第8章 組合制度と連携

この章のねらい 中小企業政策(第II部)のなかで、毎年ほぼ確実に1〜2問出る"得点源"が「中小企業組合制度」です。 個々の中小企業は経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)が限られるからこそ、みんなで手を組んで 足りないものを補い合う(相互扶助)という発想が政策の柱になっています。その受け皿が「組合」です。

この章のゴールは、「事業協同組合・企業組合・協業組合・商工組合」という4つの主役の違いを スッと言えるようにすること、そしてLLP・商店街振興組合・生活衛生同業組合といった脇役を 取りこぼさないことです。

過去問での出方:ほとんどが「根拠法はどれか」「発起人は何人か」「議決権は出資比例か1人1票か」 の3点セットの言い換えです。制度中心なので暗記がそのまま点になり、難問化しにくい分野です。 数値・要件を正確に覚えれば、ここは満点も狙えます。


8-0 この章の地図

この章は、まず「組合にはどんな種類があるか(4つの主役)」を押さえ、次に「どうやって作り・どう運営するか (設立と運営のルール)」を学び、最後に「協同組合以外の連携のかたち(LLPなど)」まで広げます。

8-1 中小企業組合の種類        … 事業協同組合/企業組合/協業組合/商工組合(★比較表が命)
   │
8-2 組合の設立と運営          … 発起人・認可・議決権1人1票・員外利用制限
   │
8-3 その他の連携組織          … LLP/商店街振興組合/生活衛生同業組合/技術研究組合
   │
まとめ(直前チェック)→ 対応過去問表 → 次章予告

💡 最初に頭に入れる"背骨" 組合は大きく ①中小企業等協同組合法の系統(事業協同組合・企業組合など)と、 ②中小企業団体の組織に関する法律の系統(協業組合・商工組合)に分かれます。 さらに③別の単独法による組合(商店街振興組合法・技術研究組合・LLP法など)があります。 「どの法律に基づくか」を取り違えさせるのが試験の常套手段です。まずこの3系統の骨組みを意識しましょう。


8-1 中小企業組合の種類 ★最重要

まず「協同組合の3原則」をイメージでつかむ

中小企業組合の土台にあるのは、次の3つの考え方です。会社(株式会社)との違いはここから生まれます。

  1. 相互扶助:もうけの最大化ではなく、組合員どうしが助け合うことが目的。
  2. 議決権は平等(1人1票):株式会社のように「たくさん出資した人が強い」のではなく、 出資口数にかかわらず1人1票が原則(8-2で詳述)。
  3. 員外利用の制限:組合員でない人(員外者)の利用は原則制限される(8-2で詳述)。

この3点を握っておくと、選択肢の「議決権は出資比例」「株主のように…」といった"会社っぽい記述"は たいていバツ、と機械的に見抜けます。

4つの主役 ― 目的と特徴の比較表

中小企業組合の主役は、次の4つです。この表を丸ごと覚えるのが第8章の最短ルートです。

組合 根拠法 ひとことで言うと(目的) 主な特徴
事業協同組合 中小企業等協同組合法 組合員の事業を共同化して、経営の合理化・取引条件の改善を図る いちばん一般的。共同購買・共同販売・共同生産・金融など。発起人4人以上、議決権1人1票
企業組合 中小企業等協同組合法 個人が集まり、組合自体が1つの企業体として事業を営む 組合員は資本と労働力を組合に投入し勤労者的に働く。組合員の1/2以上が事業に従事発起人4人以上
協業組合 中小企業団体の組織に関する法律 組合員の事業を統合(協業)して、規模の利益を追求 事業を組合に一本化。議決権に一定の不平等(出資比例)を認める余地あり。発起人4人以上
商工組合 中小企業団体の組織に関する法律 同業種の事業者が集まり、業界全体の改善発達を図る(業界団体的) 資格者の過半数の加入が必要。指導・調査・研究など。発起人4人以上

⚠️ ここが最頻出:事業協同組合 vs 企業組合 - 事業協同組合は「組合員の事業を助ける」=各社は独立したまま。目的は経営の合理化・取引条件の改善。 - 企業組合は「組合そのものが事業をやる」=組合員は組合の中で働く(勤労者的)。

H25第30問は、企業組合の説明として「経営の合理化と取引条件の改善を図る」という 事業協同組合の目的をまぜこんだ選択肢を"最も不適切"(=正解)としました。 逆にH27第26問は、事業協同組合の説明に「資本と労働力のすべてを組合に投入」「組合員は事業に従事」という 企業組合の特徴をまぜて誤りにしています。目的と主体の入れ替えが定番の引っかけです。

「企業組合」は会社に似ているが会社ではない

企業組合は、組合自体が事業体になるため一見株式会社にそっくりです。だからこそ、 "会社との違い"を突く問題が出ます。H21第20問がまさにこれでした。

  • 有限責任:組合員は株式会社の株主と同じく有限責任(=ここは会社と同じ。合名・合資会社の無限責任とは違う)。
  • 議決権は1人1票:株主のように出資額に比例しない(=ここが会社と違う。ここが引っかけ)。
  • 剰余金の配分:NPO法人と違い、出資者かつ事業従事者である組合員に利益を配分できる

📝 過去問はこう出る(H21 第20問) 建築設計業のX氏に「企業組合」を勧める会話文の問題。設問1の"最も不適切"は 「株式会社の株主と同じく、出資額に比例して議決権が与えられる」=協同組合は1人1票なのでバツ。 設問2は設立要件で、発起人4人以上・都道府県知事の認可(認可主体を「国」とするのは誤り)。 → H21 第20問H25 第30問

📝 過去問はこう出る(H27 第26問) 事業協同組合の"最も適切"を選ぶ問題。正解は「組合員になろうとする者4人以上が発起人」。 「組合員は事業に従事」「資本と労働力のすべてを投入」は企業組合の特徴、 「中小企業団体の組織に関する法律を根拠とする」は協業組合等の根拠法でバツ。 → H27 第26問H22 第18問


8-2 組合の設立と運営

組合をどう作り、どう回すか。ここは「数字」と「原則」さえ押さえれば失点しません。

① 発起人 ― 「4人以上」が基本、商店街振興組合だけ「7人以上」

設立を言い出す人(発起人)の必要人数は、次のとおりです。

組合 発起人
事業協同組合 4人以上
企業組合 4人以上
協業組合 4人以上
商店街振興組合 7人以上(★ここだけ違う)

💡 覚え方「協同組合系はぜんぶ4人、商店街だけ7人」。 H23第24問は「7人以上の発起人が必要なものはどれか」を問い、正解は商店街振興組合でした。 「4人 vs 7人」は数字のすり替えで頻出です。

📝 過去問はこう出る(H23 第24問) 発起人が7人以上必要な組合を選ぶ問題。企業組合・協業組合・事業協同組合はすべて4人以上、 商店街振興組合だけが7人以上なので正解はエ(商店街振興組合)。 → H23 第24問

② 認可 ― 原則「都道府県知事」

組合の設立には行政庁の認可が必要です。原則は都道府県知事(複数都道府県にまたがる広域の場合などは 国=主務大臣)。「国の認可が必要」と単純に書いた選択肢は原則バツ、と覚えておきましょう (H21第20問の設問2でも、認可主体を「国」とする肢が誤りでした)。

③ 議決権 ― 出資口数にかかわらず「1人1票」が原則

協同組合の最大の特徴が、議決権・選挙権は出資口数にかかわらず平等(1人1票)という点です。 株式会社の「1株1票(出資額に比例)」とは正反対で、ここはほぼ毎年どこかで問われる急所です。

  • 事業協同組合・企業組合・商店街振興組合 … 1人1票(平等)。
  • 協業組合だけは例外的に、定款で議決権に一定の格差(出資比例的な扱い)を認める余地があります。 「協業=事業を統合し規模の利益を追う」という性格上、会社に近い扱いが一部認められるためです。

⚠️ 混同注意:「1人1票」か「出資比例」か 選択肢に「議決権は出資比例である」と出てきたら、協業組合以外は原則バツ。 R02第18問・H28第19問の商店街振興組合でも、「議決権は出資比例」は誤りとして繰り返し使われています。

④ 員外利用の制限

組合は組合員のための組織なので、組合員でない人(員外者)の事業利用は原則として制限されます (例:組合員の利用分量の一定割合まで、といった上限)。「員外者も無制限に使える」といった記述は誤りになります。 なお、事業協同組合が組合員に対して行う手形割引などの金融事業は禁止されていません (H22第18問では「手形割引は禁止されている」が"最も不適切"=正解でした)。

⑤ 組織変更(株式会社化)ができるかどうか

  • 事業協同組合・企業組合株式会社への組織変更が可能(法律で認められている。H22第18問で確認)。
  • 商店街振興組合株式会社への組織変更(制度変更)は認められていない(R02第18問の設問2で確認)。

「株式会社になれるか」も組合ごとに違うので、組合とセットで覚えるとお得です。


8-3 その他の連携組織

協同組合の"4主役"以外にも、試験に出る連携のかたちがあります。LLPは特に頻出なので厚めに扱います。

有限責任事業組合(LLP)― ★超頻出

LLP(Limited Liability Partnership)は、有限責任事業組合契約に関する法律(LLP法)に基づく事業体で、 複数の企業や個人が対等な立場で共同事業を行うのに向いています。3つの特徴を丸暗記しましょう。

LLPの3大特徴 中身 ここが引っかけ
① 有限責任 組合員(出資者)は出資額の範囲でのみ責任を負う 株式会社と同じで安心。ここは正しい記述として出る
② 内部自治(柔軟性) 議決権や損益の分配を出資比率と関係なく自由に決められる 「出資比率に応じる」と書いたらバツ(H27第21問)
③ 構成員課税(パススルー課税) LLP自体には課税されず、出資者に直接課税 損失は各組合員の他の所得と通算できる

そして最重要の落とし穴が ④ 法人格を持たないという点です。

  • LLPは法人ではなく「組合」なので、法人格を持ちません(民法組合の特例)。
  • 「株式会社と同じく責任は有限」だが「株式会社と違って法人格はない」――この"半分同じ・半分違う"が H19第19問・H20第24問・H23第19問・H26第24問で繰り返し問われています。
  • 法人ではないので取締役会などの機関設置は不要(H27第21問)。

📝 過去問はこう出る(H19 第19問) LLPは法人格を持つか・課税はどうかを問う会話文。正解は A=法人格は持たない/B=出資者が得る利益に直接課税(構成員課税)の組み合わせ。 「法人格を持つ」「LLPに課税される」はいずれも誤り。 → H19 第19問H20 第24問H23 第19問

📝 過去問はこう出る(H27 第21問/H26 第24問) H27第21問の"最も不適切"は「議決権と損益分配は出資比率に応じる」=LLPは内部自治で自由に決められるのでバツ。 H26第24問の"最も不適切"は「LLPは法人格を有する」=LLPは法人格を持たないのでバツ。 → H27 第21問H26 第24問

⚠️ 混同注意:LLP と LLC(合同会社) - LLP=有限責任事業組合法人格なし・構成員課税(パススルー)。 - LLC=合同会社法人格あり・法人課税(会社なので会社に課税)。 名前が似ていますが、「法人格の有無」と「課税の相手」が正反対です。ここは超頻出の区別。

商店街振興組合

商店街振興組合法に基づく、商店街という"地域"を単位にした組合です。アーケードや街路灯などの 環境整備事業と、共同購買などの共同経済事業の両方を行える点が特徴です。

  • 根拠法は商店街振興組合法(中小企業等協同組合法ではない ← 頻出の引っかけ)。
  • 発起人は7人以上(4人ではない)。
  • 1地区1組合が原則(地区の重複は禁止。「1地区2組合まで」などは誤り)。
  • 設立要件として、総組合員の1/2以上が小売商業またはサービス業を営む者であること。
  • 議決権は1人1票(出資比例ではない)。名称中に「商店街振興組合」の文字を用いる義務がある。
  • 株式会社への組織変更は不可

📝 過去問はこう出る(R02 第18問/H28 第19問) R02第18問は、設問1(設立要件)の正解が「総組合員の1/2以上が小売商業・サービス業者」、 設問2の正解が「名称中に『商店街振興組合』の文字を用いなければならない」。 H28第19問は「同一地区に重複して設立できない(1地区1組合)」が正解。 「議決権は出資比例」「中小企業団体の組織に関する法律に基づく」は繰り返しバツ肢として登場します。 → R02 第18問H28 第19問H24 第24問H21 第27問

生活衛生同業組合

生活衛生関係営業の運営の適正化及び振興に関する法律(生衛法)に基づく、飲食店・理容・美容・ クリーニング・旅館など、私たちの生活衛生にかかわる業種の同業者が作る組合です。

  • 目的は、衛生水準の維持向上過度な競争の防止による業界の健全化。
  • 都道府県ごとに1業種1組合が基本で、厚生労働省(都道府県知事)の所管という点が他組合と異なります (多くの組合は経済産業省・中小企業庁の系統ですが、生衛組合は厚労省系)。

技術研究組合

技術研究組合法に基づき、複数の企業・大学などが共同で試験研究を行うための組合です。

  • 法人格を有する(LLPと違ってこちらは法人)。
  • 賦課金を支払う組合員には研究開発税制(試験研究費の税額控除)が適用される、といった優遇がある。
  • ただし特許料・特許審査請求料が"全額免除"されるわけではない(H28第17問の"最も不適切"=正解がこれ)。

📝 過去問はこう出る(H28 第17問/H26 第26問) 技術研究組合の"最も不適切"は「特許料・特許審査請求料が免除される」。優遇はあっても 全額免除ではないのでバツ。「法人格を有する」「研究開発税制が適用される」は正しい記述。 → H28 第17問H26 第26問

信用金庫・信用組合(協同組織金融機関)

厳密には金融支援の論点ですが、「協同組織」という点で組合制度と地続きです。

  • 信用金庫(信用金庫法)信用組合(中小企業等協同組合法・協金法)は、いずれも 協同組織形態の非営利法人で、会員(組合員)の相互扶助を目的とします(株式会社の銀行とは別物)。
  • 信用組合は原則として組合員(会員)を対象とし、員外者からの預金受入れには制限があります (「特段の制限がない」は誤り)。

📝 過去問はこう出る(H25 第15問) 信用金庫と信用組合の相違を問う問題。正解は「両者はいずれも協同組織形態の非営利法人である」。 「信用組合の預金受入れに特段の制限はない」は誤り(員外預金に制限あり)。 → H25 第15問

組合を使った共同事業と支援施策

組合は「作って終わり」ではなく、共同事業を通じて支援を受けるのが政策のねらいです。

  • 事業協同組合などが共同物流・共同受発注システムを整備する際は、中小企業基盤整備機構や 都道府県の高度化融資制度による支援を受けられます(R06第21問の共同物流の事例)。
  • IT導入・情報化の共同事業も支援対象になります(H20第26問の事業協同組合のIT活用支援)。

💡 傾向メモ:組合の"数"(新設・解散・組合数の推移)を問う統計問題も過去にあります (H19第23問・H21第10問)。ただし具体的な数値は年度で変動するため、 「近年は組合数がゆるやかに減少傾向」といった大づかみの傾向として押さえ、 細かい数字は最新版の中小企業白書・組合統計で確認する姿勢でよいでしょう。 → R06 第21問H20 第26問H19 第23問H21 第10問


この章のまとめ(試験直前チェック)

  • ☐ 組合の背骨=①中小企業等協同組合法系(事業協同組合・企業組合)/②中小企業団体の組織に関する法律系(協業組合・商工組合)/③単独法系(商店街振興組合・LLP・技術研究組合)
  • 事業協同組合=組合員の事業を共同化(経営の合理化・取引条件の改善)/企業組合組合自体が事業体(組合員は勤労者的、1/2以上が従事)
  • ☐ 目的・主体の入れ替え引っかけに注意(H25第30問・H27第26問)
  • 発起人=4人以上が基本/商店街振興組合だけ7人以上(H23第24問)
  • 認可は原則・都道府県知事(「国」だけと書いたら原則バツ)
  • 議決権は出資口数によらず1人1票が原則/協業組合だけ例外(出資比例的な余地)
  • 員外利用は原則制限/事業協同組合の手形割引は禁止されていない(H22第18問)
  • 株式会社化:事業協同組合・企業組合は/商店街振興組合は不可
  • LLP=法人格なし・有限責任・内部自治で分配自由・構成員課税(パススルー)(H19/H26/H27)
  • LLP(法人格なし・パススルー)と LLC=合同会社(法人格あり・法人課税)は正反対
  • 商店街振興組合=商店街振興組合法・発起人7人・1地区1組合・1/2以上が小売/サービス業・名称使用義務・議決権1人1票
  • 生活衛生同業組合=生衛法・厚労省系(衛生水準の維持と過度競争の防止)
  • 技術研究組合=法人格あり・研究開発税制あり/特許料の全額免除ではない(H28第17問)
  • 信用金庫・信用組合=協同組織形態の非営利法人(信用組合は員外預金に制限)(H25第15問)

この章に対応する主な過去問

年度・問 論点 リンク
H19 第19問 有限責任事業組合(LLP)・法人格と課税 問題
H19 第23問 中小企業組合数の推移 問題
H20 第24問 有限責任事業組合(LLP) 問題
H20 第26問 事業協同組合のIT活用支援 問題
H21 第10問 中小企業組合の新設・解散状況 問題
H21 第20問 企業組合(会社との違い・設立要件) 問題
H21 第27問 商店街振興組合 問題
H22 第18問 事業協同組合(根拠法規・設立要件) 問題
H23 第19問 有限責任事業組合(LLP) 問題
H23 第24問 中小企業組合の発起人要件(7人以上) 問題
H24 第24問 商店街振興組合 問題
H25 第15問 信用金庫と信用組合の制度的相違 問題
H25 第30問 中小企業等協同組合制度(企業組合) 問題
H26 第24問 有限責任事業組合(LLP・法人格) 問題
H26 第26問 技術研究組合制度 問題
H27 第21問 有限責任事業組合(LLP・内部自治) 問題
H27 第26問 事業協同組合 問題
H28 第17問 技術研究組合(特許料の扱い) 問題
H28 第19問 商店街振興組合(1地区1組合) 問題
R02 第18問 商店街振興組合(設立要件・名称) 問題
R06 第21問 事業協同組合による共同物流・高度化融資 問題

次章予告 ▶ 第9章「中小企業の経営基盤・共済制度」 本章では"みんなで手を組む"組織を学びました。次章は、中小企業や小規模事業者を "個"として支えるセーフティネット――小規模企業共済・中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)などの 共済制度と、経営基盤を支える施策を扱います。