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中小企業の稼ぐ力の地域差

都道府県格差

東京商工リサーチで「中小企業の稼ぐ力」の比較調査が発表されていたので、内容を見てみました。

調査データ本文は以下です。

“中小企業の稼ぐ力調査” をダウンロード 01_202601141035-1.pdf – 5 回のダウンロード – 233.65 KB

日本の中小企業は、多くの地域・産業において5期前を上回る売上を記録しているものの、その成長は物価高による単価上昇に大きく依存しており、必ずしも実質的な需要拡大を伴っていない。このため、売上成長率に比して利益率の改善は緩やかであり、「利益なき成長」という課題が浮き彫りになっている。

全体として赤字企業率は5期前と比較して上昇傾向にあり、特に建設業や情報通信業などで業績改善企業とそうでない企業の二極化が顕著に進んでいる。関東地区が多くの産業で売上規模を牽引する一方、北陸や中部などの地方圏では、地域特有の需要や競争環境を背景に高い収益性を維持する産業も見られる。

現在の経済環境は、単なる売上規模の「量」だけでなく、収益力に結びつく成長の「質」が問われる局面へと移行しており、業務効率化や高付加価値化への取り組みが企業の明暗を分ける重要な要素となっている。

売上拡大の背景と収益性の課題

全国の中小企業において、売上高は5期前と比較して増加傾向にある。しかし、この背景には需要の増加よりも、原材料費、人件費、サービス単価といったあらゆるコストの上昇を価格に転嫁した結果として売上が膨らんでいる側面が大きい。

• 利益なき成長: 売上成長率と比較して利益率の上昇は総じて緩やかであり、地区や産業によっては利益率が低下するケースも見られる。これは、売上の成長が収益力の強化に直結していない「利益なき成長」の可能性を示唆している。

• 企業間格差の拡大: 多くの産業で5期前と比べて赤字企業率が上昇しており、エリアを問わず企業間の格差が拡大している。同じ物価高、人手不足、円安という環境下で、売上増を利益に転換できる企業とできない企業の差が明確化しつつある。

成長の「質」の重要性

一方で、成長の「中身」には地域や産業によるばらつきが見られる。

• 需要拡大が明確な分野: 観光業の回復、半導体関連などの設備投資、地域特有の需要拡大といった、仕事量や需要の増加が明確な分野では、利益率も伴って上昇している。

• 収益改善の要因: これらの分野では、単価上昇だけでなく、業務効率の改善や受注内容の見直しが進み、収益改善に繋がっている可能性がある。

• 問われる経営戦略: 日本の中小企業は、成長の「量」だけでなく、その「中身」が問われる新たな局面に足を踏み入れている。

産業別・地区別業績分析

農・林・漁・鉱業

関東地区の業績が突出しているが、その要因は一部の企業に偏っている。農業分野では北海道が優位性を示す一方、九州ではコスト増が収益を圧迫している。

• 関東の突出: 平均売上高21億8,908万円、平均純利益1億8,311万円と他地区を圧倒。5期前比の売上成長率も43.3%増と非常に高い。これは、東京に本社を置く一部の鉱業関連企業が、エネルギー資源や金属価格の上昇を背景に業績を大きく押し上げたためである。ただし、コスト増が売上増を上回り、利益率は低下している。

• 北海道(農業): 農業に限定すると、平均売上高6億4,967万円、平均純利益2,719万円で首位。耕地面積の大きさを活かした設備投資による生産効率向上が寄与し、利益率も唯一4%を超えている。ただし、赤字企業率も上昇しており、企業間で明暗が分かれている。

• 九州の課題: 利益率が全国で唯一のマイナス。畜産の構成比が高いことから、飼料代や光熱費の高騰といった円安の影響を強く受けたとみられる。

建設業

関東が売上規模でトップに立つが、利益率では中部・北陸が優位にある。全地区で赤字企業率が上昇し、二極化が深刻化している。

• 関東の売上規模: 平均売上高5億507万円と他地区を大きく上回る。都市再開発や大型案件の集中が中小企業の受注額も押し上げている。しかし、人件費や資材価格の上昇により、利益率は突出して高くない。

• 中部・北陸の収益性: 利益率が4%超と相対的に高い水準。工場・倉庫や震災復興関連のインフラ整備といった非住宅工事の案件が多いことが奏功している。

• 二極化の進行: 建設業全体では5期前比で売上・利益率ともに上昇したが、全ての地区で赤字企業率も上昇しており、業績改善企業とそうでない企業の差が広がっている。

製造業

関東が全体的に高い業績を示す中、九州が半導体関連投資を背景に著しい売上成長を達成した。ただし、九州ではコスト増が利益を圧迫している。

• 関東の優位性: 平均売上高25億6,935万円、平均純利益1億18万円と全地区で最高水準。利益率も3.89%と高く、5期前比の利益率上昇幅も1.84ポイントと最大だった。

• 九州の売上成長: 売上成長率が21.95%と最も高い伸びを記録。半導体関連の設備投資効果が表れている。

• 九州の収益性の課題: 利益率の伸びが0.59ポイント増と微増にとどまっており、人件費などのコストアップが中小製造業の収益を圧迫している状況がうかがえる。

卸売業・小売業

• 卸売業: 関東が平均売上高36億6,136万円と独走状態だが、利益率は1.84%と低く、薄利構造が続いている。利益率では中部が2.3%でトップとなり、採算改善が際立っている。

• 小売業: 関東が売上高で首位(13億9,799万円)だが、5期前比の売上成長率は3.1%増と唯一の1桁台で、他地区との差は小さい。売上成長率では中部(22.5%増)、九州(21.7%増)、北海道(20.7%増)が高い伸びを示した。収益性では四国が利益率2.7%、利益率上昇幅1.73ポイント増と高さが目立った。

情報通信業

関東が売上規模で圧倒する一方、競争激化により収益性が低下している。地方圏である北陸や四国は、穏やかな競争環境下で高い収益性を維持している。

• 関東の成長と課題: 平均売上高19億831万円、売上成長率58.8%増と突出しているが、利益率は1.3%と5期前から低下。需要の急拡大に対し、競争激化が収益を圧迫している。

• 北陸・四国の高収益: 北陸は平均純利益8,581万円、利益率7.8%と突出。四国も利益率6.5%と高水準を維持。都市圏より競争が穏やかな環境で、地元需要を確実に取り込み高収益体質を維持していると考えられる。

• 全地区での収益力低下: 全ての地区で5期前と比べて赤字企業率が上昇しており、業界全体で収益力が低下した企業が増加している。

全国・都道府県別 中小企業の業績動向(抜粋)

地区都道府県平均売上高 (百万円)平均純利益 (百万円)利益率赤字企業率5期前比 売上成長率5期前比 利益率上昇幅
関東合計1,700.9664.543.79%22.08%16.14%0.88P
東京都3,119.52115.373.69%20.20%16.89%0.90P
神奈川県855.4353.676.27%24.44%9.92%0.24P
近畿合計1,084.4937.803.48%20.34%15.03%0.83P
大阪府1,325.2845.883.46%18.85%13.40%0.70P
中部合計777.0427.403.52%23.15%12.83%1.07P
愛知県1,038.8941.193.96%22.68%14.01%1.51P
九州合計701.6418.582.64%25.55%14.91%0.61P
福岡県967.2430.663.16%22.17%16.15%0.89P
東北合計646.5313.922.15%30.99%8.79%0.22P
全国合計1,088.9237.703.46%23.80%14.48%0.84P

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Posted by tomoyamurakami