第13章 著作権法
この章のねらい 特許・実用新案・意匠・商標が「登録して守る」産業財産権だったのに対し、著作権は 登録しなくても、創作した瞬間に自動で発生するという点で大きく性格が異なります。 この章では、①どんなものが著作物として守られるのか、②どんな権利が発生するのか (人格権と財産権の2本立て)、③誰のものになるのか(職務著作・二次的著作物)、 ④いつまで守られ、どんなときは自由に使ってよいのか(保護期間・権利制限)を学びます。
過去問での出方:経営法務の中でも著作権は毎年ほぼ確実に1〜2問出る頻出テーマです。 事例(診断士と社長の会話形式)で「キャラクターの著作権は誰のもの?」「著作者人格権は譲渡できる?」 といった実務論点が問われます。無方式主義・著作者人格権の一身専属性・27条28条の特掲・保護期間の計算が 定番の得点源です。ここを固めれば、法律知識ゼロからでも安定して1点を取りにいけます。
13-0 この章の地図
著作権法は「何が守られ(客体)→ どんな権利が生まれ(内容)→ 誰のものになり(主体)→ いつまで・どこまで守られるか(期間・制限)」 という順で見ていくと、頭の中が整理できます。
13-1 著作物とは/権利の発生・著作者 … 何が守られるか+無方式主義(★土台)
│
13-2 著作者人格権 と 著作(財産)権 … 生まれる2種類の権利(★最頻出)
│ ├ 著作者人格権:公表権・氏名表示権・同一性保持権(一身専属)
│ └ 著作(財産)権:複製権・公衆送信権など「支分権」の束
│
13-3 職務著作・二次的著作物・著作隣接権 … 誰のものか/派生物/隣の権利
│
13-4 保護期間 と 著作権の制限 … いつまで/自由に使える例外(引用・私的使用)
│
13-5 プログラム・キャラクターの保護 … 著作権 × 商標・意匠の"合わせ技"
まず押さえるべき「この章の背骨」は次の2つです。
- ① 無方式主義:著作権は登録なしに、創作した瞬間に自動発生する(→ 13-1)。
- ② 権利は2階建て:著作者には「著作者人格権(譲れない気持ちの権利)」と 「著作(財産)権(譲れるお金の権利)」の2種類が生まれる(→ 13-2)。
この2つが分かっていれば、事例問題の8割は解けます。
13-1 著作物とは(要件・種類)/権利の発生・著作者
著作物の定義 ― 4つの要件
著作権法が守る「著作物」とは、法律上こう定義されます(著作権法2条1項1号)。
「思想または感情を、創作的に、表現したものであって、文芸・学術・美術または音楽の範囲に属するもの」
初めての方は、次の4つの要件に分解して覚えましょう。
| 要件 | かみくだくと | 落ちるもの(守られないもの)の例 |
|---|---|---|
| ① 思想または感情 | 人の考え・気持ちが込められている | 単なる事実・データ(気温の記録など) |
| ② 創作的 | ありふれていない、その人らしさがある | だれが作っても同じになる定型表現 |
| ③ 表現したもの | 頭の中のアイデアではなく、形になっている | アイデア・作風・画風そのもの |
| ④ 文芸・学術・美術・音楽の範囲 | 文化の範囲に属する | 工業製品の技術的機能(=特許の世界) |
💡 いちばん大事なのは「③ アイデアではなく"表現"を守る」 著作権は「表現」を守るのであって、「アイデア」そのものは守りません。 たとえば「動物を擬人化したかわいいキャラで売る」という発想(アイデア)は自由に使えても、 具体的に描かれた絵柄(表現)をマネするとアウト、という区別です。
著作物の「例示」― 条文に並ぶ9種類
著作権法10条1項は、著作物の代表例を挙げています(あくまで"例示"で、これに限りません)。 R04年第10問は、この例示をそのまま問いました。
| 号 | 種類 | 具体例 |
|---|---|---|
| 1号 | 言語の著作物 | 小説、脚本、論文、講演 |
| 2号 | 音楽の著作物 | 楽曲、歌詞 |
| 3号 | 舞踊・無言劇の著作物 | ダンスの振付、パントマイム |
| 4号 | 美術の著作物 | 絵画、彫刻(美術工芸品を含む:2条2項) |
| 5号 | 建築の著作物 | 芸術的な建築物 |
| 6号 | 図形の著作物 | 地図、学術的な図面・図表 |
| 7号 | 映画の著作物 | 映画、動画コンテンツ |
| 8号 | 写真の著作物 | 写真 |
| 9号 | プログラムの著作物 | ソフトウェア(→ 13-5) |
📝 過去問はこう出る(R04 第10問) 「著作権法に関する記述として最も適切なもの」を選ぶ問題。正解は 「無言劇は著作物として著作権法に規定されている」(10条1項3号)。 「講演は言語の著作物に該当しない」「地図は規定されていない」「美術工芸品を含む旨は規定されていない」は すべて条文の例示に反する誤り(講演=1号、地図=6号、美術工芸品を含む=2条2項)。 → R04 第10問
権利は「創作した瞬間」に発生する ― 無方式主義
著作権のいちばんの特徴が、この無方式主義です。
無方式主義とは、著作物を創作すれば、登録や出願などの手続き(=方式)をいっさい踏まなくても、 その時点で自動的に著作権が発生するという仕組みのことです。
- 特許・意匠・商標のように「特許庁に出願して登録」は不要。
- 「© マーク」や「文化庁への登録」も、権利発生の条件ではありません(登録は権利移転の対抗要件などで使う任意の制度)。
【産業財産権】 出願 → 審査 → 登録 → はじめて権利発生
【著作権】 創作 → その瞬間に権利発生(手続き不要!)
📝 過去問はこう出る(H27 第7問) 空欄補充で「著作権は【 A 】の時に発生する」を問う問題。正解のAは 「著作物の創作」(無方式主義)。「著作権の設定登録」とする選択肢はバツ。 あわせて「同一性保持権は他者へ【D】」=「譲渡できない」(一身専属:59条)も問われました。 → H27 第7問
著作者とは ―「実際に創作した人」
著作者とは、現実にその著作物を創作した人をいいます(著作権法2条1項2号)。 ここで大事なのは、お金を払った人・名前を出した人が著作者になるわけではないという点です。
⚠️ 混同注意:報酬を払っても著作者にはならない 「対価を払ったのだから著作権はうちのもの」——これはよくある誤解です。 外部のクリエイターに絵柄制作を委託した場合、創作したのはクリエイターなので、 著作者はクリエイターです。会社が権利を得るには、別途「譲渡契約」が必要になります(→ 13-2)。
- ゴーストライターが他人名義で出版することに同意しても、実際に書いたゴーストライターが著作者です (名義は著作者性を左右しません:H26 第10問ア)。
📝 過去問はこう出る(H26 第10問) 「ゴーストライターは著作者とならない」→ 誤り(実際に創作した者が著作者)。 一方、正解は「著作権者の許諾なく店舗でBGMとしてCDを流すことは演奏権の侵害となる」(→ 13-2)。 「著作者人格権は全部又は一部を譲渡できる」→ 誤り(一身専属:59条)。 → H26 第10問
13-2 著作者人格権 と 著作(財産)権 ★最頻出
著作物を創作すると、著作者には2種類の権利が生まれます。この「2階建て」構造こそ、 著作権分野でいちばん問われるポイントです。
┌─ 著作者人格権 …「作った人の気持ち・名誉」を守る権利
著作者 ─┤ (公表権・氏名表示権・同一性保持権)
(創作者)│ → 一身専属で、譲渡できない!
└─ 著作(財産)権 …「作品を使ってお金を稼ぐ」権利
(複製権・公衆送信権などの"支分権"の束)
→ 譲渡できる・相続できる
① 著作者人格権 ― 譲れない「気持ちの権利」
著作者人格権は、著作者本人の人格的な利益(気持ち・名誉)を守る権利で、次の3つからなります。
| 権利 | 条文 | 中身(かみくだき) |
|---|---|---|
| 公表権 | 18条 | まだ公表していない作品を、公表するかどうか・いつ・どう公表するかを決められる |
| 氏名表示権 | 19条 | 作品に本名を出すか・ペンネームにするか・名前を出さないかを決められる |
| 同一性保持権 | 20条 | 自分の意に反して勝手に作品を改変されない(タイトルの変更も含む) |
最大のポイントは、著作者人格権は「一身専属」で譲渡できないことです(著作権法59条)。
一身専属とは、その人個人にべったり結びついていて、他人に譲り渡せない性質のこと。 気持ち・名誉の権利なので、お金のようには売り買いできない、とイメージしてください。
- だから「著作者人格権を譲り受ける」契約を結んでも、その部分は無効です。
- 実務では、譲渡できない代わりに「著作者人格権を行使しません」という約束(不行使特約)で対応します。
📝 過去問はこう出る(H29 第11問) 漫画家に企業キャラを依頼した社長との会話問題。著作者は 「【A】権(=著作権)」と「【B】権(=著作者人格権)」の2つを持ち、 「A=著作権は契約で譲り受けられるが、B=著作者人格権は譲り受けられない」が正解。 なお「著作隣接権」を選ぶ選択肢はバツ(漫画家は著作者であって隣接権者ではない)。 → H29 第11問 / R04 第15問
同一性保持権の"例外" ― 学校教育での用字変更など
同一性保持権は強い権利ですが、やむを得ない改変は例外的に許されます(20条2項)。 たとえば教科書に小説を載せるとき、難しい漢字をひらがなに直すのは、用字・用語の変更として 同一性保持権の侵害にならないとされています(H26 第10問イ)。
② 著作(財産)権 ― 譲れる「お金の権利」と支分権
著作(財産)権は、作品を使ってお金を得るための権利の束です。 「複製する権利」「ネットで送る権利」など、利用のしかたごとに枝分かれしており、 これら一つひとつを支分権と呼びます。
| 支分権 | 条文 | どんな利用を止められるか |
|---|---|---|
| 複製権 | 21条 | コピー(印刷・録音・録画・データ複製) |
| 上演権・演奏権 | 22条 | 公に上演・演奏する(BGMでCDを流すのもここ!) |
| 上映権 | 22条の2 | スクリーン等に映す |
| 公衆送信権 | 23条 | ネット配信・アップロード、放送・自動公衆送信 |
| 展示権 | 25条 | 美術・写真の原作品を公に展示 |
| 頒布権・譲渡権・貸与権 | 26条〜 | 販売・配布・貸出 |
| 翻訳権・翻案権 | 27条 | 翻訳・編曲・映画化など作り替える(→ 二次的著作物) |
- 著作(財産)権は譲渡・相続ができる財産です(人格権とは真逆)。
- 演奏権は「公に聞かせる」ことを止める権利で、録音物(CD)の再生も含みます。 だから店舗でBGMとしてCDを無断で流すと演奏権の侵害になります(H26 第10問ウ)。
⚠️ 混同注意:「著作権」という言葉には広狭2つの意味がある - 広い意味の著作権=著作者人格権+著作(財産)権の全部 - 狭い意味の著作権=著作(財産)権だけ(=支分権の束) 会話問題で「著作権は譲渡できます」と言うときは、狭い意味(財産権)を指しています。
13-3 職務著作・二次的著作物・著作隣接権
① 職務著作(法人著作)― 会社が著作者になる特例
原則は「実際に創作した人(=従業員個人)が著作者」ですが、 一定の要件を満たすと、例外的に会社(法人)そのものが著作者になります。これが職務著作(法人著作)です(15条)。
職務著作の要件(すべて満たす必要あり)
- 会社の発意にもとづくこと(会社の企画・指示で作る)
- 会社の業務に従事する者が職務上作成すること
- 会社が自分の名義で公表すること
- 契約・勤務規則などに別段の定めがないこと
要件を満たすと、その従業員ではなく会社が著作者となり、 著作者人格権も著作(財産)権も、両方とも会社に帰属します。
💡 職務著作のうまみ:会社が著作者になれば、譲渡契約を結ばなくても 会社が権利を丸ごと持てます。しかも本来"譲れない"はずの著作者人格権まで会社のものになります。
📝 過去問はこう出る(R02 第9問) 社員がキャラの絵柄を職務で描いた事例。別段の定めがなければ著作者は 「使用者である会社」であり、「著作者人格権と著作権の両方を会社が有する」が正解(ウ)。 「人格権は社員が持つ」「著作権は会社と社員の共有」とする選択肢はすべてバツ。 → R02 第9問
⚠️ つまずきポイント:外注(委託)は職務著作ではない 職務著作は「雇用している従業員」が対象です。外部のフリーランス(イラストレーター等)に 委託した場合は職務著作にならず、著作者はそのクリエイター本人。 だから会社が権利を得るには譲渡契約が必須になります(→ H29 第11問・R04 第15問)。
② 二次的著作物 ― 原作を"作り替えた"作品
二次的著作物とは、既存の著作物を翻訳・編曲・変形・翻案(映画化・脚色など)して 新たに創作した作品のことです(例:小説を原作にした映画、マンガのアニメ化)。
ここで重要なのが、原作者(原著作物の著作者)の権利は二次的著作物にも及ぶという点です(著作権法28条)。
28条のかみくだき:小説(原作)を映画(二次的著作物)にした場合、 原作者は、その映画の利用についても、映画の著作者と同じ種類の権利を持つ。 つまり映画を使うには、映画会社だけでなく原作者の許可も必要、ということです。
- 二次的著作物を作る(=作り替える)には、原作者の翻案権(27条)の許可が要ります。
- できあがった二次的著作物の利用にも、原作者の28条の権利が及びます。
📝 過去問はこう出る(H27 第7問/R07 第15問) H27第7問では「作家Xは二次的著作物の利用に関して権利を【C】」=「権利を持つ」(28条)が正解。 R07第15問では、著作権譲渡契約で27条(翻案権)・28条の権利を「特掲」しないと、 これらは譲渡人(作者)に留保されたものと推定される(61条2項)ことが問われました。 → R07 第15問 / R01 第9問
💡 覚え方:「全部譲る」と書いても、27条・28条は残る 契約書に「著作権の全部を譲渡する」とだけ書いても、翻案権(27条)と二次利用の権利(28条)は "特掲"(=わざわざ名指し)しない限り、作者に残ると推定される(61条2項)。 着ぐるみ化・アニメ化を予定するなら、契約書に27条・28条を名指しで書く必要があります。
③ 著作隣接権 ― 作品を"伝える人"の権利
著作隣接権は、著作物を創作した人ではなく、著作物を世の中に伝える役割を果たす人に認められる権利です。
| 隣接権者 | どんな役割か |
|---|---|
| 実演家 | 歌手・演奏者・俳優など、作品を演じる人 |
| レコード製作者 | 音源を最初に固定した(録音した)人 |
| 放送事業者・有線放送事業者 | 番組を放送する人 |
- ポイントは、著作者(作曲家・作詞家)とは別に、演奏した歌手などにも権利があること。 1曲を配信するには、作曲家の著作権と歌手の著作隣接権の両方の処理が要ります。
- 会話問題で、著作者(漫画家・作家)の権利を「著作隣接権」と呼ばせる選択肢は引っかけです (隣接権は実演家・レコード製作者等のもの:H29 第11問)。
📝 過去問はこう出る(H21 第12問) E社が著作権・著作隣接権を持つ音楽をD社が配信管理する事例。正解は、 D社は原則として著作者の指示に従い著作者名を表示(または不表示に)する義務がある、という 氏名表示権(19条)に対応した記述。配信実績の開示義務・技術的保護手段を講じる義務などは 著作権法上当然に生じる義務ではなく、契約で定めるべき事項でありバツ。 → H21 第12問
13-4 保護期間 と 著作権の制限
保護期間 ―「いつまで守られるか」
著作権(財産権)には期限があり、その期間が過ぎると誰でも自由に使える(パブリックドメイン)になります。 現行法の原則は次のとおりです。
| 著作物の種類 | 保護期間(現行) | 起算 |
|---|---|---|
| 個人(自然人)の著作物 | 死後70年 | 死亡の翌年1月1日から |
| 法人(団体)名義の著作物(職務著作など) | 公表後70年 | 公表の翌年1月1日から |
| 映画の著作物 | 公表後70年 | 公表の翌年1月1日から |
| 無名・変名の著作物 | 公表後70年 | 公表の翌年1月1日から |
計算の2つのルールを押さえましょう。
- ① 暦年主義(57条):死亡・公表した年の翌年の1月1日から数え、期間の最後の年の12月31日が満了日。 → 満了日は必ず「◯◯年12月31日」になります(年の途中の日付にはならない)。
- ② 起算は「死亡年 or 公表年の翌年1月1日」。
例)自然人が2000年に死亡(現行70年基準)
起算:2001年1月1日 →(70年)→ 満了:2070年12月31日
⚠️ 重要な法改正:50年 → 70年 保護期間は、2018年(平成30年)12月30日施行の改正(TPP整備法)で、 それまでの「死後50年/公表後50年」から「70年」に延長されました。 - 改正前(〜2018年)の古い過去問は50年基準で解説されています(例:H27・H29)。 - 改正後(2019年〜)の過去問は70年基準(例:R01)。 本試験では現行の70年を基本に押さえ、古い年度は「当時は50年だった」と理解しておけばOKです。
📝 過去問はこう出る(保護期間の計算) - H29 第12問(当時=死後50年):1970年に死亡した小説家の満了日は「2020年12月31日」。 起算1971年1月1日+50年→2020年末。暦年主義で年末になる点が急所。 → H29 第12問 - R01 第11問(現行=70年):2000年公表の職務著作(法人著作)は公表後70年= 「2070年12月31日まで」が正解。映画も公表後70年。自然人の著作物は死後70年で計算する。 → R01 第11問
著作権の制限 ―「許可なく使ってよい例外」
著作権は強力ですが、文化の発展や社会生活のために、許可なく使ってよい例外(権利制限)が たくさん定められています。試験で頻出のものを押さえましょう。
| 制限(例外) | 条文 | 中身 |
|---|---|---|
| 私的使用のための複製 | 30条 | 家庭内など個人的・限られた範囲でのコピーは自由 |
| 引用 | 32条 | 一定の要件を満たせば、公表された著作物を引用できる |
| 写り込み(付随対象著作物) | 30条の2 | 写真・動画にやむを得ず写り/録り込んだものは一定要件でOK |
| 時事問題の論説の転載 | 39条 | 新聞の時事論説は、禁止表示がなければ他紙に転載できる |
| 美術の原作品の所有者による展示 | 45条 | 絵画等を持っている人は、それを公に展示できる |
| 屋外設置の美術・建築の利用 | 46条 | 屋外に恒常設置された彫刻・建築物は原則自由に利用できる |
引用(32条)の要件 ― ここが定番
適法な「引用」となるには、次の要件を満たす必要があります。
- 公表された著作物であること(未公表はダメ)
- 公正な慣行に合致すること(自分の文章が主・引用が従、区別が明確など)
- 報道・批評・研究などの目的上正当な範囲内であること
- 出所を明示すること(48条:どこから引用したか示す)
なお、引用できる著作物は翻訳して利用してもよいとされています(47条の6)。
📝 過去問はこう出る(R02 第15問) 「引用となり得る行為」を選ぶ問題。正解は「引用できる著作物を翻訳して利用すること」(47条の6)。 「未公表の著作物の利用」「出所を明示しない複製」「正当な範囲を超えた利用」は、いずれも 引用の要件を満たさずバツ。 → R02 第15問
私的使用と「違法ダウンロード」の落とし穴
私的使用のための複製(30条)は自由ですが、例外の例外に注意です。
- 違法にアップロードされたと知りながら音楽・映像をダウンロードする行為は、 私的使用目的でも著作権侵害になります(30条1項。刑事罰の対象にもなり得ます)。
- アクセスガード(技術的保護手段)を解除してコピーする行為も、私的使用の例外から除外されます。
📝 過去問はこう出る(H27 第13問/H25 第12問) - H27 第13問(最も不適切を選ぶ):正解=ア「違法配信と知りながら私的目的でダウンロードしても侵害にならない」 は誤り(侵害になる)。写り込み(30条の2)・時事論説の転載(39条)・所有者の展示(45条)は適切。 → H27 第13問 - H25 第12問:違法ダウンロード・技術的保護手段の回避コピー等を刑事罰・民事違法・適法に分類。 写り込みは適法、違法DLは刑事罰の対象になり得る、という整理が問われました。 → H25 第12問
写り込み(30条の2)と屋外の美術(46条)
- 写り込み:写真・録音・録画で、背景にやむを得ず入り込んだ他人の著作物(絵・音楽など)は、 著作権者の利益を不当に害しなければ侵害になりません。動画に録り込まれた音楽にも適用され得ます。
- 屋外設置の美術・建築(46条):公園や街路など屋外の場所に恒常的に設置された美術の著作物や 建築物は、原則として自由に利用できます。ただし専ら複製物の"販売"目的での複製・販売は例外(できない)。
📝 過去問はこう出る(R06 第15問/R07 第14問) - R06 第15問:動画に録り込まれた商店街の音楽も30条の2(写り込み)が適用され得る(軽微性等の要件は検討要)。 → R06 第15問 - R07 第14問:46条の空欄補充。【A】=「屋外の場所」(×公共の施設内)、 例外の【B】=専ら複製物の「販売」目的(×展示)。屋外の美術は原則自由だが販売目的の複製は不可。 → R07 第14問
著作権の共有 ―「みんなのもの」は勝手に動かせない
複数人で1つの著作物を共有している場合の扱いも問われます(65条)。
| 行為 | 著作権(共有)の扱い |
|---|---|
| 自分の持分を譲渡 | 他の共有者全員の同意が必要 |
| 自ら利用(複製など) | 共有者全員の合意がなければできない |
| 他人に利用許諾 | 共有者全員の合意が必要 |
- 特許権の共有と対比されます。特許は自己実施は同意不要ですが、 著作権は自己利用にも全員の合意が必要な点が違い(引っかけポイント)。
📝 過去問はこう出る(R04 第16問) 特許権・著作権の共有の比較。正解(ウ)は、特許権は他の共有者の同意なく他人に通常実施権を許諾できない、 著作権は全員の合意によらなければ他人に利用許諾できない、という記述。 「著作権は全員合意なしに自ら利用できる」は誤り(65条2項)。 → R04 第16問
13-5 プログラム・キャラクターの保護(著作権 × 商標・意匠)
プログラムの著作物
コンピュータのプログラム(ソフトウェア)も著作物として保護されます(10条1項9号)。 ここでのポイントは、受託開発したソフトの著作権は、原則として"作った側(受託者)"に発生することです。
- 発注者がお金を払って開発を委託しても、契約で譲渡を明示しない限り、著作権は自動で発注者に移りません。
- 無断で改変されたら、受託者は翻案権(27条)を根拠に差止め等を請求できます。
📝 過去問はこう出る(H20 第11問) A社が受託開発しB社に納入したソフトXを、B社が無断で改変・販売した事例。正解(ア)は、 A社が翻案権を根拠に販売差止めを請求できる、という記述。 「開発委託では著作権が発注者に帰属する」は誤り(そんな規定はなく、創作者=受託者に原始帰属)。 → H20 第11問
💡 リバース・エンジニアリング:プログラムを解析して中身を調べる行為が著作権侵害になるかは 議論がありますが、使用許諾契約でこれを禁止する条項を定めること自体は可能です(H27 第14問エ)。
キャラクターの保護 ―「著作権」だけではない
人気キャラクターは、複数の法律を組み合わせて守るのが実務の定石です。
| 何を守るか | 使う権利 | ポイント |
|---|---|---|
| 絵柄そのもの(表現) | 著作権 | 創作と同時に発生(無方式主義)。マネされると侵害 |
| キャラの名称・ロゴ | 商標権(→ 第12章) | 名称やロゴは著作権ではなく商標登録で守る |
| 立体的な形状・デザイン | 意匠権(→ 第11章) | フィギュア等の形状は意匠で守れる場合がある |
- 著作権は"アイデア"を守らないので、「動物を擬人化する」という発想自体は独占できません。 だから独自に創作した(=既存作品に"依拠"していない)キャラなら、たまたま似ていても侵害になりません。
⚠️ 混同注意:著作権侵害には「依拠」が必要 著作権侵害(複製・翻案)が成立するには、既存の著作物に"依拠"(それを見て・参考にして作った) ことが必要です。まったく知らずに独自創作した結果たまたま似ただけなら、侵害にはなりません。 (特許のように「知らなくても侵害」とはならない点が、産業財産権との大きな違い)
📝 過去問はこう出る(H19 第12問/R02 第9問) - H19 第12問:職務創作したキャラ「ぽかぽかうさぎ」の商品化事例。正解(エ)は、 海外の無名絵本に似たキャラがあっても、創作時にその存在を全く知らなければ(=依拠がなければ) 独自創作として侵害にならず、販売中止不要という記述。 「保護に文化庁の移転登録が必要」(×無方式主義)などはバツ。 → H19 第12問 - R02 第9問:職務著作のキャラは会社が著作者となり人格権・著作権とも会社に帰属(→ 13-3)。 → R02 第9問
この章のまとめ(試験直前チェック)
- ☐ 著作物の要件=思想・感情を/創作的に/表現したもの(アイデアではなく"表現"を守る)
- ☐ 著作物の例示(10条):講演・地図・無言劇も著作物/美術工芸品を含む(2条2項)
- ☐ 無方式主義:著作権は創作した瞬間に自動発生(登録・©不要)
- ☐ 著作者=実際に創作した人(報酬を払った人・ゴーストの名義人ではない)
- ☐ 権利は2階建て:著作者人格権(公表権・氏名表示権・同一性保持権/一身専属で譲渡不可:59条)+著作(財産)権(譲渡可)
- ☐ 支分権:複製権・公衆送信権・演奏権(BGMのCD再生もここ)・翻案権(27条)など
- ☐ 職務著作(15条):要件を満たせば会社が著作者=人格権も著作権も会社に帰属(外注は職務著作でない)
- ☐ 二次的著作物:原作者は二次利用にも権利を持つ(28条)/27条・28条は"特掲"しないと作者に留保推定(61条2項)
- ☐ 著作隣接権=実演家・レコード製作者・放送事業者(著作者とは別。漫画家は隣接権者でない)
- ☐ 保護期間(現行)=個人は死後70年/法人・映画・無名変名は公表後70年(暦年主義で満了は12/31)
- ☐ 50年→70年は2018年12月30日施行。古い過去問は50年基準(H27・H29)
- ☐ 引用(32条):公表済み・公正な慣行・正当な範囲・出所明示/引用の翻訳利用は可
- ☐ 違法と知りながらのDLは私的使用でも侵害/写り込み(30条の2)は音楽の録り込みにも適用され得る
- ☐ 屋外設置の美術(46条)は原則自由利用だが、販売目的の複製・販売は例外(不可)
- ☐ 著作権の共有(65条):持分譲渡・自己利用・許諾いずれも全員の合意が必要(特許は自己実施は同意不要)
- ☐ 受託開発ソフトの著作権は受託者に原始帰属(譲渡明示がなければ発注者に移らない)
- ☐ キャラは著作権+商標+意匠で守る/著作権侵害には「依拠」が必要(独自創作なら侵害せず)
この章に対応する主な過去問
| 年度・問 | 論点 | リンク |
|---|---|---|
| H19 第12問 | 職務著作・キャラクターの権利・依拠 | 問題 |
| H20 第11問 | プログラム著作権(受託開発・翻案権) | 問題 |
| H21 第12問 | 著作隣接権・氏名表示権(配信管理) | 問題 |
| H25 第12問 | 利用行為の適法・違法(私的複製・違法DL) | 問題 |
| H26 第10問 | 著作者・著作者人格権・演奏権 | 問題 |
| H27 第7問 | 発生(無方式主義)・保護期間・二次的著作物 | 問題 |
| H27 第13問 | 著作権の制限(私的使用・写り込み・展示) | 問題 |
| H27 第14問 | 著作権・著作者人格権(全部譲渡・職務著作) | 問題 |
| H29 第11問 | 著作権と著作者人格権の処理 | 問題 |
| H29 第12問 | 保護期間の満了日(暦年主義) | 問題 |
| R01 第9問 | 著作権譲渡契約(27条28条・人格権) | 問題 |
| R01 第11問 | 保護期間(現行70年基準) | 問題 |
| R02 第9問 | 職務著作の帰属 | 問題 |
| R02 第15問 | 著作物の引用(32条) | 問題 |
| R04 第10問 | 著作物の例示(10条) | 問題 |
| R04 第15問 | 著作者人格権と著作権 | 問題 |
| R04 第16問 | 特許権・著作権の共有(65条) | 問題 |
| R06 第15問 | 著作権(写り込み30条の2) | 問題 |
| R07 第14問 | 屋外設置の美術の著作物(46条) | 問題 |
| R07 第15問 | 著作権の譲渡(27条・28条の特掲) | 問題 |
次章予告 ▶ 第14章「不正競争防止法・独占禁止法・下請法」 著作権や産業財産権のような"登録された権利"とは別に、不正な競争行為そのものを規制するルールを扱います。 営業秘密の保護、周知表示の混同惹起、独占禁止法(カルテル・不公正な取引方法)、 そして中小企業を守る下請法——実務で効く「競争のルール」を学びます。