第6章 企業間関係とM&A・提携

この章のねらい ここまでの章では「自社が単独でどう戦うか」を考えてきました。この章のテーマは、その一歩先── 「自社だけでやるか、他社と組むか、他社を買うか」という企業と企業の関係の問題です。 部品を自分で作るか外から買うか(垂直統合 vs 市場取引)、他社と手を組むか(提携)、 いっそ買ってしまうか(M&A)。この「どこまでを自社の内側に取り込むか」という 企業の境界(=どこまでが自社か)をめぐる意思決定が、本章のいちばんの背骨です。

過去問での出方:企業経営理論の第4〜6問あたりの常連テーマで、毎年のように必ず1〜2問出ます。 とくに垂直統合と取引コスト理論(ウィリアムソン)は近年(R06・R07)で連続出題される超頻出。 M&Aは用語の正確な定義(TOB・LBO・MBO・各種買収防衛策)を問う"暗記勝負"になりやすく、 戦略的提携はバーニー(RBV)の「裏切りをどう抑えるか」の視点が繰り返し問われます。 論点がはっきりしているぶん、準備すれば確実に得点できる分野です。


6-0 この章の地図

この章は、「自社でやるか/市場で買うか」という一本の軸を、だんだん具体化していきます。 まず境界の話(6-1)、その理論的な説明(6-2)、そして「買わずに・作らずに"組む"」提携(6-3)、 「組むより深く一体化する」M&A(6-4)、最後に日本的な中間形態(6-5)という順です。

6-1 垂直統合と市場取引     … 自社で作る(内部化) vs 市場から買う(外部調達)
   │                        「企業の境界」をどこに引くか
   ▼
6-2 取引コスト理論(ウィリアムソン) … ★超頻出。なぜ境界が決まるのかの"理屈"
   │                        限定合理性・機会主義・資産特殊性
   ▼
6-3 戦略的提携・アライアンス  … 買わず作らず"ゆるやかに組む"/JV
   │                        裏切りをどう抑えるか(バーニー)
   ▼
6-4 M&A(合併・買収)          … 一体化して取り込む/水平・垂直・多角化型/PMI
   │                        用語(TOB/LBO/MBO/買収防衛策)は暗記勝負
   ▼
6-5 系列・フランチャイズ      … 市場と組織の"中間"にある日本的な組織間関係

💡 この章を貫く1本の軸 左端が「市場取引(全部よそから買う)」、右端が「垂直統合・M&A(全部自社に取り込む)」。 提携・系列・FCは、そのあいだ(中間形態)に並びます。 「この論点は軸のどこの話か」を意識すると、すべての節がつながって見えてきます。


6-1 垂直統合と市場取引

まず用語:垂直統合とは「川上・川下の工程を自社に取り込む」こと

バリューチェーン(価値連鎖)=原材料の調達 → 部品 → 製造 → 卸 → 小売、という 「モノが価値を増しながら流れていく一連の工程」を思い浮かべてください。

垂直統合(vertical integration)とは、この流れの前や後ろの工程を、自社の事業範囲に取り込むことです。

  • 後方統合(川上への統合)原材料・部品の側へ取り込む(例:ワインメーカーが自社でブドウ畑を持つ)
  • 前方統合(川下への統合)流通・販売の側へ取り込む(例:メーカーが自社ECサイトで消費者に直販する)
【川上】原材料 ─→ 部品 ─→ ★製造(自社) ─→ 卸 ─→ 小売 【川下】
        ←─── 後方統合 ───┘        └─── 前方統合 ───→
      (調達側を取り込む)           (販売側を取り込む)

「自社の中で行う工程の数が多いほど、垂直統合度が高い」と表現します。反対に、工程の多くを 外の会社との市場取引(外部調達)でまかなえば、垂直統合度は低くなります。

⚠️ つまずきポイント:「取引条件を変える」だけでは垂直統合ではない 仕入価格を固定する、卸し先を遠方の店に変える、原料として別の業者に売る──これらは 取引"相手"や"条件"を変えているだけで、工程そのものを自社に取り込んではいません。 垂直統合=これまで外に任せていた工程(調達や小売)を、自社の中に入れること。ここを取り違えると R04第6問のような「どれが垂直統合か」を選ぶ問題を落とします。

垂直統合のメリット・デメリット

メリット(統合するとよいこと) デメリット(統合の弊害)
調達・供給 供給を安定確保できる/中間マージンを省ける 需要が減ると過剰な設備・在庫を抱える
品質・技術 品質を自社で管理/暗黙知・すり合わせが効く 特定工程に固定費・投資が縛られ、身動きが鈍る
取引の安全 相手の機会主義(後述)を防げる 組織が大きくなり内部の非効率・官僚化
インセンティブ 競争圧力が消え、コスト削減・改善の意欲が弱まる

ここで注意したいのは、垂直統合は「いつでも得」ではないということです。 市場取引には市場取引の強みがあり、「市場で安定して安く買えるなら、わざわざ取り込む必要はない」のが原則です。

📝 過去問はこう出る(R07 第5問) 「垂直統合と市場取引」の比較。正解は 「特定の取引相手しか供給できない財を調達する場合、市場取引よりも垂直統合が選択されやすい」(選択肢エ)。 引っかけの急所は"市場取引と垂直統合の得意分野の取り違え"です。 - 「暗黙知・文脈依存的な知識」の共有・活用が得意なのは → 垂直統合(組織内)(市場取引ではない) - 「コスト削減・品質向上のインセンティブ」が強く働くのは → 市場取引(競争圧力があるから)(統合ではない) - 「標準化された財」は多数から容易に買えるので → 市場取引が有利(統合ではない) → R07 第5問

📝 過去問はこう出る(R04 第6問/R02 第6問・H30 第6問) R04第6問は「どの行動が垂直統合か」を選ぶ問題で、正解は 「これまで酒販店に任せていた小売を、自社ECサイトで消費者に直接販売する」=前方統合(選択肢ウ)。 R02第6問・H30第6問は「垂直統合度を高める"要因"」を問い、いずれも 「取引相手が少数で機会主義的に動きうる/供給が不確実になる恐れがある」状況が正解でした(後述の取引コスト理論)。 逆に「仕入先が多数あり市場でいつでも安く買える」「完全な契約が結べる」場合は、統合の必要がないのでバツ。 → R04 第6問R02 第6問H30 第6問


6-2 取引コスト理論(ウィリアムソン)★超頻出

「取引コスト」とは何か

前節で「相手が少数だと統合が有利」と出てきました。なぜそうなるのかを理論で説明するのが、 O. ウィリアムソン取引コスト理論(transaction cost theory)です。ここは本章の心臓部で、 近年ほぼ毎年問われます。

取引コストとは、市場で他社と取引するときにかかる"見えないコスト"のこと。 モノの値段そのものではなく、「よい相手を探す・交渉する・契約書を作る・裏切られないよう監視する」 といった手間・費用の総称です。

ウィリアムソンの結論はシンプルです。 市場取引の取引コストが大きくなるほど、「市場で買う」より「自社で作る(=組織に内部化する=垂直統合)」ほうが有利になる。

つまり企業は、「市場(外で買う)か、組織(自社で作る)か」を、取引コストの大小で選んでいる、という見方です。 これを 「市場か組織か(market or hierarchy)」の境界の選択と呼びます。

取引コストを大きくする3つの前提・要因

取引コストが「なぜ」大きくなるのか。ウィリアムソンは、人間の性質2つと、取引の性質を挙げました。

用語 かみくだくと これが高いと…
① 限定合理性(bounded rationality) 人間の頭には限界があり、将来のあらゆる事態を見通した完璧な契約は書けない 契約でカバーしきれず、あとで揉める→コスト増
② 機会主義(opportunism) 相手はすきあらば自分に有利にずるく振る舞うかもしれない(利己的で抜け目ない) 監視・防御が必要になり→コスト増
③ 資産特殊性(asset specificity) その取引専用の設備・技術・知識に投資すること(=他に転用しにくい) 相手に足元を見られる→コスト増(下記ホールドアップ)

とくに大事なのが③資産特殊性です。「この取引のためだけの専用工場・専用金型」に大金を投じると、 その相手としか取引できなくなり、相手に「値下げしろ、さもないと取引をやめる」と足元を見られる危険が生じます。 これを ホールドアップ問題(hold-up problem) と呼びます。

【資産特殊性が高い取引】
  自社 ──専用投資(他に使えない)──→ 相手
   │                                   │
   └─ 相手が機会主義的にゴネると… ←────┘
      「足元を見られる」=ホールドアップ
   → 市場取引のコストが跳ね上がる
   → いっそ相手ごと取り込む(=垂直統合)ほうが安全・安上がり

💡 語呂で覚える:市場か組織かは「特・不・頻」で決まる 資産特殊性・不確実性・取引頻度が高いほど、市場取引のコストが増え → 内部化(組織・垂直統合)が有利。 逆に標準品を・多数の相手から・スポットで買えるなら → 市場取引で十分

内部化(組織)が機会主義を抑えられる理由

「自社に取り込むと、なぜ機会主義が減るの?」という点も問われます。 組織の内側では、上司が部下を継続的に評価し、指揮命令で調整できるため、 市場のように「ずるをして逃げ得」がしにくくなります。だから内部労働市場では機会主義が抑制され、取引コストが下がるのです。

📝 過去問はこう出る(R06 第6問) 「ウィリアムソンの取引コスト理論の観点から、垂直統合の理由として適切なもの」を選ぶ問題。正解は 「関係特殊的な資産への多額の投資を必要とするため」(選択肢ア)=まさに資産特殊性の論理。 引っかけは、"別の理論の言葉"を混ぜてくること。 「余剰資金の活用・資本効率」=財務の論理、「規模の経済」=規模の論理、 「範囲の経済」=多角化の論理、「資源の柔軟な再配分」=資源ベース論(RBV)。 これらは正しそうに見えても"取引コスト理論の説明ではない"のでバツ。 → R06 第6問

📝 過去問はこう出る(H19 第14問) 「取引コストと企業組織の境界」の問題。正解は 「内部労働市場では組織が個人を評価する能力が高くなるので、機会主義的行動を抑制し取引コストを低く抑えられる」(選択肢エ)。 ほかの選択肢は、理由づけを逆さまにした引っかけでした。 「供給企業が少数だと機会主義の余地が"少なくなる"」(正しくは大きくなる)、 「複雑な職務は市場調達のほうが安い」(正しくは不確実性が高く内部化が有利)など。 "結論は近いが理由が逆"という選択肢に注意しましょう。 → H19 第14問


6-3 戦略的提携・アライアンス

「買う」でも「作る」でもない第三の道

垂直統合やM&Aは「相手を自社に取り込む」重い選択です。これに対し戦略的提携(アライアンス)は、 それぞれが独立を保ったまま、必要な部分だけをゆるやかに・柔軟に組むという、いわば中間の選択肢です。

戦略的提携=複数の企業が、独立性を維持しながら、特定の目的のために協力関係を結ぶこと。 「結婚(M&A)ではなく交際(提携)」とイメージすると分かりやすいです。

提携の主な目的は、①自社にない経営資源・技術を補完する、②リスクやコストを分担する、 ③新市場・新セグメントへ低コストで参入する(シナジー・範囲の経済の活用)、④時間を買う(自前開発より速い)などです。

提携の代表的な形態

形態 内容 ひとこと
ライセンシング 他社の技術・特許の使用許諾を受ける/与える 自社開発せず短期間で技術獲得。ただし利用範囲・期間などに制約が付く
コンソーシアム 複数企業が共同出資して基礎研究などを行う 投資リスクを分担。成果は各社が持ち帰り差別化に使う
ジョイントベンチャー(JV/合弁) 複数企業が出資して新しい会社(事業体)を設立 提携の中では関与・一体化の度合いが高い。異質な資源の補完が目的のことも多い
産学連携 企業と大学・研究機関が連携 基礎研究・シーズの獲得
  • ジョイントベンチャー(JV)は、提携の中では踏み込みが深い形ですが、それでもM&A(完全統合)よりは一体化が浅く、共有できる情報の範囲もM&Aより狭い、という点が問われます。

提携の最大の課題は「裏切り(機会主義)をどう抑えるか」

提携は相手を取り込まないぶん、相手が約束を破る(=裏切る・機会主義的に振る舞う)リスクを抱えます。 R. バーニー(RBV=Resource Based View=資源ベース理論)は、提携論をこの視点で整理しました。

  • 提携構築の主要課題=「パートナーの裏切りの可能性を最小化しつつ、協力から得られる恩恵を最大化する」こと。
  • 裏切りを抑える仕組みの代表が評判メカニズム:裏切れば評判が落ち将来の取引機会を失うため、それを恐れて裏切りにくくなる。
  • 提携も競争優位の源泉になりうるが、希少でも低コストで代替・模倣できてしまうと、持続的な競争優位にはならない(VRIOの模倣困難性の観点)。

⚠️ ラーニングレース(学習競争)に注意 提携相手は「協力者」であると同時に「将来の競争相手」かもしれません。提携を通じてお互いが相手のノウハウを 吸収しようとする競争をラーニングレースといいます。だから相手に開示する情報を取捨選択して、 相手の学習速度をコントロールすることが提携マネジメントのコツになります(R05第7問の正解論点)。

📝 過去問はこう出る(H25 第4問) バーニー(RBV)の戦略的提携論。「最も不適切なもの」を選ぶ問題で、正解(=誤り)は 「内部開発のコストが提携のコストより小さい場合でも、内部開発は提携の代替とはならない」(選択肢オ)。 内部開発のほうが安いなら、当然そちらが有利で"代替になる"はず。論理が逆なので不適切。 評判メカニズム・希少性と代替可能性・裏切り最小化などの記述はすべて適切(正しい提携理論)でした。 → H25 第4問

📝 過去問はこう出る(H21 第17問/R05 第7問) H21第17問はアライアンス各形態の長所・短所。正解は 「ライセンシングは短期間で技術を獲得できる長所がある一方、契約により獲得技術の自由な利用が制約される短所を伴う」(選択肢エ)。 R05第7問は「提携では開示情報を選択して相手の学習速度をコントロールできる」(選択肢ウ)が正解。 → H21 第17問R05 第7問


6-4 M&A(合併・買収)

M&Aの基本と類型

M&A(Mergers and Acquisitions=合併・買収)は、他社を丸ごと(またはその事業を)自社に取り込む、 提携より一歩踏み込んだ成長手段です。「時間を買う(自前でゼロから作るより速い)」のが最大の魅力です。

事業の組み合わせによる3類型を押さえましょう。

類型 何と何を結びつけるか 主なねらい(メリット)
水平型M&A 同業種・同じ段階の企業同士 規模の経済・経験効果・市場支配力(取引交渉力)の強化
垂直型M&A バリューチェーンの川上・川下(異なる段階)の企業 供給・販売の安定化、垂直統合の効果
多角化型(異業種)M&A 異なる事業の企業 範囲の経済リスク分散・新事業領域への進出

⚠️ 混同注意:規模の経済は"水平"、範囲の経済は"多角化" - 同業種(水平型)M&Aの主なメリット → 規模の経済・取引交渉力 - 異業種(多角化型)M&Aの主なメリット → 範囲の経済・リスク分散 この2つをすり替えた選択肢が定番の引っかけです(H29第4問・R02第5問)。

M&A関連の用語(暗記勝負)

M&A問題は、用語の定義を正確に一対一で覚えているかが勝負です。混同を狙って出されます。

用語 正しい意味
TOB(株式公開買付け) 買付期間・価格・株数を公告し、取引所"外"で不特定多数の株主から株を買い集める
LBO(レバレッジド・バイアウト) 買収対象企業の資産や将来キャッシュフローを担保に借入をして買収する
MBO(マネジメント・バイアウト) 経営陣が自ら出資して自社・事業を買い取り、経営権を取得する(非公開化や事業承継で使う)
CVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル) 事業会社が、シナジーをねらってベンチャー企業に投資する活動
のれん 買収価格が純資産の時価を上回る差額(下回れば「負ののれん」)
デューデリジェンス(DD) 買収(準備・交渉段階)に行う、相手の資産・リスクの精査
事業譲渡 資産・負債を個別に選んで移転(合併の"包括承継"と違い"個別承継")

💡 同じ「MBO」に注意(第1章の再掲) MBO=Management Buyout(経営陣による買収)と、MBO=Management By Objectives(目標による管理)は別物。 本章のMBOは買収のほう。文脈で見分けます。

買収防衛策(守る側の手段)

敵対的買収を仕掛けられた側の防衛策も、名称と内容の対応で出ます。

防衛策 内容
ポイズンピル(毒薬条項) 買収者以外の株主に、市場より安く新株を取得できる権利を事前付与し、買収者の持株比率を希薄化させる
黄金株 合併など重要決議に拒否権を行使できる種類株式
クラウンジュエル(焦土作戦) 自社の魅力的な資産を売却し、買収の魅力を下げる
ホワイトナイト(白馬の騎士) 友好的な第三者に支援・買収してもらう
パックマン戦法 狙われた側が逆に買収者を買収しに行く
ゴールデンパラシュート 経営陣の退職金を高額にして買収コストを引き上げる

成立後がいちばん大事:PMI(統合プロセス)

M&Aは「成立して終わり」ではありません。むしろ本番は成立後の PMI(Post Merger Integration=買収後の統合プロセス)です。ここでの最大の難所が組織文化の統合です。

  • 同業種のM&Aであっても、各社の組織文化は異なり、その調整・統合には相応のコストがかかります (「同業だから統合コストはかからない」は典型的な誤り=R02第5問)。
  • 主要スタッフの離職を防ぎ、双方の文化を尊重して融合させることがPMI成功のカギです。

⚠️ 組織文化は「3つのレベル」で理解する(シャイン) E. シャインは組織文化を①人工物(目に見える構造・行動)②標榜される価値観 ③暗黙に共有された基本的仮定の 3層で捉えました。M&Aで本当に統合が必要なのは最深層の③暗黙の前提ですが、質問紙やインタビューでは表面化しません。 具体的な問題解決の場に外部ファシリテータが介入し、当事者自身に気づかせる臨床的アプローチが有効です(H22第17問の正解)。

📝 過去問はこう出る(R03 第3問/R04 第5問/R06 第5問) いずれもM&A用語の正確な定義を問う問題です。 - R03第3問(正解ウ):事業譲渡は個別に資産・負債を選んで移転できる(合併の包括承継との対比)。 - R04第5問(正解イ):黄金株は重要決議に拒否権を持つ種類株式で買収防衛策になる。 引っかけでTOB↔LBOカーブアウト↔クラウンジュエルMBO↔コントロール・プレミアムが入れ替えられていました。 - R06第5問(正解エ):ポイズンピルは買収者以外に安く新株を与え持株比率を希薄化させる。 MBO・クラウンジュエル・パックマン戦法・ホワイトナイトの定義入れ替えが引っかけ。 → R03 第3問R04 第5問R06 第5問

📝 過去問はこう出る(H29 第4問/R05 第7問/R02 第5問) M&Aと戦略的提携を横断で比較させる問題群です。急所は次の3点。 - デューデリジェンスは"契約前(準備・交渉段階)"に行う("統合段階で開始"はバツ)。 - 範囲の経済=異業種、規模の経済=同業種(メリットの割り当てを逆にしない)。 - 評判メカニズムは提携の裏切りを"抑制する"("抑制できない"はバツ)。 R02第5問の正解(=最も不適切)は「同業種M&Aなら組織文化の統合にコストがかからない」で、これは誤り。 → H29 第4問R05 第7問R02 第5問

📝 過去問はこう出る(H28 第3問/H22 第17問) H28第3問は「内部成長・ライセンシング・買収の使い分け」。正解(イ)は 「衰退期の既存事業で市場支配力を高めたいなら、時間のかかる内部成長より、競合を買収してシェアを統合するほうが速い」。 相手のコア技術(暗黙知)を取り込むにはライセンスより買収(組織ごと取り込む)が適する、という論点も頻出。 H22第17問はPMIでの組織文化の解明方法(シャイン)を問い、正解は上記の外部ファシリテータによる臨床的アプローチ(エ)。 → H28 第3問H22 第17問


6-5 系列・フランチャイズなどの組織間関係

「市場」と「組織」の"あいだ"にある中間形態

ここまでの軸で言えば、系列フランチャイズは、「純粋な市場取引」でも「完全な垂直統合」でもない、 両者の中間に位置する組織間関係です。独立した企業同士でありながら、継続的・長期的に強く結びつくのが特徴です。

  • 系列(下請関係):完成品メーカーと部品メーカーなどが、長期・継続的に取引する関係。
  • 一回きりのスポット取引と違い、継続関係はむしろ取引コストを下げすり合わせによる共同開発を促進しうる、という点が重要です。
  • 「下請=新製品開発では取引コストが高くつく」と決めつける選択肢は誤り(H21第17問)。

フランチャイズ・チェーン(FC)

フランチャイズ・チェーン(FC)は、フランチャイザー(本部)が、フランチャイジー(加盟店)に 自社のブランド・ノウハウ・商標の使用を許諾し、対価としてロイヤルティを受け取る仕組みです。

論点 FCの特徴
独立開業 本部のノウハウ・ブランドを使えるため、経営経験の乏しい人でも加盟して独立の経営者になれる
テリトリー 本部が営業地域を管理する(加盟店が任意に地域を設定はできない)
資本効率 本部は自己資金が乏しくても、加盟店の資金を活用して大規模に多店舗展開できる
対価 加盟店は経営指導などの対価としてロイヤルティを本部に支払う

⚠️ 混同注意:FC と VC(ボランタリー・チェーン) - フランチャイズ・チェーン(FC)本部の統一フォーマットに従う(本部主導)。 - ボランタリー・チェーン(VC)独立した小規模事業者が、所有上の独立性を保ったまま共同仕入れなどを行う(加盟店主導の水平的連携)。 「所有上の独立性を保ったまま共同作業する」のはVCの説明であって、FCではありません(H20第32問の正解=この点のすり替え)。

組織間ネットワークと「紐帯(つながり)の強さ」

組織間のつながり方そのものを問う問題も出ます(R06第21問)。

  • 埋め込まれた紐帯(強く密な信頼関係)暗黙知の移転が進みやすく、機会主義を抑える。ただし固めすぎると情報が同質化する(過剰埋め込み)。
  • 弱い紐帯の強み(グラノヴェッター):広く薄いつながりのほうが、新奇な情報を得やすい。

📝 過去問はこう出る(H20 第32問) フランチャイズ・チェーンの特徴で「最も不適切なもの」を選ぶ問題。正解(=誤り)は 「小規模の独立事業者が所有上の独立性を保ったまま共同仕入れなどの共同作業を行う」(選択肢エ)。 これはボランタリー・チェーン(VC)の説明であり、本部フォーマットに従うFCの特徴ではありません。 → H20 第32問

📝 過去問はこう出る(H26 第29問/R06 第21問) H26第29問はFC方式の美容院を題材にした事例問題。加盟店=フランチャイジー/本部=フランチャイザー、 FCは限られた自己資金でスピーディーに多店舗展開する手段であること、サービスの特性(無形性・非均質性・消滅性)と 7Ps(4Ps+people・process・physical evidence)などが問われました。 R06第21問は埋め込まれた紐帯弱い紐帯の強みの対比。正解(イ)は 「強く密な信頼関係では、言語化しにくい暗黙知の移転が促進されやすい」。 → H26 第29問R06 第21問


この章のまとめ(試験直前チェック)

  • 垂直統合=バリューチェーンの前後工程を自社に取り込む(後方=川上/前方=川下)。取引条件の変更だけでは統合ではない
  • ☐ 市場取引 vs 垂直統合:暗黙知の活用は統合が得意、コスト削減・改善のインセンティブは市場取引が強い、標準品は市場取引が有利
  • 取引コスト理論(ウィリアムソン):市場取引のコストが大きいほど内部化(組織・垂直統合)が有利
  • ☐ 取引コストを上げる要因=限定合理性・機会主義・資産特殊性(+不確実性・少数性)。「特・不・頻」が高いと内部化
  • 資産特殊性が高い+機会主義 → ホールドアップ問題 → 垂直統合で回避
  • ☐ 取引コスト理論の"別理論すり替え"に注意:規模の経済・範囲の経済・資本効率・RBVは取引コスト理論の説明ではない
  • 戦略的提携=独立を保ちゆるやかに組む。目的は資源補完・リスク分担・低コスト参入(シナジー)・時間を買う
  • ☐ 提携形態:ライセンシング(短期取得だが制約あり)/コンソーシアム/ジョイントベンチャー(JVはM&Aより一体化は浅い)
  • ☐ 提携の主要課題=裏切り(機会主義)の最小化評判メカニズムで抑制/ラーニングレースは情報開示を選別して制御
  • M&A3類型:水平型=規模の経済、垂直型=供給・販売の安定、多角化型=範囲の経済・リスク分散
  • ☐ M&A用語:TOB=取引所外で公告し買付/LBO=対象資産を担保に借入/MBO=経営陣が買収/のれん=純資産超過分
  • ☐ 買収防衛策:ポイズンピル(希薄化)・黄金株(拒否権)・クラウンジュエル・ホワイトナイト・パックマン・ゴールデンパラシュート
  • デューデリジェンスは契約"前"(統合段階ではない)。PMI=統合プロセス組織文化の統合が最難関(同業でもコストはかかる)
  • ☐ 組織文化(シャイン)は人工物・標榜価値観・暗黙の前提の3層。最深層は臨床的アプローチで表面化
  • FC=本部フォーマットに従う/VC=独立性を保ったまま共同仕入れ(この2つの取り違えが定番の引っかけ)
  • 系列(長期継続取引)は取引コストを下げ共同開発を促す/埋め込まれた紐帯=暗黙知の移転弱い紐帯=新奇な情報

この章に対応する主な過去問

年度・問 論点 リンク
R07 第5問 垂直統合と市場取引 問題
R07 第6問 企業間の連携戦略(TOB・MBO・CVC) 問題
R06 第6問 取引コスト理論と垂直統合(ウィリアムソン) 問題
R06 第5問 買収防衛策(ポイズンピル) 問題
R06 第21問 組織間関係・組織間ネットワーク(紐帯) 問題
R05 第7問 M&A・戦略的提携(ラーニングレース) 問題
R04 第5問 M&A用語(黄金株・LBO) 問題
R04 第6問 垂直統合(前方統合の判別) 問題
R03 第3問 M&A(事業譲渡・のれん・MBO) 問題
R02 第5問 多角化とM&A(組織文化の統合) 問題
R02 第6問 垂直統合度を高める要因 問題
H30 第6問 垂直統合度を高める理由 問題
H29 第4問 M&Aと戦略的提携 問題
H28 第3問 ライセンシング・買収による成長戦略 問題
H25 第4問 戦略的提携(バーニー・RBV) 問題
H22 第17問 M&Aと組織文化の統合(シャイン) 問題
H21 第17問 アライアンス形態(ライセンシング等) 問題
H20 第32問 フランチャイズ・チェーン制度 問題
H19 第14問 取引コストと企業組織の境界 問題

次章予告 ▶ 第7章「国際経営」 本章の「他社とどう関わるか」を、今度は国境を越えて考えます。海外進出のモード (輸出・ライセンス・海外直接投資)、グローバル統合とローカル適応のジレンマ、 多国籍企業の組織などを扱います。本章のライセンシングやJVは、国際経営でも 海外進出の"手段"として再登場します。