第14問
企業情報の法的保護に関する次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。 企業における技術、ノウハウ、顧客情報等の企業情報について、企業が収益を生 み出す知的資産としての法的な保護を享受するためには、そのような企業情報が、 A により特許権等の知的財産権を取得して活用するのにふさわしいもの か、それとも B し、不正競争防止法上の営業秘密等の機密情報として管理 していくのが適切なものかを振り分けていくという経営判断が必要になる。 企業情報が不正競争防止法上の営業秘密として保護されるためには、秘密として 管理されていること(秘密管理性)、有用な営業上又は技術上の情報であること(有 用性)、公然と知られていないこと(非公知性)の要件をすべて満たすことが必要 とされている。例えば、技術・ノウハウ等を記録したデータファイルが企業内の サーバーコンピューターに保存されていたが、アクセス制限がなくパスワードも設 定されていないという状態では、 C の要件を欠き、営業秘密とは認められ ない可能性が高い。 平成21年の不正競争防止法の改正により、営業秘密の侵害行為に対する処罰範 囲が拡大され、改正前は不正競争の目的で、詐欺、窃盗、横領等の不正な方法によ り営業秘密を使用し又は開示する行為等だけが処罰の対象とされていたものが、改 正後は、 不正の利益を得たり保有者に損害を加えたりする目的で、営業秘密を 不正な方法により使用し又は開示する行為、更には、 上記の目的で、不正な 方法により、営業秘密を第三者が取得、又は従業者・取引先等が領得する行為等も 処罰の対象とされることとなった。その結果、 D 行為、 E 行為等 も、営業秘密の侵害として処罰されることとなった。 ― 16― ◇M5(688―123) (
設問1
) 本文中の空欄A~Cに入る用語の組み合わせとして、最も適切なものはどれ か。
- ア A:オープン化 B:ブラックボックス化 C:非公知性
- イ A:オープン化 B:ブラックボックス化 C:秘密管理性
- ウ A:ブラックボックス化 B:オープン化 C:秘密管理性
- エ A:ブラックボックス化 B:オープン化 C:有用性 (
設問2
) 本文中の空欄D・Eに入る記述の組み合わせとして、最も適切なものはどれ か。
- ア D:機密保持契約を締結して提携先企業から提供を受けた営業秘密を、機密 保持契約に違反して提携終了後に記憶媒体から消去したように装って実 際には消去せず、自社の製品開発に利用する E:社内規定による許可無しに営業秘密記録媒体を自宅に持ち帰って残業す る
- イ D:自社の内部告発規定に違反する方法で、自社の不正情報とともに営業秘 密をマスコミに提供し、謝金をもらう E:社内規定による許可無しに営業秘密記録媒体を自宅に持ち帰って残業す る
- ウ D:社内規定による許可無しに営業秘密記録媒体を自宅に持ち帰って残業す る E:報酬を得る目的で、保有企業に無断で営業秘密を外国政府に開示する
- エ D:保有企業への嫌がらせ目的で当該企業の営業秘密をネット上の掲示板に 書き込む E:報酬を得る目的で、保有企業に無断で営業秘密を外国政府に開示する ― 17― ◇M5(688―124) (
設問3
) 企業の保有する技術・ノウハウ等を営業秘密として管理する場合のメリット・ デメリットに関する記述として最も適切なものはどれか。
- ア 一定期間、譲渡可能な排他的独占権を取得できる一方で、出願内容を公開す ることが権利取得の前提となるので、自社の開発動向が他社に知られることに なる。
- イ 失敗した実験のデータ等のノウハウも保護対象となり得る一方、保護期間が 満了すればだれでも利用可能となる。
- ウ 事前の審査を通じて権利の内容が明確となるが、他社が同一技術を独自開発 した場合には独占できなくなる。
- エ 製品の分解等により明らかにならない限り、保護期間の制限がなく、他社と の差別化を図ることができる一方で、登録制度がなく、権利の存否・内容が不 明確となりがちである。 ― 18― ◇M5(688―125)
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正解: 設問1 イ 設問2 エ 設問3 エ
解答:設問1=イ、設問2=エ、設問3=エ
〔リード〕企業情報の法的保護(特許による権利化=オープン化/営業秘密としての秘匿=ブラックボックス化)と、平成21年改正不正競争防止法の処罰範囲拡大が論点。
設問1(空欄A~C)
- A:オープン化——特許権等の知的財産権を取得して活用するのにふさわしい情報は、出願・公開を通じて権利化する「オープン化」になじむ。
- B:ブラックボックス化——営業秘密として秘匿管理していくのが適切な情報は「ブラックボックス化」になじむ。
- C:秘密管理性——アクセス制限がなくパスワードも未設定の状態では、営業秘密の三要件のうち「秘密管理性」を欠き、営業秘密と認められない可能性が高い。 よって イ(Aオープン化/Bブラックボックス化/C秘密管理性)。ア・ウ・エは語の対応が逆、またはCを「非公知性」「有用性」とする点で誤り。
設問2(空欄D・E)
平成21年改正で、不正の利益を得る等の目的での営業秘密の不正取得・領得行為や、図利加害目的での開示行為も処罰対象に拡大された。
- エ(○):D「保有企業への嫌がらせ目的で営業秘密をネット上の掲示板に書き込む」(図利加害目的の開示)、E「報酬を得る目的で保有企業に無断で営業秘密を外国政府に開示する」(不正の利益を得る目的の開示)。いずれも改正後に処罰対象となる行為に該当し適切。
- ア・イ・ウは、許可なく記録媒体を自宅に持ち帰り残業する行為(図利加害目的を欠き処罰対象とはいえない)等を含み、処罰される侵害行為の例として不適切。
設問3(営業秘密管理のメリット・デメリット)
- ア(×):「出願内容を公開することが権利取得の前提」「排他的独占権」は特許(オープン化)の説明であり、営業秘密の説明ではない。
- イ(×):失敗データ等も保護対象になり得る点は正しいが、「保護期間が満了すればだれでも利用可能」は特許等の説明で、営業秘密には当てはまらない。
- ウ(×):「事前の審査を通じて権利の内容が明確」は特許の説明で、営業秘密には登録・審査制度がない。
- エ(○):製品の分解(リバースエンジニアリング)等で明らかにならない限り保護期間の制限なく他社と差別化できる一方、登録制度がなく権利の存否・内容が不明確になりがち——営業秘密管理のメリット・デメリットを正しく述べており適切。
よって設問1=イ、設問2=エ、設問3=エ。