第14章 不正競争防止法・独占禁止法・下請法

この章のねらい ここまでの章では、特許・商標などの「登録して独占権をもらう」タイプの知的財産を学んできました。 この章で扱うのは、そのすきまを埋める3本の法律です。 ①不正競争防止法(登録がなくても、他人のまねやズルい行為を止められる)、 ②独占禁止法(市場での公正な競争そのものを守る)、③下請法(力の強い親事業者から弱い下請けを守る)。 どれも「フェアに競争しなさい・弱い者いじめをするな」という同じ思想でつながっています。

過去問での出方:経営法務では毎年必ず1〜2問この分野が出ます。とりわけ 不正競争防止法は超頻出で、「営業秘密の三要件」「商品形態模倣(デッドコピー)の3年」「商品等表示」が ほぼ定番。独占禁止法は課徴金減免制度(リーニエンシー)企業結合(HHI)、 下請法は60日ルール親事業者の義務・禁止行為が繰り返し問われます。 要件と数字を正確に覚えれば、安定した得点源になる分野です。


14-0 この章の地図

この章は、性格の違う3つの法律を続けて学びます。最初に「それぞれ何を守る法律か」を つかんでおくと、細かい要件が頭に入りやすくなります。

14-1 不正競争防止法      … 他人の成果へのタダ乗り・ズルを止める(登録不要)
   │   ・営業秘密の三要件(秘密管理性・有用性・非公知性)
   │   ・商品等表示(周知混同/著名冒用)
   │   ・商品形態模倣(デッドコピー=3年)
   │
14-2 独占禁止法の全体像   … 市場の「公正な競争」そのものを守る
   │   ・私的独占/不当な取引制限(カルテル・入札談合)/不公正な取引方法
   │
14-3 企業結合規制と減免制度 … 合併の事前チェック(HHI)+自首すると割引(リーニエンシー)
   │
14-4 下請法              … 強い親事業者から弱い下請事業者を守る(60日ルール)
   │
14-5 税関による輸入差止め  … 偽物・海賊版を「水際」で止める

3つの位置づけをひとことで整理すると、次のようになります。

法律 守るもの キーワード
不正競争防止法 事業者どうしの公正な競争(個々の成果へのタダ乗り防止) 営業秘密・商品等表示・デッドコピー
独占禁止法 市場全体の公正で自由な競争 カルテル・談合・企業結合・課徴金
下請法 下請事業者(弱い立場の取引先) 60日以内の支払・買いたたき禁止

14-1 不正競争防止法

どんな法律か(登録がいらないのがミソ)

不正競争防止法は、他人の営業上の成果にタダ乗りしたり、まぎらわしい表示で 消費者を惑わせたりする「ズルい行為」をやめさせる(差止め)ための法律です。

特許や商標との一番の違いは、登録がいらないこと。特許・商標は「登録してはじめて独占権をもらう」制度ですが、 不正競争防止法は登録の有無に関係なく、一定の"不正競争行為"にあたれば、その被害者が 差止め・損害賠償・信用回復措置などを請求できます。「登録という入り口がない代わりに、 守れる場面が限られている」と理解しておきましょう。

不正競争行為の主な類型

法律(2条1項)は「これが不正競争にあたる」という行為を番号で列挙しています。 試験でよく出るものを絞って表にします(番号は現行法。古い年度の問題は番号がずれることがあります)。

類型(呼び名) ざっくり内容 ポイント
周知表示混同惹起行為(1号) 広く知られた(周知)他人の商品等表示に似た表示を使い、混同を生じさせる 「周知性」+「混同のおそれ」が要件
著名表示冒用行為(2号) 全国的に有名(著名)な他人の表示をまねて使う 「著名性」が要件。混同は不要
商品形態模倣行為(3号) 他人の商品の形をまるごとコピー(デッドコピー)して売る 販売日から3年保護
営業秘密の侵害(4〜10号) 他人の営業秘密を不正に取得・使用・開示する 三要件(後述)
限定提供データの侵害(11〜16号) みんなに有償提供するデータの不正取得等 技術情報だけでなく営業情報も含む
誤認惹起行為(20号) 原産地・品質などを誤認させる表示 産地偽装など
信用毀損行為(21号) 競争関係にある他人の信用を害する虚偽を言いふらす 「虚偽」+「競争関係」

💡 覚え方(1号と2号の違い) - 1号=周知+混同(そこそこ有名なものを、まぎらわしく使って客を惑わす) - 2号=著名(混同いらない)(超有名ブランドは、混同がなくてもタダ乗り自体がダメ) 「有名度が上がるほど、要件はゆるくなる(混同を証明しなくてよくなる)」とセットで覚えます。

営業秘密の「三要件」(超頻出)

会社のノウハウや顧客リストが法律で守られる「営業秘密」にあたるには、3つの要件をすべて満たす必要があります。 ここはほぼ毎年問われる最重要ポイントです。

三要件 かみくだくと よくある説明
① 秘密管理性 秘密として管理されている アクセス制限・マル秘表示など、従業員から見て「これは秘密だ」とわかる措置がある
② 有用性 事業に役立つ情報である 失敗した実験データ(ネガティブ・インフォメーション)も対象。ただし脱税情報など公序良俗に反する情報は除外
③ 非公知性 世間に知られていない 刊行物に載っておらず、保有者の管理下以外では一般に入手できない
 営業秘密 = ① 秘密管理性  かつ  ② 有用性  かつ  ③ 非公知性
                (すべて満たして初めて「営業秘密」)
  • 秘密管理性は、実務でつまずきやすい要件です。パスワードもかけず誰でも見られる状態だと、 たとえ中身が重要でも「秘密として管理していない」=営業秘密と認められない可能性が高くなります。
  • 新規性」や「創作性」「独自性」は営業秘密の要件ではありません(これらは特許・著作の話)。 引っかけの定番なので注意します。

⚠️ 混同注意:三要件に「新規性」は入らない 三要件は 秘密管理性・有用性・非公知性。似た響きの「新規性(特許の要件)」「独自性」に すり替えた選択肢がバツになります。「ひ・ゆう・ひ(秘・有・非)」と3文字で唱えて覚えましょう。

📝 過去問はこう出る(H28 第12問) 営業秘密の三要件と、営業秘密侵害罪の要件を問う穴埋め。正解は A=有用性/B=非公知性/C=図利加害。 「有用性」は公序良俗違反の情報を除外する要件で、失敗データにも認められ得ます。 「非公知性」は刊行物に載っていない等。侵害罪は図利加害目的(不正の利益を得る/損害を加える目的)が必要です。 → H28 第12問

📝 過去問はこう出る(H23 第14問) 特許による「オープン化」と営業秘密による「ブラックボックス化」を対比させる問題。 アクセス制限もパスワードもない状態は秘密管理性を欠き営業秘密と認められない、という結論が問われました。 営業秘密は登録・審査がなく保護期間の制限もない反面、権利の存否・内容が不明確、というメリット・デメリットも頻出です。 → H23 第14問

商品等表示(1号・2号)

商品等表示」とは、氏名・商号・商標・標章・商品の容器や包装など、 「これは誰の商品・営業か」を示す(=出所を表示する)ものをいいます。 逆に、出所を示さないものは商品等表示にあたりません。

商品等表示にあたる例 あたらない例
商号・商標・標章 化粧品の「尿素」「ヒアルロン酸」などの成分表示(中身の説明にすぎない)
商品の容器・包装
学校法人の名称、俳優の芸名(営業主体を示す)
  • 1号(周知混同)は、競争関係がなくても成立し得ます(混同のおそれがあればよい)。
  • 2号(著名冒用)は、混同がなくても成立します(著名性だけで足りる)。
  • 普通名称化した表示を普通に使う行為は、適用除外(19条1項)で不正競争になりません。

📝 過去問はこう出る(H26 第6問/H28 第11問) H26第6問は「商品等表示に含まれないもの」を問い、正解は化粧品の成分表示(出所を示さないため)。 H28第11問は、著名表示冒用(2号)は混同不要1号は競争関係を要件としないという点が問われ、 「競争関係がなくても混同のおそれがあれば1号に該当し得る」が正解でした。 → H26 第6問H28 第11問

商品形態模倣行為(デッドコピー=「3年」を暗記)

他人の商品の形そのものをまるごとコピーして売る行為(デッドコピー)を規制します(3号)。 この規定は、先行者が投資して作った商品形態を、後発のタダ乗りから守るものです。ポイントは3つ。

  1. 意匠登録は不要。意匠法の登録要件(新規性など)を満たさなくても保護される。
  2. 保護期間は、日本国内で最初に「販売」された日から3年(「製造」日でも「外国での販売」日でもない)。
  3. 同種の商品が通常有する形態(ありふれた形・機能上不可欠な形)は保護対象から除外される。
 デッドコピー保護 = 登録不要 / 起算点は「国内で最初に販売した日」 / 期間は3年
                    (× 製造日  × 外国での販売日  × 5年)

⚠️ 定番の引っかけ:期間「3年」を「5年」に、起算点「販売日」を「製造日」や 「外国での最初の販売日」にすり替える選択肢が頻出。「デッドコピー=国内販売から3年」で固定して覚えます。

📝 過去問はこう出る(H23 第10問) デッドコピー規制の穴埋め。正解はA=(意匠登録要件を)満たさなくてもよい/B=商品の通常有する(形態)/ C=販売/D=3年間。R02第14問・R04第11問・H30第11問でも同じく「国内で最初に販売した日から3年」が繰り返し問われています。 → H23 第10問R02 第14問R04 第11問

📝 過去問はこう出る(H27 第9問/H30 第11問/R07 第11問) 各類型の要件を横断で問うタイプ。急所は―― ・混同を生じさせないなら1号(周知混同)に該当しない(H27第9問の正解)。 ・著名表示冒用(2号)は混同不要(H30第11問・R07第11問)。 ・営業秘密の三要件に独自性は含まれない(H30第11問)。 → H27 第9問H30 第11問R07 第11問


14-2 独占禁止法の全体像

何を守る法律か

独占禁止法(正式名称:私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律)は、 市場での公正で自由な競争そのものを守る法律です。運用するのは公正取引委員会(公取委)。 不正競争防止法が「事業者どうしのケンカ(私人間の差止め)」だとすれば、 独禁法は「市場のルールを国が監督する」イメージです。

独禁法が禁止する行為は、大きく3本柱で整理できます。

 独占禁止法の3本柱
 ┌─────────────┬──────────────┬──────────────────┐
 │ ① 私的独占       │ ② 不当な取引制限   │ ③ 不公正な取引方法    │
 │  他社を市場から排除 │  カルテル・入札談合  │  再販価格拘束・優越的地位の濫用等 │
 │  or 支配して独占    │ (事業者どうしの共謀)│  (公正競争を阻害するおそれ)  │
 └─────────────┴──────────────┴──────────────────┘
3本柱 中身 具体例
① 私的独占 他の事業者を排除・支配して市場を独占する 不当廉売で競合を追い出す等
② 不当な取引制限 事業者が共同して競争を制限する カルテル(価格・数量の協定)、入札談合
③ 不公正な取引方法 公正な競争を阻害するおそれのある行為 再販売価格の拘束、優越的地位の濫用、不当廉売、抱き合わせ販売

カルテルと入札談合(②の代表格)

カルテルは、本来はライバルであるはずの事業者どうしが、話し合って 価格を上げたり生産量を抑えたりして競争を避ける行為です。 その一種が入札談合――公共工事などの入札で、事業者どうしが「今回はA社が落札」と あらかじめ決めておく行為です。

  • 入札談合は、落札価格が高かろうが安かろうが、競争を実質的に制限する行為そのものが違法です (「実害がなければセーフ」ではありません)。
  • 独禁法違反なので、課徴金の対象になります(課徴金は独禁法上の制度)。刑法の談合罪(罰金・懲役)とは別系統の制裁です。
  • 官公庁の職員が談合に関与するケースに対しては、入札談合等関与行為防止法(官製談合防止法)があり、 公取委が各省庁の長に改善措置を要求できます。

📝 過去問はこう出る(H19 第1問) 入札談合の問題。正解は官製談合防止法で公取委が改善措置を要求できるという記述。 引っかけは――「落札価額の高低で違法かどうかが決まる」(×:行為そのものが違法)、 「談合罪に課徴金が課される」(×:課徴金は独禁法の制度で、談合罪は罰金・懲役)、 「企業だけで落札予定を決めれば問題ない」(×:それが典型的な違法談合)。 → H19 第1問

⚠️ 混同注意:「課徴金」と「罰金」は別物 - 課徴金独占禁止法上の金銭的不利益(公取委が課す行政上の措置)。 - 罰金・懲役=刑法や独禁法の罰則(刑事罰)。 談合には両方あり得ますが、「談合罪に課徴金」という言い方は誤りです。


14-3 企業結合規制(HHI)と課徴金減免制度(リーニエンシー)

企業結合規制とセーフハーバー(HHI)

合併や株式取得(企業結合)で会社が大きくなりすぎると、市場の競争が失われるおそれがあります。 そこで独禁法は、一定規模以上の企業結合を事前に届け出させ、公取委が審査します。

このとき市場の集中度を測る物差しが HHI(ハーフィンダール・ハーシュマン指数) です。

  • HHI = 市場の各社シェア(%)を2乗して合計した値。1社独占なら100²=10,000、多数の小企業が分け合うほど小さくなります。
  • 2社が結合したときの増分ΔHHI = 2 ×(両社シェアの積) で計算できます。
  • 一定の基準内に収まる結合は「競争を実質的に制限しない」とみなされ、詳しい審査を省略できます。 これをセーフハーバー(安全港)といいます。基準は次のとおり。
セーフハーバー基準 結合後HHI 増分ΔHHI
基準①(水平型) 1,500以下
基準② 1,500超 2,500以下 ΔHHI 250以下
基準③ 2,500超 ΔHHI 150以下
【計算例】シェア20%のC社とシェア9%のE社が結合すると…
   ΔHHI = 2 × 20 × 9 = 360
   結合後HHIが2,500超なら、基準③(ΔHHI≦150)を大きく超える → セーフハーバー該当せず

📝 過去問はこう出る(H27 第4問) HHIを実際に計算させる問題。ΔHHI=2×(両社シェアの積)結合後HHI=各社シェアの2乗和で求め、 基準②(HHI1,500超2,500以下 かつ ΔHHI≦250)・基準③(HHI2,500超 かつ ΔHHI≦150)に当てはまるか判定します。 正解肢は、結合後HHI2,502・ΔHHI360で基準③を満たさず「セーフハーバーに該当しない」ものでした。 → H27 第4問

課徴金減免制度(リーニエンシー)

課徴金減免制度(リーニエンシー)は、カルテルや入札談合に加わった企業が、 公取委に自主的に違反を申告すると、課徴金が免除・減額される仕組みです。 「自首すると割引」――内部からの通報を促して、隠れたカルテルを暴き出す狙いがあります。

ここは要件と数字が細かく問われますが、押さえるべき骨格は次のとおりです。

ポイント 内容
対象行為 不当な取引制限(カルテル・入札談合)が中心。優越的地位の濫用私的独占は減免の対象外
調査開始「前」の1位申請 課徴金が全額免除(100%)
申請順位で減額 順位が下がるほど減額率は小さくなる
調査開始「後」の申請 1位でも全額免除にはならない(減額にとどまる)
申請方法 所定の報告書を、公取委の指定する電子メール(電磁的方法)で提出できる
共同申請 グループ会社が連名で共同申請することも可能

⚠️ 注意:制度は改正されている 令和2年(2020年)12月施行の改正で、従来の「申請順位だけで減額率が決まる」方式に加え、 事業者の協力度合いに応じて減算する仕組み(調査協力減算制度)が導入されました。 古い年度の問題(H25など)は改正前の数字で解説されている場合があります。※現行法では協力度合いも加味されますが、 「調査開始前・単独・1位=全額免除」という骨格は共通です。

📝 過去問はこう出る(H25 第3問/R05 第7問/R06 第9問) リーニエンシーの定番3問。共通の急所は―― ・減免の対象は不当な取引制限優越的地位の濫用は対象外(H25・R05)。 ・調査開始前・1位=全額免除(100%)調査開始後は全額免除にならない(R05・R06)。 ・申請は電子メールで行える(R06)。 ・グループ会社の共同申請は可能(H25)。 → H25 第3問R05 第7問R06 第9問

⚠️ 混同注意:独禁法の減免と、景品表示法の課徴金は別物 独禁法のリーニエンシーは「調査開始前1位なら全額免除」ですが、 景品表示法(優良誤認・有利誤認表示への課徴金)の自主申告は「2分の1減額」であって免除ではありません。 H29第20問はここを問い、「自主申告すれば納付を命じられない(全額免除)」を誤りとしました (景表法は減額どまり/返金措置が課徴金額以上なら納付命令を受けない/除斥期間は行為をやめて5年)。 → H29 第20問


14-4 下請代金支払遅延等防止法(下請法)

どんな法律か(力の差から下請けを守る)

下請法(下請代金支払遅延等防止法)は、資本金の大きい親事業者が、 立場の弱い下請事業者に代金の支払いを遅らせたり買いたたいたりする「下請けいじめ」を防ぐ法律です。 独禁法の「優越的地位の濫用」を、より使いやすく具体化した特別法という位置づけです。

適用範囲(資本金と取引の組み合わせで決まる)

下請法が適用されるかは、①取引の種類②親事業者・下請事業者の資本金の組み合わせで決まります。 対象の取引は次の4類型です。

4類型 内容
製造委託 物品の製造・加工を委託 メーカーが部品製造を委託/販売業者がPB商品の製造を委託
修理委託 物品の修理を委託 自社で行う修理の一部を外注
情報成果物作成委託 プログラム・映像・デザイン等の作成を委託 放送番組の制作委託
役務提供委託 請け負った役務の提供を再委託 運送・ビルメンテ等の再委託
  • 役務提供委託は「他者から請け負った役務を再委託する」場合が対象。 「自社の社内研修」のように自ら用いる役務の委託は対象外です(引っかけ頻出)。

親事業者の「4つの義務」と「11の禁止行為」

下請法は、親事業者にやるべきこと(義務)やってはいけないこと(禁止行為)を定めます。 試験で狙われる代表を挙げます。

親事業者の主な義務

義務 内容
書面(3条書面)の交付 発注時に、直ちに発注内容を記載した書面を交付する
書類の作成・保存 取引記録の書類を作成し保存する
支払期日を定める 給付を受領した日から60日以内のできる限り短い期間に支払期日を定める
遅延利息の支払 支払が遅れたら遅延利息を払う

親事業者の主な禁止行為

禁止行為 内容
受領拒否 注文品の受け取りを不当に拒む
支払遅延 60日以内に定めた支払期日までに払わない
買いたたき 通常の対価より著しく低い代金を不当に定める
不当な給付内容の変更・やり直し 正当な理由なく納期延期・やり直しをさせる
返品 受け取った物を不当に返す
下請代金の減額 いったん決めた代金を不当に減らす

最重要:「60日ルール」

下請法でいちばん問われるのが支払期日の60日ルールです。

 支払期日 = 給付を受領した日から起算して「60日以内」の、できる限り短い期間内に定める
   ・45日後払い → 60日以内なのでOK(違反ではない)
   ・60日を超える払い → 当事者が合意していても下請法違反(強行規定)
   ・納入日を付け替えて実質60日超にする → 違反

ここが最大の急所:60日ルールは強行規定なので、「親事業者と下請事業者が合意していても」 60日を超える支払いは違反になります。「合意しているから問題ない」という選択肢はバツです。

📝 過去問はこう出る(H20 第12問) 下請法違反にあてはまらない行為を選ぶ問題。正解は 「支払期日を"納品から45日後"に定める行為」(45日は60日以内なので違反ではない)。 一方、①正当な理由のない納期延期(給付内容の変更)、②大量発注を装った低単価の買いたたき、 ③発注書面(3条書面)の不交付は、いずれも違反にあたります。 → H20 第12問

📝 過去問はこう出る(R01 第7問/R07 第7問) R01第7問は4類型の判定で、社内研修(自ら用いる役務)は役務提供委託に該当しないが正解。 R07第7問は、合意していても60日超の支払は下請法違反、およびコスト上昇分の価格転嫁を 十分な説明なく拒み従来価格に据え置く行為は「買いたたき」に該当し得る、という2点が問われました。 → R01 第7問R07 第7問

💡 覚え方:下請法は「書面はすぐ・支払いは60日以内・買いたたき/減額/返品はダメ」。 「すぐ書面、60日、いじめ禁止」の3点セットで押さえます。


14-5 税関による輸入差止め(知的財産侵害物品)

「水際」で偽物・海賊版を止める

偽ブランド品や海賊版DVDのような知的財産を侵害する物品は、国内に入る前に 税関(関税法)が輸入を差し止めることができます。これを水際措置といいます。 不正競争防止法・独禁法とは別のしくみですが、知的財産を守る「出口」として一緒に押さえておきましょう。

差止めの対象と手続の骨格

ポイント 内容
対象となる権利 特許権・実用新案権・意匠権・商標権・著作権・著作隣接権、育成者権、不正競争防止法上の一定の行為(周知・著名表示の混同/冒用、商品形態模倣など)に係る物品
輸入差止申立て 権利者は税関に輸入差止めの申立てを行い、自分の権利を侵害する疑いのある貨物の取締りを求められる
認定手続 税関が、その貨物が侵害物品に該当するかどうかを認定する手続を行う
処分 侵害物品と認定されれば、没収・廃棄などの処分がなされる
  • 税関の差止めは、輸入だけでなく輸出についても対象になります。
  • 権利者にとっては、国内で個別に相手を訴えるより、国境で一括して止められる点が大きなメリットです。

💡 位置づけの整理:知的財産の保護は、国内では各法律(特許法・商標法・不正競争防止法など)による 差止め・損害賠償、国境では税関(関税法)による水際差止め、という二段構えになっています。


この章のまとめ(試験直前チェック)

  • 不正競争防止法は登録不要で、不正競争行為にあたれば差止め・損害賠償・信用回復措置を請求できる
  • 営業秘密の三要件=秘密管理性・有用性・非公知性(新規性・独自性・創作性は入らない)
  • ☐ 秘密管理性は「秘密とわかる管理措置」が必要/有用性は失敗データも可・公序良俗違反は除外
  • 商品等表示は出所を示すもの(成分表示は含まれない)。1号=周知+混同/2号=著名(混同不要)
  • 商品形態模倣(デッドコピー)=国内で最初に販売した日から3年(製造日・外国販売日・5年は誤り)
  • ☐ 独禁法の3本柱=私的独占/不当な取引制限(カルテル・入札談合)/不公正な取引方法
  • ☐ 入札談合は行為そのものが違法/課徴金は独禁法の制度(談合罪は罰金・懲役)
  • HHI=各社シェアの2乗和ΔHHI=2×(両社シェアの積)。基準②(1,500超2,500以下でΔ≦250)・③(2,500超でΔ≦150)
  • リーニエンシー:対象は不当な取引制限(優越的地位の濫用は対象外)/調査開始前1位=全額免除/電子メール可・共同申請可
  • 景表法の自主申告は2分の1減額(全額免除ではない)――独禁法の減免と区別
  • 下請法の60日ルール:受領日から60日以内。合意しても60日超は違反(強行規定)/45日はOK
  • ☐ 親事業者の義務(3条書面をすぐ交付・書類保存・支払期日設定・遅延利息)/禁止(買いたたき・減額・返品・受領拒否など)
  • ☐ 役務提供委託は「請け負った役務の再委託」が対象(社内研修など自ら用いる役務は対象外
  • 税関(関税法)は知的財産侵害物品を水際で輸入差止め(申立て→認定手続→没収・廃棄)

この章に対応する主な過去問

年度・問 論点 リンク
H19 第1問 入札談合・官製談合防止法 問題
H20 第12問 下請法(違反行為・60日ルール) 問題
H23 第10問 デッドコピー(商品形態模倣・3年) 問題
H23 第14問 特許と営業秘密(秘密管理性) 問題
H24 第10問 商品等表示(周知混同惹起) 問題
H25 第3問 課徴金減免制度(リーニエンシー) 問題
H26 第6問 商品等表示(含まれないもの) 問題
H27 第4問 企業結合・HHI 問題
H27 第9問 不正競争行為(該当しないもの) 問題
H28 第11問 商品等表示(周知・著名) 問題
H28 第12問 営業秘密の三要件 問題
H29 第20問 景品表示法の課徴金 問題
H30 第11問 不正競争防止法(各類型の要件) 問題
R01 第7問 下請法(4類型の判定) 問題
R02 第14問 不正競争防止法(デッドコピー・営業秘密) 問題
R04 第11問 不正競争防止法(各類型) 問題
R05 第7問 課徴金減免制度 問題
R06 第9問 課徴金・減免制度 問題
R07 第7問 下請法(60日・買いたたき) 問題
R07 第11問 不正競争防止法(各類型の要件) 問題

次章予告 ▶ 第15章「国際取引と英文契約」 視点を国内から海外との取引へ移します。国際物品売買に関するルール(ウィーン売買条約=CISG)、 英文契約書の頻出条項(準拠法・裁判管轄・不可抗力など)、貿易条件(インコタームズ)といった、 グローバルなビジネスで欠かせない法律知識を扱います。