【C.企業経営理論】どこよりも早い!? 令和7年度 中小企業診断士試験 1次試験解答解説

もちろんAIが解説しています。Geminiに1次試験問題のPDFをアップロードして、問題文を文字起こしして、回答して、解説をしてくださいとお願いしています。問題文は、こちらから。
- 1. 正解
- 2. 採点結果
- 3. 問題文と解答解説を掲載します
- 3.1. 第1問
- 3.2. 第2問
- 3.3. 第3問
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- 3.5. 第5問
- 3.6. 第6問
- 3.7. 第7問
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- 3.25. 第25問
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- 3.27. 第27問
- 3.28. 第28問
- 3.29. 第29問
- 3.30. 第30問
- 3.31. 第31問
- 3.32. 第32問
- 3.33. 第33問
- 3.34. 第34問
- 3.35. 第35問
- 3.36. 第36問
- 3.37. 第37問
- 3.38. 第38問
- 3.39. 第39問
正解
最初に診断協会から発表されている正解と配点を掲載しておきます。

採点結果
97点でした。
1問間違えました。 第15問。惜しい
なお、解説が正しいのかはまだ全然確認していませんので、段階的に確認して、追記できるものはしていきたいと思います。
問題文と解答解説を掲載します
第1問
【問題文】 C. ホッファーとD. シェンデルは、戦略概念を整理し、戦略には階層があり、それぞれの戦略の検討事項は異なることを指摘している。彼らの分類に基づいた戦略に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- ア 機能分野別戦略では、事業領域の選択が最も重要な戦略上の検討事項である。
- イ コングロマリット企業の全社戦略では、事業間の資源シナジーの創出が最も重要な戦略上の検討事項である。
- ウ 事業戦略では、事業ポートフォリオ内の事業間での経営資源の配分が最も重要な戦略上の検討事項である。
- エ 事業戦略では、独自能力の構築と競争優位性の獲得が最も重要な戦略上の検討事項である。
- オ 全社戦略では、特定の製品や市場セグメントでの競争に焦点を当て、その事業の成長や利益を増加させることが最も重要な戦略上の検討事項である。
【解答】 エ →正解
【解説】 ホッファーとシェンデルが提唱した戦略階層は、主に以下の3つに分類されます。
- 全社戦略(Corporate Strategy): 企業全体の方向性を定める戦略です。どの事業領域で戦うか(事業ポートフォリオの決定)、各事業への経営資源の配分などが主要な検討事項です。
- 事業戦略(Business Strategy): 特定の事業領域において、いかにして競争相手に打ち勝つかを考える戦略です。競争優位性を確立するための独自能力(コア・コンピタンス)の構築が中心となります。
- 機能分野別戦略(Functional Strategy): マーケティング、生産、財務、人事といった各機能部門における具体的な活動方針を定める戦略です。
これを踏まえて各選択肢を評価します。
- ア:事業領域の選択は「全社戦略」の検討事項です。
- イ:コングロマリット企業は、関連性の低い複数の事業を営むため、事業間のシナジー創出が最も重要とは限りません。むしろ、各事業の価値を最大化するポートフォリオ管理が重視されます。
- ウ:事業ポートフォリオ内の資源配分は「全社戦略」の検討事項です。
- エ:記述の通り、事業戦略では特定の事業でいかに競争優位を獲得するかが最も重要な検討事項です。
- オ:特定の製品や市場での競争に焦点を当てるのは「事業戦略」の検討事項です。
したがって、エが最も適切な記述です。
第2問
【問題文】 食品メーカーA社は、日本国内の一般消費者向けのシリアルの開発・製造・販売を行う専業企業である。同社は、現在、今後の成長戦略のための施策を検討している。I. アンゾフの成長マトリクスの考え方に基づく記述として、最も適切なものはどれか。
- ア A社のシリアルのみを販売する国内の一般消費者向けの自社ECサイトを立ち上げて、既存の一般消費者向けシリアル市場での市場シェアの拡大を狙うことで、「多角化戦略」を行う。
- イ 新しく飲食事業者を顧客とするSNSマーケティング支援事業を開始し、A社にとっての次の収益の柱としようとすることで、「市場浸透戦略」を行う。
- ウ 一部の既存販売地域を対象に、地域名産品を用いた限定フレーバーの一般消費者向けシリアルを新しく開発することで、「多角化戦略」を行う。
- エ 既存顧客のリピート購入を促進するクーポンプレゼントのキャンペーンを実施し、既存の一般消費者向けシリアル市場での市場シェアの拡大を狙うことで、「新市場開拓戦略」を行う。
- オ コア・ユーザーである中高年層向けに新しく低糖質シリアルを開発することで、「新製品開発戦略」を行う。
【解答】 オ →正解
【解説】 アンゾフの成長マトリクスは、製品と市場をそれぞれ「既存」と「新規」の2軸で分け、企業の成長戦略を4つのタイプに分類します。
- 市場浸透戦略: 既存市場 × 既存製品
- 新製品開発戦略: 既存市場 × 新規製品
- 新市場開拓戦略: 新規市場 × 既存製品
- 多角化戦略: 新規市場 × 新規製品
各選択肢の施策をこのマトリクスに当てはめます。
- ア:自社ECサイトの立ち上げは、既存の市場(国内一般消費者)で既存の製品(シリアル)を販売する新たなチャネルを開拓し、シェア拡大を狙うものであり、「市場浸透戦略」に該当します。「多角化戦略」ではありません。
- イ:飲食事業者という「新規市場」に対し、SNSマーケティング支援という「新規製品(サービス)」を提供するものであり、「多角化戦略」に該当します。「市場浸透戦略」ではありません。
- ウ:既存の販売地域(既存市場)の一般消費者向けに、限定フレーバーという「新規製品」を開発するものであり、「新製品開発戦略」に該当します。「多角化戦略」ではありません。
- エ:クーポンキャンペーンによるリピート購入促進は、既存市場で既存製品の売上を伸ばすための施策であり、「市場浸透戦略」に該当します。「新市場開拓戦略」ではありません。
- オ:中高年層という既存の顧客層(既存市場)向けに、低糖質シリアルという「新規製品」を開発するものであり、「新製品開発戦略」に該当します。
したがって、オが最も適切な記述です。
第3問
【問題文】 VRIOフレームワークに基づけば、自社の経営資源の模倣困難性は企業の持続的な競争優位性を左右する。競合企業が経営資源を模倣する際のコスト上の不利をもたらし、自社の経営資源の模倣困難性を高める要因として、最も適切なものはどれか。
- ア 競合企業には他に将来性が高く注力するべき経営資源があること。
- イ 自社が歴史的な経緯で長い時間をかけて、独自の経営資源を獲得してきたこと。
- ウ 自社の経営資源がどのように競争優位性につながっているのかが既に明確になっており、業界に知れ渡っていること。
- エ 自社の経営資源の価値が特定の市場だけに限定されており、他市場では活用できないこと。
- オ 自社の経営資源を代替できる別の経営資源が外部の企業から調達可能であること。
【解答】 イ →正解
【解説】 VRIOフレームワークにおける模倣困難性(Imitability)は、競合他社がその経営資源を模倣しようとする際に、コスト面で著しく不利になる状況を指します。模倣困難性を高める要因には、主に以下の3つがあります。
- 独自の歴史的条件(Unique Historical Conditions): 企業がたどってきた独自の歴史や経験によって、時間をかけて蓄積された資源。経路依存性とも呼ばれます。
- 因果関係不明性(Causal Ambiguity): どの経営資源が、どのように競争優位につながっているのか、その因果関係が社内外から見ても不明確であること。
- 社会的複雑性(Social Complexity): 企業の評判、ブランドイメージ、組織文化、従業員間の信頼関係など、社会的に複雑な関係性の中に埋め込まれた資源。
選択肢を評価します。
- ア:これは競合の模倣「意欲」が低い理由であり、模倣の「困難性」そのものではありません。
- イ:これは「独自の歴史的条件」に該当し、他社が短期間で同じ資源を獲得することを困難にするため、模倣困難性を高める典型的な要因です。
- ウ:因果関係が明確であれば、競合は模倣しやすくなります。これは模倣困難性を「低める」要因です。
- エ:これは経営資源の価値(Value)に関する記述であり、模倣困難性とは直接関係ありません。
- オ:代替資源が利用可能であることは、模倣困難性を「低める」要因です(VRIOの「O:組織」や代替可能性の論点)。
したがって、イが最も適切な記述です。
第4問
【問題文】 ダイナミック・ケイパビリティに関する記述として、最も適切なものはどれか。
- ア ダイナミック・ケイパビリティは、企業が外部環境への依存度を下げ、完全に独立した運営を実現する能力を指す。
- イ ダイナミック・ケイパビリティは、既存の経営資源を活用することで、成熟期の安定的な市場環境で競争優位性を得る能力を指す。
- ウ ダイナミック・ケイパビリティは、競合他社からの模倣によって追いつかれないように、業務プロセスの効率化を一層追求する能力を指す。
- エ ダイナミック・ケイパビリティは、顧客に独自の価値を提供し、かつ競合他社からの模倣を防ぐことを可能にする、現在の市場において競争優位性を獲得する基盤となる中核的な能力を指す。
- オ ダイナミック・ケイパビリティは、市場環境の変化を知覚し、新たなビジネス機会を活かし、必要時には既存の経営資源やプロセスを再構成する能力を指す。
【解答】 オ →正解
【解説】 ダイナミック・ケイパビリティ(Dynamic Capability)とは、激しく変化する事業環境に対応するために、企業が自己変革を起こす能力のことです。具体的には、環境の変化を「感知(Sensing)」し、その変化に対応するビジネスチャンスを「捕捉(Seizing)」し、そして企業内外の経営資源を「変革(Transforming)」する一連の能力を指します。
各選択肢を評価します。
- ア:外部環境の変化に「対応」し「適応」する能力であり、依存度を下げて独立する能力ではありません。
- イ:安定的な市場環境で既存資源を活用して効率的に業務を行う能力は、「オーディナリー・ケイパビリティ(通常能力)」と呼ばれ、ダイナミック・ケイパビリティとは区別されます。
- ウ:業務プロセスの効率化追求は「オーディナリー・ケイパビリティ」の典型例です。
- エ:これは「コア・コンピタンス」の説明に近いです。ダイナミック・ケイパビリティは、そのコア・コンピタンス自体を環境変化に合わせて組み替える、より高次の能力です。
- オ:市場環境の変化の「知覚(感知)」、新たなビジネス機会の「活用(捕捉)」、既存の経営資源やプロセスの「再構成(変革)」という、ダイナミック・ケイパビリティの3つの要素を的確に説明しています。
したがって、オが最も適切な記述です。
第5問
【問題文】 垂直統合と市場取引に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- ア 市場取引から垂直統合に転換すると、市場取引の時よりも暗黙知や文脈依存的な知識は活用されにくくなる。
- イ 市場取引は垂直統合に比べて調整の効率性が高く、機会主義的行動の発生を抑制できる。
- ウ 垂直統合された組織では、市場取引の時に比べて、コストを削減したり機能や品質を向上させたりするインセンティブは高まる。
- エ 特定の取引相手しか供給できない財を調達する場合、市場取引よりも垂直統合が選択される傾向がある。
- オ 取引する財が標準化されている場合、市場取引よりも垂直統合が選択される傾向がある。
【解答】 エ →正解
【解説】 垂直統合と市場取引の選択は、取引費用理論で説明されます。特に「資産特殊性(その取引にしか価値を持たない投資の度合い)」が重要な判断基準となります。
- 市場取引(外部調達): 資産特殊性が低い(標準的な財)場合に有効。市場の競争原理が働き、コスト効率が高まります。
- 垂直統合(内製化): 資産特殊性が高い場合に有効。特定の取引相手に依存することで生じる「ホールドアップ問題」などの機会主義的な行動のリスクを回避できます。
各選択肢を評価します。
- ア:組織内部でのコミュニケーションは、市場取引よりも緊密になるため、暗黙知や文脈依存的な知識はむしろ活用され「やすく」なります。
- イ:資産特殊性が高い取引では、市場取引は交渉や監視のコストがかさみ、機会主義的行動のリスクがあるため、調整の効率性は低くなります。
- ウ:垂直統合された組織では、市場での競争圧力がなくなるため、コスト削減や品質向上へのインセンティブは「低く」なる傾向があります(官僚主義化のリスク)。
- エ:「特定の取引相手しか供給できない財」とは、資産特殊性が非常に高い財のことです。この場合、相手の機会主義的行動を避けるために、内部化、すなわち垂直統合が選択されやすくなります。
- オ:「標準化されている財」とは、資産特殊性が低い財のことです。この場合は、多くの供給者から競争的に調達できるため、市場取引が選択される傾向があります。
したがって、エが最も適切な記述です。
第6問
【問題文】 企業間の連携戦略に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- ア TOBとは、買収者が対象企業の株式を公開市場で株主から買い付ける手法のことを指す。
- イ 経営陣が中核となって既存株主から株式を買い取ることをMBOと呼ぶが、MBOは上場企業では起こるが、非上場企業では起こらない。
- ウ 仕入先の事業を買収し、事業のバリューチェーンの変革を目指す買収を水平的M&Aと呼ぶ。
- エ ジョイントベンチャーは、M&Aよりも当事者同士で共有できる情報の範囲が広く範囲の経済を享受できるので、より大きな相乗効果が期待される。
- オ ベンチャー企業が開発した革新的な技術やビジネスモデルを取り込み、自社の既存事業との間でシナジーを発現させることなどを目的に、事業会社がベンチャー企業に投資をすることをCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)と呼ぶ。
【解答】 オ →正解
【解説】
- ア:TOB(Take-Over Bid:株式公開買付け)は、買付期間や価格、株数などを公告し、証券取引所「外」で不特定多数の株主から株式を買い集める手法です。
- イ:MBO(Management Buyout)は経営陣による企業買収のことであり、非公開化を目的として上場企業で行われることも、事業承継などの目的で非上場企業で行われることもあります。
- ウ:仕入先など、バリューチェーンの川上または川下の企業を買収することは「垂直的M&A」と呼びます。同業他社を買収するのが「水平的M&A」です。
- エ:ジョイントベンチャーは、複数の企業が共同出資して新しい会社を設立する形態ですが、通常、出資企業同士が完全に情報を共有するわけではありません。M&Aは企業を一体化させるため、より広範な情報共有や相乗効果が期待できる場合があります。
- オ:CVC(Corporate Venture Capital)は、事業会社が自己資金でファンドを設立し、主に未上場のベンチャー企業に出資または投資を行う活動です。記述の通り、技術革新の取り込みやシナジー創出を目的とします。
したがって、オが最も適切な記述です。
第7問
【問題文】 ある業界では、次のような特徴が見られる。 ・新規参入には、大規模な設備や高度な専門技術が必要で、初期投資も多額になる。また、業界の参入規制に従うための許可取得にも時間を要する。 ・撤退する際は、当該設備を他業界に転用でき、契約の解消もスムーズに進むため、撤退時の負担は比較的小さい。 「業界の構造分析」の考え方に従った場合、この業界における競争の特質に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- ア 参入障壁が高く、撤退障壁が低い業界であるため、新規参入は控えられる一方、低業績の企業は撤退しやすくなることから、業界の収益性は高くなりやすい。
- イ 参入障壁も撤退障壁も低いため、不採算企業が市場に残りやすく、業界の競争が激化して業界の収益性は低下しやすくなる。
- ウ 新規参入が制限されるとともに、競争力の低い企業が撤退しやすくなることから、市場の集中度は低下し、業界の競争は緩やかになりやすい。
- エ 新規参入は慎重に行われるものの、撤退コストが低いため、多くの企業は業界にとどまり続け、結果として業界の競争は激しくなりやすい。
- オ 撤退が容易であるため、新規参入に対する動機は高まり、結果として、業界の競争の激化と収益性の低下が長期的に進みやすい。
【解答】 ア →正解
【解説】 問題文の状況は、以下のように整理できます。
- 参入障壁: 巨額の初期投資、高度な技術、規制により「高い」。
- 撤退障壁: 設備の転用が容易で、契約解消もスムーズなため「低い」。
この「参入障壁が高く、撤退障壁が低い」という業界構造は、企業にとって最も魅力的とされます。
- 高い参入障壁が新規参入者を阻むため、既存企業は安定した地位を享受できます。
- 低い撤退障壁により、業績が悪化した企業は速やかに市場から退出するため、過当競争に陥りにくく、業界全体の収益性が高く維持されやすくなります。
選択肢を評価します。
- ア:この分析の通り、新規参入が少なく、不採算企業が撤退しやすいため、業界の収益性は高くなりやすいと結論付けており、適切です。
- イ、エ、オ:前提となる障壁の高さの認識が誤っているか、そこから導かれる結論が誤っています。
- ウ:競争力の低い企業が撤退し、強い企業が残るため、市場の集中度は「高く」なる傾向があります。
したがって、アが最も適切な記述です。
第8問
【問題文】 M. ポーターによって提唱された「活動システム (activity system)」に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- ア 活動システム全体の一貫性を確保し、活動間の相互作用を強化することで、活動システムの模倣困難性を高めることができる。
- イ 活動システム全体を最適化するために、各活動の効率性を優先した設計を行う必要がある。
- ウ 企業を類似した活動システムによってグループ化し、業界全体の競争状況を視覚的に把握するためのツールを活動システムマップという。
- エ コスト優位を実現する活動システムに、差別化優位を実現する活動の一部を統合することで、低コスト化と差別化のトレードオフは解消される。
- オ 戦略を曖昧にすることで、活動システムの柔軟性を高め、持続的な競争優位性を実現することができる。
【解答】 ア →正解
【解説】 M. ポーターの活動システムとは、企業の戦略を構成する個々の活動(バリューチェーン上の活動)が、どのように相互に結びつき、補い合っているかを図式化したものです。優れた戦略では、これらの活動が「フィット(適合)」し、一貫性を持つことで、個々の活動を模倣するだけでは実現できない強固な競争優位が生まれます。
- ア:活動システムの特徴は、活動間の「フィット」と相互補強性にあります。この一貫性と複雑な結びつきが、競合他社にとっての模倣を困難にします。これは適切な記述です。
- イ:個別の活動の効率性(部分最適)よりも、活動システム全体の整合性や一貫性(全体最適)が重視されます。
- ウ:類似した戦略をとる企業グループを分析するのは「戦略グループ分析」です。活動システムマップは、一企業の内部活動の関連性を示すものです。
- エ:ポーターは、低コストと差別化の両立は非常に困難であり、どちらかに集中すべき(トレードオフの関係)だと主張しています。活動システムは、そのトレードオフを明確にするためのものです。
- オ:持続的な競争優位のためには、戦略は曖昧ではなく、明確でなければなりません。それに基づいて一貫した活動システムが構築されます。
したがって、アが最も適切な記述です。
第9問
【問題文】 特定の技術分野に集中し、その技術をベースとした製品を次々と開発・導入する戦略として「コア技術戦略」がある。コア技術戦略の特徴に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- ア コア技術戦略では、コア技術が陳腐化したり、競合企業に模倣されたりしても、コア技術の入れ替えは考えず、既存のコア技術にこだわった技術開発や製品開発を追求する。
- イ コア技術戦略では、コア技術の活用に注力し、既存市場でのシェア拡大を最優先の目標とする。
- ウ コア技術戦略では、コア技術を活用して顧客ニーズに合致した製品を開発することが望ましいが、開発の初期段階ではコア技術よりも既存顧客の要求を優先する。
- エ コア技術戦略では、コア技術を基盤に、多様な製品を開発し、その学習成果をコア技術の強化や発展につなげる。
- オ コア技術戦略では、特定の技術に経営資源を集中させるため、事業の多角化が難しく、コア技術に依存するリスクを分散しにくい。
【解答】 エ →正解
【解説】 コア技術戦略は、企業が持つ中核的な技術(コア技術)を定義し、それを応用して様々な製品群を開発・展開していく戦略です。これにより、技術開発の効率性を高め、持続的な競争優位を築くことを目指します。
- ア:環境変化によりコア技術が陳腐化した場合は、固執するのではなく、新たなコア技術を構築・獲得するなど、入れ替えや進化を図る必要があります。
- イ:既存市場だけでなく、コア技術を応用して新規市場へ参入することも重要な戦略の一部です。
- ウ:コア技術戦略では、技術シーズ(自社のコア技術)と顧客ニーズの両方をすり合わせることが重要であり、どちらか一方を優先するわけではありません。
- エ:これがコア技術戦略の本質です。一つの強力な技術基盤から多様な製品を生み出し(範囲の経済)、そこから得られる知見や収益を再びコア技術にフィードバックして強化・発展させていくという好循環を目指します。
- オ:コア技術を応用して多様な製品や事業を展開するため、むしろ事業の多角化を進めやすい戦略です。ただし、コア技術そのものへの依存リスクは存在します。
したがって、エが最も適切な記述です。
第10問
【問題文】 ユーザー・イノベーションに関する記述として、最も適切なものはどれか。
- ア 個人によるユーザー・イノベーションは、コミュニティを通じたユーザー・イノベーションよりも普及しやすい傾向にある。
- イ ユーザー・イノベーションとは、企業の開発者が主体となり、アンケートやインタビューを活用して、顧客のニーズを調査し、その結果を製品開発に反映するプロセスである。
- ウ ユーザー・イノベーションは、イノベーションのジレンマを引き起こし、既存企業が破壊的イノベーションに対応できなくなる原因となる。
- エ ユーザー・イノベーションは、ユーザーが持つニーズ情報の粘着性が高く、技術情報の粘着性が低い場合に起こりやすい。
- オ ユーザー・イノベーションは、リード・ユーザーと呼ばれる、特定の企業への忠誠度が高いユーザーによって引き起こされる傾向が強い。
【解答】 エ →正解
【解説】 ユーザー・イノベーションとは、製品やサービスのユーザー(使用者)自身が、自らのニーズを満たすために新しいものを開発・改良する現象です。
- ア:個人が生み出したイノベーションも、オープンソースのコミュニティなどを通じて共有・改良されることで、より広く普及しやすくなります。
- イ:ユーザー・イノベーションの主体は、企業ではなく「ユーザー」自身です。企業が主体となってニーズを調査するのは、通常のマーケティング活動です。
- ウ:「イノベーションのジレンマ」は、既存企業が優良顧客のニーズに応え続けるあまり、新興技術や破壊的イノベーションに対応できなくなる現象を指し、ユーザー・イノベーションが直接の原因となるわけではありません。
- エ:「ニーズ情報の粘着性」とは、ユーザーが持つニーズに関する情報が、言葉やデータで表現しにくく、企業に移転しにくい性質を指します。一方で「技術情報の粘着性」が低いとは、ユーザーがその技術を比較的容易に扱える状態を指します。この条件がそろうと、企業がニーズを汲み取るよりもユーザーが自分で作ってしまう方が早いため、ユーザー・イノベーションが起こりやすくなります。これは適切な記述です。
- オ:「リード・ユーザー」は、市場の多くの人々が将来抱えるであろうニーズをいち早く認識し、それを満たすことで大きな利益を得られる先進的なユーザーを指します。特定の企業への忠誠度が高いとは限りません。
したがって、エが最も適切な記述です。
第11問
【問題文】 E. リースが提唱したリーン・スタートアップに関する記述として、最も不適切なものはどれか。
- ア リーン・スタートアップでは、アーリー・アダプターと呼ばれる流行に敏感かつ自ら情報収集をするような顧客層を巻き込むことが推奨される。
- イ リーン・スタートアップでは、戦略転換(ピボット)をする最適なタイミングを特定化する手法が提示され、それを使用することが推奨される。
- ウ リーン・スタートアップでは、想定された顧客が必要とする新規製品・サービスについて仮説を立て、それをもとにコストをかけずに作った実用最小限の製品・サービスを顧客に使ってもらい、顧客の反応を計測することが推奨される。
- エ リーン・スタートアップは、新規性が非常に高く、顧客が存在するのかどうかも分からないような製品・サービスに適しており、幅広い産業に応用できる。
- オ リーン・スタートアップは、トヨタ生産方式から影響を受けた考え方である。
【解答】 イ →正解
【解説】 リーン・スタートアップは、「構築(Build)-計測(Measure)-学習(Learn)」というフィードバックループを高速で回し、不確実性の高い新規事業を成功に導くためのマネジメント手法です。
- ア:アーリー・アダプターは、未完成な製品にも寛容で、本質的なフィードバックをくれる貴重な存在であるため、彼らを巻き込むことが重要とされています。
- ウ:これは、MVP(Minimum Viable Product:実用最小限の製品)を用いて仮説検証を行う、リーン・スタートアップの中核的なプロセスを説明しています。
- エ:顧客や市場が不確かな状況で、無駄な開発を避けつつ事業を立ち上げるための手法であり、記述の通りです。
- オ:トヨタ生産方式の「ムダの排除」や「ジャストインタイム」といった思想が、リーン・スタートアップの根底に影響を与えています。
- イ:リーン・スタートアップでは、学習ループの結果、当初の仮説が間違いであった場合に「ピボット(戦略転換)」を行うことが重要とされます。しかし、その「最適なタイミング」を自動的に特定するような画一的な手法は存在しません。ピボットの判断は、蓄積されたデータや学習に基づき、起業家自身が行うものです。したがって、この記述は不適切です。
したがって、「不適切なもの」はイです。
第12問
【問題文】 J. ダニングの折衷理論 (OLIパラダイム)は、「所有優位性(O優位性)」、「立地優位性(L優位性)」、「内部化優位性(I優位性)」の3つの条件から、企業による海外直接投資や輸出、ライセンシングなどの海外進出について説明する理論である。この理論に基づく企業の海外進出に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- ア 所有優位性と立地優位性と内部化優位性の全てがある場合、海外直接投資による海外進出が最も望ましい。
- イ 所有優位性はあるが立地優位性と内部化優位性はない場合、輸出による海外進出が最も望ましい。
- ウ 内部化優位性はあるが所有優位性と立地優位性はない場合、自社の製品や技術の海外企業へのライセンシング契約による海外進出が最も望ましい。
- エ 立地優位性と内部化優位性はあるが所有優位性はない場合、輸出による海外進出が最も望ましい。
- オ 立地優位性はあらゆる形態の海外進出において重要であり、この優位性がない場合は海外市場で他企業に勝つことは難しく、海外進出を行わないことが最も望ましい。
【解答】 ア →正解
【解説】 OLIパラダイムは、企業が海外進出する際の形態を、3つの優位性の組み合わせで説明します。
- O (Ownership) 優位性: 企業が持つ技術、ブランド、経営ノウハウなどの競争力の源泉。海外進出の大前提です。
- L (Location) 優位性: 進出先の国が持つ魅力。安い労働力、豊富な資源、巨大な市場など。
- I (Internalization) 優位性: 市場での取引(ライセンス供与など)を介さず、自社組織内で活動を行うことのメリット。技術流出の防止など。
これらの組み合わせにより、最適な進出形態が決まります。
- 海外直接投資 (FDI) = O + L + I (3つ全てを持つ場合)
- 輸出 = O + I (立地優位性Lがない。自国での生産が有利)
- ライセンシング = O (立地Lも内部化Iの優位性もない。技術などを他社に供与)
各選択肢を評価します。
- ア:O, L, Iの3つの優位性がすべて揃っている場合、現地で自社生産・販売を行う海外直接投資が最も合理的とされます。これは適切な記述です。
- イ:O優位性のみでLとIの優位性がない場合は、「ライセンシング」が選択されます。
- ウ、エ:海外で事業を行うには、競争力の源泉である「O優位性」がなければなりません。O優位性がない状態での海外進出は考えられません。
- オ:L優位性は、海外「直接投資」において重要な要素ですが、例えば自国で生産して「輸出」する場合は、必ずしも必要ではありません。
したがって、アが最も適切な記述です。
第13問
【問題文】 日本のコーポレートガバナンス・コードは、2015年から東京証券取引所の上場企業を対象に適用されている。このコーポレートガバナンス・コードに関する記述として、最も適切なものはどれか。
- ア コーポレートガバナンス・コードは、企業価値よりも社会価値を優先し、社会の持続可能性を実現していくことを企業に求めている。
- イ コーポレートガバナンス・コードは、上場企業に投資家としてのあるべき姿を示し遵守させるガイドラインのことである。
- ウ コーポレートガバナンス・コードは、上場企業が備える企業の規律の在り方に関するガイドラインであり、法的拘束力はない。
- エ コーポレートガバナンス・コードは、ステークホルダーの中で投資家の利益を最優先することを企業に求めている。
【解答】 ウ →正解
【解説】 日本のコーポレートガバナンス・コードは、企業の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を目指すための、企業統治に関する原則を定めたものです。
- ア:コードは、企業の持続的な成長と「企業価値」の向上を主目的としています。社会価値やサステナビリティも重要な要素として含まれますが、「企業価値よりも優先する」という記述は不正確です。
- イ:コードは、上場「企業」が遵守すべき原則を定めたものであり、投資家(スチュワードシップ・コードが対象)に遵守を求めるものではありません。
- ウ:コードは、法律ではなく、金融庁と東京証券取引所が策定した「原則主義(プリンシプル・ベース)」のガイドラインです。そのため、法的拘束力はありません。ただし、各原則を実施しない場合には、その理由を説明する義務(コンプライ・オア・エクスプレイン)が課せられます。これは適切な記述です。
- エ:コードは、株主(投資家)との対話を重視しつつも、従業員、顧客、取引先、地域社会といった多様なステークホルダーとの適切な協働を求めており、特定のステークホルダーの利益を最優先するとは定めていません。
したがって、ウが最も適切な記述です。
第14問
【問題文】 組織における分業と調整に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- ア 作業現場において、仕事を分業し、個々の作業範囲を特定の領域に狭く限定すると、作業者のスキルが均質化し、業務の幅が広がるため、キャリア形成の選択肢も増える。
- イ 作業手順を標準化し、作業内容を確定させることは、計画目標の達成率を高め、生産性向上につながる。このような標準化と計画目標の関係は、「計画のグレシャムの法則」として知られている。
- ウ 仕事の分業が過度に進むと、組織メンバーは自分の仕事が組織全体にどのような意味を持っているか実感できず、仕事への意欲が低下することがある。こうした現象は、「アンダーマイニング効果」として知られている。
- エ 仕事の分業を進めると、個々の作業が単純化され、機械化が容易となるため、各工程間の調整が不要となり、業務は効率化されやすい。
- オ 定型的な作業は標準化によってあらかじめ調整し、想定外の事態には上位層が事後的に対応することで、仕事は効率的に行われる。
【解答】 オ →正解
【解説】
- ア:分業によって作業範囲を限定すると、専門性は高まりますが、業務の幅は「狭く」なり、キャリア形成の選択肢も限定される可能性があります。
- イ:「計画のグレシャムの法則」とは、日々の定型的な業務に追われ、長期的・非定型的な計画業務がないがしろにされる現象を指します。記述の内容とは異なります。
- ウ:過度な分業による意欲低下は「疎外」や「モティベーションの低下」などと呼ばれます。「アンダーマイニング効果」とは、金銭的報酬などの外的報酬を与えることで、元々あった内発的な動機づけが低下してしまう現象を指します。
- エ:分業を進めると、各工程間の連携やタイミングを合わせるための「調整」が、むしろより重要になります。調整が不要になるわけではありません。
- オ:これは組織における効率的な調整メカニズムを的確に説明しています。日常的な定型業務は、マニュアル化などの「標準化」によって事前調整します。一方で、予測できない非定型的な問題(例外事項)が発生した場合は、階層の上位にいる管理者が判断を下して事後的に対応します(例外原則)。これは適切な記述です。
したがって、オが最も適切な記述です。
第15問
【問題文】 組織構造や管理システムに関する記述として、最も適切なものはどれか。
- ア J.ウッドワードによれば、「単品生産・小規模バッチ生産」から「大規模バッチ・大量生産」、さらに「装置生産」へと技術の複雑性が高まるにつれて、組織の階層数は増加し、管理者や監督者の全従業員に対する割合、および直接労働者に対する間接労働者の割合も高くなる。
- イ J.ウッドワードによれば、「単品生産・小規模バッチ生産」や「装置生産」を行う企業では、作業の標準化と手順の明確化が重要であり、「機械的管理システム」の導入が最も適している。
- ウ P. ローレンスとJ.ローシュによれば、不確実性の高い環境で高業績をあげていた組織は、組織全体を統合する取り組みをできる限り抑えながら、各職能部門がそれぞれのタスク環境に適応できるよう高度に分化していた。
- エ T. バーンズとG.M. ストーカーによれば、「有機的管理システム」は、組織メンバーの職務内容や役割に柔軟性を持たせる一方で、情報と意思決定の権限を上位に集中させることにより、組織の分化と統合の両立を実現できる。
- オ T. バーンズとG.M. ストーカーによれば、組織のライフサイクルにおいて、起業者段階や共同体段階では「有機的管理システム」が採用されるが、公式化段階や精巧化段階に移行すると、「機械的管理システム」が採用される傾向が高くなる。
【解答】】 オ →間違いア
【解説】
- ア:ウッドワードの研究では、組織の階層数や間接労働者比率などは、「大規模バッチ・大量生産」で最も高くなり、「装置生産」ではむしろ低下するU字型の関係が見られました。
- イ:「単品生産」や「装置生産」のような非定型的な技術を持つ組織では、柔軟な対応が求められるため「有機的管理システム」が適しています。「機械的管理システム」が適しているのは、定型的な「大規模バッチ・大量生産」を行う組織です。
- ウ:ローレンスとローシュのコンティンジェンシー理論によれば、不確実性の高い環境で高業績をあげる組織は、高度に「分化」すると同時に、それをまとめるための高度な「統合」メカニズムも備えていることが必要です。「統合する取り組みを抑え」ていたわけではありません。
- エ:「有機的管理システム」では、意思決定の権限は上位に集中するのではなく、現場の担当者にも「分権化」されます。
- オ:これは組織のライフサイクルと管理システムの関係を的確に説明しています。組織が成長し、規模が拡大して公式化・精巧化していくにつれて、ルールや手続きが整備された「機械的管理システム」への移行が進む傾向があります。逆に、創業期のような柔軟性が求められる段階では「有機的管理システム」が適しています。これは適切な記述です。
したがって、オが最も適切な記述です。
第16問
【問題文】 E. シャインが提唱した組織文化論に関する記述の組み合わせとして、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
- a 「組織文化の3層モデル」において、価値観は、組織文化の最も深層に位置し、長年にわたってほとんど変化することなく組織の行動や意思決定を無意識のうちに方向づける。
- b 組織文化には、経営理念や経営戦略の策定・実行を通じて環境への外的適応を図る機能と、組織内の価値観や行動規範を共有して内的統合を促進する機能がある。
- c 組織文化変革のプロセスでは、まず人々が現状の問題を認識し、心理的安全性を確保しながら新しい学習を行い、その後、新しい価値観を内面化することで変革が定着する。
- d 組織文化は、自らの経験を通じてしか身につけることができず、明示的な教育やトレーニングでは文化を伝えることはできない。
〔解答群〕 ア aとb イ aとc ウ bとc エ bとd オ cとd
【解答】 ウ →正解
【解説】 E. シャインの組織文化論に基づき、各記述の正誤を判断します。
- a(誤): 組織文化の3層モデルで最も深層に位置し、無意識の前提となるのは「基本的な仮説(Basic underlying assumptions)」です。「価値観(Espoused values)」は、その一つ上の層に位置します。
- b(正): シャインは、組織文化が持つ主要な機能として、事業環境の変化に対応する「外的適応機能」と、組織内の人間関係を調整し、集団を安定させる「内的統合機能」の2つを挙げています。これは適切な記述です。
- c(正): これは、シャインが提唱した組織文化変革の3段階プロセス「解凍(現状の否定と変革の動機づけ)→変革(新しいやり方の学習)→再凍結(新しいやり方の定着)」を説明しています。「現状の問題を認識」が解凍、「新しい学習」が変革、「新しい価値観の内面化」が再凍結に対応します。これは適切な記述です。
- d(誤): 組織文化は、日々の経験を通じて暗黙的に学習される側面が強いですが、企業の歴史や理念を伝える研修、シンボルや儀式など、明示的な教育や働きかけによっても伝達・強化することが可能です。
したがって、正しい記述はbとcであり、その組み合わせであるウが正解です。
第17問
【問題文】 「組織市民行動」とは、組織メンバーがとる自己裁量的な行動であり、公式の報酬制度による明確な見返りが保証されるわけではないが、組織運営に有効に役立つ個人行動を指す概念である。 D. オーガンによると、組織市民行動は5つの次元(市民道徳、スポーツマン精神、誠実さ、丁重さ、利他主義)から構成される。これらの構成次元に則した組織市民行動の代表的な行動例に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- ア 「市民道徳」に基づく組織市民行動とは、関係者の時間を無駄にしないために、義務でない会議には出席しない行動を指す。
- イ 「スポーツマン精神」に基づく組織市民行動とは、自分の弱みを同僚に開示して、職場のチームワーク強化を図る行動を指す。
- ウ 「誠実さ」に基づく組織市民行動とは、上司の監視の目がなければ、労働時間中でも仕事に関係のない雑談をして職場の雰囲気を和らげる行動を指す。
- エ 「丁重さ」に基づく組織市民行動とは、関係者に対して事前に報告や相談をすることで、関係者に問題が起こらないように配慮する行動を指す。
- オ 「利他主義」に基づく組織市民行動とは、仕事で困っている同僚がいても助けの手を差し伸べず、本人の責任を明確にする行動を指す。
【解答】 エ →正解
【解説】 D. オーガンの組織市民行動の5つの次元の定義は以下の通りです。
- 利他主義 (Altruism): 困っている同僚を助けるなど、他者を支援する行動。
- 誠実さ (Conscientiousness): 求められている以上の真面目さでルールや職務を遂行する行動。
- スポーツマン精神 (Sportsmanship): 職場の些細な不平不満を言わず、建設的な態度を保つ行動。
- 丁重さ (Courtesy): 自分の行動が他者に与える影響を考慮し、事前に相談・連絡するなど配慮する行動。
- 市民道徳 (Civic Virtue): 会社の行事や委員会活動など、職務外の活動にも積極的に参加し、組織全体に関心を持つ行動。
各選択肢を評価します。
- ア:「市民道徳」は組織への積極的な関与を指すため、義務でなくても組織にとって重要と考えられる会議には出席する行動などが該当します。
- イ:「スポーツマン精神」は不平不満を言わない態度を指します。弱みの開示は、別の次元の行動(例えばチームワーク促進のための利他主義など)に関連する可能性があります。
- ウ:「誠実さ」はルールを遵守し真面目に働くことを指すため、監視がなくても職務に専念する行動が該当します。
- エ:自分の行動が他者に与える影響を考え、事前の根回しや情報共有を行うのは「丁重さ」の典型的な行動例です。これは適切な記述です。
- オ:「利他主義」は、困っている同僚を「助ける」行動です。記述は正反対です。
したがって、エが最も適切な記述です。
第18問
【問題文】 組織コミットメントの3つの次元である情緒的コミットメント、継続的コミットメント、規範的コミットメントに関する記述として、最も適切なものはどれか。
- ア 規範的コミットメントとは、組織の理念や価値観が自分の信念や倫理観と合致するかどうかを重視する個人の規範意識に基づいた組織コミットメントである。
- イ 継続的コミットメントとは、長期にわたって1つの組織に継続して参加し続けることに対する個人の義務感に基づいた組織コミットメントである。
- ウ 個人は組織において、情緒的、継続的、規範的コミットメントのうちいずれか1つの心理状態しか経験できないのではなく、3つのコミットメントは個人の中で同時に併存可能である。
- エ 情緒的コミットメントとストレスとの間には正の関係が見られる一方で、継続的コミットメントとストレスとの間には負の関係が見られる。
- オ 情緒的コミットメントとは、もし組織を去った場合、現状の生活水準を維持できなくなるのではないかという不安心理に基づいた組織コミットメントである。
【解答】 ウ →正解
【解説】 組織コミットメントの3次元モデル(アレン&マイヤー)の定義は以下の通りです。
- 情緒的コミットメント (Affective Commitment): 組織への愛着や一体感から「とどまりたい」と思う気持ち。
- 継続的コミットメント (Continuance Commitment): 離職による経済的・社会的損失を考え「とどまる必要がある」と思う気持ち。
- 規範的コミットメント (Normative Commitment): 組織への恩義や忠誠心から「とどまるべきだ」と思う気持ち。
各選択肢を評価します。
- ア:「規範的コミットメント」は、組織に尽くすべきだという義務感や恩義に基づくものであり、理念や価値観との合致を重視するのは「情緒的コミットメント」の側面に近いです。
- イ:「義務感」に基づくコミットメントは「規範的コミットメント」です。「継続的コミットメント」は、離職に伴うコスト(サンクコスト)の認識に基づきます。
- ウ:これら3つのコミットメントは、互いに独立した概念であり、一人の個人が同時に複数の種類のコミットメントを異なる強度で抱くことは可能です。例えば、「会社は好きだし(情緒的)、辞めたら給料が下がるから(継続的)、とどまるべきだ(規範的)」という状態はあり得ます。これは適切な記述です。
- エ:一般的に、組織への愛着が強い「情緒的コミットメント」が高いほどストレスは低く(負の関係)、辞めたくても辞められない「継続的コミットメント」が高いほどストレスは高い(正の関係)とされています。記述は逆です。
- オ:生活水準の維持など、離職に伴う損失を考えるのは「継続的コミットメント」の説明です。
したがって、ウが最も適切な記述です。
第19問
【問題文】 「組織社会化」とは、新しいメンバーが組織や集団の価値観、規範、必要とされる行動パターンなどを学び、それらに適応していくプロセスを指す。組織社会化に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- ア 新しいメンバーが自らの仕事の出来栄えのフィードバックを上司に求めるような積極的な行動をとることは、新しいメンバーの組織社会化を阻害するように作用する。
- イ ある組織の一員として組織社会化を既に経験した個人が、転職などの組織間移動を契機として移動先の組織に適応していく過程は「組織再社会化」と呼ばれる。
- ウ 上司とメンターは、新しいメンバーの組織社会化を促進する社会化エージェントとして重要な役割を果たす一方で、新しいメンバーと同じ地位の同僚が社会化エージェントの役割を果たすことはない。
- エ 組織社会化によって、組織文化にとらわれない組織メンバーの自由な思考や行動が促進されることで、組織の秩序が損なわれる側面がある。
- オ 組織社会化の一部である「予期的社会化」とは、組織や集団に参加した新しいメンバーが、参加直後に得た情報や経験に基づいて、その組織や集団に自分が将来的に適応できるかどうかを予期するプロセスを指す。
【解答】 イ →正解
【解説】
- ア:フィードバックを求める行動(フィードバック・シーキング)は、役割の曖昧さを解消し、早期に適応しようとする新人の積極的な戦術であり、組織社会化を「促進」します。
- イ:記述の通り、一度ある組織で社会化された個人が、別の組織に移って再び適応していくプロセスを「組織再社会化」と呼びます。これは適切な記述です。
- ウ:上司やメンターだけでなく、同僚もまた、日々の業務の進め方や暗黙のルールを教えるなど、新人にとって非常に重要な社会化エージェント(社会化を促す存在)です。
- エ:組織社会化は、新人が組織の価値観や規範を内面化するプロセスであるため、むしろ組織の秩序を「維持」する方向に作用します。自由な思考が「抑制」されるという側面が指摘されることもあります。
- オ:「予期的社会化」とは、組織に「参加する前」の段階で、その組織について情報を集め、どのような場所かを想像したり期待を形成したりするプロセスを指します。参加「直後」のプロセスではありません。
したがって、イが最も適切な記述です。
第20問
【問題文】 リーダーシップ理論に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- ア F. フィードラーの研究によると、状況好意性が極めて好ましい場合と極めて好ましくない場合は、人間関係志向型のリーダーの方がタスク志向型のリーダーよりも高業績をあげる傾向がある。
- イ オハイオ研究によると、有効なリーダーシップの行動特性を表す「構造づくり」と「配慮」は互いにトレードオフの関係にあり、それらを両立させることは不可能である。
- ウ サーバント・リーダーシップ理論によると、サーバント・リーダーシップの成立要件とは、リーダーが何を要求しているかにメンバーが常に注意を向け、リーダーに対して自己犠牲的な行動をメンバーがとることである。
- エ パス・ゴール理論によると、リーダーがメンバーあるいは業務環境に欠けている要因を補完する行動をとった場合に、メンバーの業績と満足度は上昇する傾向がある。
- オ リーダー・メンバー交換理論(LMX理論)によると、リーダーと個々のメンバーとの間で結ばれる個別の交換関係の質ではなく、リーダーとメンバー集団全体との間で結ばれる包括的な交換関係の質が、メンバーの態度や行動に影響を与えるとされる。
【解答】 エ →正解
【解説】
- ア:フィードラーのコンティンジェンシー理論では、状況好意性が極めて好ましい場合と極めて好ましくない(両極端の)場合は、「タスク志向型」リーダーが高業績をあげ、状況が中程度の場合は「人間関係志向型」リーダーが高業績をあげるとされています。記述は逆です。
- イ:オハイオ研究では、「構造づくり」と「配慮」は互いに独立した次元であると結論づけられました。したがって、両方を高いレベルで両立させることが可能であり、それが最も効果的なリーダーシップとされます。
- ウ:サーバント・リーダーシップは、リーダーがまずメンバーに「奉仕」し、その後メンバーを導くという考え方です。メンバーがリーダーに自己犠牲的に尽くすのではなく、リーダーがメンバーの成長や幸福に尽くすことを重視します。記述は逆です。
- エ:パス・ゴール理論は、メンバーが目標(ゴール)を達成するための道筋(パス)を明確にすることがリーダーの役割であるとします。そのために、メンバー自身や環境に不足しているものをリーダーが補う(例えば、指示が不明確なら指示的に、自信がなければ支援的に振る舞う)ことで、メンバーの動機づけや満足度が高まると考えます。これは適切な記述です。
- オ:LMX理論は、リーダーが部下全員と均一な関係を築くのではなく、部下「一人ひとり」と個別の関係(交換関係)を築くことに着目します。その関係の質が、部下の態度や行動に影響を与えると考えます。集団全体との関係を論じるものではありません。
したがって、エが最も適切な記述です。
第21問
【問題文】 組み立てメーカーA社は、製品Xのみを開発・製造・販売している。A社は、製品Xの製造に不可欠な部品Yを自社では製造できず、部品サプライヤーB社からしか調達できない。一方、B社は部品YをA社以外の複数のメーカーにも供給している。 このとき、資源依存パースペクティブの考え方に従った記述として、最も適切なものはどれか。
- ア A社が製品Xの品質を向上させれば、B社からの供給リスクを低減できる。
- イ A社はB社に対する資源依存度が高いため、A社のB社に対する相対的なパワーは強い。
- ウ A社は部品Yの在庫を増やすことで、B社への依存を解消できる。
- エ A社は部品Yを使用しない新製品を開発することで、B社への依存度を低減できる。
- オ B社が部品の供給先を増やすと、A社のB社への依存度は低減する。
【解答】 エ →正解
【解説】 資源依存パースペクティブでは、組織は存続に必要な資源を外部環境に依存しており、その依存関係が組織間のパワー関係を決定すると考えます。ある組織が、代替のきかない重要な資源を他組織に依存しているほど、その組織のパワーは弱くなります。 設問の状況では、A社は部品YをB社に完全に依存しており、B社はA社以外にも供給先があるため、「B社のA社に対するパワーが強く、A社のパワーが弱い」という関係にあります。
- ア:製品Xの品質向上は、A社の顧客に対する魅力を高めますが、B社からの部品調達という依存関係そのものを変えるものではなく、供給リスクを直接低減するものではありません。
- イ:A社はB社への依存度が高いので、A社のB社に対する相対的なパワーは「弱い」です。
- ウ:在庫を増やすことは、一時的な供給停止に対するバッファーにはなりますが、B社から調達し続けなければならないという依存構造そのものを「解消」するものではありません。
- エ:部品Yを使わない新製品を開発し、事業の主軸をそちらに移すことができれば、B社から部品Yを調達する必要性が低下し、B社への依存度を本質的に低減させることができます。これは依存度低減の有効な戦略です。
- オ:B社の供給先が増えるということは、B社にとってA社への依存度が相対的にさらに低下することを意味します。これは、A社の交渉力をさらに弱め、A社のB社への(相対的な)依存度を高める方向に作用します。
したがって、エが最も適切な記述です。
第22問
【問題文】 組織のネットワーク理論に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- ア D. ワッツとS.ストロガッツによると、スモールワールド・ネットワークでは、ランダムなつながりを増やすと、ネットワーク全体の平均経路長(average path length)は長くなり、情報の流通は困難になる。
- イ M.グラノヴェッターによると、交流の機会が少なく信頼関係が薄い「弱い紐帯」は、やりとりされる情報の範囲を限定し、イノベーションに必要な新しい知識やアイデアを伝わりにくくする。
- ウ M. グラノヴェッターによると、頻繁に顔を合わせ、強い信頼関係のもとで協力し合う「強い紐帯」は、メンバー同士の結束を深めることで、組織の柔軟性を高め、環境の変化に迅速に適応できるようにする。
- エ R.バートによると、同じ業界に属し競争関係にある組織同士が構造同値の関係にある場合、目的や価値観を共有しやすいため、連携して協調関係を構築しやすい。
- オ R.バートによると、ソーシャル・ネットワークの中で構造的空隙の間に位置する組織は、仲介者の役割を担うことで、ネットワーク上の多様な情報を入手し、情報の優位性を得ることができる。
【解答】 オ →正解
【解説】
- ア:スモールワールド・ネットワークは、規則的なネットワークに少数のランダムなつながり(ショートカット)を加えたものです。このランダムなつながりによって、平均経路長は劇的に「短く」なり、情報の伝達は効率的になります。
- イ:グラノヴェッターは、「弱い紐帯の強み」を主張しました。異なる集団を結びつける「弱い紐帯」は、新規性の高い多様な情報をもたらすため、イノベーションにとって重要であるとされます。記述は逆です。
- ウ:「強い紐帯」は、メンバー間の結束を強めますが、情報が同質化しやすく、外部環境の変化に対する柔軟性を失わせる(集団思考に陥る)危険性も指摘されています。
- エ:「構造同値」とは、ネットワーク上で類似した関係パターンを持つ(例えば、同じ相手から情報を得て、同じ相手に情報を流す)地位のことです。競争関係にある企業は構造同値になりやすいですが、彼女らは競争相手であるため、協調関係を構築するとは限りません。むしろ競争が激化することがあります。
- オ:R. バートが提唱した「構造的空隙(ストラクチャル・ホール)」の理論です。互いに繋がっていない集団(クラスター)の間に存在する隙間を「構造的空隙」と呼び、その間を橋渡しする位置(仲介者、ブローカー)にいる者は、双方の集団から非冗長な情報を得ることができ、情報のコントロールにおいて優位な立場に立てるとされます。これは適切な記述です。
したがって、オが最も適切な記述です。
第23問
【問題文】 組織における個人が組織変革に抵抗を示す理由に関する記述として、最も不適切なものはどれか。
- ア 外部環境が変化しているのに、組織内の慣習が従来の安定的かつ効率的な仕事の進め方を維持し強化していることに対して、危機感を抱くから。
- イ 組織変革によって、従来よりも仕事の成果がうまく出せなくなることを心配するから。
- ウ 組織変革によって、新しい仕事のやり方が少なくとも短期的には従来よりも非効率になると感じるから。
- エ 組織変革によって、自らの職務にとって未知で不確実な状態がもたらされることに不安を感じるから。
- オ たとえ客観的に外部環境が変化したとしても、偏った情報を収集したり、情報を偏って解釈したりすることで、従来と同じ環境が現在も継続していると考えるから。
【解答】 ア →正解
【解説】 組織変革への抵抗は、変化によって現状の安定が脅かされることへの不安や懸念から生じます。
- イ、ウ、エは、変革への抵抗理由として典型的です。新しいスキルへの不安(イ)、一時的な効率低下(ウ)、未知への不安(エ)は、いずれも個人が変化を避けようとする動機になります。
- オは、「選択的知覚」と呼ばれる認知バイアスで、変革の必要性自体を認識できなくさせるため、結果的に現状維持、すなわち変革への抵抗につながります。
- アは、「現状のやり方ではまずい」という危機感を抱く状況を説明しています。これは変革の必要性を認識している状態であり、変革への抵抗ではなく、むしろ変革を「推進」する動機となります。
したがって、「抵抗を示す理由」として最も不適切なものはアです。
第24問
【問題文】 使用者と期間の定めのある労働契約を締結する労働者 (有期雇用労働者)に関する記述として、最も適切なものはどれか。なお、一定の事業の完了に必要な期間を定める労働契約については考慮しないものとする。
- ア 使用者が、専門的な知識、技術または経験であって高度のものとして厚生労働大臣が定める基準に該当する専門的知識等を有する労働者(当該高度の専門的知識等を必要とする業務に就く者に限る。)との間で有期労働契約を締結する場合、その労働契約は5年を超える期間について締結してはならない。
- イ 使用者は、就業規則において「退職手当は3年以上勤務した者に支給する」と定めている場合、契約期間を1年とする有期雇用労働者を雇い入れたときの労働条件の通知に際して、退職手当の有無を明示する必要はない。
- ウ 使用者は、有期雇用労働者を、有期労働契約期間が満了するまでの間は雇用し続けなければならず、やむを得ない事由がある場合であっても、当該契約期間の途中で解雇することができない。
- エ 有期雇用労働者が、有期労働契約期間が満了する日までの間に更新の申し込みをした場合、当該労働者において、当該契約期間満了時に更新されるものと期待することについて合理的な理由があると認められるときは、使用者は、いかなる場合も当該契約の更新の申し込みを拒絶することができない。
【解答】 ア →正解
【解説】
- ア:労働契約法により、有期労働契約の期間は原則として上限3年ですが、一定の専門的知識等を有する労働者(高度プロフェッショナル)や満60歳以上の労働者との契約については、上限が「5年」となる特例があります。したがって、5年を超える契約は締結できません。これは適切な記述です。
- イ:労働基準法により、労働契約締結時には、退職に関する事項(退職手当の有無、対象者範囲、計算方法など)は書面で明示しなければならない絶対的明示事項です。たとえ採用時点では支給対象外であっても、その旨を明示する必要があります。
- ウ:有期労働契約の期間中の解雇は、無期契約の場合よりも厳しく制限されますが、「やむを得ない事由がある場合」には解雇が可能です(労働契約法第17条)。したがって、「いかなる場合も解雇できない」わけではありません。
- エ:いわゆる「雇止め法理」(労働契約法第19条)に関する記述です。更新への合理的期待が認められる場合、使用者が更新を拒絶するには客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であると認められることが必要です。しかし、「いかなる場合も拒絶することができない」わけではありません。
したがって、アが最も適切な記述です。
第25問
【問題文】 労働安全衛生法第66条の10に規定する「心理的な負担の程度を把握するための検査」(ストレスチェック)および厚生労働省の指針に関する記述として、最も適切なものはどれか。なお、本間における厚生労働省の指針とは、「心理的な負担の程度を把握するための検査及び面接指導の実施並びに面接指導結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」を指す。
- ア 事業者は、ストレスチェックを受けた労働者に対し、当該検査を行った医師等から当該検査の結果が通知されるようにしなければならない。
- イ 就業規則においてストレスチェックの受検を義務付けている事業場においては、事業者は、ストレスチェックを受けることを拒否した労働者に対して、拒否したことを理由として懲戒処分を行うことができる。
- ウ ストレスチェック制度は、特にメンタルヘルス不調を早期に発見し適切な対応を行うことを主たる目的として、定期的に労働者のストレス状況について検査を行うものである。
- エ ストレスチェックの結果通知を受け、心理的な負担の程度が厚生労働省令で定める要件に該当する労働者が、保健師による面接指導を受けることを希望する旨の申出をしたときは、事業者は、保健師による面接指導を行わなければならない。
【解答】 ア →正解
【解説】
- ア:ストレスチェックの結果は、検査を実施した医師、保健師等から直接本人に通知され、事業者は本人の同意なく結果を知ることはできません。事業者は、医師等から本人へ結果が通知される体制を整える必要があります。これは適切な記述です。
- イ:労働者にはストレスチェックの受検義務はありません。したがって、事業者が受検を強要したり、受検しないことを理由に不利益な取扱いをしたりすることはできません。就業規則で定めても懲戒処分はできません。
- ウ:ストレスチェック制度の主たる目的は、労働者自身のストレスへの気づきを促し、職場環境の改善につなげることで、メンタルヘルス不調を「未然に防止する(一次予防)」ことです。「不調の早期発見(二次予防)」が主たる目的ではありません。
- エ:高ストレス者から面接指導の申出があった場合、事業者は「医師」による面接指導を実施する義務があります(労働安全衛生法第66条の10第3項)。保健師が実施することはできません。
したがって、アが最も適切な記述です。
第26問
【問題文】 労働施策総合推進法第30条の2に規定されている、いわゆる「職場におけるパワーハラスメント」および厚生労働省の指針に関する記述として、最も適切なものはどれか。なお、本間における厚生労働省の指針とは、「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」を指す。
- ア 1人の労働者に対して同僚が集団で無視をし、職場で孤立させるなどの「人間関係からの切り離し」は、職場におけるパワーハラスメントの代表的な言動の類型に含まれる。
- イ 事業主は、職場におけるパワーハラスメントを防止するために雇用管理上の措置を講じなければならないが、常時雇用する労働者が10人未満の事業所は、相談窓口をあらかじめ定めて労働者に周知するなど相談体制を整備する義務までは負わない。
- ウ 職場におけるパワーハラスメント該当性の判断は、労働者個人の主観に基づき行われることから、客観的に見て業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導であっても、労働者が不満に感じる場合には職場におけるパワーハラスメントに該当する。
- エ 職場におけるパワーハラスメントにいう「職場」とは、労働者が通常就業している場所を指す。したがって、社外における取引先との打ち合わせ場所(接待の席を含む)は「職場」に該当することはない。
【解答】 ア →正解
【解説】
- ア:厚生労働省の指針では、パワハラの代表的な言動の類型として6つ挙げています。その一つに「人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)」があり、設問の例はこれに該当します。これは適切な記述です。
- イ:パワハラ防止措置は、事業規模にかかわらず、すべての事業主の義務です。したがって、10人未満の事業所であっても相談窓口の設置・周知などの措置を講じなければなりません。
- ウ:パワハラに該当するか否かは、個人の主観だけでなく、①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されること、という3つの要素をすべて満たすかを客観的に判断します。適正な業務指示はパワハラに該当しません。
- エ:ここでの「職場」とは、事業主が雇用する労働者が業務を遂行する場所を指し、通常就業している場所以外でも、出張先、業務で使用する車中、接待の席なども含まれ得ます。
したがって、アが最も適切な記述です。
第27問
【問題文】 労働基準法第32条の4(1年単位の変形労働時間制)に関する記述として、最も適切なものはどれか。なお、積雪地域の建設業の屋外労働者および隔日勤務のタクシー運転手のケースは考慮しないものとする。
- ア 1年単位の変形労働時間制により労働させる労働者(対象労働者)の範囲は、労使協定で明確にしなければならない。対象期間の途中に採用した者に対しては、当該対象期間の途中から対象労働者の範囲に含めることはできないため、当該対象期間の途中から1年単位の変形労働時間制を適用させることはできない。
- イ 1年単位の変形労働時間制による1日の労働時間の限度は10時間、1週間の労働時間の限度は52時間である。さらに、例えば対象期間を1年と定めた場合、労働時間が48時間を超える週が連続3週以下であり、かつ、対象期間をその初日から3ヵ月ごとに区分した各期間において労働時間が48時間を超える週の初日が3回以下でなければならない。
- ウ 1年単位の変形労働時間制の対象期間内の全期間にわたって、各日、各週の所定労働時間を定めなければならないが、対象期間を1ヵ月以上の期間に区分することとした場合には、最初の期間における労働日及び最初の期間における労働日ごとの労働時間を定めておくことで、あらかじめ全期間にわたって定めておく必要がなくなる。
- エ 1年単位の変形労働時間制の対象期間は、その期間を平均して1週間当たりの労働時間が40時間を超えない範囲内において労働させる期間をいい、3ヵ月を超え1年以内の期間に限ることとされている。
【解答】 イ →正解
【解説】
- ア:対象労働者の範囲は労使協定で定める必要がありますが、協定で定めることで、対象期間の途中採用者に対しても、採用日から変形労働時間制を適用することは可能です。
- イ:1年単位の変形労働時間制には、対象期間全体での週平均労働時間40時間という枠に加え、労働時間の上限(1日10時間、1週52時間)、連続労働日数の制限、特定期間における労働時間の制限など、様々な規制があります。記述されている内容は、対象期間が3ヶ月を超える場合の週48時間超えに関する制限事項を正しく説明しています。これは適切な記述です。
- ウ:1年単位の変形労働時間制では、原則として対象期間全ての労働日と各日の労働時間を「特定」する必要があります。ただし、対象期間を1ヶ月以上の期間に区切る場合、最初の期間については労働日と各日の労働時間を特定し、残りの期間については労働日数と総労働時間のみを定めておくことが例外的に認められています。しかし、「全期間にわたって定めておく必要がなくなる」わけではなく、各期間の開始30日前までに、その期間の労働日と労働時間を具体的に特定する必要があります。
- エ:対象期間は「1ヶ月を超え1年以内」です。「3ヶ月を超え」という部分が誤りです。
したがって、イが最も適切な記述です。
第28問
【問題文】 マーケティング・リサーチに関する記述として、最も適切なものはどれか。
- ア 1950年代から60年代にかけて、アメリカでは精神分析や臨床心理学を応用して消費者の深層心理を調べるニューロ・マーケティング・リサーチが盛んに行われたが、分析者による恣意的な解釈などが入り込む傾向があり、次第に行われなくなった。
- イ 自社の製品に対する顧客の満足度(変数X:7点尺度で回答)と顧客の年収(変数Y)との間の相関分析を行った結果、相関係数がゼロであったため、XとYは相互に無関係であると結論づけた。
- ウ 自社の製品に対する顧客の満足度(変数X:7点尺度で回答)を連続尺度とみて顧客の居住地(変数S:都道府県で回答)との間に関係があるかどうかを調べるために、カイ2乗分析を行った。
- エ 自社の製品を購入した顧客からサービスセンターに寄せられる手紙とハガキの内容を分析した結果、製品Aより製品Bに寄せられる不満の方が多いことが分かった。このため、直ちに製品Bの販売を中止することにした。
- オ 自社の製品を購入した全顧客を対象とする全数調査は、得られる回答データの正確性が高い一方で時間とコストの観点から現実的ではないため、単純無作為抽出法、層化抽出法などの標本抽出方法によるサンプリング調査が行われることが多い。
【解答】 オ →正解
【解説】
- ア:消費者の深層心理を調べる手法は「動機調査(Motivation Research)」と呼ばれます。「ニューロ・マーケティング」は、脳科学の知見(fMRIなど)を応用して消費者の無意識の反応を計測する、より新しい手法です。
- イ:相関係数がゼロであることは、「線形(直線的)な関係がない」ことを示すに過ぎません。例えば、U字型のような非線形の関係がある可能性は否定できず、「相互に無関係である」と断定するのは早計です。
- ウ:カイ2乗分析は、「カテゴリカルデータ」同士の関連性を調べる手法です。満足度(順序尺度)を連続尺度とみなし、居住地(名義尺度)との関係を調べる場合、分散分析(ANOVA)などが用いられます。
- エ:サービスセンターに寄せられる意見は、何らかの強い動機(多くは不満)を持つ顧客からのものが多く、顧客全体の意見を代表しているとは限りません(サンプルの偏り)。この情報だけで販売中止を決定するのは、早計な意思決定です。
- オ:全数調査は、対象者全員を調査するため正確ですが、時間とコストが膨大になります。そのため、母集団から一部を抽出するサンプリング(標本調査)が一般的に行われます。単純無作為抽出法や層化抽出法はその代表的な手法です。これはマーケティング・リサーチの基本的な考え方を正しく説明しています。
したがって、オが最も適切な記述です。
第29問
【問題文】 (前略)食品メーカーA社は、・・・国外への輸出、その他の方法による海外進出を視野に入れている。このため、同社ではグローバル・マーケティングについて、検討を開始した。
(設問1) 文中の下線部①に関連して、以下の図は、国内マーケティングを行っている企業が、グローバル・マーケティングを展開するに至るまでの一般的な発展段階を示している。図中の空欄A~Cに入る語句の組み合わせとして、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
(図)国内マーケティング → A → B → C → グローバル・マーケティング
〔解答群〕 ア A:国際マーケティング B: 多国籍マーケティング C:輸出(間接・直接) イ A: 国際マーケティング B:輸出(間接 直接) C: 多国籍マーケティング ウ A: 多国籍マーケティング B:輸出(間接 直接) C: 国際マーケティング エ A:輸出(間接・直接) B: 国際マーケティング C: 多国籍マーケティング オ A:輸出(間接・直接) B: 多国籍マーケティング C: 国際マーケティング
【解答】 エ →正解
【解説】 企業の海外市場への関与は、一般的にリスクの低い形態から徐々に深まっていく段階的な発展をたどります。
- 国内マーケティング: 国内市場のみで活動。
- A: 輸出(Export Marketing): 海外への最初のステップ。自社で直接行う「直接輸出」と、商社などを介する「間接輸出」がある。海外への関与はまだ低い。
- B: 国際マーケティング(International Marketing): 各国の市場に進出し、現地のニーズに合わせてマーケティング戦略を調整し始める段階。
- C: 多国籍マーケティング(Multinational Marketing): さらに進んで、各国の市場を独立したものと捉え、それぞれに最適化したマーケティングを展開する(マルチドメスティック戦略)。現地法人化など、より深い関与を伴う。
- グローバル・マーケティング(Global Marketing): 世界市場を一つの統合された市場とみなし、標準化された製品や戦略でグローバルな規模の経済を追求する段階。
この発展段階に最も合致するのは、選択肢エの「A:輸出(間接・直接) → B: 国際マーケティング → C: 多国籍マーケティング」という順序です。
(設問2) 文中の下線部②に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- ア 海外の国や地域に進出して間もない時期は、参入モードとして完全所有子会社による現地生産を採用することが必要であるが、現地でのビジネスが軌道に乗るにつれて、次第に直接・間接輸出に転換していく。
- イ 極めて重要な経営資源である知識には、形式知と暗黙知がある。前者はマニュアルとして明文化したり図示したりすることにより国際移転が可能であるが、後者については移転できない。
- ウ 参入モードの1つであるフランチャイズでは、母国の本社がフランチャイジーとして研究開発・マーケティング・生産を行い、進出先のフランチャイザーは販売とサービスを担当する場合が多い。
- エ 製品やサービスを進出先の国や地域に合わせる適応化戦略は、標準化戦略より自社にとって高コストであるが、進出先における最終顧客の満足度は高い場合が多い。
- オ 輸出マーケティングでは、当初は自社の製品やサービスを直接海外に輸出したいた企業が、取扱量が増えるに従いリスク回避などの目的で商社などの輸出代行業を介して間接輸出を行うようになる。
【解答】 エ →正解
【解説】
- ア:一般的に、海外進出はリスクの低い輸出から始まり、徐々に現地生産(完全所有子会社など)へと関与を深めていくのが普通です。記述の順序は逆です。
- イ:暗黙知は移転が困難ですが、不可能ではありません。例えば、熟練技術者が現地で直接指導を行う(人の移動を伴う)など、共同作業を通じて移転させることが試みられます。
- ウ:フランチャイズ契約では、ノウハウを提供する本社側が「フランチャイザー」、加盟店側が「フランチャイジー」です。記述は逆です。
- エ:適応化戦略は、各国の市場に合わせて製品やマーケティングを修正するため、規模の経済が働きにくく、標準化戦略に比べてコストは高くなります。その一方で、現地のニーズにきめ細かく応えるため、顧客満足度は高くなる傾向があります。これは適切な記述です。
- オ:一般的に、輸出はまず商社などを利用した「間接輸出」から始め、経験を積み、取扱量が増えるにつれて、自社でコントロールする「直接輸出」へと移行していくケースが多いです。記述の順序は逆です。
したがって、エが最も適切な記述です。
第30問
【問題文】 プライシングに関する記述として、最も適切なものはどれか。
- ア 価格を消費者による「支出の痛み」として捉えれば、価格は安いほど売れ行きは伸びることになるが、他方で価格を「品質のバロメーター」や「プレステージ」として捉えれば、必ずしも安い価格の方が売れ行きが伸びるとは言えない。
- イ 顧客によって異なる価格を提示するプライシングは、鉄道サービスにおける学割やホテル業界におけるメンバーシップ制度などに見られるように古くから行われてきたが、時期によって価格を変えるプライシングが行われるようになったのは、デジタル・マーケティングによるダイナミック・プライシングが浸透した近年になってからである。
- ウ サブスクリプションは、製品やサービスの所有権の移転を行わずに使用する権利だけを販売するものであり、音楽や映像などがデジタル化され所有権の移転を行わずに転送できるようになったことなどに示されるように、デジタル時代になって誕生した新しい契約形態である。
- エ 自社製品を有利に扱ってくれる流通業者に対して、メーカーは割引価格などの金銭的見返りを提供することが多い。そのうち短期的な金銭的見返りは一般的にリベートと呼ばれ、長期的に提供されるアローワンスと区別される。
【解答】 ア →正解
【解説】
- ア:価格には、消費者のコスト(支出の痛み)という側面だけでなく、品質を示すシグナルとしての役割(品質バロメーター)や、所有することの満足感を与える役割(威光価格、プレステージ価格)があります。そのため、高価格であるほど需要が増加する「ヴェブレン効果」や「スノッブ効果」といった現象も見られます。これは適切な記述です。
- イ:時期によって価格を変動させるプライシング(需要変動価格)は、航空運賃やホテルの宿泊料(季節料金)、演劇のチケット(昼夜料金)など、デジタル化以前から広く行われてきました。
- ウ:サブスクリプション(定額制)自体は、新聞や雑誌の定期購読など、デジタル時代以前から存在する契約形態です。
- エ:流通業者への価格割引のうち、特定の販促活動への協力に対する短期的な値引きを「アローワンス」と呼びます。一方、一定期間の仕入額に応じて支払われる割戻金などを「リベート」と呼びます。記述は逆です。
したがって、アが最も適切な記述です。
第31問
【問題文】 マーケティング・コミュニケーションに関する記述として、最も適切なものはどれか。
- ア インフィード広告は、SNSのコンテキストやデザインとマッチさせて表示され、あたかも投稿の1つであるかのようにタイムラインに溶け込み、ユーザーの利用体験を妨げないことを目指す広告である。
- イ コミュニケーションに対する消費者の反応を表したモデルである AIDMA モデルや AISASモデル、FCBグリッドなどの階層モデルでは、消費者の反応が認知段階から感情段階を経て行動段階に進むと考える点で共通している。
- ウ サードパーティ・クッキーの利用が法律などにより制限されると、インターネット広告の配信精度や広告効果が低下するリスクがあるが、リ・ターゲティング広告には影響はない。
- エ 日本では2022年に改正された個人情報保護法において、クッキーは個人情報であり、個人情報保護の対象に含まれると規定された。
- オ ネイティブ広告においては、広告のデザインとフォーマットを広告が配信される媒体の記事やコンテンツの形式や機能と一体化させることが必要であるが、広告の内容やクリック後に表示される遷移先のコンテンツは自由に設定することができる。
【解答】 ア →正解
【解説】
- ア:インフィード広告は、Webサイトやアプリ(特にSNS)のコンテンツとコンテンツの間に、そのデザインに溶け込むように表示される広告です。ネイティブ広告の一種であり、記述はインフィード広告の特徴を正しく説明しています。
- イ:AIDMAやAISASは「認知→感情→行動」の階層を仮定しますが、FCBグリッドは、関与度と情報処理のタイプ(思考/感情)に応じて4つの異なる反応プロセスを提示します。例えば高関与・思考型では「認知→感情→行動」ですが、低関与・感情型では「感情→行動→認知」となるなど、全てのモデルが同じ階層をたどるわけではありません。
- ウ:リ・ターゲティング広告(一度サイトを訪れたユーザーを追跡して表示する広告)は、まさにサードパーティ・クッキーを利用して実現されている代表的な広告手法です。そのため、その利用が制限されれば大きな影響を受けます。
- エ:2022年改正個人情報保護法では、クッキーそのものは個人情報とは定義されていません。しかし、クッキー情報を他の個人情報と紐づけて利用する場合などには、「個人関連情報」として本人の同意取得などの規制がかかることになりました。
- オ:ネイティブ広告は、ユーザー体験を損なわないよう、広告の内容や遷移先のコンテンツも、媒体のコンテンツと関連性や一貫性があることが求められます。全く無関係な内容を設定することは推奨されません。
したがって、アが最も適切な記述です。
第32問
【問題文】 (前略)企業は有望な機会を特定したり、自社が直面している問題を把握したりする目的で、環境分析を行っている。企業による環境分析は、自社を取り巻く外部環境の分析①と自社の経営資源に関わる内部環境の分析②に分けられる。
(設問1) 文中の下線部①に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- ア PEST分析は、企業動向に影響を与える人口動態的要因(people)、経済的要因(economy)、社会的要因(society)、技術的要因(technology)を分析する手法である。
- イ SWOT 分析の4つの分析視点のうち、外部環境分析に該当するのはSとWの視点である。
- ウ 業界内の競争状況を視覚的に分析する知覚マップ分析では、価格、製品多様性、地域展開などの客観的要素が分析軸として設定される。
- エ ハーフィンダール・ハーシュマン指数の値が小さいほど、市場は完全競争につながっていく。
- オ ファイブ・フォーシズは、分析者の主観が反映されにくい極めて客観的な枠組みであり、分析結果の信頼性が高い。
【解答】 エ →正解
【解説】
- ア:PEST分析は、政治的(Political)、経済的(Economic)、社会的(Social)、技術的(Technological)要因の頭文字をとったものです。「人口動態的(Demographic)」は社会的要因に含まれることが多いですが、PがPeopleではありません。
- イ:SWOT分析では、S(強み)とW(弱み)が「内部環境」、O(機会)とT(脅威)が「外部環境」の分析に該当します。
- ウ:「知覚マップ(Perceptual Map)」は、消費者の「知覚(主観)」に基づいて、競合製品やブランドのポジショニングを分析するものです。価格などの客観的要素を用いるマップは「ポジショニングマップ」と呼ばれることが多いです。
- エ:ハーフィンダール・ハーシュマン指数(HHI)は、市場の寡占度・集中度を示す指標です。値が大きいほど少数の企業による寡占が進んでいることを、値が小さい(ゼロに近づく)ほど多くの企業が競争している状態(完全競争)に近いことを意味します。これは適切な記述です。
- オ:ファイブ・フォーシズ分析は有用なフレームワークですが、各要因の強弱の判断や、業界の境界線の設定など、分析者の主観が入り込む余地は大きく、客観性が絶対的に保証されるわけではありません。
したがって、エが最も適切な記述です。
(設問2) 文中の下線部②に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- ア 3C分析は、市場分析、競合他社分析、自社分析で構成される。このうち、自社分析では、自社の顧客のトレンドや潜在性といった動向を分析することが目的であるため、個別顧客のニーズや行動までは分析対象にならない。
- イ KFS (Key Factor for Success)は、自社の将来的な目標と現状との間のギャップの明確化や自社の成長において獲得すべき経営資源の明確化において指針となる概念である。
- ウ マーケティング・マイオピアを回避するためには、市場や顧客ニーズの変化を的確に捉えることよりも、自社の製品や技術の優位性を経営資源の観点から的確に捉えることが重要である。
- エ リソース・ベースト・ビューでは、企業はまず市場でのポジションを決め、それに必要な企業内の資源を構築するという順序で事業戦略を策定する。
【解答】 イ →正解
【解説】
- ア:3C分析の自社分析(Company)では、自社の売上や収益性、技術力、ブランド力といった内部資源を分析します。顧客のトレンドやニーズの分析は、市場・顧客分析(Customer)の範疇です。
- イ:KFS(重要成功要因)とは、事業を成功させるために特に重要となる要因のことです。自社の現状を分析し、目標達成のために何をすべきか、どのような資源(強み)を構築・活用すべきかを考える上で、KFSの特定は重要な指針となります。これは適切な記述です。
- ウ:「マーケティング・マイオピア(近視眼)」とは、自社の製品や技術に固執するあまり、顧客ニーズの変化を見失ってしまう状態を指します。これを回避するためには、自社技術よりも「市場や顧客ニーズの変化を捉えること」が重要です。
- エ:リソース・ベースト・ビュー(RBV)は、企業の競争優位の源泉を、外部環境(市場ポジション)ではなく、内部の経営資源に求める考え方です。まず自社の独自資源(リソース)を特定し、それを活かせる市場で戦う、という順序で戦略を策定します。記述されているのは、市場でのポジショニングを重視する「ポジショニング・ビュー」の考え方です。
したがって、イが最も適切な記述です。
第33問
【問題文】 プッシュ戦略とプル戦略に関する記述の正誤の組み合わせとして、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
- a プル戦略では、大規模な店舗よりも小規模な店舗で販売する方が適している。
- b プル戦略は、買い手である消費者の使用経験が豊富ですでに熟知している製品に対して用いられることが多く、広告は用いずにコストを削減することが多い。
- c プッシュ戦略では、店頭で知識が豊富な店員による丁寧な人的説明や推奨を行うことが適している。
- d プッシュ戦略では、投資の早期回収を図る場合、浸透価格で販売されることが多い。
〔解答群〕 (選択肢は表形式のため省略)
【解答】 オ (a:誤, b:誤, c:正, d:誤) →正解
【解説】
- プッシュ戦略: メーカーが、販売員へのインセンティブやリベートなどを通じて、流通業者に自社製品を積極的に「押し込んでもらう」戦略。人的販売が重要になる。
- プル戦略: メーカーが、消費者向けの広告宣伝を大量に行い、消費者にブランドを指名買いさせることで、流通業者に自社製品を「引っ張らせる」戦略。広告が重要になる。
各記述の正誤を判断します。
- a(誤): プル戦略は、消費者が指名買いするため、製品を広く流通させる必要があります。したがって、多くの消費者がアクセスしやすい大規模な店舗(スーパーや量販店など)での販売が適しています。
- b(誤): プル戦略は、消費者にブランド名を記憶させ、指名買いを促すために、大規模な広告宣伝活動を伴うのが一般的です。
- c(正): プッシュ戦略では、販売員が消費者に製品の魅力を説明し、購入を後押しすることが重要になります。したがって、知識豊富な店員による人的販売は、プッシュ戦略の典型的な手法です。
- d(誤): 投資の早期回収を図る際に用いられるのは、高価格を設定して高収益を狙う「上澄み吸収価格(スキミング)戦略」です。「浸透価格戦略」は、低価格で一気に市場シェアを獲得することを目的とするため、投資回収は長期的になります。
したがって、正しいのはcのみで、a, b, dは誤りです。この組み合わせは選択肢オに該当します。
第34問
【問題文】 製品の需要に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- ア 環境やエネルギー保全などの公共的テーマと結びつけたデ・マーケティングは、対象市場の需要を抑制するため、そこから新たな代替市場を生み出す可能性につながる。
- イ 健康や美容を意識する風潮が健康食品カテゴリーの需要を持続させている状態のように、ある方向性や連続性を保ちながら一定期間、需要が長続きする状態のことをファッドと呼ぶ。
- ウ 市場において優れた競争優位と成果をもたらしている企業の多くが顧客志向であり、需要創造において最も有効なマーケティング・コンセプトである。
- エ 数量限定や地域限定のプロモーションは希少性の知覚を通して製品需要を増加させるが、時間限定のプロモーションにはその効果がない。
- オ 頻繁に新たなデザインを導入することで、旧デザインの魅力度を低下させ、消費者の買い替え需要を促そうとする計画的陳腐化は、SDGsの観点から、望ましいマーケティング手法である。
【解答】 ア →正解
【解説】
- ア:デ・マーケティングは、需要を意図的に抑制する活動です。例えば、電力消費の抑制を呼びかけることで、省エネ製品や自家発電システムといった代替市場の需要が生まれることがあります。これは適切な記述です。
- イ:短期間で爆発的に流行し、すぐに廃れる一時的なブームを「ファッド(Fad)」と呼びます。健康志向のように、長期間持続する社会的な価値観や方向性は「トレンド(Trend)」や「メガトレンド」と呼ばれます。
- ウ:顧客志向(マーケティング・コンセプト)は、既存の(顕在的な)ニーズに応えるのに有効ですが、顧客自身も気づいていない新しい需要(潜在ニーズ)を掘り起こし、「需要を創造」するためには、社会全体の利益を考える社会的マーケティングや、技術主導の製品開発なども有効なアプローチとなり得ます。
- エ:「時間限定」も、希少性や緊急性を高め、消費者の購買意欲を刺激する効果的な手法です(例:タイムセール)。
- オ:「計画的陳腐化」は、まだ使える製品を廃棄させることにつながるため、資源の浪費や環境負荷の観点から、SDGs(持続可能な開発目標)の理念とは相容れない、批判されることの多い手法です。
したがって、アが最も適切な記述です。
第35問
【問題文】 消費行動におけるさまざまな現象に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- ア 顕示的消費には、SNS映えする料理の写真を投稿したり、動画で自分の趣味のよさを公開したりする行為や、裕福な家庭における親が子供に高級品を身に着けさせる行為が含まれる。
- イ 現代の消費スタイルを包括的に記述する概念であるリキッド消費は、永続的で、所有ベースで、物質主義的な消費スタイルである。
- ウ 消費者情報処理の枠組みにおける快楽消費の評価基準には、感覚的な満足や空想、美的な楽しみ、感情的反応だけでなく、合理的判断や思考などの功利も含まれる。
- エ 消費の文化的意味や消費経験のダイナミックな側面を解明する消費文化理論の研究では、参与観察、デプス・インタビューなどを用いた定性的アプローチがとられており、定量的アプローチはとられていない。
【解答】 ア →正解
【解説】
- ア:顕示的消費(Conspicuous Consumption)とは、自己の富や社会的地位を他者に見せびらかすための消費行動です。古典的には高級品の購入などが挙げられますが、現代ではSNSでのアピールや、子供を代理として地位を誇示する行為(代理顕示)もその一部と見なされます。これは適切な記述です。
- イ:「リキッド消費(Liquid Consumption)」は、現代の流動的な社会における消費スタイルを指し、所有にこだわらない、一時的で、非物質的な経験を重視する特徴があります。「ソリッド消費」が永続的・所有ベースの消費を指します。記述は逆です。
- ウ:「快楽的消費(Hedonic Consumption)」は、楽しさ、美しさ、興奮といった感情的・感覚的な価値を求める消費です。製品の機能や性能を評価する「功利的消費(Utilitarian Consumption)」とは区別されます。
- エ:消費文化理論(CCT)は、主に定性的なアプローチを用いますが、研究テーマによっては、アンケート調査などの定量的アプローチが併用されることもあり、「とられていない」と断定するのは不正確です。
したがって、アが最も適切な記述です。
第36問
【問題文】 以下の図は、購買関与度と製品判断力によって消費者の購買意思決定の特性を分類したものである。この中で、セールス・パーソンや小売店頭での店員との会話、あるいは知人・友人・家族のクチコミなどを通じた情報収集により意思決定が行われることが多いセルとして、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
(図) 縦軸:購買関与度(上:高、下:低) 横軸:製品判断力(左:低、右:高) 左上:セル4 右上:セル1 左下:セル3 右下:セル2
〔解答群〕 ア セル1 イ セル2 ウ セル3 エ セル4
【解答】 エ →正解
【解説】 この図は、ハワード=シェス・モデルなどに代表される購買行動の分類です。各セルの特徴は以下のようになります。
- セル1(購買関与度:高、製品判断力:高): ブランド・ロイヤルティ型(日常的反応行動)。特定のブランドへのこだわりがあり、迷わずいつも同じものを購入する。情報収集はほとんど行わない。
- セル2(購買関与度:低、製品判断力:高): バラエティ・シーキング型(限定的問題解決)。製品知識はあるが、特にこだわりはなく、気分転換などで色々なブランドを試す。
- セル3(購買関与度:低、製品判断力:低): 惰性購買型(日常的反応行動)。関与も知識も低く、価格の安さや買いやすさで選ぶ。
- セル4(購買関与度:高、製品判断力:低): 複雑な購買行動型(拡大的問題解決)。購入する製品への関心は高い(例:高価なもの、失敗したくないもの)が、製品に関する知識(判断力)が不足している状態。そのため、失敗を避けるために、販売員や専門家、知人など信頼できる情報源から積極的に情報を集めて、慎重に意思決定を行います。
設問の「セールス・パーソンや小売店頭での店員との会話、あるいは知人・友人・家族のクチコミなどを通じた情報収集」が最も活発に行われるのは、このセル4の状況です。したがって、エが正解です。
第37問
【問題文】 ブランディングに関する記述として、最も適切なものはどれか。
- ア COO (Country of Origin) イメージは、製品に対する消費者の選好に影響を及ぼし、時間を経ても変化することはない。
- イ コ・ブランディングは、コミュニケーション・コストを削減できるが、ブランド・エクイティが希釈化するリスクがあるため、新製品には適用できない。
- ウ 第三者ソース(専門誌、専門機関、知名度が高い評論家、ステータスがあるユーザーなど)による高評価は、ブランドに対する高い信頼性を付与し、消費者の態度を向上させるが、ソーシャルネットワーク上での影響力は極めて小さい。
- エ 著名人による推奨は、当該著名人のイメージと結びつく知覚は形成されるが、ブランドが思い出されないリスクがあり、ファン以外の注意はひきつけられない。
- オ ライセンス供与は、在庫費用や製造費用をかけずにブランド認知を増やすことができるが、過剰露出になった場合、消費者の飽きが生じるリスクがある。
【解答】 オ →正解
【解説】
- ア:COO(原産国)イメージは、消費者の製品評価に影響を与えますが、その国の経済状況、国際関係、文化的な流行などによって「変化」します。
- イ:コ・ブランディング(共同ブランディング)は、複数のブランドが協力して一つの製品を出す戦略であり、新製品の信頼性を高めるために有効な手段としてしばしば用いられます。
- ウ:専門家やインフルエンサーなどの第三者による評価は、広告よりも信頼性が高い情報源として、特にソーシャルネットワーク上でクチコミとして拡散され、大きな影響力を持つことがあります。
- エ:著名人を起用した広告(セレブリティ・エンドースメント)は、その著名人のファン以外にも広く注意をひきつけ、話題性を高める効果が期待できます。
- オ:ライセンシングは、自社ブランドの使用権を他社に許諾する戦略です。自社は製造・在庫リスクなしにロイヤリティ収入とブランド露出を得られますが、ライセンス商品を乱発するとブランドイメージが安っぽくなったり(希釈化)、消費者に飽きられたりするリスクがあります。これは適切な記述です。
したがって、オが最も適切な記述です。
第38問
【問題文】 ブランドに関連するさまざまな概念(以下、「ブランド関連概念」と呼ぶ)が提唱されている。次の文中の空欄A~Dに入るブランド関連概念の組み合わせとして、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
消費者は、ブランドが有する A に魅力を感じ、その度合いが強くなると B を有するようになる。その結果、当該ブランドを優先的に選択する C を示すようになる。こうした一連の心理的プロセスの結果として形成される消費者の D は、当該ブランドが他ブランドに比した競争優位性を獲得するうえで極めて重要である。
【ブランド関連概念】 ① ブランド・ロイヤルティ ② ブランド・パーソナリティ ③ ブランド・リレーションシップ ④ ブランド・エクイティ ⑤ ブランド・アタッチメント
〔解答群〕 ア A:② B:① C:⑤ D:④ イ A:② B:⑤ C:① D:③ ウ A:④ B:① C:⑤ D:② エ A:④ B:② C:⑤ D:③ オ A:⑤ B:② C:③ D:①
【解答】 イ →正解
【解説】 文中の心理的プロセスを追っていくと、以下の流れが最も自然です。
- A: ブランド・パーソナリティ (②): ブランドが持つ人間的な特徴(例:誠実、洗練されている、活発など)に消費者が魅力を感じるのが最初のステップです。
- B: ブランド・アタッチメント (⑤): パーソナリティへの魅力を通じて、消費者はブランドに対して強い愛着や情緒的な結びつき(アタッチメント)を抱くようになります。
- C: ブランド・ロイヤルティ (①): 強い愛着の結果として、消費者はそのブランドを繰り返し購入する(優先的に選択する)という行動、すなわちロイヤルティを示します。
- D: ブランド・リレーションシップ (③): このような一連の心理的・行動的なプロセスを通じて、消費者とブランドの間には長期的で良好な関係(リレーションシップ)が構築されます。この関係性こそが、企業の競争優位の重要な基盤となります。
この「パーソナリティ → アタッチメント → ロイヤルティ → リレーションシップ」という流れに合致するのは、選択肢イです。
第39問
【問題文】 顧客と従業員に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- ア 顧客満足を起点とするサービス・プロフィット・チェーンは、高い顧客満足の実現が従業員のモチベーションとサービス品質を高め、結果として従業員満足と企業収益に影響するという流れである。
- イ 従業員に対するエンパワーメントが高いほど、顧客ニーズへの対応が早く、また、業務改善へのアイデアが出やすくなるが、サービスの失敗が起こったときのリカバリーは遅くなる。
- ウ 従業員満足が顧客満足に影響することは大いにあるが、顧客満足が従業員満足につながることはほとんどない。
- エ 従業員を内部顧客ととらえ、自社の理念を従業員と共有し、高い意識とモチベーションを醸成すべく実施されるインターナル・マーケティングの目的には、外部顧客の満足を高めることが含まれる。
【解答】 エ →正解
【解説】
- ア:「サービス・プロフィット・チェーン」は、「従業員満足」を起点とするモデルです。「従業員満足 → 従業員の定着・生産性向上 → サービス品質の向上 → 顧客満足 → 顧客ロイヤルティ向上 → 企業の利益・成長」という因果連鎖を想定します。記述は起点が逆です。
- イ:エンパワーメント(権限移譲)は、従業員が自らの判断で迅速に行動できるようにするため、サービスの失敗(サービス・リカバリー)が発生した際にも、現場の裁量で素早い対応が可能となり、リカバリーはむしろ「早く」なる効果が期待されます。
- ウ:顧客からの感謝の言葉やポジティブなフィードバックは、従業員の仕事への誇りや満足感を高める重要な要因です。したがって、顧客満足が従業員満足に影響を与える(フィードバックする)ことは大いにあります。
- エ:インターナル・マーケティングは、「従業員こそが最初の顧客(内部顧客)である」という考え方に基づき、従業員の満足度やエンゲージメントを高めるための活動です。その最終的な目的は、満足した従業員が質の高いサービスを提供することで、「外部顧客の満足度を高め、ひいては企業の業績を向上させる」ことにあります。これは適切な記述です。
したがって、エが最も適切な記述です。