経営法務 H21年度 第5問

第5問

中小企業診断士であるあなたは、顧客であるA 株式会社(以下「A 社」という。)の 代表取締役X 氏と話をしていた際、以下のアドバイスを行った。そのアドバイス に対応するX 氏の話の内容として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。な お、A 社は、取締役会設置会社であり、株主は30名である。 【あなたのアドバイス】 「これから作成しようとしている契約書の内容は、会社法に定める自己取引(利 益相反取引)に該当しますから、取締役会の承認が必要だと思いますよ。」

  1. 会社のトラックを台買い替えることになって、中古車でかなり状態がいい のが見つかったんだけど、20万円だけ予算をオーバーしててね。それで、私 が会社に、無利息・無担保で、返済は資金繰りに余裕ができたときという内容 で20万円を貸すことになって、今、その契約書を作っているんだ。
  2. 会社本社の土地は、私名義の土地で会社に貸していたんだけど、借地料は何 十年も据え置きにしていたんだ。でも、その間に、固定資産税額が上がって、 借地料だけでは足りなくなったんだ。だから、今回、借地料を固定資産税額の 倍の金額にすることになって、新しい契約書を作っているんだよ。
  3. 当社支店の土地は、地主から借りていて、その土地に会社で建物を建てて 使っていたんだけど、先日、地主からその土地を買ってくれないかと言われた んだ。ただ、会社の資金繰りだと難しいので、私個人でお金を出して私名義で 買うということになったから、今、売買契約書を作ってもらっているんだ。
  4. 私が代表取締役を兼務しているB 社は、A 社の100パーセント子会社で、 C 社から機械をリースしていたんだけど、今度、C 社から承諾をもらって、A 社でB 社からリースを受けることにしたんだ。今、A 社とB 社の契約書を 作っているんだけど、リース料やリース期間なども含め、B 社とC 社のリー ス契約と全く同じ内容にすることになったんだ。 ― 9― ◇M5(557―122)
▼ 解答・解説を見る

正解:

解答:イ

〔リード〕利益相反取引(会社法356条1項2号・3号、365条)には、取締役が当事者として会社と取引する「直接取引」と、会社が取締役の債務を保証するなど取締役以外の者との間で会社・取締役間の利益が相反する「間接取引」がある。いずれも取締役会設置会社では取締役会の承認が必要。ただし、会社に損害を与えるおそれがない取引(取締役が会社に無利息・無担保で金銭を貸し付ける、取締役が会社に負担のない贈与をするなど、専ら会社が利益を受ける取引)は、実質的に利益相反のおそれがないため承認は不要と解される。本問は「自己取引(利益相反取引)に該当し取締役会承認が必要」というアドバイスに合致する話を選ぶ。

  • ア(×):代表取締役が会社に無利息・無担保で貸し付ける取引。会社に不利益を及ぼすおそれがなく専ら会社に有利なため、利益相反取引として取締役会承認を要する取引には当たらない。アドバイスに合致しない。
  • イ(○):代表取締役Xが自己名義の土地を会社に貸し、その借地料を引き上げる契約。X個人と会社との間の直接取引であり、借地料引上げは会社に不利益をもたらしうる典型的な利益相反取引。取締役会の承認が必要で、アドバイスに合致する。
  • ウ(×):地主から土地を買うのはX個人であり、売買契約の当事者は地主とX。A社は当事者でなく、会社・取締役間の取引(直接・間接いずれの利益相反取引)に該当しない。よって取締役会承認は不要で、アドバイスに合致しない。
  • エ(×):A社とB社(XがB社代表を兼務)の取引だが、B社はA社の100%子会社で、C社との既存リースと全く同一条件で転リースを受けるにすぎず、会社に不利益のおそれがない。利益相反取引としての承認を要する場面とはいえず、アドバイスに最も合致するとはいえない。

よって

#会社の種類・設立#株式・機関#民法・契約・PL

← 経営法務の一覧へ戻る