フリーランスと消費税とインボイス

2019年12月12日

フリーランスは消費税払っていますでしょうか?また将来導入するインボイスがスタートするとどうなるのでしょうか?

フリーランスはWikipediaによると、以下のように定義されています。

フリーランス(freelance)は、特定の企業や団体、組織に専従しておらず、自らの技能を提供することにより社会的に独立した個人事業主もしくは個人企業法人である。日本では『自由業』『自由職業』『フリーランス』と呼ばれる。請け負った業務を実際に遂行する本人はフリーランサー、フリーエージェントと呼ばれる。

Wikipedia

フリーランスの年収

平成27年の中小企業白書ではフリーランスが取り挙げられました。年収300万円未満で半数を超えますね。ただ、これは、副業フリーランスの方も含まれています。 全体の17.3%は副業でフリーランスをやっている方のデータなので、年収は低めに出ているのかもしれません。

このデータは年収なので、売上と同じではありません。

ただ多くのフリーランサーが、原価や費用のあまりかからない仕事をしていることは想像できます。 プログラマーやブロガー、デザイナーなどです。

年収で1000万円を超えるのは、3%もないわけです。

第1-3-30図 フリーランスの手取り年収、貯金の金額

年収=売上ではありませんが、売上を1,000万円超えると消費税の納税義務が発生します。課税事業者になるわけです。ということは多くのフリーランスは免税事業者で消費税を納めていないことが予想できます。

消費税の納税義務の免除について (国税庁のサイト)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6501.htm

消費税では、その課税期間に係る基準期間における課税売上高が1,000万円以下の事業者は、納税の義務が免除されます。

国税庁のサイト

フリーランスの消費税

売上が1,000万円にいっていないフリーランスは消費税を収める必要はありませんが、そもそも請求するときに消費税をとってもいいのでしょうか?

これはもちろん請求してもOKです。フリーランスも、少ないとはいえ原価や費用が発生することがあるでしょう。例えば、本体価格10万円のパソコンを仕事用に購入すると、10万円の他に8千円の消費税を支払っています。2019年10月1日からは消費税率が10%になるため、1万円の消費税を支払っています。

(ということで、ここからは消費税を10%として記載します。)

そのため、請求書を出すときに消費税を請求しないと、消費税を払うだけで、受け取れないということになってしまいます。

そもそも、納付する消費税は、受け取った消費税ー支払った消費税 の差額となります。(本則課税の場合)

例えば売上が30万円で、費用が10万円かかった場合、

納付する消費税 = 30万円×10% ー 10万円×10%=2万円となります。

つまり、納税事業者は、支払った消費税分、納める消費税は下がるわけです。フリーランスが、売り上げて請求しないと、(10万円×10%)の消費税は払っただけになるわけです。そのため、請求するときにも(30万円×10%)の消費税は請求すべきです。

しかし、ここで問題が発生します。免税事業者のフリーランスは消費税を納税しませんので、(30万円−10万円)×10%=2万円得をしてしまうわけです。

これを益税といいます。消費税を納めている事業者からしたら不公平を感じてしまうでしょうね。そこで、今回のインボイス導入は、この益税を排除し、平等な税制度を導入するというのも目的になるわけです。

税制という意味では正しい姿と言えますが、消費税を納めることになるフリーランスにとっては大変です。

インボイス制度

インボイスの制度については、以下のブログで紹介しましたのでご確認ください。2023年10月1日により導入されます。一定の経過措置はありますが、多くの免税事業者のフリーランスは、このタイミングで消費税納税をしなければ取引から排除されてしまう可能性があります。

免税事業者はインボイスを発行できません。インボイスが発行できないと、発注者は困ります。発注者の納める消費税が増えてしまうからです。(仕入れの税額控除ができないため)

そうすると、免税事業者であるフリーランスには発注をやめてしまうか、課税事業者になることを求められるのではないでしょうか。「課税事業者になってくれ!」とは言わないでしょうが、「インボイスを発行できるようにしてくれ!」と言われるでしょう。

フリーランスはインボイス対応でどうなる?

それでは課税事業者になったらフリーランスはどれくらい税金の負担が増えるでしょうか。消費税は、課税売上高が5,000万円以下の場合は簡易課税制度が選択でき、業種ごとにみなし仕入率が決定されます。

以下の国税庁のサイトにみなし仕入率が掲載されています。フリーランスで多いサービス業であれば50%となります。

簡易課税制度(国税庁のサイト)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6505.htm

800万円の課税売上高だとすると納める消費税は以下となります。

800万円×10%(消費税率)×(1−50%みなし仕入率)=40万円

消費税はあくまで取引先から預かったものであり、それをそのままおいておけば納税は簡単ですが、今まで免税事業者だったフリーランスは消費税を避けておいておくなどはしていないでしょう。いきなり40万円負担が増えると感じてしまうかもしれませんね。

もちろん、消費者だけが顧客であるフリーランスはインボイスを発行しなくてもいいでしょう。消費者は消費税を納税しませんので、インボイスが出せないなら取引をしない!と言い出しません。

しかし、100%消費者と取引されているフリーランスは少ないでしょう。

やはり4年後からは消費税を納めることになると思って準備をしていくべきです。準備と言っても悩ましいですが、まずは、いま消費税を請求していないフリーランスは、請求するところから始めましょう。

そして消費税を納税することを前提に、価格設定(値づけ)も考え直しましょう。いきなり、値上げ交渉するのは大変だとは思います。そのために4年ありますので、この4年のうちに、消費税を納めてもやっていける価格設定を目指しましょう。

フリーランスに外注費支払う側は

フリーランスに報酬を支払っている側はどうしたらいいでしょうか。いろんな業種が考えられますが、一番多いのはIT業界と建設業界になるでしょう。(建設業界の場合はフリーランスというより一人親方と呼ばれますが)

消費税を支払っていない売上1000万未満のフリーランスに外注費を支払う場合、支払った消費税分は仕入税額控除されませんので、自社は納める消費税がふえてしまいます。(減らすことができません)

そうすると、そんなフリーランスには仕事を外注しない!とすればいいのですが、人手不足の今、そう簡単にいかないでしょう。

中小IT企業では外注先がフリーランスばかりという会社も多いです。優秀なITフリーランスを囲い込んでおくことが自社の経営資源につながっています。 

通常は発注先のほうが、受注する側より強いので、インボイスがない外注は使わないとできるわけですが、受注側も強い場合はそうもいきません。

そうすると発注側がやるべきことは、この2−3年のうちに、フリーランスの人たちを啓蒙し、売上1000万にいっていなくても、課税事業者になって消費税は納めるものだよ、と認識してもらうことが必要になるでしょう。 結構たいへんですね。

おまけ:フリーランスの語源

フリーランス(freelance)の語源は中世で、王や貴族は主力となる騎士を中心とした封建軍の補強として、戦争の度に傭兵団(フリーカンパニー)と契約して戦争に臨んでいました。この中には正式に叙勲されていない騎士(黒騎士)や傭兵団を離れ戦場に臨む兵士がいましたが、当時は槍騎兵 (lancer) が自分の従卒として歩兵や弓兵を連れている形態が多かったため、契約の際には槍の本数=1戦闘単位としてカウントされていたそうです。

まだ敵勢力と契約を交わしていない ( free) 戦闘単位 ( lance) を指す言葉として「freelance」が用いられるようになったそうです。

そんなところで

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