開業・廃業率 (2019年発表)はどう変わったか?〜経年比較、各国比較
開業と廃業の状況
中小企業白書の2019年版の開・廃業率 のデータを確認します。
開業率より廃業率が高まると、日本における事業者数が減少していくことになります。人口減少フェーズに入れば、事業者数も減少する場合が多くなるでしょうし、中小企業の数が減って、大企業に集約がより進んでいけば、開業は減るのかもしれません。
2000年〜2010年では、開業率と廃業率がほぼ同等で、年によっては廃業率がう回っており、苦しい時代が続いたと言えます。
2009年12月に金融モラトリアムと呼ばれる、金融円滑化法が施行され、廃業率は低下しました。もちろんこの法案により救われて、復活した企業も存在しますが、廃業を遅らせただけというケースも存在ます。
一方で創業については、上昇傾向にあります。とはいえ、5%代であり、フランスやイギリスの13%代に比べてかなり低い傾向にあることも事実です。各国の開業・廃業率を見ていきましょう。
各国の開業・廃業率
フランスの開業率が高い!と昔から話題でしたが、少し低下傾向にあるようですね。変わってイギリスの開業率が14.6%と大幅に伸びています。イギリスが開業率が高いのはどうしてでしょうね。しかしEU離脱となると変化が起きそうですね。国内に閉じて開業が増えるのか、離脱の影響で起業活動そのものが停滞してしまうのか、今後もイギリスは要チェックです。
一方で各国の廃業率は、日本よりかなり高いです。日本は開業率が低いのが問題とされていますが、むしろ廃業率が各国に比べて低いのが問題なのかもしれません。事業としては成り立ってないけど、自分の土地でやっているからコストが掛からないので廃業せずに生産性の低い事業を続けているなんてケースです。
新陳代謝が悪いっていうのが日本のキーワードですね。
人材採用業界も同じでしょう。解雇できないから、人を雇う時に慎重になって、その結果、非正規と言われる人たちが増えてしまう。もっと新陳代謝を活性化して、流動性が高まらないと、不利益を被るのは今後採用される人、すなわち若い人ということになります。
同じく起業もそうでしょう。廃業率が低止まりしている限りは開業率も上がらず、今後起業したい人に対してはマイナスの効果があると考えます。
開業率が高いフランスとイギリスは、やはり廃業率も高いですね。廃業率を高める仕組みや政策ってあり得るものでしょうか?
にわとりたまごになりがちですが、思い切って廃業の制度を簡易にし、コストをかけずに廃業できる仕組みにしていけば、開業率を上げていくことにも寄与するのではないでしょうか。
業種別の開業・廃業率
そして次は業種別のデータです。どういった業種の開業率が高いのでしょうか。建設業が10%代、宿泊・飲食・サービスが9%代と上位です。一方で、建設業の廃業率は全体平均の廃業率と同じくらいですが、宿泊・飲食・サービス業は6%程度であり、多産多死の状態です。
さすがに創業時の投資が大きい製造業の開業率は低いですね。
廃業率が高いのは 宿泊・飲食・サービス業と建設業。確かに飲食店なんかはすぐ廃業していますしね。建設業も一人親方企業などで、廃業して再就職ってことも多いのだと思います。
都道府県別の開業・廃業率
次は、都道府県別のデータです。
都道府県別で見ると、開業率の上位は
1位 沖縄
2位 埼玉
3位 千葉
となっています。
沖縄は、前述の宿泊・飲食・サービス業の割合が高いため、開業率が高いのでしょう。
一方で廃業率は
1位 富山
2位 大阪
3位 埼玉 となっています。
中小企業は要らない?
今月号の日経ビジネスは、「中小企業は本当に要らない?」という記事がありました。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00080/
本記事を簡単に要約すると、
1.チュートリアル徳井さんのように、税金対策の隠れ蓑に中小企業を使っているところが多い(徳井さんは節税でなくて脱税でしたが) 「クロヨン」という言葉をご存じの方も多いだろう。会社員は所得の9割を税務当局に把握されているが、自営業者は6割、農家は4割にとどまる
2.中小企業不要論が芽吹き始めている。
「能力の低い中小企業経営者は要らない。小さな会社は統合し、1社当たりの規模を拡大した方が日本は強くなれる」
3.中小企業は大企業に比べると
・賃金が低い、賃上げ難しい
・業務効率が低い、小規模な組織ではIT活用や柔軟な働き方に割ける資金的な余裕がない
そのため、小さすぎて非効率な企業の退出を促し、本当に競争力のある企業に経済活動を集約して初めて、国全体の生産性は高まる
4.日本の中小企業のおおむね5社のうち1社が「1年以内に廃業する危機」に現状で陥っている→31万社
5.中小企業の経営者の年齢は18年時点で69歳が最も多い。1995年には47歳だったのと比べると23年間で22歳上昇している
対策としては
- 消滅する中小企業が生み出している付加価値を、残された企業(大企業中心)でカバーする。
- 消滅する中小企業が生み出している雇用を、残された企業(大企業中心)でカバーする。
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なかなか全ての意見に賛成できるわけではないですが、もっともだなあ、と感じる点もあり、スムーズな廃業の数を増やしていくとともに、大企業へのM&A、そして、開業をふやしていくという流れも必要なのだと思います。
東京商工リサーチの廃業率
2019年を振り返ってという記事が出ていました。(リンクをクリックすると記事サイトへ移動します)
結論から言うと、以下になるでしょうか。せちがないですね。
2019年の企業倒産は「底打ちから増勢へ」と、潮目が大きく変わった
東京商工リサーチ
グラフでは2019年も下がっているように見えますが、2019年はまだ1−11月のデータのためです。久しぶりに倒産が増加するのは間違いなさそうです。
例によって人手不足に起因するものが多いとのこと。後継者不足は事業承継への機運の高まりからか減少傾向にあるのですね。一方で求人難、従業員退職、人件費高騰、が増加。
- 代表者や幹部役員の死亡、病気入院、引退などによる「後継者難」型が234件(前年同期比10.3%減)
- 人手確保が困難で事業継続に支障が生じた「求人難」型が72件(同35.8%増)
- 中核社員の独立、転職などの退職から事業継続に支障が生じた「従業員退職」型が40件(同66.6%増)
- 賃金等の人件費のコストアップから収益が悪化した「人件費高騰」型が28件(同16.6%増)
人手不足倒産という言葉はあまりスキではないです。結局、企業そのものではなく、外部に起因しているかのように聞こえてしまうからです。人手を集められるような自社の魅力不足倒産、というならまだわかりますが。
そんなところで