NHKの営業基幹システムが開発停止に! IBMと55億円訴訟へ
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NHK側の発表
NHKは、受信料関連業務を支える「営業基幹システム」の刷新を予定していました。2022年からスタートして2027年カットオーバー予定ということで5年で刷新のつもりだったのでしょう。
開発・移行に関する業務委託契約ということで、請負契約ではないですね。普通に考えると、要件定義の段階では業務委託で、NHKが主体で、IBMに作業をしてもらう形態なのでしょう。業務委託で損害賠償請求ですか。そうですか。
14ヶ月かけて、検討した結果IBMから開発方式の大幅な見直しと納期を18ヶ月延伸を提言されて、NHK側は断念したのでしょうね。契約解除は仕方ないのかもしれませんが、そこまでの支払済みの代金の返還を求めるというのはよっぽどなんでしょうね。よほどの瑕疵がない限り、要件定義の業務委託の費用を返せ!とはならないはず。
IBMの作業の質が低かったのか、NHK側があまりにも発注側の責任を果たさなかったのか、真相は裁判の中で明らかになるでしょう。もちろんどちら側にも落ち度があったのかと思いますが、こういう時はたいてい後者なのだと思います。
それにして55億円の訴訟ですか・・・
IBMのコンサルタントの稼働としては、月単価200万円で、14ヶ月の20人体制くらいでしょうか。
NHK報道資料
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NHK会長の発言
訴訟に至ったのですから当然といえば当然なのでしょうが、NHKは悪くない、IBMに全責任があるとしていますね。それはともかく、IBM側が求める協議の継続すら拒否するのは、よほど頭にきているのか、思い上がっているのか。下請けベンダが偉そうに!・・と思っているのかもしれません。
稲葉延雄会長はこれまでの流れについて「非常に残念」としつつ「これまでの経緯を考えますとNHK側に非はなく、日本IBM社側に責任があると考えております」と見解。 IBM側が求める協議の継続についても「難しい」とした。
IBM側の発表
一方、IBMも発表を行っています。これは闘う姿勢でしょう。
本プロジェクトは、NHK指定の移行方針のもと営業基幹システムを新しい基盤へ移行するものであり、プロジェクト開始後に現行システムの解析を実施の上、移行方針及びスケジュール等を確定するという契約に沿って検討を進めてまいりました。
やはり、要件定義の業務委託で実行スケジュールを決める段階だったようですね。仮に2027年を予定していても、仕様を確認したら、予定より大量にでてきて、スケジュールを伸ばすしかなかったように見えます。
現行システムの解析を進める中で、提案時に取得した要求仕様書では把握できない、長年の利用の中で複雑に作り込まれた構造となっていることが判明したため、当社はNHKに対し、解析の進捗状況、課題およびそれに対する対応策を随時報告し、共にその対応を検討してまいりました。
もう、あるあるすぎて、つらいですよね。
NHK側から要求仕様書が提出されて、その内容に基づいて最初の仮の金額提案がなされるわけです。でもユーザ側からの要求仕様は漏れていることが多いので、そのままの金額・スケジュールで進めるわけではありません。漏れている内容を調査した結果、想定の工数はオーバーすることが多いでしょう。そのうえで、仕様を削減するのか、スケジュールを伸ばすのか、最小限でカットオーバーして、2期開発に向けて調整することになるでしょう。
これまでの解析・調査結果等をふまえて、より確実な移行方式の実現に向けた建設的な協議の開始について、2024年の夏以降、先月に至るまで幾度も申入れてまいりました。
そういった調整をお願いしても、NHKとしては(NHKの思う)予定通りの金額と納期でやれ!と聞く耳を持たなかったような印象です。
IBMの発表資料
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感想
わたしもSIerで受託開発中心にやっていたことがあるので、こういった裁判が起きると、基本的には、ユーザ側がだらしないから、ITベンダ側が苦労しているんだろう!と思ってしまいます。
真相は裁判でしかわからないでしょうが、この2本の報道発表をみると、相当,NHKの事前の要求仕様書の出来が悪かったのでしょうね。これからもどのような展開になっていくのか、ウォッチしていきたいと思います。
どっかで和解になるんだとは思いますが。
そんなところで