分析レポート

2次試験は、設問文で何を問い、どの知識を試しているのか

対象:平成25年度〜令和7年度/13年分・51事例・大問209問(小問に分けると294の解答単位)

このページのねらい

2次試験の勉強は、どうしても「与件文をどう読むか」に時間を取られます。しかし実際の試験で解答の方向性を決めているのは、与件文ではなく設問文です。設問文が「何を・どの切り口で・誰の立場で・何字で」答えろと指定しており、与件文はその答えの材料置き場にすぎません。

そこでこのページでは、13年分の過去問から与件文をいっさい見ず、設問文だけを209問すべて抜き出して、次の3点を整理しました。

① どういった問いをしているのか(設問の型)
② どういった知識を聞いているのか(1次知識との対応)
③ その他の論点(制約条件・切り口指定・字数と要素数の関係など)

※本ページの集計値は、当サイトに収録した設問文テキストを機械的に数えたものです。分類は筆者(村上)によるもので、公式なものではありません。

目次

  1. 数字で見る2次試験の設問
  2. 設問の「8つの型」
  3. 事例別の論点マップ(年度別一覧つき)
  4. 設問文に埋め込まれた「指示」の読み方
  5. 字数と解答要素数の関係
  6. 13年間の出題トレンド
  7. まとめ:設問文だけで勉強する方法

1. 数字で見る2次試験の設問

51事例(13年 × 4事例)
※H25の事例Ⅳは未収録
209大問(第1問〜第5問)
294解答単位
(設問1・2に分解後)
100字最頻出の字数制限
(延べ92回)

1-1. 事例ごとの設問数

大問数は事例Ⅰ〜Ⅳでほぼ横並びですが、小問に分解すると事例Ⅳだけが突出します。事例Ⅳは1つの大問が(設問1)(設問2)(設問3)に分かれ、さらに(a)欄・(b)欄と解答欄が分かれるためです。「事例Ⅳは実質的に問題数が倍ある」という体感は、この数字に表れています。

事例大問数解答単位数1大問あたり設問形式の内訳(解答単位ベース)
事例Ⅰ組織・人事56651.16分析・説明 46/助言・提案 19(29%)
事例Ⅱマーケ・流通50601.20分析・説明 34/助言・提案 26(43%
事例Ⅲ生産・技術55621.13分析・説明 48/助言・提案 14(23%)
事例Ⅳ財務・会計481072.23分析・説明 105/助言・提案 2(2%)
合計2092941.41分析・説明 233/助言・提案 61

※「助言・提案」は設問文の文末が「助言せよ」「提案せよ」であるもの。「述べよ」「説明せよ」でも内容は助言というケースは多いため、これは形式上の分類です。

ここから読み取れること

1-2. 字数制限の分布(延べ230箇所)

20字以内2
30字以内11
40字以内14
50字以内12
60字以内19
70字以内2
80字以内27
100字以内92
120字以内28
140字以内7
150字以内11
160字以内5

100字が全体の4割を占め、次いで120字・80字。つまり2次試験の記述練習は、まず「100字で2〜3要素を書き切る型」を体に入れるのが最短ルートになります。一方で30〜40字の短文(SWOT・強み弱みの分解解答)も25回あり、こちらは単語を詰め込む圧縮力が問われます。

1-3. 設問文に出てくる用語の出現数

設問文(小問単位・294件)に、その語が1回以上出てくる設問の数です。事例ごとの色分けがそのまま「その事例の性格」を表しています。

設問文に含まれる語
生産計画・工程・納期・生産0130738
理由・要因・なぜ2455640
対応策・改善策・改善・対策1026431
中小企業診断士として1647229
IT・デジタル・オンライン・EC・SNS2175327
課題4081022
新規事業・事業展開・参入1029122
人材・人事・育成・採用・従業員1413321
効果・影響156921
戦略4114120
ターゲット・顧客層・セグメント1150218
強み・弱み329014
施策680014
フレーム名(SWOT・3C・PPM・アンゾフ等)1120013
組織1100011
問題点016411
メリット・デメリット112610
留意60219
リスク10247
注目ポイント 「フレームワーク名を設問文に書いてくる」のは、事例Ⅱがほぼ独占(12/13)です。SWOT・3C・PPM・アンゾフ・デシル分析といった名前が設問文に直接登場するので、事例Ⅱだけは1次知識のフレーム名を「使え」と名指しされるという特殊性があります。裏を返すと、事例Ⅰ・Ⅲでは名前を出さずに同じ思考を要求してくるということです。

2. 設問の「8つの型」― どういった問いをしているのか

209問(小問単位294問)の設問文を、問いの立て方で8つに分類しました。1つの設問が複数の性格を持つ場合は、主たる問い方で分類しています。

時制
① 現状分析型4129025現在
② 理由・要因型2455438過去
③ 課題・対応策型40221036現在→未来
④ 助言・提案型243315577未来
⑤ 効果・影響型2551325仮定
⑥ 留意点型60017未来
⑦ 説明・整理型(その他)1562133
⑧ 計算・算定型0005353
合計656062107294

型①現状分析型 ― 与件の情報を「枠」に仕分ける

25問/主戦場:事例Ⅱ事例Ⅲ 多くは第1問に配置
どういった問いか
助言も改善も求めず、与件文に書いてある事実を、指定された枠に仕分けるだけの設問です。ほぼ必ず第1問に置かれ、以降の設問の前提(=ここで挙げた強みを後で活用する)になります。
設問文の実例
令和2年度 事例Ⅱ 第1問(各40字以内)現在のB社の状況について、SWOT分析をせよ。各要素について、①〜④の解答欄にそれぞれ40字以内で説明すること。
令和5年度 事例Ⅱ 第1問(150字以内)B社の現状について、3C(Customer:顧客、Competitor:競合、Company:自社)分析の観点から150字以内で述べよ。
令和7年度 事例Ⅲ 第1問(各60字以内)C社の(a)強みと(b)弱みについて、それぞれ60字以内で述べよ。
聞かれている知識
SWOT分析/3C分析/PPM(H26事例Ⅱ)/アンゾフの製品・市場マトリックス(R2事例Ⅱ)/デシル分析(H26事例Ⅱ)といった1次「企業経営理論」「運営管理」の基本フレーム。知識そのものは平易で、勝負は「枠に入れる情報の選び方」です。
解答の骨格
S=〇〇技術・〇〇ネットワーク/W=〇〇不足・〇〇依存/O=〇〇需要の高まり/T=競合激化・〇〇の減少
内部要因(S・W)は経営資源の言葉(技術・人材・設備・顧客基盤・ブランド)で、外部要因(O・T)は市場の言葉(需要・競合・法制度・人口動態)で書き分けます。
落とし穴
  • 「機会」に自社の取り組みを書いてしまう(それはSかWの話)。
  • 字数が30〜40字と短い年度が多く、1要素につき1文節まで圧縮する必要がある。令和3年度事例Ⅱは30字、令和7年度事例Ⅰは30字。
  • 「現在の」「〇〇時点の」という時点指定を見落とすと全滅する(例:令和6年度事例Ⅰ「A社の2000年当時における強みと弱み」/令和元年度事例Ⅱ「2019年10月末時点」)。

型②理由・要因型 ― 過去の出来事の因果を説明する

38問/主戦場:事例Ⅰ(24問=事例Ⅰの約4割)
どういった問いか
「なぜ成功したのか」「なぜ失敗したのか」「なぜその意思決定をしたのか」を問います。事例Ⅰの看板設問で、13年間ずっと出続けています。助言ではないので、与件文に根拠がない「べき論」を書くと外れます。
設問文の実例
令和3年度 事例Ⅰ 第1問(100字以内)2代目経営者は、なぜ印刷工場を持たないファブレス化を行ったと考えられるか、100字以内で述べよ。
令和元年度 事例Ⅰ 第1問(100字以内)A社長がトップに就任する以前のA社は、苦境を打破するために、自社製品のメンテナンスの事業化に取り組んできた。それが結果的にビジネスとして成功しなかった最大の理由は何か。
令和6年度 事例Ⅰ 第2問(100字以内)なぜ、A社は、首都圏の市場を開拓するためにプロジェクトチームを組織したのか。また、長女(後の2代目)をプロジェクトリーダーに任命した狙いは何か。
聞かれている知識
「与件に書いてある事実」+「1次知識の因果セオリー」の掛け算です。頻出のセオリーは、
  • 競争戦略:差別化集中/規模の経済が働かない市場/参入障壁
  • 組織構造:機能別組織と事業部制の使い分け/プロジェクトチームの目的(部門横断・情報共有・スピード)
  • 組織文化・モチベーション:内発的動機づけ/権限委譲/一体感の醸成
  • 経営資源:外部資源の活用(ファブレス・アウトソーシング)/コア技術への集中
  • 事業承継:後継者育成/既存社員の納得感/新旧事業の両立
解答の骨格
理由は、①(与件の事実)ため、②(与件の事実)ため。これにより〇〇を実現した(=効果で締める)。
「理由」を聞かれても、末尾は必ず効果・目的で締めるのが得点しやすい形です。「なぜ」と「狙いは何か」が併記されている設問(令和6年度事例Ⅰ第2問)では、問いの数だけ文を分けることが必須です。
落とし穴
「最大の理由は何か」(令和元年度)のように単数指定されている場合、複数並べると論点がぼやけます。また「〇〇以外に、どのような理由が考えられるか」(平成26年度事例Ⅰ第2問)のように、模範解答になりそうな一番の理由をあらかじめ封じてくるのもこの型の特徴です。

型③課題・対応策型 ― 問題点を挙げ、セットで打ち手を書く

36問/主戦場:事例Ⅲ(22問) 事例Ⅲの中核
どういった問いか
「問題点とその改善策」「課題とその対応策」を必ずセットで書かせます。設問文が「〇〇の課題と対応策を述べよ」という定型になっており、13年間ほぼ形が変わりません。事例Ⅲの設問文に「対応策・改善策」という語が入るのは26問(事例Ⅲの42%)にのぼります。
設問文の実例
平成30年度 事例Ⅲ 第2問(120字以内)C社の成形加工課の成形加工にかかわる作業内容(図2)を分析し、作業方法に関する問題点とその改善策を120字以内で述べよ。
令和2年度 事例Ⅲ 第2問(各60字以内)C社の営業部門で生じている(a)問題点と(b)その対応策について、それぞれ60字以内で述べよ。
令和7年度 事例Ⅲ 第2問(各60字以内)C社経営者は、収益性強化のため製造に関してのコストダウンに取り組む方針である。そのために特に重要と思われる課題を2つあげ、各課題に対しての改善策とともにそれぞれ60字以内で述べよ。
聞かれている知識
1次「運営管理」の生産管理知識がほぼそのまま出ます。定番の引き出しは次のとおりです。
  • 生産計画:計画サイクルの短期化/全社一元化/確定情報の反映/需要予測精度
  • 生産統制:進捗・現品・余力管理/実績データの収集
  • 作業方法:標準化・マニュアル化/作業手順の見直し/段取り時間短縮(内段取りの外段取り化)/レイアウト改善/多能工化・OJT
  • 在庫・資材:発注点方式/ロットサイズの適正化/在庫の一元管理/保管方法
  • 品質:検査工程/原因の特定(4M)/再発防止の仕組み化
  • IT化:DB共有/リアルタイム化/ペーパーレス(※IT化は「まず何をデータ化するか」を書く)
解答の骨格
課題は①〇〇、②〇〇。対応策は①〇〇し〇〇する、②〇〇を〇〇に改める。これにより納期短縮・生産性向上を図る。
課題と対応策は必ず番号で対応させるのが鉄則です。①の課題に対して①の対応策、と読み手が追える形にします。
落とし穴
「課題」と「問題点」は本来別語(問題点=現状の悪い状態、課題=あるべき姿とのギャップを埋める行動)です。設問文が使っている語をそのまま使って答えるのが安全です。また「2つあげ」と数量指定があるときに1つしか書かないのは致命傷になります。

型④助言・提案型 ― 未来の打ち手を設計する

77問(最多)/主戦場:事例Ⅱ(33問)事例Ⅰ(24問)
どういった問いか
8つの型のうち最多。「どのような施策を行うべきか」「どう助言するか」を問います。与件文に答えが書いていない唯一の型で、与件の情報(=制約と資源)を材料に、自分で打ち手を組み立てる必要があります。多くは各事例の最終問題(第4問・第5問)に配置され、配点も高めです。
設問文の実例
令和3年度 事例Ⅱ 第2問(100字以内)B社社長は社会全体のオンライン化の流れを踏まえ、ネット販売を通じ、地元産大豆の魅力を全国に伝えたいと考えている。そのためには、どの商品を、どのように販売すべきか。ターゲットを明確にした上で、中小企業診断士の立場から100字以内で助言せよ。
令和7年度 事例Ⅰ 第4問(150字以内)A社は、木製知育玩具の新規事業を拡大させるに当たり、自社の創業以来の企業理念をどのようなものへと再定義したり、それを関係者に浸透させたりすればよいのか。150字以内で助言せよ。
令和6年度 事例Ⅲ 第5問(120字以内)C社社長は、小規模の工場施設や物流施設の新設や更新を計画している企業と直接契約し、自社企画の製品を設計、製造することで事業を拡大したいと考えている。この新しい事業展開を成功させるにはどのように推進するべきか、120字以内で助言せよ。
聞かれている知識
事例ごとに引き出しが違います。
  • 組織構造(機能別/事業部制/プロジェクト/両利きの探索組織)、権限委譲、後継者育成、採用・配置・評価・報酬・育成の5点セット、理念浸透
  • 「誰に・何を・どのように・効果」の4点セット、4P、STP、関係性マーケティング(顧客生涯価値・双方向コミュニケーション)、ブランド、協業・地域資源活用
  • 強みを活かした高付加価値化、設計・企画機能の内製化、営業と製造の連携、社内体制(プロジェクトチーム・DB共有)
  • リスクの財務的対処(為替予約・分散・与信管理)、資金調達手段の選択
解答の骨格
(誰に)〇〇層に対し、(何を)〇〇を、(どのように)〇〇によって提供する。(効果)これにより〇〇を高め、〇〇を実現する。
助言型は効果で締めるのが最重要です。施策だけ並べて終わると、採点者に「なぜそれが良いのか」が伝わりません。
落とし穴
「B社の強みを活かして」「経営資源を有効に活用し」といった条件が付くことが多く、与件に書かれていない資源を前提にした施策(急に大型投資、急に人材採用)はほぼ×になります。事例Ⅲ令和3年度第4問のように「手作り高級路線か、標準化で品目数増加か」と二択を突きつけて選ばせる形もあり、その場合は必ずどちらかを明言してから理由を述べます。

型⑤効果・影響型 ― 「もしそうしたら、どうなるか」

25問/主戦場:事例Ⅳ(13問)
どういった問いか
ある施策・取引・体制変更を仮定したうえで、メリット/デメリット/効果/影響を答えさせます。計算問題の直後に置かれる「記述の小問」でよく使われ、事例Ⅳの記述パートの中心です。
設問文の実例
令和元年度 事例Ⅳ 第4問(各30字以内)D社は建材事業部の配送業務を分離し連結子会社としている。その(a)メリットと(b)デメリットを、それぞれ30字以内で説明せよ。
令和5年度 事例Ⅳ 第4問(各50字以内)D社は、基礎化粧品などの企画・開発・販売に特化しており、OEM生産によって委託先に製品の生産を委託している。OEM生産の財務的利点について50字以内で述べよ。
令和元年度 事例Ⅲ 第2問(100字以内)自動車部品メーカーX社からの機械加工の受託生産に応じる場合、C社における生産面での効果とリスクを100字以内で述べよ。
聞かれている知識
1次「財務・会計」の考え方を言葉で説明する力。固定費の変動費化、投資リスクの分散、キャッシュフローの安定、資産効率(回転率)の改善、レバレッジ、為替リスクなど。事例Ⅳの記述は「計算しなくても書ける」ので、時間切れ対策として真っ先に押さえるべき領域です。
解答の骨格
メリットは、〇〇により〇〇(費用・資産・リスク)が〇〇し、〇〇性が向上する点。
30〜50字と短いため、「何が」→「どうなる」→「どの指標が良くなる」の3語だけで組み立てます。
落とし穴
財務的な利点」「財務指標への影響以外で」といった限定が付きます(平成29年度事例Ⅳ第4問設問3)。財務の話をすべき場面で経営一般論を書く、逆に経営の話を求められて指標名を並べる、という取り違えが失点原因の定番です。

型⑥留意点型 ― やる前に気をつけることを挙げる

7問/主戦場:事例Ⅰ(6問)
どういった問いか
数は少ないものの、事例Ⅰに集中して出ます。助言型と似ていますが、問われているのは「打ち手」ではなく「打ち手を実行する際のリスクと配慮事項」。M&A・組織改編・人事制度導入など、反発や副作用が出やすいテーマとセットで出題されます。
設問文の実例
令和5年度 事例Ⅰ 第3問(100字以内)A社経営者は、経営統合に先立って、X社のどのような点に留意するべきか。100字以内で助言せよ。
令和2年度 事例Ⅰ 第4問(100字以内)将来、祖父の立ち上げた企業グループの総帥となるA社長が、グループ全体の人事制度を確立していくためには、どのような点に留意すべきか。中小企業診断士として100字以内で助言せよ。
聞かれている知識
組織文化の統合(PMI)、既存社員の心理的抵抗、公平性・納得感のある評価制度、モチベーション低下の防止、技術・ノウハウの承継。「人は簡単には変わらない」という前提に立てるかが問われています。
解答の骨格
留意点は、①〇〇(相手側の事情)を把握すること、②〇〇(自社側の副作用)を防ぐこと。そのため〇〇を行い、〇〇の低下を回避する。
落とし穴
「留意点」を聞かれているのに施策だけを書くと、問いに答えていないと判断されます。「〜に注意する」「〜が生じないようにする」という否定・防止の語彙を必ず入れます。

型⑦説明・整理型 ― 事実や仕組みを言語化する

33問/主戦場:事例Ⅳ(21問)
どういった問いか
他の型に収まらない記述問題です。事例Ⅳでは「経営分析の結果を文章にする」設問が毎年必ず出るため、この型が21問と多くなっています。事例Ⅱでは「これまでの製品戦略を整理せよ」(平成28年度第1問)のように、与件の歴史をまとめる形で出ます。
設問文の実例
令和7年度 事例Ⅳ 第1問設問2(80字以内)D社が同業他社と比べて劣っている点について、財務指標から読み取れる経営戦略上の違いを指摘しながら、その要因を80字以内で述べよ。
令和5年度 事例Ⅳ 第2問設問3(80字以内)D社では、売上高を基準に共通費を製品別に配賦している。この会計処理の妥当性について、あなたの考えを80字以内で述べよ。
平成28年度 事例Ⅱ 第1問(80字以内)B社のこれまでの製品戦略について、80字以内で整理せよ。
聞かれている知識
財務指標の意味(収益性・効率性・安全性の3分類と、各指標が何を語るか)、原価計算の理論(配賦基準の妥当性・全部原価と直接原価)、事業部制会計(振替価格・ROI・管理可能性の原則)。令和6年度事例Ⅳ第4問の振替価格・業績評価は、1次「財務・会計」の管理会計論点がそのまま問われた例です。
解答の骨格
(指標名)が〇〇(高い/低い)ため、〇〇(原因となる事実)により、〇〇性が劣る(優れる)。
経営分析の説明問題は「指標 → 数値の傾向 → 与件上の原因」の3点セットが基本形です。

型⑧計算・算定型 ― 事例Ⅳ専用

53問/事例Ⅳのみ(事例Ⅳ解答単位の約半分)
どういった問いか
設問文が長大な資料の説明を含み、末尾で「計算せよ」「求めよ」と指示します。設問文そのものが計算条件の定義書になっているため、他の事例とは設問文の読み方がまったく異なります。「税率は30%」「割引率は6%」「小数点第3位を四捨五入」といった条件が本文中に散らばっているのが特徴です。
設問文の実例
令和7年度 事例Ⅳ 第2問設問3(抜粋)…両製品合計の直接作業時間を年間700時間までとしている。…製品Xと製品Yとを合わせた総販売数量のうち製品Xの割合が25%を下回らないこととしている。この条件の下で、利益が最大となる製品Xと製品Yの販売数量とそのときの利益額を求めよ。
令和3年度 事例Ⅳ 第2問設問3(抜粋)取替投資を1年延期し2023年度期首に更新する場合、フルセルフレジが1台当たりいくら(付随費用込み)で購入できれば1年延期しない場合より有利になるか計算し…
聞かれている知識
1次「財務・会計」の応用。頻出は経営分析/CVP分析/意思決定会計(NPV・回収期間・差額原価収益分析・セールスミックス)の3本柱で、13年間ずっと変わりません。
落とし穴
  • 端数処理の指示が毎回違う(「小数点第3位を四捨五入」「小数点以下を切り上げ」「千円未満を四捨五入」)。指示どおりでないと×。
  • 単位の指定(百万円/千円/円/kg/基)を間違えると全滅する。
  • 「計算過程を(b)欄に示せ」がほぼ必ずあり、答えが合わなくても過程で部分点が狙える設計になっている。
  • 設問文中にさりげなく置かれた条件(令和7年度第3問の「倉庫の賃借料2,400千円」=機会原価)を拾えるかで差がつく。

3. 事例別の論点マップ― どういった知識を聞いているのか

事例Ⅰ組織・人事:「戦略に組織を従わせる」試験

事例Ⅰの設問は、前半が過去の意思決定の理由、後半がこれからの組織・人事施策という構成でほぼ固定されています。設問文に「組織」が11問、「人材・人事・育成・採用」が14問登場する一方、事例Ⅱ・Ⅲにはほとんど出ません。また「中小企業診断士として」という言い回しが16問と最も多く、助言者の立場を明示させるのも事例Ⅰの癖です。

年度設問文から読み取れる主要論点
H25 2013通販事業の継続施策/非正規社員(中高年主婦)の採用理由と定着策/新卒採用に転じた理由/顧客DBが商品開発に結びつかない理由
H26 2014研究開発型企業が増えた環境変化/製品が主力に育たなかった理由/新事業の柱による組織管理上の課題/良品率改善の要因/博士人材の定着施策
H27 2015市場の特性/関連会社への事業移管の理由(分社化)/事業構成の偏りが生む課題/成果主義を導入しない理由/サービス事業拡大時の組織文化変革・人材育成
H28 2016多角化の成功要因/新規事業が成果を上げない要因/新規事業拡大の留意点/機能別組織から人材流動性を確保する組織への改変理由/人材確保の人事施策
H29 2017商品復活の要因/少人数正社員体制の特徴/工業団地移転の戦略的メリット/全国展開のリスク/「第三の創業期」の組織的課題
H30 2018ニッチ市場を選ぶ理由(競争戦略の視点から)/消費者向けをやらない理由(人員構成から)/事業特性の違い/組織改編の目的/非金銭的インセンティブ
R01 2019メンテ事業化が失敗した理由/高コスト体質を生んだ企業風土/HP活用の成功要因/営業社員が積極化した要因/組織再編を見送った理由
R02 2020買収時の経営ビジョン/経営顧問契約・ベテラン引受の理由(M&A・PMI)/情報システム化の手順/営業担当者に求めた能力/グループ人事制度の留意点
R03 2021ファブレス化の理由/後継者にデザイン部門を任せた理由/事業ドメイン拡大の利点と欠点/外部企業との関係の発展/長期的課題と解決策
R04 2022法人化前の強み・弱み/新規就農者の獲得と定着/大手中食業者との取引関係/構築すべき組織構造/権限委譲と人員配置
R05 2023強み・弱み/現経営者の差別化と狙い/統合前の留意点/組織統合(PMI)の進め方/競争戦略・成長戦略の観点からの事業展開
R06 20242000年当時の強み・弱み/プロジェクトチーム組成と後継者をリーダーにした狙い/取引先が案件を持ちかけた理由/配置転換の狙い/取引関係強化の施策
R07 2025SWOT(30字)/新規事業での顧客接点づくり/採用すべき組織体制とその理由/企業理念の再定義と浸透

事例Ⅰで問われる1次知識の引き出し

事例Ⅱマーケティング・流通:「誰に・何を・どのように」の試験

設問文に「ターゲット・顧客層・セグメント」が15問、フレーム名が12問。設問文の中でターゲットの明示を要求してくるのが最大の特徴で、「ターゲット層を明確にしたうえで」(H28第2問)、「ターゲットを明確にした上で」(R3第2問)、「今後のメインターゲット層を明確にして」(H30第2問)と繰り返し指示されます。またIT・オンライン関連語が17問と全事例で最多で、デジタル施策の助言が事実上の必須知識になっています。

年度設問文から読み取れる主要論点
H25 2013小規模企業の存続理由/パッケージによる地域ブランド訴求/POSデータの評価(競争構造の変化・数値根拠)/通販比率上昇時の利益確保/オフラインでオンライン売上を伸ばす施策
H26 2014PPMによる商品分類/SNSコミュニケーション戦略/デシル分析による売上構造と重要顧客の特定/客単価向上の新商品開発
H27 2015商店街のターゲット設定→誘致業種→テナントミックスという3段の連鎖/業種を選択させる助言/食品小売店の誘致とイベント企画
H28 2016これまでの製品戦略の整理/ターゲット別の製品戦略とプロモーション・販売戦略/直営飲食店のメリット/ネット販売のブランド戦略とリピート施策
H29 2017自社の強みと競合の状況/データベースを活用した予約会の施策/顧客生涯価値を高める地域連携/新規セグメントの選定
H30 20183C分析/掲載すべき自社情報とメインターゲット/従業員と宿泊客の交流によるクチコミ誘発/街の夜の活気の取り込み
R01 2019SWOT/メッセンジャーによる個別情報発信で客単価向上/協業相手と獲得すべき顧客層/リピート化の店内提案
R02 2020SWOT/取引先構成の方向性/アンゾフの製品・市場マトリックス/顧客の関与を高めるオンライン施策/ファン化のツアープログラム
R03 2021SWOT(30字)/ネット販売で「どの商品を・どのように」/フランチャイザーとフランチャイジーに分けた助言/新製品開発とコミュニケーション戦略
R04 20223C分析/自治体との協業による商品開発(コンセプトと販路)/小売店の顧客ターゲットと品揃え/オンライン販売事業者との協業(統計データを読ませる)
R05 20233C分析/プライシングの新しい流れ(サブスク等)を考慮した販売方法/女子チーム支援のプロモーション/オンラインでの関係性強化
R06 2024SWOT/ふるさと納税返礼品の企画(ブランド価値構造の感覚価値・観念価値)/食器愛好家のニーズを充たす新規事業/店舗とECの併用促進
R07 20253C分析/価格戦略による需要の平準化/蓄積すべき顧客情報とその活用/動画コンテンツの内容

事例Ⅱで問われる1次知識の引き出し

事例Ⅲ生産・技術:「第1問で強み、最後に戦略」の定型

13年間でもっとも設問構成が安定している事例です。第1問で強み(弱み)を問い、中盤で生産管理・生産現場の課題と対応策を問い、最終問題で戦略・新事業を問うという3層構造が繰り返されています。設問文に「生産・工程・納期」が30問、「対応策・改善策」が26問。逆に「ターゲット」「組織」はゼロで、問われる領域が最も限定された事例と言えます。

年度設問文から読み取れる主要論点
H25 2013首都圏参入で活かす競争優位性/工場の役割変更/技術部内で共有すべき情報と業務効率化/共同開発失敗の要因と新規事業の留意点
H26 2014強み・弱み/加工不良率の改善策/取引集約に伴うメリットと生産計画・資材調達計画の改革/経営資源に注目した販路開拓提案
H27 2015新分野参入時の強み2つ・メリット・短納期化の改善策/設備投資の偏りが生む問題点/IT化による納期管理と活用情報/国内生産維持のための強化点
H28 2016強み・弱み(各40字)/収益改善の生産管理面の対応策/クレーム改善活動(着目点と対応策)/新事業の提案・理由・社内対応策
H29 2017新製品の生産管理上の課題と対応策/生産能力向上による余力創出/ホームページ活用と受注化の社内対応/設備投資せず高付加価値化する方策
H30 2018業績が維持された理由/作業方法の問題点と改善策/生産計画の問題点と改善策/コンピュータ化の事前整備/立地環境・経営資源を活かす戦略
R01 2019強み/受託生産の効果とリスク/新工場の在り方/外注かんばん・後工程引取方式への対応/新工場稼働後の戦略
R02 2020強み・弱み/営業部門と製造部門それぞれの問題点と対応策/納期遅延対策としてのIT活用/モニュメント事業の拡大
R03 2021強み・弱み/受託生産の課題2つと対応策/自社ブランドの製品企画面と生産面の課題/熟練職人か標準化かの二者択一
R04 2022販売面・生産面の課題/新規受注の短納期化小ロット化への対応/優先すべきデジタル化と社内活動/新規取引がもつ戦略的可能性
R05 2023生産面の強み2つ/人手不足下での生産対応/材料価格高騰下の収益性改善/製品企画開発の進め方/工場増築構想の妥当性・理由・留意点
R06 2024強み/工程改善による生産能力向上/工程管理業務の改善の進め方/価格交渉のための社内事前対策/自社企画製品による事業拡大
R07 2025強み・弱み/コストダウンの課題2つと改善策/製品在庫を持たずに納期対応する工程管理/新事業(食品用・医療用)への社内取り組み

事例Ⅲで問われる1次知識の引き出し

事例Ⅳ財務・会計:「第1問は経営分析」で13年間不変

設問構成の安定度は事例Ⅳが最強です。第1問=経営分析(優れた指標/劣った指標を挙げて数値を出し、特徴を記述)は12年連続で出題されています。第2問・第3問がCVP分析と意思決定会計(NPV等)、第4問が記述という並びも、ほぼパターン化しています。

年度第1問第2問第3問第4問
H26 2014経営分析(優1・課題2+30字)改装時期のNPV比較限界利益率・セールスミックス為替リスクの軽減手段
H27 2015経営分析+特徴60字予測P/L・CVP・固定費削減2案のCF/NPV/流動性(回収期間)大口取引先依存のデメリット
H28 2016経営分析(前期比較)+原因70字営業CF計算・新社屋投資閉店の意思決定ネット予約システムの収益費用影響・BEP変動
H29 2017経営分析+特徴40字予測P/L・売電単価の損益分岐設備更新の差額CF・安全性と収益性の指標子会社化の財務指標への影響・経営上の影響
H30 2018経営分析+50字吸収合併・のれん・CFの成長率変動費率・営業利益・投資規模と費用構造・成長性業務委託のリスクと防止策
R01 2019経営分析(連結・前期比較)セグメント別変動費率・全社BEP・目標利益プロジェクトCF・回収期間・NPV・感度分析子会社化のメリデメ・EDIの財務的効果
R02 2020経営分析+特徴60字段階的変動費率のBEP・3択の意思決定買収時ののれん処理・買収リスクROI・セグメント業績評価の問題点
R03 2021経営分析(優2・課題2)レジの取替投資・NPV・延期時の有利価格CVP(価格帯別の販売計画)事業一本化のメリット・企業価値
R04 2022経営分析(生産性指標を必須セールスミックス(制約2種)内外製の意思決定・回収期間・NPV新規事業のリスクを財務的観点から
R05 2023経営分析(2期間比較)CVP・製品廃止の可否・共通費配賦の妥当性期待値によるNPV・投資延期の判断OEMの財務的利点・新分野進出の利点
R06 2024経営分析+特徴80字制約下の受注可否・最低販売価格の設定取替投資NPV・期待値による判断振替価格の問題点・事業部長の業績評価
R07 2025経営分析+経営戦略上の違い80字BEP・セールスミックス(作業時間と構成比の制約)海外向け投資のNPV(機会原価を含む)資金調達手段の助言・為替リスクへの対処

事例Ⅳで問われる1次知識の引き出し

4. 設問文に埋め込まれた「指示」の読み方― その他の論点

設問文には、問いの本体とは別に解答の書き方を縛る指示が必ず紛れ込んでいます。ここを取りこぼすと、内容が正しくても点になりません。13年分から実例を型別に集めました。

4-1. 除外条件(一番書きたい答えを封じてくる)

もっとも危険な指示です。受験生の多数派が書きそうな答えを、あらかじめ設問文で禁止してきます。

H25 事例Ⅰ 第1問設問1新商品の企画や新規顧客を開拓していくこと以外に、どのような点に留意して事業を組み立てていくことが必要であるか。
H25 事例Ⅰ 第2問設問2…その水準を維持していくために、賃金制度以外に、どのような具体的施策を講じるべきか。
H30 事例Ⅰ 第4問…社員のチャレンジ精神や独創性を維持していくために、金銭的・物理的インセンティブの提供以外に、どのようなことに取り組むべきか。
H28 事例Ⅱ 第3問…どのようなメリットと効果を得られるか。売り上げが向上すること以外のメリットと効果について、100字以内で説明せよ。
R01 事例Ⅱ 第3問設問2…どのような提案をすべきか。価格プロモーション以外の提案について、理由と併せて100字以内で助言せよ。
R02 事例Ⅱ 第4問絶景スポットや星空観賞などの観光以外で、どのようなプログラムを立案すべきか。
R05 事例Ⅱ 第2問…プライシングの新しい流れを考慮して、100字以内で助言せよ(ただし、割賦販売による取得は除く)。
H29 事例Ⅳ 第4問設問3関連会社を子会社化することによって、経営上、どのような影響があるか。財務指標への影響以外で、あなたが重要であると考えることについて…
対策設問文を読んだら、まず「以外」「除く」「〇〇を除いた」に印をつけること。これだけで毎年1〜2問の事故が防げます。

4-2. 切り口の指定(どのフレームで考えるかを指示してくる)

H30 事例Ⅰ 第1問…その理由を、競争戦略の視点から100字以内で答えよ。
H30 事例Ⅰ 第2問設問1A社の人員構成から考えて、その理由を100字以内で答えよ。
H27 事例Ⅰ 第5問…どのような点に留意して組織文化の変革や人材育成を進めていくべきか。
R05 事例Ⅰ 第4問設問2今後、どのような事業を展開していくべきか。競争戦略や成長戦略の観点から100字以内で助言せよ。
R06 事例Ⅱ 第2問ブランド価値構造のうち、消費者にもたらす感覚価値と観念価値を意識して、返礼品の企画を100字以内で提案せよ。
R04 事例Ⅱ 第3問…どのような施策をとればよいか、顧客ターゲットと品揃えの観点から100字以内で助言せよ。
R03 事例Ⅲ 第3問…この計画を実現するための製品企画面と生産面の課題を120字以内で述べよ。
R04 事例Ⅳ 第4問…考えられるリスクを財務的観点から2点指摘し、それらのマネジメントについて100字以内で助言せよ。

指定された切り口は、そのまま解答の骨組みになります。「製品企画面と生産面」と言われたら「製品企画面では〜。生産面では〜。」と書き出すのが最も確実です。

4-3. 立場・宛先の指定

指定のしかた出典例意味すること
中小企業診断士として(29問)事例Ⅰで16問と最多経営者の代弁ではなく、外部専門家としての助言を書く。実行可能性・根拠が求められる。
代表理事への助言内容をH27 事例Ⅱ 第1問ほか相手は商店街組合のトップ。個店ではなく街全体の視点で書く。
バイヤーの立場から見たときH25 事例Ⅱ 第3問設問2同じデータを取引先の利害から評価し直す。B社の都合で書くと外れる。
(a)フランチャイザー、(b)フランチャイジーにR03 事例Ⅱ 第3問本部と加盟店でできること・責任範囲が違うことを理解しているか。
事業部長の業績評価を行うときR06 事例Ⅳ 第4問設問2管理可能性の原則。本人が動かせない項目で評価しない

4-4. 根拠・数量の指定

H25 事例Ⅱ 第3問設問1…かまぼこカテゴリーの競争構造の変化を踏まえつつ、根拠となる数値を用いて100字以内で述べよ。
R04 事例Ⅳ 第1問設問1…また、解答においては生産性に関する指標を少なくとも1つ入れ、当該指標の計算においては「販売費及び一般管理費」の「その他」は含めない。
R03 事例Ⅳ 第4問設問1…短期的なメリットについて、財務指標をあげながら40字以内で述べよ。
R07 事例Ⅲ 第2問…特に重要と思われる課題を2つあげ、各課題に対しての改善策とともにそれぞれ60字以内で述べよ。

「2つ」「3つ」「1つ」という数量指定は必ず守ります。事例Ⅳの経営分析では毎年「優れている指標を〇つ、劣っている指標を〇つ」と個数が変わるため、年度ごとに指定を確認する癖が必要です(R3は2つずつ、R4は優2・課題1、R7は優1・劣2)。

4-5. 連鎖型の設問(前の設問の解答が次の前提になる)

設問1で決めたことを設問2以降で使わせる形式です。設問1を外すと連鎖的に全滅するため、配点の大きい大問では慎重さが要ります。

H27 事例Ⅱ 第1問(配点40点)(設問1)どのような顧客層をターゲットとすべきか → (設問2)設問1で解答したターゲット顧客層向けに、どのようなサービス業を誘致すべきか → (設問3)設問2で解答した業種の店と既存飲食店とのテナント・ミックスの効果を最大化するには…
R01 事例Ⅳ 第2問(設問2)…なお、(設問1)の解答を利用して経常利益段階の損益分岐点売上高を計算し…

5. 字数と解答要素数の関係

設問文が指定する字数は、そのまま「いくつの要素を書けば良いか」のヒントになっています。過去問の設問文と配点から逆算した目安が次の表です。

字数要素数の目安典型的な構成主な出題
20〜30字1体言止めで1論点だけSWOTの各要素、事例Ⅳの短文記述
40〜50字1〜2「〇〇により〇〇である」1文強み・弱み、事例Ⅳの財務的利点
60〜80字2①②の並列、または「問題点+改善策」事例Ⅲの問題点と対応策、経営分析の説明
100字2〜3①②③の並列+効果で締める全事例の主力(延べ92回)
120〜140字3〜4切り口2つ×要素2つ+効果事例Ⅲの課題と対応策、事例Ⅰの長文助言
150〜160字4〜53C(3要素)や「誰に・何を・どう・効果」事例Ⅱの3C分析、事例Ⅰの令和7年度
100字の型を1つ持っておく 100字は全体の4割を占める最頻出パターンです。「①〇〇、②〇〇により、〇〇を〇〇し、〇〇を実現する。」という骨格を暗記しておき、①②に与件のキーワードを差し込む練習をすると、本番の思考時間を大幅に削れます。

6. 13年間の出題トレンド

① デジタル・オンラインが常設論点に

設問文にIT・デジタル・オンライン関連語が入る設問は27問。平成25年度の「顧客データベース」「インターネット販売」から始まり、SNS(H26事例Ⅱ)、ホームページ(H29事例Ⅲ・R1事例Ⅰ)、インスタント・メッセンジャー(R1事例Ⅱ)、自社オンラインサイト(R2事例Ⅱ)、デジタル化(R4事例Ⅲ)、ECサイトと実店舗の併用(R6事例Ⅱ)、Webサイトの動画(R7事例Ⅱ)と、年々具体的なツール名で問われるようになっています。

② 事業承継・M&Aの比重が増した(事例Ⅰ)

令和2年度(買収と経営顧問契約)、令和3年度(3代目への承継)、令和5年度(経営統合とPMI)、令和6年度(長女=2代目の登用)、令和7年度(子息への新規事業移譲)と、直近6年のうち5年で承継・統合が主題になっています。「後継者をどう育てるか」「既存社員の抵抗をどう和らげるか」は、いまや事例Ⅰの最重要論点です。

③ 環境変化への対応が設問文に明記されるように

令和4年度事例Ⅲ第1問「2020年以降今日までの外部経営環境の変化の中で」、令和5年度事例Ⅲ第2問「コロナ禍で受注量が減少した2020年以降の…高齢のパート従業員も退職し」、令和5年度事例Ⅲ第3問「最近の材料価格高騰の影響」、令和6年度事例Ⅲ第4問「材料費や人件費の高騰」、令和7年度事例Ⅳ第2問「物価高による原材料費の高騰…賃上げの要請」。コロナ・人手不足・物価高という現実の経営課題が、設問文に直接書き込まれる時代になりました。

④ 事例Ⅰ・Ⅱの設問数は「4問」に収束

平成26〜令和3年度には第5問まである年が多かった事例Ⅰですが、令和4年度以降は4問構成が定着。事例Ⅲは逆に令和4〜6年度で5問構成が続き、令和7年度で4問に戻りました。設問1問あたりの配点が大きくなるほど、1問の取りこぼしが致命的になります。

年度事例Ⅰ事例Ⅱ事例Ⅲ事例Ⅳ
H25 20134問4問3問
H26 20145問4問4問4問
H27 20155問3問4問4問
H28 20163問4問4問4問
H29 20175問4問4問4問
H30 20184問4問5問4問
R01 20195問3問4問4問
R02 20204問4問4問4問
R03 20215問4問4問4問
R04 20224問4問5問4問
R05 20234問4問5問4問
R06 20244問4問5問4問
R07 20254問4問4問4問

7. まとめ:設問文だけで勉強する方法

設問文の分析からわかった5つのこと

おすすめの練習法:与件文を隠して設問文だけを読む

過去問を解く前に、設問文だけを見て次の5項目を紙に書き出す訓練をおすすめします。1事例あたり5分で終わり、80分の解答プロセスのうち最も差がつく部分だけを反復できます。

① 問いの型は?(8つのどれか) ② 切り口の指定は? ③ 立場・宛先は? ④ 除外条件は? ⑤ 字数から要素はいくつ必要?

そのうえで、「この設問なら1次知識のどの引き出しを開けるか」を先に決めてから与件文を読むと、与件のどこに線を引くべきかが自然に見えてきます。設問文は「探し物のリスト」であり、与件文は「探し物が置いてある倉庫」だと考えると整理しやすいはずです。

各年度の設問文はこちらから 本ページで引用した設問文は、すべて過去問の部屋(年度別一覧)に全文を掲載しています。各ページには与件文・設問文に加えて、解答例と解説も収録しています。
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