委員である取締役は3人以上で、その過半数が社外取締役(331条6項)。 執行役は置かず、代表取締役が業務執行を担います。 監査役会設置会社より社外取締役の頭数をそろえやすいため、導入が進みました。

⚠️ 混同注意:執行役がいるのはどっち? - 指名委員会等設置会社執行役・代表執行役がいる(取締役会が執行役に業務執行を委ねる) - 監査等委員会設置会社 → 執行役はおらず、代表取締役が執行する

「執行役=指名委員会等」「代表取締役=監査等委員会」とセットで覚えましょう。

⚠️ 混同注意:社外は「過半数」!(監査役会は「半数以上」) 委員会型の社外取締役は過半数(例:3人中2人)。監査役会の社外監査役は半数以上(3-4)。 「過半数(委員会型)」と「半数以上(監査役会)」の対比が定番の引っかけです。

📝 過去問はこう出る(R06 第1問) 監査等委員会設置会社の問題。正解(イ)は「大会社かどうかを問わず、会計監査人の設置が義務(327条5項)」。 引っかけ:「代表執行役を選定する(→執行役がいるのは指名委員会等設置会社。監査等委員会は代表取締役でバツ)」、 「非公開なら監査等委員は1人でよい(→公開・非公開を問わず3人以上でバツ)」、 「非公開なら社外取締役は不要(→公開・非公開を問わず過半数が社外でバツ)」。 → R06 第1問

上場企業ではどの型が多い?

上場企業の機関設計の割合を市場区分別に読ませる図表問題も出題されました(H30 第21問)。 「新興市場ほど伝統的な監査役会設置が多く、ガバナンス意識の高い優良企業ほど委員会型が多い」という 市場の性格とガバナンス先進度の対応を押さえておけば読み解けます。

📝 過去問はこう出る(H30 第21問) 正解(イ)は「A=JASDAQ(新興市場・監査役会設置の割合が高い)、B=市場第一部(バランス型)、 C=JPX日経400(優良企業指数・委員会型の割合が高い)」。 → H30 第21問


この章のまとめ(試験直前チェック)

  • 公開会社=1株でも自由に譲渡できる株式がある会社(≠上場会社)/大会社=資本金5億 or 負債200億
  • ☐ 取締役会を置く → 取締役3人以上+原則監査役が必要(芋づる式)
  • 取締役会非設置会社の株主総会は万能(何でも決議可)/設置会社は権限が限定される
  • ☐ 招集通知:公開=2週間前非公開(書面投票なし)=1週間前/全員同意で招集省略可
  • ☐ 決議:普通(過半数)/特別(2/3以上)/特殊。役員選任は普通決議
  • 監査役の解任だけ特別決議(選任は普通決議)。選任・解任の定足数は1/3未満に下げられない
  • ☐ 議決権の不統一行使OK/特別利害関係株主も総会では議決権行使できる
  • みなし決議(書面決議)は全員同意で可(公開・非公開問わず)。ただし議事録は必要
  • ☐ 任期:取締役2年・監査役4年/非公開なら両方10年まで/監査役は短縮不可
  • ☐ 取締役は自然人のみ(法人は不可)。利益相反取引・競業避止は取締役会(非設置なら株主総会)の承認
  • ☐ 取締役会:代理出席NG・特別利害関係取締役は議決に加われない・議題の記載不要・招集通知は監査役にも
  • 代表取締役の解職=取締役会取締役の解任=株主総会(普通決議)
  • ☐ 議事録:取締役会は署名必要・株主閲覧に裁判所の許可/株主総会は署名不要・いつでも閲覧可/備置きはともに10年
  • 社外取締役は親会社関係者・近親者(二親等内)を除く。三親等(甥)はOK
  • ☐ 監査役会:3人以上/半数以上が社外/常勤を置く(社外を常勤にしてもよい)
  • ☐ 監査役の報酬は株主総会/差止めは各監査役が単独で/子会社の取締役・使用人も兼任禁止
  • 会計参与=取締役と共同で計算書類を作る(任期は取締役と同じ2年)/非公開・取締役会設置なら監査役の代わりになれる
  • 会計限定監査役=会計だけチェック・取締役会出席義務なし(旧小会社はみなし限定)
  • 委員会型は監査役を置かない・会計監査人必須(大会社問わず)・社外は過半数
  • 指名委員会等=執行役あり監査等委員会=代表取締役(執行役なし)

この章に対応する主な過去問

年度・問 論点 リンク
H19 第4問 株式会社の機関設計 問題
H20 第1問 会計参与・監査役の比較 問題
H20 第3問 定時株主総会までのスケジュール 問題
H21 第5問 利益相反取引(取締役会の承認) 問題
H22 第2問 株式会社の機関設計 問題
H24 第1問 社外取締役・社外監査役の該当性 問題
H24 第18問 監査役の設置 問題
H25 第5問 監査役の監査範囲の限定 問題
H25 第18問 代表取締役の解職と取締役の解任 問題
H27 第1問 社外取締役の要件 問題
H28 第1問 株式会社の役員(監査役の解任・任期) 問題
H30 第21問 上場企業の機関設計の割合 問題
R01 第6問 株主総会のスケジュール 問題
R02 第3問 株主総会・取締役会の議事録 問題
R02 第6問 株式会社の機関設計(非公開会社) 問題
R03 第6問 取締役会と監査役会の比較 問題
R04 第2問 取締役と監査役の任期 問題
R05 第1問 株主総会 問題
R05 第2問 取締役・監査役の選任と解任の決議 問題
R05 第3問 取締役会(会社法の定め) 問題
R05 第4問 監査役(監査役会設置会社) 問題
R06 第1問 監査等委員会設置会社 問題
R06 第2問 監査役および監査役会 問題
R07 第1問 株主総会 問題
R07 第2問 取締役会 問題
R07 第3問 監査役 問題

次章予告 ▶ 第4章「計算と剰余金の配当」 本章で登場した「計算書類」「会計監査人」「会計参与」の話を受けて、次章では会社のお金の計算ルールに進みます。 計算書類とは何か、剰余金の配当はいくらまでできるのか(分配可能額)、 資本金・準備金のしくみなど、"数字にまつわる会社法"を扱います。