第9章 店舗立地と商業集積
この章のねらい 運営管理の後半「店舗・販売管理(マーチャンダイジング)」の入り口です。 ここは毎年3〜5問が安定して出る、運営管理のなかでも指折りの得点源です。 出方は大きく3つ。①小売業の類型・統計(業態別販売額、商店街実態調査、SC白書などの"数字と傾向")、 ②商圏分析の計算(ライリーの法則・ライリー&コンバース・修正ハフモデル)、 ③まちづくり関連の法律(都市計画法・大規模小売店舗立地法・中心市街地活性化法・立地適正化計画)です。
過去問での出方:計算問題(②)は公式さえ覚えれば確実に取れるので、まずここを固めます。 統計問題(①)と法律問題(③)は暗記勝負ですが、「近隣型/地域型/広域型」「まちづくり三法の役割分担」など、 問われる型が毎年ほぼ同じなので、パターンで押さえれば安定します。難問化しにくく、コスパの高い章です。
9-0 この章の地図
この章は、「誰が売るか(小売業の分類)」→「どこまで客が来るか(商圏)」→「店の集まり(商業集積)」→ 「まちづくりのルール(法律)」という順に進みます。まず全体像をつかみましょう。
9-1 小売業の類型と業態 … 業種と業態のちがい/小売の輪/業態別統計
│
9-2 商圏分析(★計算頻出) … ライリーの法則/ライリー&コンバース/修正ハフモデル
│
9-3 商業集積 … 商店街(実態調査の4類型)/ショッピングセンター/共同店舗
│
9-4 中心市街地活性化とまちづくり … まちづくり三法/都市計画法(用途地域)/大店立地法/立地適正化計画
- 9-2は計算、9-1・9-3は統計の暗記、9-4は法律の暗記、と性格がはっきり分かれます。
- 迷ったら、まず9-2の計算を完璧にするのが、いちばん手っ取り早い得点アップです。
9-1 小売業の類型と業態
「業種」と「業態」はどう違う?
小売業を分類するとき、まず2つのものさしを区別します。ここは言葉の土台なので、しっかり押さえましょう。
| ものさし | 意味 | 分類の視点 | 例 |
|---|---|---|---|
| 業種(ぎょうしゅ) | 何を売るか(取扱商品の種類) | モノで分ける | 酒屋・魚屋・薬屋・本屋 |
| 業態(ぎょうたい) | どう売るか(売り方・営業形態) | 売り方で分ける | スーパー・コンビニ・百貨店・ドラッグストア |
💡 覚え方:業種=「種(たね)」=商品の種類、業態=「態(かたち・すがた)」=売り方のかたち。 「魚屋」は業種、「スーパーマーケット」は業態、と紐づけて覚えます。
小売業の歴史は、ざっくり言えば「業種店(専門の小さな店)」から「業態店(大きく効率的な売り方の店)」へ、 という流れでとらえられます。コンビニやスーパーは、商品の種類ではなく売り方の工夫で勝負する業態店です。
代表的な業態のイメージ
| 業態 | 特徴(ざっくり) |
|---|---|
| 百貨店 | 都心・駅前立地。対面販売・高級品・幅広い品ぞろえ。近年は縮小傾向 |
| 総合スーパー(GMS)/食品スーパー | セルフサービス・低価格・食品中心。小売業態で販売額トップ級 |
| コンビニエンスストア | 小型・長時間営業・高頻度来店。最寄り品中心 |
| ドラッグストア | 医薬品+日用品+食品。近年急成長し百貨店を上回る規模に |
| ホームセンター/専門量販店 | DIY・家電など特定分野を大量・低価格で |
「小売の輪」理論(マクネア)
新しい業態がどう生まれ、どう変わっていくかを説明する有名な考え方が 「小売の輪(The Wheel of Retailing)」理論(M. マクネア)です。
① 低価格・低コストで新規参入
(既存店より安い"殴り込み"の業態が現れる)
↓
② 成長すると、他店との差別化のためサービス・設備を充実
(=だんだん高コスト・高価格になる=「格上げ(トレーディングアップ)」)
↓
③ すると、また別の「低価格・低コストの新業態」に隙をつかれる
↓
①に戻る(輪=ぐるぐる回る)
- ポイントは、新業態は"低価格・低コスト"を武器に登場するという点。
- ただし「価格ではなくサービスで参入する業態もある」など、この理論だけでは説明しきれない例外もあります。 試験では理論の名前と「低価格参入→高コスト化→また新業態」の流れを押さえれば十分です。
⚠️ 混同注意:業態の発展を説明する理論は複数あります。 - 小売の輪:低価格で参入 → 高コスト化していく(マクネア) - 真空地帯理論:消費者の好みの分布から、サービス水準の"すき間(真空地帯)"に新業態が生まれる - アコーディオン理論:品ぞろえが「総合的(広い)」⇄「専門的(狭い)」の間を伸縮する 名前と中身の対応を1対1で覚えましょう。
業態別の販売額 ― "順位と傾向"が問われる
統計問題では、業態別の年間販売額のおおよその大小関係と、近年の増減トレンドが問われます。 細かい数字を暗記する必要はなく、「どの業態が大きいか・伸びているか」をつかめば解けます。
販売額のおおよその大小(近年)
スーパー > コンビニ > ドラッグストア > 百貨店
(最大) (相対的に縮小)
トレンド: ドラッグストア=右肩上がり / 百貨店=縮小
(コロナ禍の2020年は特に百貨店が大きく落ち込み最小に)
📝 過去問はこう出る(R04 第22問) 2020年の業態別販売額のグラフで、a〜dがどの業態かを当てる問題。 正解は「a=スーパー、b=コンビニ、c=ドラッグストア、d=百貨店」。 2020年はコロナ禍で百貨店が大きく落ち込み最小になった年、というのが判断のカギでした。 → R04 第22問 / R06 第22問
9-2 商圏分析 ― ここは計算で確実に取る ★最頻出
商圏とは何か
商圏とは、ひとことで言えば
「ある店(または商業集積)に、お客さんが買い物に来てくれる地理的な範囲」
のことです。商圏は「その店にどれだけ集客力(吸引力)があるか」で広がったり狭まったりします。 この吸引力を数式で推定するのが、これから学ぶ3つのモデルです。
商圏の階層(3つのレベル)
商圏は、来店頻度と購買品目によって、内側から外側へ次のように分けて考えます。
| 商圏 | イメージ | 主に買うもの |
|---|---|---|
| 第1次商圏 | いちばん近い・来店頻度が高い中心層 | 最寄り品(食料品・日用品など毎日買うもの) |
| 第2次商圏 | やや遠い | 買回り品(衣料など時々買うもの) |
| 第3次商圏 | いちばん外側・たまに来る | 専門品(高級品など) |
- 最寄り品(もよりひん)=近所でこまめに買う商品 → 商圏は狭い
- 買回り品(かいまわりひん)=いくつか店を見比べて買う商品 → 商圏は広い
- 大きな店・専門店ほど、遠くからも人を呼べるので商圏が広い、というのが基本です。
モデル① ライリーの法則(小売引力の法則)
2つの都市A・Bが、その中間にある町Xの購買力を、どんな割合で奪い合うかを推定する法則です。
ライリーの法則:2都市がX町から吸引する購買額の比は、 各都市の人口に比例し、各都市までの距離の2乗に反比例する。
数式で書くと、次のようになります。
$$\frac{A市の吸引力}{B市の吸引力} = \frac{P_A}{P_B} \times \left(\frac{d_B}{d_A}\right)^2$$
- $P_A, P_B$:A市・B市の人口
- $d_A, d_B$:X町からA市・B市までの距離
- ポイントは「距離は2乗」「人口はそのまま」「距離は分母(反比例)」の3点。
⚠️ 混同注意:ライリーの法則で使う変数は人口と距離だけ。 面積や所得(の差)は使いません。ここは選択肢でよく引っかけられます。
【計算ステップ例(R07 第24問)】
問題:A市とB市の人口比が A:B=3:8。吸引力の比が A:B=3:2 のとき、 X町からの距離の比 XA:XB は?
- ステップ1 公式に当てはめる(吸引力比=人口比 ×(距離の逆比)の2乗)。
$$\frac{3}{2} = \frac{3}{8} \times \left(\frac{XB}{XA}\right)^2$$
- ステップ2 距離の項について解く。
$$\left(\frac{XB}{XA}\right)^2 = \frac{3/2}{3/8} = \frac{3}{2}\times\frac{8}{3} = 4$$
- ステップ3 両辺の平方根をとる。
$$\frac{XB}{XA} = 2 \;\Rightarrow\; XA:XB = 1:2$$
- 答え:XA:XB=1:2。 (人口の少ないA市が吸引力比で2/3を確保できているのは、A市の方が近い=XAが小さいから、と考えると納得できます。)
📝 過去問はこう出る(R07 第24問) 上のとおり正解は XA:XB=1:2(選択肢イ)。 「距離比の2乗が4だから距離比も4(1:4)」としてしまうのが典型ミス。 2乗を外す(=平方根をとる)のを忘れないこと。 → R07 第24問 / R04 第25問
📝 過去問はこう出る(H30 第23問) 「ライリーの法則の計算に必要な比率はどれか」を選ぶ問題。 正解は「人口の比(a)と距離の比(c)」。面積の比(b)・所得差の比(d)は不要。 公式の変数を正しく覚えていれば即答できます。 → H30 第23問
モデル② ライリー&コンバースの法則(商圏分岐点を求める)
ライリーの法則を発展させ、「2都市A・Bのちょうど勢力が等しくなる地点(商圏分岐点)は、 どこにあるか」を求めるのがライリー&コンバースの法則(新小売引力の法則)です。
小都市(人口の少ない市)から見た分岐点までの距離は、次の式で求めます。
$$分岐点距離(小都市側) = \frac{2都市間の距離}{1 + \sqrt{\dfrac{大都市の人口}{小都市の人口}}}$$
【計算ステップ例(R02 第25問)】
問題:A市48万人、B市12万人、2都市間の距離15km。B市から見た商圏分岐点までの距離は?
- ステップ1 どちらが小都市か確認する。A市48万>B市12万 なので、B市が小都市。→ 公式そのまま使える。
- ステップ2 ルートの中身を計算する。
$$\sqrt{\frac{大都市の人口}{小都市の人口}} = \sqrt{\frac{48}{12}} = \sqrt{4} = 2$$
- ステップ3 公式に代入する。
$$分岐点距離 = \frac{15}{1 + 2} = \frac{15}{3} = 5\,\text{km}$$
- 答え:B市から5km(=A市からは10km。大都市Aの方が引力が強いので、分岐点は小都市B寄りになる)。
📝 過去問はこう出る(R02 第25問) 正解は 5km(選択肢ウ)。問題文に「失業率」など計算に使わない情報がまぎれ込んでいることがありますが、 使う数字は人口と距離だけ。ダミー情報に惑わされないこと。 → R02 第25問
モデル③ 修正ハフモデル(来店確率を求める)★近年頻出
ハフモデルは、消費者が複数の店のうち、ある店を選ぶ確率を推定するモデルです。 「店の魅力度(=売場面積)が大きいほど行きたくなる/遠いほど行きたくなくなる」を数式にします。
日本で試験に出るのは、通商産業省(当時)が示した修正ハフモデルです。各店の吸引力を次で計算します。
$$店iの吸引力 = \frac{店iの売場面積}{(店iまでの距離)^{\lambda}}\qquad(\lambda=距離抵抗係数)$$
そして、店Aを選ぶ確率は「Aの吸引力 ÷ 全店の吸引力の合計」で求めます。
$$P(A) = \frac{店Aの吸引力}{店Aの吸引力 + 店Bの吸引力 + \cdots}$$
- λ(ラムダ)=距離抵抗係数:距離をどれくらい"嫌がるか"の度合い。問題文で「λ=2」と与えられたら距離を2乗します。
- 修正ハフモデルの魅力度は売場面積を使う、という点も頻出。
【計算ステップ例(R03 第24問)】
条件:店Aは売場面積1,000㎡・距離1,000m、店Bは売場面積2,000㎡・距離2,000m、距離抵抗係数λ=2。 消費者Xが店Aに行く確率は?
-
ステップ1 各店の吸引力を「売場面積 ÷ 距離のλ乗(=距離の2乗)」で計算する。
-
店A:$1{,}000 \div 1{,}000^2 = 1{,}000 \div 1{,}000{,}000 = 0.001$
-
店B:$2{,}000 \div 2{,}000^2 = 2{,}000 \div 4{,}000{,}000 = 0.0005$
-
ステップ2 店Aを選ぶ確率=Aの吸引力 ÷(A+B)。
$$P(A) = \frac{0.001}{0.001 + 0.0005} = \frac{0.001}{0.0015} = \frac{2}{3} \approx 0.667$$
- 答え:約2/3(約67%)。 店Bの方が売場面積は2倍で大きいのに、距離が2倍で「距離の2乗=4倍」の抵抗を受けるため、 結局近い店Aの方が選ばれやすい、という結果になります。
📝 過去問はこう出る(R03 第24問) 正解は 2/3。計算のコツは、分子・分母を通分せず、そのまま比で処理すること。 「面積 ÷ 距離の2乗」を各店で出し、その比をとるだけです。 → R03 第24問 / H25 第24問
💡 3モデルの使い分け(まとめ) | モデル | 何を求める? | 使う変数 | キーワード | |---|---|---|---| | ライリーの法則 | 2都市の吸引力の比 | 人口・距離(距離は2乗) | 「〜の比」 | | ライリー&コンバース | 商圏分岐点の距離 | 人口・都市間距離 | 「分岐点」「境目」 | | 修正ハフモデル | ある店への来店確率 | 売場面積・距離・λ | 「確率」「%」「売場面積」 |
9-3 商業集積 ― 店の"集まり"を分類する
店が集まってできる商業集積には、大きく「自然発生的にできた商店街」と「計画的につくられたショッピングセンター」があります。
商店街 ― 実態調査の「4類型」を覚える
中小企業庁『商店街実態調査報告書』では、商店街を商圏の広さ・取扱商品により4つのタイプに分類します。 このタイプ分けはそのまま毎年のように問われるので、必ず区別できるようにします。
| タイプ | 商圏の広さ | 主な取扱商品 | 来街の仕方 |
|---|---|---|---|
| 近隣型商店街 | いちばん狭い | 最寄り品中心 | 徒歩・自転車 |
| 地域型商店街 | やや広い | 最寄り品+買回り品が混在 | 徒歩・自転車・バス等 |
| 広域型商店街 | 広い | 大型店あり・買回り品が多い | 遠方からも来街 |
| 超広域型商店街 | いちばん広い | 大型店あり・有名専門店・高級専門店中心 | 遠距離からも来街 |
- 覚え方は「近隣<地域<広域<超広域」の順に商圏が広がり、扱う商品も最寄り品→買回り品→専門品へ移る、という流れ。
- 引っかけは、この説明文を入れ替えるパターン(「近隣型」の欄に「地域型」の説明を書くなど)。
📝 過去問はこう出る(H30 第22問) 商店街4類型の説明を選ぶ問題。正解は「超広域型商店街=大型店があり、有名専門店・高級専門店を中心に構成され、 遠距離からも来街する商店街」(選択肢エ)。 「近隣型」に地域型の説明を当てた選択肢などが引っかけでした。 → H30 第22問 / R05 第23問
商店街の課題(空洞化・空き店舗)も頻出です。実態調査では、後継者難・大型店との競合・空き店舗の増加などが 繰り返し課題として挙がっています。これらは9-4の「まちづくり政策」の背景にもなります。
ショッピングセンター(SC) ― ディベロッパーが計画的につくる
ショッピングセンター(SC)は、ディベロッパー(開発・運営者)が計画的に開発・所有・運営し、 複数のテナント(賃借して出店する店)を集めた商業施設です。商店街との最大の違いは、 「一体的に計画・運営される(=管理主体がいる)」点です。
SCには通常、集客の核となるキーテナント(核店舗)(百貨店やGMSなど)が置かれます。 統計(『SC白書』)では、次のような現況の傾向が問われます。
SCの現況(おおまかな傾向)
・新規開設SCの立地は「中心地域」より「周辺地域(郊外)」が多い
・業種別テナント数は「物販店」が最多(>飲食店>サービス)
・ビル形態別は「商業ビル(郊外型など)」が「駅ビル」より多い
・1SC当たり平均テナント数は50店舗強、平均店舗面積は1.6〜1.7万㎡程度
📝 過去問はこう出る(R05 第22問) 『SC白書2023』の現況を問う問題。正解は「2022年開設SCの立地は「中心地域」より「周辺地域」の方が多い」(選択肢ウ)。 「平均テナント数は約100店舗(→実際は50店舗強)」「飲食店が物販店より多い(→逆)」などは、数字を過大にしたり順序を逆にした引っかけ。 → R05 第22問 / R07 第22問
SCの賃料(テナント料)の徴収形態も計算込みで問われます。
| 賃料形態 | 中身 | 特徴 |
|---|---|---|
| 固定家賃 | 売上に関係なく一定額 | ディベロッパーが安定収入を見込める |
| 歩合型(売上歩合)家賃 | 売上高 × 一定率 | 売上が伸びると賃料も増える。ディベロッパーにテナント支援のインセンティブを与える |
| 最低保証家賃 | 歩合型の下限を保証 | 売上低迷時のリスクを抑える。歩合型と組み合わせて使う |
📝 過去問はこう出る(H25 第25問) 賃料形態と計算の穴埋め問題。A=固定家賃、B=歩合型家賃、C=最低保証家賃。 計算は「歩合額(売上×料率)と最低保証額の高い方」を採用する点がカギ。 売上400万円×10%=40万円 < 最低保証50万円 なので、賃料は50万円(選択肢イ)。 → H25 第25問
共同店舗
共同店舗は、商店街の複数の小売店などが共同で1つの店舗(建物)をつくり、 一体的に運営するものです。SCが外部のディベロッパー主導なのに対し、共同店舗は 地元の商業者が主体となって集積の魅力を高める取り組み、というイメージです。
9-4 中心市街地活性化とまちづくり
郊外への大型店出店が進み、中心市街地(まちなか)の商店街が空洞化した—— この問題に対応する法律のセットがまちづくり三法です。ここは法律の役割分担が問われます。
まちづくり三法 ― 3つの法律の役割分担 ★重要
| 法律 | 役割(ひとことで) | キーワード |
|---|---|---|
| 都市計画法 | どこに建てられるかを土地利用で計画的に誘導 | ゾーニング(用途地域) |
| 大規模小売店舗立地法(大店立地法) | 大型店出店時に周辺の生活環境を保持する観点でチェック | 交通渋滞・騒音・廃棄物 |
| 中心市街地活性化法 | 衰退した中心部に資源を集中して振興する | 振興・支援 |
まちづくり三法の分担イメージ
都市計画法 ──→ 「どこに出せるか」(立地の誘導=ゾーニング)
大店立地法 ──→ 「出すとき周辺環境は大丈夫か」(生活環境チェック)
中心市街地 ──→ 「中心部を元気にする」(振興・支援)
活性化法
📝 過去問はこう出る(H30 第21問) まちづくり三法のねらいの穴埋め。正解は「A=振興、B=都市計画法、C=大規模小売店舗立地法」(選択肢エ)。 中心市街地活性化法は「振興」政策の系譜、立地の計画的誘導(ゾーニング)は都市計画法、 周辺生活環境のチェックは大店立地法、という3点セットで覚えます。 → H30 第21問 / H20 第22問
⚠️ 混同注意:大店立地法は「周辺の生活環境(渋滞・騒音・駐車場など)」を見る法律で、 かつての大店法(大規模小売店舗法)のように商業調整(中小小売業の保護)を目的とはしていません。 ここは狙われる論点です。
都市計画法 ― 用途地域と大型店の立地
都市計画法は、土地を用途地域に区分し、「その地域にどんな建物を建てられるか」を定めます。 大型店(大規模小売店舗)が出店できるかどうかは、用途地域と床面積で決まります。
| 用途地域(一部) | 出店できる店舗の目安 |
|---|---|
| 第二種中高層住居専用地域 | 床面積1,500㎡以下(2階以下) |
| 第一種住居地域 | 床面積3,000㎡以下 |
| 準住居地域・近隣商業地域外 の一部 | 床面積10,000㎡以下 など段階的に拡大 |
| 近隣商業地域・商業地域 | 床面積の制限なし(大規模店も出店可) |
- おおまかに「住居系ほど制限が厳しく(小さい店まで)、商業系ほど制限がゆるい(大きい店OK)」と覚えます。
- 近隣商業地域・商業地域は面積無制限、という点だけでも押さえておくと得点しやすいです。
📝 過去問はこう出る(H27 第23問) 用途地域ごとの出店可否を問う問題。正解は「近隣商業地域・商業地域では店舗面積の制限がなく、 15,000㎡の大規模店も出店できる」(選択肢オ)。他は「その用途地域の面積上限を超える店を出せるとした」誤り。 → H27 第23問 / R06 第23問
💡 都市計画区域の指定は「都道府県」:都市計画区域を指定するのは都道府県(複数都府県にまたがる場合は国土交通大臣)で、 市区町村ではありません(R06 第23問)。「誰が決めるか」の主体もよく問われます。
大規模小売店舗立地法(大店立地法)の手続き
大型店を出すときは、開店前(原則8カ月前まで)に都道府県(または政令指定都市)へ届出を行います。
- 対象は店舗面積1,000㎡超の大規模小売店舗。
- チェックするのは周辺の生活環境(交通渋滞・駐車場・騒音・廃棄物など)。
- 開店後の事後届出ではなく、開店前の事前届出である点が引っかけ頻出。
📝 過去問はこう出る(R05 第25問) 大店立地法の手続きを問う問題。「大型店の新設は開店"後"ではなく開店前(原則8カ月前まで)に届出が必要」がポイント。 事後届出とした選択肢は誤り。 → R05 第25問 / R07 第25問
中心市街地活性化法
中心市街地活性化法は、衰退した中心市街地を再生するための法律です。市町村が基本計画を作成し、 国(内閣総理大臣)の認定を受けて、国の支援を集中的に受けます。中心市街地の要件(相当数の小売業の集積があり、 市町村の中心としての役割を果たしている、など)や、認定中心市街地の実績評価(通行量など集客系は比較的達成、 一方で空き店舗対策は進みにくい)が問われます。
📝 過去問はこう出る(H28 第23問) 平成26年改正前の認定中心市街地の状況を問う問題。正解は「目標達成率は「通行量」「施設入込数等」が比較的高いのに対し、 「空き店舗等」が低かった」(選択肢エ)。集客・回遊は一定の効果があった一方、店舗の空洞化対策は難航した、という実態です。 → H28 第23問 / H24 第23問
立地適正化計画(コンパクトシティ)
人口減少・高齢化に対応し、居住や都市機能を中心部に集約する「コンパクトシティ」を実現するための計画が、 都市再生特別措置法にもとづく立地適正化計画です。近年よく出ています。
- 作成主体は市町村(都道府県ではない)。
- 居住誘導区域(人を住まわせたい区域)と都市機能誘導区域(施設を集めたい区域)を定める。
- 都市機能増進施設には、商業施設だけでなく医療・福祉・教育施設なども含まれる。
📝 過去問はこう出る(R05 第27問) 立地適正化計画の正誤問題。正解の組合せは「作成主体は市町村(=都道府県主体は誤り)/都市機能増進施設に医療・教育も含む(=含まないは誤り)/ 1市町村内に複数の都市計画区域があれば原則すべてを対象(正)」(選択肢オ)。 「作成主体=市町村」「増進施設に医療・教育も含む」の2点が特に狙われます。 → R05 第27問 / R01 第24問
地域商店街活性化法
商店街そのものの活性化を後押しするのが地域商店街活性化法です。 商店街振興組合などの取り組みを認定・支援するもので、対象事業にはハード(施設整備)だけでなくソフト事業も含む点が問われます。
📝 過去問はこう出る(H30 第25問) 地域商店街活性化法の「最も不適切」を選ぶ問題。正解(=誤り)は「同法の事業はハード事業のみを基本目的とする」(選択肢ウ)。 実際はソフト事業も含み、商店街は地域コミュニティの担い手としての役割も期待されています。 → H30 第25問
この章のまとめ(試験直前チェック)
- ☐ 業種=何を売るか(商品の種類)/業態=どう売るか(売り方)
- ☐ 小売の輪(マクネア)=新業態は低価格・低コストで参入→高コスト化→また新業態
- ☐ 業態別販売額の大小=スーパー>コンビニ>ドラッグストア>百貨店(ドラッグストアは成長、百貨店は縮小)
- ☐ 商圏の階層=第1次(最寄り品・狭い)→第2次(買回り品)→第3次(専門品・広い)
- ☐ ライリーの法則:吸引力比=人口比 ×(距離の逆比)²(面積・所得は使わない)
- ☐ ライリー&コンバース:分岐点距離=都市間距離 ÷(1+√(大都市人口/小都市人口))
- ☐ 修正ハフモデル:各店の吸引力=売場面積 ÷ 距離^λ、来店確率=その比。λ=2なら距離を2乗
- ☐ 計算で2乗を外し忘れない/ダミー情報(失業率など)に惑わされない
- ☐ 商店街4類型=近隣型<地域型<広域型<超広域型(最寄り品→買回り品→専門品)
- ☐ SC=ディベロッパーが計画運営/新規開設は郊外(周辺地域)が多い/物販店テナントが最多
- ☐ SC賃料=固定(安定収入)・歩合(インセンティブ)・最低保証(下限保証)、賃料は歩合と最低保証の高い方
- ☐ まちづくり三法=都市計画法(ゾーニング)・大店立地法(生活環境)・中心市街地活性化法(振興)
- ☐ 用途地域=近隣商業・商業地域は面積無制限/都市計画区域の指定は都道府県
- ☐ 大店立地法=1,000㎡超・開店前の事前届出(原則8カ月前)・生活環境のチェック(商業調整ではない)
- ☐ 立地適正化計画=作成主体は市町村/都市機能増進施設に医療・教育も含む(コンパクトシティ)
- ☐ 地域商店街活性化法=ハードだけでなくソフト事業も含む
この章に対応する主な過去問
| 年度・問 | 論点 | リンク |
|---|---|---|
| R04 第22問 | 業態別販売額(商業動態統計) | 問題 |
| R07 第24問 | ライリーの法則(距離比の計算) | 問題 |
| H30 第23問 | ライリーの法則(必要な変数) | 問題 |
| R02 第25問 | ライリー&コンバースの法則(商圏分岐点) | 問題 |
| R03 第24問 | 修正ハフモデル(来店確率) | 問題 |
| H30 第22問 | 商店街のタイプ(実態調査4類型) | 問題 |
| R05 第22問 | ショッピングセンターの現況(SC白書) | 問題 |
| H25 第25問 | SCの賃料徴収形態(固定・歩合・最低保証) | 問題 |
| H30 第21問 | まちづくり三法の役割分担 | 問題 |
| H27 第23問 | 用途地域と大型店の立地 | 問題 |
| R05 第25問 | 大規模小売店舗立地法の手続き | 問題 |
| H28 第23問 | 中心市街地活性化法(改正前の実績) | 問題 |
| R05 第27問 | 立地適正化計画(コンパクトシティ) | 問題 |
| H30 第25問 | 地域商店街活性化法 | 問題 |
次章予告 ▶ 第10章「店舗施設・設備とインストア・マーチャンダイジング」 本章で「どこに店を出すか(立地)」を学びました。次は店の中へ。 店舗施設・什器・照明などの店舗設計から、売場レイアウト(ワンウェイ動線・レジ前)、 ISM(インストア・マーチャンダイジング)、そして照明・色彩まで、"売れる売場のつくり方"を扱います。