IT導入補助金の申請書類の書き方について

IT導入補助金のスタート

2017年に初めて、IT導入補助金がスタートしました。以前から製造業には「ものづくり補助金」がありました。ものづくりに必要な設備を購入する際に、申請して認められると補助金が出ました。ものづくり補助金はもちろん、機械設備を買いたい中小事業者のための制度でありますが、実際は、設備機器を販売するメーカを大きく支援する制度だったといえます。

そういう意味では、IT導入補助金は、ソフトウェア・パッケージを販売するIT事業者を大きく支援するものだといえます。 実際、「IT導入補助金」と検索すると、多くのIT会社のホームページが検索結果に現れます。IT事業者も自社のソフトウェア・サービスを販売するために、この制度をうまく使おうとしているのですね。

もちろん、そのための補助金ですから、メーカ側が補助金制度を活用するのは当然ですが、一方、実際に設備やソフトウェア・サービスを購入する中小事業者は考えねばなりません。

「定価の 1/3 で購入できるのでお得ですよ❗」 といった甘言にのって購入していいことはありません。 普段よりは安いとは言え、1/3の実費は必ずかかるわけですし、本当に必要なものだけを見極めて購入するようにしてほしいと思います。

なお、前回は上限100万円で、補助率は投資額の3分の2だったが、今回は上限50万円、投資額の2分の1になる予定です。

2018年の申請書類の書式は!?

2017年のIT導入補助金は予算が100億円でしたが、1次公募では応募が少なく、2次公募までありました。そして、2018年もIT導入補助金は募集されることが決まっています。

ただし、現時点では、詳細は発表されておらず、申請書式などは決まっていません。

とはいえ、2017年の書式と大きく変わることはないでしょうから、今回の記事では2017年のIT導入補助金の書式を振り返って、書類の書き方のポイントを整理していきたいと思います。

2017年の書式の概要

書式は、IT導入補助金のページからエクセルでダウンロードできます。

様式第1

様式第1はワードのファイルです。見ての通り、ただの表紙ですね。住所や会社名などをかいて、あとは、判子を忘れずにですね。法人番号ももちろん記載してください。画像をクリックすると、大きな画像で開きます。

なお、法人番号と会社法人等番号は異なりますから、間違えないようにしてくださいね。

実際の書式はIT導入補助金のページからダウンロードください。

 

 

別紙1 補助事業社登録について

別紙は1から4まであり、エクセルの4シートに分かれています。別紙1は、「補助事業者情報登録」ということで、会社の基本情報を登録していくだけなので、すぐ終わると思います。

なお、以下のように、エクセルの上部に 申請書類ではございません。とでかでかと書いています。これは、実際に補助金を申請する事業者さんは、エクセルで記載した上で、申請はソフトウェア・サービスベンダが代行でIT導入補助金のシステムに登録するからです。 申請内容自体は、ユーザ側である事業者でしっかり考えて記載して、申請システムに登録するのは、ソフトウェア・サービスベンダというわけです。

書式のイメージ →画像をクリックすると大きくなります。

別紙2事業計画

別紙2が、本補助金申請のメインの書類です。ここで、この補助金に求められている内容に従った事業計画を書く必要があります。

2017年の書式では、補助金の申請金額によって、3枚に別れていました。
20万円以上50万円未満
50万円以上80万円未満
80万円以上100万円  の3つですね。

150万円のシステムを導入すると、2/3補助されて、100万円が出るわけなので、3枚目の 80万円以上100万円 の書類を使うことになります。

なお、2018年は、50万円が限度額になります。補助額は1/2なので、100万円のシステムを購入したら、50万円補助されるということです。 そのため、書式も1枚になるのかなと思います。実際は、どういった書式になるか、まだ未確定ですが、本記事では、これ以降、50万円以上80万円未満の書類で解説していきたいと思います。→別紙2が申請書類の本丸ですから、個別に項目の書き方の詳細を、別紙3と別紙4の紹介の後で解説します。

別紙3 導入ITツール

別紙3は実際に導入するITツールの名前や、購入するベンダ名を書きます。ここは、自社でわかっていたら書きますが、ソフトウェアの種類などわかりにくいので、ベンダ側で書いてもらえると思います。

ただ、IT導入による効果予測 については、別紙2の内容のまとめ的なものを書く必要がありますので、これも後ほど詳細に確認して行きたいと思います。

別紙4 宣誓事項

別紙4は、補助金のルールに則ってちゃんとやっているか、宣誓するシートですね。もちろん、全部チェックしないといけません。

先日も、スパコンの補助金の不正が話題になりました。言うまでもありませんが、不正はだめです。日本の企業、特にホワイトカラーの生産性は低いと言われて久しいですが、こういったITツールを活用して生産性を高めましょう!という目的なので、目的にそって利用して欲しいです。 (そして、ITベンダの甘言に惑わされて、よくわからないまま、使えもしないシステムを購入することは避けてください)

2017年の書式の詳細について:別紙2(50万円以上80万円未満)

ということで、別紙1,4はすぐ書き終わると思います。 別紙3は別紙2の後に最後に確認します。

別紙2は以下が全体像です。といっても、たくさん項目があるので、見えないと思いますので、1個1個説明していきたいと思います。

まずは、以下の(A)~(F)を記載していきます。 項目を選択して、文章で捕捉していきます。

  • (A)補助事業者の事業概要    →文章で説明
  • (B)事業改善についてのこれまでの取組み  →項目選択と文章で補足説明
  • (C)事業の市場における強み        →項目選択と文章で補足説明
  • (D)事業課題  →項目選択と文章で補足説明
  • (E)将来計画  →項目選択と文章で補足説明
  • (F)IT導入により実現したい効果 →項目選択と文章で補足説明

(A)補助事業者の事業概要

これは、皆さんの事業の概要を書いていきます。 ここでは、架空の企業を想定して 以下のように書きました。何文字書くかは難しいところですが、書式のサイズに合わせて書くと、3行で350文字くらいが最大かと思います。せめて半分の200文字くらいは書いておきたいですね。どの項目も、あまり短いと良くないと思いますので、300文字くらいは目指していきましょう。

自社の事業の概要を書くわけですが、この後、強みや課題を記載していくので、そのもととなる情報を入れておきたいですね。

【記載例】 →以下の申請書を書く上の仮想の企業です。今回のIT導入補助金では、電子商取引(EDI)を導入して、顧客との受発注を簡素化したい!といったものです。

文房具の卸・小売を行っている。卸については、主に大型文具店や、スーパーやショッピングセンターや街の文房具屋さんなどが顧客である。スーパー等の大規模顧客については、営業担当者がついてまわり、ニーズを引き出して、提案型で営業販売している。街の文房具店にも営業担当社が直接訪問している。

一方、小売についてはネット・ショップで展開している。こちらは、一般の消費者が顧客となっている。神奈川県の◯◯部に営業拠点があり、全国への発送は△△市に物流拠点を構えている。

そしていよいよここからが申請書の山場ですね。 (B)事業改善についてのこれまでの取組み  (C)事業の市場における強み  (D)事業課題  (E)将来計画  (F)IT導入により実現したい効果

(B)(C)(D)(E)(F)については、うまくつなげて書きたいです。今まで(B)でこんな工夫をして頑張ってきたため、(C)のような強みがある。ただし、それでも(D)のような課題があり、(E)のような将来形態にするため、(F)ITで効果を出したい❗ と言った流れです。

(B)事業改善についてのこれまでの取組み

今回の申請書の例では、商品の企画や営業を頑張っていることを強みにしました。 このあとの課題などで、ITで生産性をあげていくわけですから、その前に 商品やサービス自体はすでに色々工夫ができていて、だからこそ、ITツールで営業や受発注を効率化していくと、生産性が向上し、成果につながるんだよ!という流れの前フリです。

【記載例】

仕入れルートの開発や商品企画により、製品の質の向上を図り、文房具市場では独自の地位を構築できている。公的機関(◯◯県産業振興公社等)の専門家の指導も仰ぎながら、業務改善に取り組んできた。その結果、商品の独自性と営業力の強化により、ある程度の新規市場開拓を進めることができた。

さらに、スーパーはショッピングセンター等の大規模顧客には、商品企画や納入など柔軟な対応を行うことで、顧客満足度の向上も図ってきている。

また、製品単体では競合他社と差別化が難しい場合でも、製品ラインナップの豊富さで文房具資材等を一括提供できることが差別化につながっている。

 

(C)事業の市場における強み

当社にちゃんと強みがあることを伝えます。ここでは次の課題につなげるために、強みがあるんだけど、それを最大限発揮できない弱みがあることも併せて書いています。

【記載例】

【強み】幅広い製品ラインナップと、継続的な製品企画により競合他社と差別化をしている。また、単に資材を納入するだけではなく、顧客店舗の売場づくりの提案なども併せて行うことが顧客に評価を受けている。

【弱みと脅威】商品力はあるものの、市場の動向が変わりつつあり、当社も変化を求められている。特に卸売市場では、小規模顧客は、直接ネット・ショップでの購入の割合が高まっている。当社はネット・ショップでの販売を行っているが、既存の卸売販売に人的リソースの大半を取られているために、ネット・ショップを強化しきれていない。一方で、小規模店で、直接電話やFAXで受発注をしている所も多いが、業務負荷が高まり、営業に力を入れるべき大規模顧客にリソースをかけられない状態にある。

(D)事業課題

ということで、課題。今までの前フリにしたがって、課題を明確にしていきます。EDIを入れて効率化していくわけです。 今一番手間がかかっている受発注を効率化しているので、 「各業の効率化」にチェックをしています。 そしてEDIを導入することで、顧客ごとの取引履歴も簡単に見ることができるため、「営業情報の集約・共有」にチェックをしています。 また、EDIはホームページで取引先とネットワークを結ぶものなので、「ホームページ情報の強化」にもチェックを入れました。

そして、最後に、こういったEDIの仕組みを導入することで受発注が簡単になり、新しい顧客獲得にもつなげていきたいので、「新規顧客獲得」にチェックしました。

【記載例】

営業担当などの人的リソースが不足しているのが問題であるが、その原因は、業務の効率化ができておらず、重点領域に人をかけられていないことが挙げられる。

小規模顧客のFAXや電話注文を、ネット注文化し、社内の顧客システムや会計システムに連動することで、大きな効率化効果が見込まれるため、受発注システムの導入・連携が大きな課題となる。そうすることで、大口顧客への営業力強化が更に図れ、新規顧客の獲得につながっていく。

また、システム連携を果たすことで、営業情報の集約・共有による社内業務の効率化を実現していきたい。 また、ネットでの広報にも力を入れ、小規模顧客はネットによる顧客獲得などホームページ機能の強化も実現していきたい。

(E)将来計画

今回のシステムはあくまで受発注を効率化するものですが、これを実現することで、将来はこんなことができて、もっと事業が拡大し、増収・増益につながるんだ!という方向性にしました。

【記載例】

受発注を中心としたシステム導入・連携により業務効率化を実現する。そして、本来、人手をかけるべき、大規模顧客への営業や、新商品の企画など、より付加価値の高い業務に注力することで、事業拡大そして増収増益になるように目指していきたい。
また、BtoB向けのネットでの受発注の強化、BtoC向けのネット・ショップの強化を実施し、ネットの売上比率を高めていく。特に小規模顧客との対応はネットを中心にすることで、顧客にとっても、当社にとっても利便性を高めていく。
その上で効率化によって得られた時間と稼働により大規模顧客に対する企画・提案の質を高めていく。

(F)IT導入により実現したい効果

この項目はIT導入補助金特有の内容ですね。 フロント業務  ミドル業務  バックオフィス業務 のどの部分にシステムを入れるかを記載します。

なお、IT導入補助金は2つの業務にまたがるシステムでないと 対象になりません。なので、ここで1箇所しかチェックを付けていないと、自動的に 対象外ということになるでしょう。

注意しないといけないのは、本当に2つにまたがっていることです。 たとえばホームページを導入するだけであれば、 フロント業務のみで、 「ホームページ機能の強化」 にしかチェックがつきません。 つまり、 ホームページの導入だけではIT導入補助金は使えません! 使えません❗ 大事なので2回言いました。

あくまで生産性に向上できるような広範囲の仕組みを入れる必要があります。 そのためホームページだけではなく、ホームページと連動して顧客管理を行うなどであれば、フロントとミドルの両方にまたがったシステムにはなるわけです。

なお、ご相談を受けた事例では、単にホームページ作成で、問い合わせフォームがある程度なのに、顧客管理をうんぬん・・・と言った内容も見受けられました。フロント業務はOKですが、ミドル業務が対象になっているとは思えませんでした。 これでは対象になりません。 事業者さんに言ってもよくわからないようでしたので、その時は、導入予定のホームページ業者さんにも確認をしたのですが、このフロントとかミドルとか バックオフィスの概念が全くわかっていませんでした。

こういった質の低いIT事業者に頼んでいると、ホームページは作ることになって、50万はかかったけど、補助金はとれなかった・・・というひどい結果になることもあるので、注意してほしいと思います。 もちろん、作業着手は、補助金が採択された後ですので、間違っても先行着手等してはいけません。

さて、本題に戻って、今回の例では ホームページで受発注して(EDI)、その取引履歴を顧客管理として見られるので、

フロント業務では、 「ホームページの強化」をチェックして

ミドル業務では、「業務効率の向上」と「顧客情報の管理」にチェックを入れました。

【記載例】

【フロント業務・ホームページの強化】ホームページに顧客から注文ができるようにEDIを導入する。

【ミドル業務・受発注の簡素化による効率の向上と、顧客情報管理の徹底】今まで電話、Fax,メール等復数の手段が混在していたBtoBの受注をEDIによって簡素化することで、紙からの受注の転記や、会計システムへの二重入力を抑制し効率化を図ることができる。さらに顧客の受注履歴や売上の状況を把握するのに手間がかかっていたのが一元化できるため、顧客情報の分析もさらに高度に行っていくことが可能になる。

計数計画

売上と従業員数と生産性を記載していきます。固い実現できる数字を書くのが鉄則ですが、今回のシステム導入で、労働生産性が向上する必要があります。 最低限その目標を達成できる売上と要員計画を5年で立てておく必要があります。

本事業を実施する事業者の労働生産性が、本事業の実施によって 3 年後の伸び率 1%以上、 4年後の伸び率 1.5%以上、5年後の伸び率 2%以上又はこれらと同等以上の生産性向上を 目標とした計画を設定してください。

売上の計画が 5年後に2%伸びていて、従業員の数が変わらなければ、労働生産性は2%向上することになります。実際の所、多くの企業は、目標としては、5年後に2%しか伸びてない!ような計画にはならない気がします。 まだまだこれから成長するために、システムを整えていこう!といった事業所さんが多かったです。(相談を受けた中では) ただ、そういう企業は要員を増やしていく計画もあることが多いので、売上と要員のバランスを見ながら数値を決めていきます。

【記載例】

このあと、 独自の参考指標を 設定する欄があります。上記で、労働生産性の計画を書いているんだから、それでいいやん!とは思いますが、今回のシステムで一番変わって来そうな指標を設定してください。

記載例では以下のような項目が挙がっています。 たとえば今回の仮想企業の例では、小口顧客はEDIで営業や受発注を効率化するので、中心となる大手顧客への営業訪問回数を 独自指標として挙げました。

例)従業員あたりの顧客数、従業員あたりの外国人客数、営業員あたりの取引業者数、営業員 あたりの取引品目数、従業員あたりの診療報酬点数等、従業員あたりの製造量又は生産量、時 間あたりの顧客数(配送数・接客数等)等。

 

おもてなし規格認証

続いて、おもてなし規格認証の取得の項目があります。これを取らないといけない、というわけではないと思いますが、とったほうが加点があるので、とったほうがいいでしょう。 ただ 規格には ランクがあって、上位ランクは取るのに有料です。 しかし下位のランクは無料で、すぐ取れるので、申請する際にはとってみましょう。

おもてなし規格認証の取り方についてもまとめています。

 

専門家への事業計画の相談

そして、このシートの最後 専門家と相談して事業計画を書いたかどうかです。これも、まあ、必須というわけではないと思いますが、きっと加点されるのでしょうね。 専門家に相談しておくのもよいかと思います。 窓口の無料相談で サインしても守られることもあるかと思います。

2017年の書式の詳細について:別紙3 導入するITツールについて

最後に別紙3にまとめ的な内容を記載します。 今回導入するITツールのコア機能と、導入による効果のまとめです。

有効なコア機能 【記載例】

顧客との受発注機能と売上や販売商品を含めた顧客管理機能

 

IT導入による効果予測 【記載例】

受発注機能の導入により、顧客の利便性が向上する他、当社での電話やFAXでの受注負荷が下がり、業務効率化が実現できる。その結果として、営業余力ができ、新規開拓や重点顧客のフォローに回すことができる。 また、顧客管理機能により、顧客ごとの収益性や購買履歴を迅速に確認できる他、経理業務への二重入力もなくすことができ、生産性の向上につながる。

 

IT導入補助金や、その他ITに関するご相談について

いずれにせよ、IT導入補助金を申請するときには、導入するソフトウェア・パッケージを決めて申請する必要があり、ある程度早く準備を進めていく必要があるでしょう。自社の課題を整理して、どの業務をシステム化するのか、そして最適なパッケージ・サービスは何かを調べて行く必要があります。

村上は、公的機関の無料相談窓口で多くのIT相談にのっていますので、補助金も含めてご相談がありましたら、窓口をご利用ください。相談窓口にいる予定はこちらから確認できます。予約は、各公的機関に直接ご連絡ください。電話番号も、相談窓口の予定ページに記載しています。

そんなところで