クラウドファンディングは資金を集めることより人と人のつながりを集めることが主題!

IT中小企業診断士の村上です。

 クラウドファンディング(以下CFと略します)での資金調達が盛んに行われています。しかし、まだまだ社会貢献や大きな企業の商品開発の事例が多く、中小企業にとっては、CFはあまり関係ないものと感じていないでしょうか?本記事では、現状のCFの動向とともに、一人でお菓子教室を運営されている方が見事にCFで資金調達された事例を紹介していきます。

ある日のつぶやき

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 資金調達の目標額は100万円。締め切りまで1週間を残して、目標を達成し、最終的には120万円をCFで調達されました。正直、CFでこんなにスムーズに調達が進むと思っていませんでした。今回の記事では、前半にCFの動向をお伝えするとともに、後半では「キッチンスタジオ 横浜ミサリングファクトリー」の代表松本美佐さんがどのようにCFに取り組んで、成功していったのかの事例をお伝えしたいと思います。

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 https://faavo.jp/yokohama/project/317

 2014年の中小企業白書でもCFは新しい潮流として数十ページをさいて紹介されていました。それ程、CFには注目が集まっているといえるでしょう。

CFの可能性

 個人事業での資金調達といえば、(1)自分で貯める、(2)親から出世払いでお金を借りる、(3)ある程度自己資金のある方なら銀行融資、(4)アベノミクスで増加した補助金活用の3つの手段が代表的でしょう。これに加えて、5つ目の手段として、近年CFに注目が集まっていました。

 しかし、CFは、「世の中にいいことをするから、寄付して!」といったトーンのものが多く、堅実に実業を行いたい企業には向かないものだとも感じていました。ところが今回のお菓子教室の事例で、そうではない、むしろ、人と人とのつながりが必要なビジネスは、どんどんCFに挑戦すべきだと感じました。CFは単なる資金調達ではなくて、「人と人とのつながり」を集めながら、資金をも集めるものであるといえます。

 逆にいうと、顧客とのつながりやコミュニケーションが必要なビジネスを実施する場合、CFで資金調達ができないようであれば、実際のビジネスも成功しないのではないか、とさえ感じています。

クラウドファンディングとは

 では、ここでCFとはどのように資金を調達していく手段なのか確認していきます。CFは、ビジネスに必要な資金を少額ずつ多数の人から調達する手段のことです。いくつかのパターンがありますが、代表的なものとしては、(1)事業者が資金調達したい目標金額を定めたプロジェクトを登録し、(2)限られた期間で、プロジェクトに共感する個人が出資します。(3)最終的に出資金額が、目標金額を達したら、事業者資金が調達でき、(4)サービス提供者は仲介手数料を受け取り、(5)出資者はリターン品を受け取ることになります。

 そして、CFの重要な点としては、ITを活用した資金調達であることでしょう。もしITを使わずに駅前で寄付を求めていても、大した額は集まらないでしょう。寄付を求める時間に、別のことをして働いたほうが資金は集められます。しかしITを活用した資金調達は、うまく広げていくことができれば、駅前で募金を集めるより大きな金額を調達できるチャンスがあります。いかに話題性を出して、興味をもつターゲットユーザを集められるかが勝負です。

(図表)CFのビジネスモデル
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クラウドファンディングの種類

 CFは以下の4類型に分類されます。
(図表)CFの類型
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出典:中小企業白書2014(p415)より引用修正

「寄付型」は名前の通り、出資者への見返りがないパターンです。社会貢献や、環境保全活動など、世の中に役立つことをするから寄付をお願いするということです。少額から募集をして広く薄く集めていく場合が多いです。

「購入型」は、資金調達をして商品やサービスを企画し、その商品やサービスをリターンとして返すパターンです。自社の開発する商品やサービスのテストマーケティング的にも使われることが多いです。CFでの出資が多ければ、発売後も売れる可能性が高いためです。

「貸付型」は、金銭が見返りとして返ってくるパターンです。例えば5%と設定しているプロジェクトに、1万円を出資した場合は、1万5百円が戻ってくるものです。金融機関の貸付と似ていると言えます。しかし金融機関は、創業から日が浅い企業や新規事業など事業性を評価しづらいものには中々融資がスムーズにいかないものです。そんな場合に金融機関以外からの借入という形で資金調達できます。

「投資型」も貸付型と同じく金銭がリターンとなるパターンです。ただし貸付型と違って、出資した金額以上が戻ってくるとは限りません。年間売上1000万円が損益分岐点として設定されたプロジェクトに投資した場合、損益分岐点を上まった場合は、出資金以上のリターンがありますが、下回った場合は、出資金以下となってしまいます。

クラウドファンディングの流行り具合

 それでは、CFはどれくらい活用されているのでしょうか。その流行り具合をGoogleトレンドで調べてみます。Googleトレンドは、検索量の傾向がどうなっているのか調べることができるGoogle社の無料のツールです。
 Googleトレンドで、「資金調達」と「CF」の検索量を比較すると、CFは2011年ごろから徐々に検索量が増加し、2012年には「資金調達」より「CF」の方が、検索量は多くなっています。今後も非常に注目され、活用される資金調達の手段といえるでしょう。

(図表)CFの検索トレンド
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 それでは、どれくらいの資金調達が実行されているのでしょうか。世界のクラウドファンディング 308 社を調査し Massolution(マスソリューション)社によると、2013年の予測の世界市場規模をみると、5000億円代とまだまだ大きくないです。しかし、急成長しているともいえますので、日本でも今後の成長余地がまだまだあると考えます。

(図表)クラウドファンディングで資金調達規模
(世界市場規模)
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(出典)中小企業白書2014(P413)

CF関連の会計や法制度

 それでは、CFで調達された資金は、会計上どのように処理するのでしょうか?出資という言葉から純資産の部をイメージしてしまいますが、実際は、収入勘定、負債勘定で処理されます。CFの類型によって、処理する勘定科目も異なってきますので、注意が必要ですね。

(図表)資金調達者の確定申告について
類型 勘定科目
寄付型 損益計算書上の雑収入等(収入勘定)
購入型 損益計算書上の売上(収入勘定)
借入型 貸借対照表上の借入金(負債勘定)
投資型 貸借対照表上の匿名組合預り金(負債勘定)

CF関連の会計や法制度

 サービスの提供者は多数存在しますが、その中でも主な提供者を以下に記載します。実は貸付型、投資型は以前から行われており、近年、CFが話題を集めるようになったのは、寄付型、購入型が増えたからと言えます。

(図表)CFサービス提供者の例
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(出典)中小企業白書2014(p426)引用一部改変

しかし、昨年から新しいパターンのCFが出現しています。それは、ある特定の分野に特化したCFです。

特化型クラウドファンディング

 特定分野に特化したCFは以下のようなものがあります。
特化型CFの例
 ・zenmono(ゼンモノ) ものづくりに特化
 ・Sportie FUND(スポーティー・ファンド) スポーツ特化
 ・Crowdrive(クラウドライブ) ゲーム特化
 ・FAAVO(ファーボ) 地域特化

 それ以外にも学生特化型、写真特化型、出版特化型のようなものもあります。名前の通り、特化したテーマについてのみ資金調達を行うCFの仕組みです。その中でも注目されるのは地域特化型でしょうか。先日も、横浜市とCF運営3社が共同で横浜市内企業への資金調達の発表を行いました。自治体も、今までのような金融機関への制度融資の支援だけではなく、新たな取組に挑戦しており、今後も他の自治体でも取り組みが始まりそうです。そして今回紹介する松本さんの事例も、横浜市という地域特化のCFで成功した事例になります。

事例:お菓子教室のCFの取り組み〜教室管理システムの作成で資金調達!

 ミサリングファクトリーは、松本美佐さんが運営されている、横浜市港南区にある創業8年目のお菓子教室です。「家族がびっくりするおいしいお菓子を作りたい」をキーワードに、基礎から上級編まで、子どもから大人までが参加できる教室です。また、東京都中小企業診断士協会中央支部で開催された「婚活お菓子教室」の先生をしていただいたこともあります。さらに教室事業だけに留まらず、法人向けのメニュー開発なども手がけられています。

 そんな松本さんから、Webサービスを企画していきたいので相談に乗って欲しいと言われた時は少しびっくりしました。お菓子教室がWebサービスを企画してシナジーが発揮できるんだろうかと思ったものです。しかし内容を聞いてみると、お菓子教室など多数の教室事業がある中で、教室の先生はみんな共通の課題を持っているとのことでした。それは、生徒の出欠や、振替、入金の管理など、教室を管理する業務の負荷が高過ぎるというのです。松本さんのミサリングファクトリーでも、フランス菓子コースや、キッズコースなどのコースは8種類程度ですが、コースごとにさまざまなレッスンが展開され、年間で200程度のレッスンが開催され、のべ850人が参加されています。この管理を一人でやると思うとぞっとしますね。

 しかし世の中には、個人教室レベルの教室管理システムでピッタリ来るものがない。そこで自分のためにも欲しいし、何より世の中の教室管理の負荷に苦しんでいる先生たちを楽にしたいという思いからこのサービスの企画を考えついたということでした。

 しかし、サービスを立ち上げるにはどうしても初期費用がかかります。資金調達をしたい。しかし、金融機関に相談しても、既存事業への融資はOKだが、新規サービスへの融資はNGであるという回答が帰ってくるばかりでした。そこで、松本さんは、CFに挑戦することになりました。

 はたして、CFで本当に資金調達なんかできるのだろうか・・・という不安な立ち上がりでした。それではその時の様子を松本さんに直接伺ってみます。

ミサリングファクトリー松本さんに聞く!


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Q1 お菓子教室をやっているのに、教室管理システムをつくろうと思ったのはどうしてですか?
お菓子教室以外に、教室開業スクールを運営しています。今後は事業の柱として、こちらを育てていきたいと思っていました。その中でありそうでない「教室向けの顧客管理システム」の新規性と必要性を感じたからです。なにより自分も楽になりたいという気持ちもありました。

Q2 なぜ、CFをしようと思ったのですか? 
 2014年春、懇意にして頂いている関内イノベーションイニシアティブ株式会社の治田社長にたまたまこの企画の話しをしたところ、「FAAVO横浜をスタートするので起案してみてはどうか。」とお声掛け頂いたからです。もし自分がCFを達成できれば、お世話になっている治田さんに、実績としてもお役に立てるかなと思ったからです。

Q3 CFを実施する際に一番苦労したことはなんですか?
 CFはただの資金調達する手段ではなく、宣伝広告を兼ねていると聞いてはいたのですが、思っていた以上に時間と手間がかかりました。協力してくれる仲間がいたお陰で起案することが出来ましたが、自分ひとりではとてもできる規模ではありませんでした。

Q4 CFを達成した時にお気持ちを教えて下さい。
100万円達成は正直半信半疑だったので、びっくりしました。また、プロジェクトへ本当に多くの方が支援して下さったこと、達成しなかったら自分が最後入れようと思っていたという方が何人もいたことが分かり深く感謝すると共に、責任の重大さも感じました。

Q5 今後、ミサリングファクトリーはどんな方向へ進んでいきますか?
教室事業支援を中心に運営していきます。また、小さくてもおもしろいビジネスをしている経営者仲間とのネットワークを活かし、ユニークなビジネスをしかけていけたらおもしろいなと思っています。

Q6 今後CFで調達しようと持っている皆さんへ一言
CFは簡単でも手軽でもありませんが、今までは融資が受けられなければ諦めるしかなかった事業でも資金調達が出来る可能性があるというのは大きな希望ではないでしょうか。ビジネスプランが市場に受け入れられるかどうかという試金石にもなると思います。

tetoco(テトコ)について

 松本さんがCFで資金調達をして、開発をされているtetocoは自宅教室などを中心に頑張っている先生を応援するアプリです。教室管理で一番大変なのは、誰がどの授業に申し込んだのか?振替したのか?お金はもらったのか?などの情報管理です。こういった、パソコンの苦手な先生でも出来る限り簡単に管理できるように開発されたのがtetocoです。

主な機能は、以下のとおりです。
・教室管理 コース・レッスン管理
・申し込み管理・出欠管理
・講師の割付管理
・生徒や講師の基本情報管理
・メッセージ機能・集金管理
 ※一部機能は、サービス開始時には含まれない可能性があります。
 なお、2015年の11月からのサービス開始を予定しています。

まとめ

 ITによる資金調達というと、ホームページに情報を載せて募集するだけで資金調達できた!と感じてしまうかもしれません。それは全く違います。松本さんも思った以上に時間がかかったと言われていますが、CFを成功させるために、以下のようなことをされています。

 ・イベントの開催:有名教室の講師を集めて一日体験スクールイベントを実施
 ・プロジェクトの意義を伝える動画を作成
 ・専用のホームページを作成
 ・SNSをフル活用して告知
 ・横浜市の有望ビジネスへの応募(認定)
 ・事業計画の策定
 ・プレスリリース
 ・インターネットTVへの出演
 ・リターン品の準備:出資者に対して、Tシャツや体験チケットの発行準備 etc

 特にプレスリリースがうまく行き、イベント時に取材が入り、その結果、地元のインターネットTVに出演すると、その内容が横浜経済新聞経由でYahoo!ニュースに掲載されるなど、メディアでの拡散につながました。その結果がCFの成功を導きましたが、その道程は簡単ではありませんでした。

 はっきり言って、通常の銀行での資金調達の方が、実行の手間は低いと言えます。では、CFは割にあわないかというと、そうではありません。銀行での資金調達と違って、CFで調達に成功した場合、ある程度のそのビジネスの成功は見えてきます。なぜならビジネスが始まる前に、

サポーター ≒ 多くの出資者 ≒ 仲間 ≒ 顧客

がすでに集まっているからです。

 松本さんの今回のプロジェクトでは164名ものサポーターが手を上げてくれました。友人知人が中心ですが、教室を運営する先生や、一緒にサービスを企画したいIT事業者、新しくお菓子のメニュー開発をして欲しい企業なども集まっています。事業を始める前にこれだけのメンバを集めることができる。資金だけではなく、“つながり”を調達できる、それこそが“クラウドファンディング”の最大の魅力と言えます。 

 そして、忘れてはいけないのは、クラウドファンディングでの調達はゴールではなく、スタート地点であるということです。これからも松本さんのビジネスの展開に期待していきたいですね。

テトコ(tetoco)はこの冬サービス開始予定です


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なお、本記事は、2015年3月月刊企業診断に掲載されたものです。