事例Ⅳでは、13年間で何が問われてきたのか
このページのねらい
事例Ⅳは、2次試験のなかでもっとも出題範囲が読みやすい事例です。事例Ⅰ〜Ⅲは与件文しだいで論点が変わりますが、事例Ⅳは計算問題が中心のため、問われる論点がほぼ決まっています。
そこでこのページでは、平成25年度〜令和7年度の13年分・51大問を、論点別に横断して整理しました。「どの論点が何年出ているか」「どの年度で何が問われたか」「経営分析ではどの指標が選ばれてきたか」が一覧でわかります。
学習の優先順位を決めるとき、また直前期に手薄な論点を確認するときに使ってください。
1. 数字で見る事例Ⅳ
(H25〜R7)
経営分析が出題
NPVが出題
大問数が13年で51問(平成25年度のみ3問、以降は4問構成)。1問あたりの配点は15〜45点と幅がありますが、第1問は毎年ほぼ経営分析で20〜30点、設備投資の意思決定(NPV)が25〜35点という構成が定着しています。
2. 年度×論点マトリクス数字は、その論点が出題された大問の番号
| 年度 | 経営分析 | CVP・利益計画 | NPV・投資判断 | CF計算 | 差額原価・意思決定 | プロダクトミックス | 資金調達・資本構成 | その他の計算 | 記述問題 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 平成25(2013) | 1 | 2 | 1・2 | 3 | |||||
| 平成26(2014) | 1 | 3 | 2 | 2 | 3 | 4 | 4 | ||
| 平成27(2015) | 1 | 2 | 3 | 3 | 4 | ||||
| 平成28(2016) | 1 | 4 | 2 | 2 | 3 | 3 | |||
| 平成29(2017) | 1・4 | 2 | 3 | 3 | 3 | 4 | |||
| 平成30(2018) | 1 | 3 | 2 | 2 | 3 | 4 | |||
| 令和1(2019) | 1 | 2 | 3 | 3 | 2・4 | ||||
| 令和2(2020) | 1 | 2 | 2・4 | 3 | 3・4 | ||||
| 令和3(2021) | 1 | 3 | 2 | 2 | 2・4 | 4 | |||
| 令和4(2022) | 1 | 3 | 3 | 2 | 1 | 4 | |||
| 令和5(2023) | 1 | 2 | 3 | 3 | 2 | 3 | 4 | ||
| 令和6(2024) | 1 | 2 | 3 | 3 | 4 | 4 | |||
| 令和7(2025) | 1 | 2 | 3 | 3 | 4 | 4 |
年度名をクリックすると、その年の事例Ⅳの問題・解答例ページへ移動します。1つの大問が複数の論点にまたがる場合は、該当する列すべてに番号を入れています。
3. 論点別の出題頻度13年のうち、その論点が出題された年数
上位5つ(経営分析・記述問題・CF計算・CVP・NPV)だけで、事例Ⅳのほぼ全体をカバーしています。逆に、プロダクトミックスや企業価値評価は3〜4年に一度の出題で、学習の優先順位は明確に差がつくことがわかります。
4. 主要論点の中身と対策
13年 / 13年経営分析(第1問)
- 問われ方
- 同業他社との比較(9回)か、自社の2期比較(4回)。「優れている指標」と「課題・劣っている指標」を合計3つ選び、名称と数値を答えたうえで、その理由を50〜80字程度で記述させるのが定型です。
- 典型パターン
-
- 収益性・効率性・安全性から1つずつ選ぶと、視点が偏らず理由も書きやすい
- 数値は「小数点第3位を四捨五入」=小数第2位まで、単位をカッコ内に明記の指示が定番
- 記述は、選んだ指標を与件文の経営戦略・事業構造に結びつけると得点しやすい
- つまずきポイント
- 指標を3つとも収益性で揃えてしまう、単位を書き忘れる、記述が一般論(「効率が悪い」だけ)で与件に触れていない、の3つが典型です。ここは満点を狙う問題なので、80分の最初に着手します。
11年 / 13年意思決定会計(NPV・投資判断)
- 問われ方
- 設備の導入・更新・取替、新規事業への投資、店舗の改装時期など。税引後キャッシュフローを計算し、現価係数を使って正味現在価値を求め、採否を判断するという流れが共通しています。
- 典型パターン
-
- 減価償却費の足し戻し(非現金支出費用)
- 設備売却時の売却益・売却損に対する税効果
- 運転資本の増加と、期間終了時の取り崩し
- 旧設備を使い続けた場合との差額で考える取替投資
- 機会原価(賃貸をやめる、遊休設備を使う)の扱い
- つまずきポイント
- 時間を最も食う論点です。全体を解こうとして時間切れになるより、(b)欄の計算過程を埋めて部分点を取るほうが確実。80分の中では後半に回すのが定石です。
11年 / 13年CVP分析・利益計画
- 問われ方
- 変動費率・固定費を求めて損益分岐点売上高を計算する、予測損益計算書を完成させる、目標利益を達成する条件を逆算する、の3タイプ。
- 典型パターン
-
- 2期分の財務データから変動費率と固定費を分解する(令和5年度)
- 売上高の水準によって変動費率が段階的に変わる(令和2年度)
- 事業部別・セグメント別に変動費率を出し、全社の損益分岐点を求める(令和1年度)
- つまずきポイント
- 計算自体は1次試験の財務・会計と同じで、相対的に易しく配点も大きい論点です。ここを落とすと合格が遠のくため、最優先で固めます。端数処理の指示(何位を四捨五入か)を読み飛ばさないこと。
13年 / 13年記述問題(リスク・留意点・メリデメ)
- 問われ方
- 新規事業のリスクとその管理(令和4年度)、業務委託・子会社化のメリットとデメリット(令和1・2年度)、特定取引先への依存リスク(平成27年度)、振替価格と業績評価の問題点(令和6年度)など。
- 典型パターン
-
- 「財務的観点から」と指定されたら、収益性・安全性・キャッシュフローの語彙で答える
- メリット・デメリットは各1〜2要素+効果で簡潔に
- 与件文の事業内容に引きつけ、一般論で終わらせない
- つまずきポイント
- 計算に時間を取られ、ここを白紙で出すのが最悪のパターンです。計算問題より先に記述を埋めるだけで、得点が安定します。
5年 / 13年差額原価・業務的意思決定
- 問われ方
- 不振店の閉店(平成28年度)、営業拠点の廃止(平成30年度)、3つの選択肢からの業態判断(令和2年度)、不採算事業の廃止(令和3年度)など、やめるか続けるかの判断が中心です。
- 典型パターン
-
- 案ごとの差額キャッシュフローで比較する(埋没原価は無視する)
- 撤退しても残る固定費(共通費)を差し引かない
- 資産の売却収入と、それに伴う税金を忘れない
- つまずきポイント
- NPVと組み合わせて出題されることが多く(平成29・令和3年度)、独立の論点というより意思決定会計の応用形として押さえるのが効率的です。
5. 経営分析で選ばれた財務指標当サイトの解答例で採用した指標
| 年度 | 優れている・改善した指標 | 課題・劣っている指標 |
|---|---|---|
| 平成25 | —(出資前後の比較) | 流動比率 285.00→250.00%/自己資本比率 54.97→53.30%/固定比率 73.33→92.38% |
| 平成26 | 売上高総利益率 72.00% | 有形固定資産回転率 1.11回/自己資本比率 16.67% |
| 平成27 | 売上高営業利益率 2.79% | 自己資本比率 22.12%/売上債権回転率 4.89回 |
| 平成28 | 売上高経常利益率 10.11% | 有形固定資産回転率 1.77回/流動比率 55.70% |
| 平成29 | 有形固定資産回転率 1.93回 | 売上高総利益率 12.70%/自己資本比率 19.88% |
| 平成30 | 売上高総利益率 24.15% | 売上高営業利益率 1.20%/有形固定資産回転率 17.08回 |
| 令和1 | 有形固定資産回転率 1.64回 | 売上高営業利益率 0.98%/棚卸資産回転率 3.13回 |
| 令和2 | 売上高総利益率 26.39% | 売上高営業利益率 2.15%/自己資本比率 15.82% |
| 令和3 | 売上高総利益率 27.78%/総資本回転率 2.42回 | 売上高営業利益率 0.32%/自己資本比率 19.85% |
| 令和4 | 売上高総利益率 59.59%/売上高経常利益率 15.96% | 労働生産性 978.66万円 |
| 令和5 | 自己資本比率 77.56% | 売上高営業利益率 11.59%/有形固定資産回転率 71.90回 |
| 令和6 | 有形固定資産回転率 11.26回 | 売上高営業利益率 1.01%/自己資本比率 14.15% |
| 令和7 | 自己資本比率 82.13% | 売上高営業利益率 1.51%/有形固定資産回転率 1.85回 |
13年分で登場した指標を数えると、次のようになります。
実際に使う指標は、収益性は売上高総利益率・営業利益率、効率性は有形固定資産回転率、安全性は自己資本比率の4つでほぼ足ります。まずこの4つを、計算式と「どんな与件のときに選ぶか」までセットで覚えるのが近道です(→ 経営分析 指標チートシートに全指標の早見表をまとめています)。労働生産性(令和4年度)のように、与件文に従業員数や付加価値の記述があるときだけ登場する指標もあります。
6. 年度別の出題一覧
| 平成25年度 |
|
|---|---|
| 平成26年度 |
|
| 平成27年度 |
|
| 平成28年度 |
|
| 平成29年度 |
|
| 平成30年度 |
|
| 令和1年度 |
|
| 令和2年度 |
|
| 令和3年度 |
|
| 令和4年度 |
|
| 令和5年度 |
|
| 令和6年度 |
|
| 令和7年度 |
|
7. まとめ:学習の優先順位
13年分を見て言えること
- 第1問の経営分析は13年連続で出題。ここを落とさないことが最優先。指標4つ+記述の型を固める。
- 次に固めるのはCVP。計算が比較的易しく、配点20〜35点。1次試験の知識がそのまま使える。
- NPVは配点が最大だが、時間を最も食う。完答を狙わず、計算過程を書いて部分点を確保する練習を。
- 記述問題は毎年ある。計算不要で加点できるため、計算問題より先に埋める。
- プロダクトミックス・企業価値評価・為替は3〜4年に一度。上の4つを固めてから手を広げる。
80分のなかでの順番は、第1問(経営分析)→ 記述問題 → CVP → NPVが基本形になります。時間配分の考え方は「2次試験 80分の歩き方」で詳しく整理しています。