士業におけるネットの活用術~インターネットで業績はあげられるのか?
士業におけるネットの活用術~インターネットで業績はあげられるのか?
2012/8/17 中小企業診断士 村上知也
ホームページや、ソーシャルメディアなどの様々なネット上のサービス・ツールを活用することで業績は上がるのでしょうか? ネットで物販を行っている人、広告表示などのアフィリエイトを行っている人などはやり方によっては業績をあげられている方もいるでしょう。 しかし、我々士業は、直接的にネットでサービスを販売しておらず、効果に疑問を持っている方が多いのも事実です。 さらに、広告を実施しすぎることでイメージを落としてしまうリスクや問題点もあります。 士業のような専門サービスのマーケティングの問題点についてフィリップ・コトラーは以下のようなまとめをしています。 みなさんに当てはまるポイントはあるでしょうか?
「専門サービスのマーケティングに特有の問題点」 (抜粋)
Kotler,P.,Hayes,T.&Bloom,P.[2002]
(1)クライアントの不安:顧客は認知的不協和による不安をサービス購入前・購入後に強く感じている。
(2)サービス提供者による販売活動:専門家の多くは、販売活動に関わりたくないと考えている。また、専門家がマーケティングに費やした時間について請求する相手がいないため、時間を割くのを望まない。
(3)広告に対する葛藤:考え抜かれた広告は顧客を獲得するために絶対に欠かせないが、広告をうつことはプロとしてふさわしくないと考える者もいる。
(4)マーケティングについての知識不足:弁護士や極めて専門性の高い分野を扱う経営コンサルタントは、マーケティングの意思決定の参考になるような知識をもっていないことが多い。
(5)差別化の難しさ:専門サービスの差別化はかなり困難である。
それでは、これらの問題点を解決していくにはどうしたらいいでしょうか?
例えば(1)クライアントの不安を払拭するにはどうしたらいいでしょうか?高額な商品を購入する顧客は誰しも不安です。家や車を購入するには、何度も現地に足を運び、モデルルーム、試乗会に参加して、体験することで、不安を払拭しているはずです。
一方で、実体のある商品と異なり、サービスには無形性、変動性、不可分性、消滅性、需要の変動性といった、特性があります。特に、形が無いため事前に見たり体験したりするのが難しい「無形性」が、お客様の不安を大きくしていると言えるでしょう。そこで、多くの事業者は、初回割引や無料体験、写真や図表の入ったパンフレットなどで事前説明を行い、なんとか形を伝えようとします。
さらに、ネットやITを活用する場合は、動画を利用してサービスの内容を伝えている人が増えています。以前は、動画撮影業者に頼んで撮影してもらい、出来上がったDVDを配布するなど手法が一般的でしたが、IT技術の進展により自分で撮影して、自分で動画をネットにアップして、説明できるようになりました。もちろん、動画を掲載しただけでクライアントの不安が全て払拭できるわけはありませんが、一助になることは間違いないでしょう。
このように、ネットやITは道具にすぎませんが、道具の存在に気づいていないことで損をしていることもあります。本日のセミナーの中で、いくつかのITサービスや活用法について紹介いたしますので、効果につながりそうだと感じたものには、ぜひ積極的に取り組んでいってもらえると幸いです。
【目次】
●士業におけるプロモーション
前述の通り、士業のマーケティングには、さまざまな課題があります。本日は、さまざまな課題をネットで達成する具体的手段について説明していきます。
とはいえ、ネットで全てが事足りるわけもありません。実世界で営業活動を行っても売れないものが、ネットだけで勝手に売れることはありえません。
●実世界とネット
ネットでのマーケティング活動は、「Webマーケティング」と呼ばれます。つまり、マーケティング活動全般の一部でしかありません。実世界で行う着実な営業活動や、お客様とのコミュニケーションといった着実に売れる手段をお持ちであれば、その手段は、ネットを使うと加速度的に成果を出せる可能性があります。
よく出てくる例えですが、世界一高いチョモランマの名前は知っていても、世界で二番目に高い山の名前はあまり知られていません。
何かで一番になることは、ネットの世界では必須です。実世界の商売であれば、限定された地域で一位になればよいのですが、ネットは基本的には世界中が同じ土俵で戦います。言語の壁があるといっても日本中のホームページがライバルです。特徴や一番になるポイントがないとインターネットの大海にすぐ埋もれてしまうのです。
そのかわり大海の中で目立った存在になると、加速度的に集客が向上するといったメリットがあります。
ここで、データを確認しますが、インターネットで検索されたときクリックされるのは、約半分の場合は一位だけです。ネットで生き残るには、一位になれる勝負軸が必須といえるでしょう。
しかし、一位になれる勝負軸を持つのは非常に難しいものです。ロンドン五輪で金メダルをとるのが難しいのと同じです。
そのため、我々選手は色んな工夫をします。
・世界でなくて、日本で一位、
→地域限定一位
・バトミントンでなくて、羽子板で一位
→ニッチで一位
・サッカーでは勝てないので、サッカーとバレーを混ぜた競技を作る
→敵のいないところで一位
(ブルーオーシャン戦略)
まさに、この工夫がマーケティング活動そのものではないでしょうか。
ネットや、ITの活用は魔法ではありませんので、それ単体では業績の改善にはつながるかはわかりません。しかし、こういったマーケティング戦略が立案できれば、ネットはその効果を何倍にもしてくれる可能性があります。
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●ネットの具体的活用法
○動画の活用
前述のとおりサービスを「見える化」するのは、動画が一番でしょう。ブログなどの記事を1本書く時間で、動画を1本作れてしまいます。
動画でノウハウを提供することで、優秀な営業マンが同時に何人も働いてくれることになります。
○ホームページの分析
ホームページでどのように集客するかを考えるには、現状のホームページの状況把握は必須です。今どれだけ集客できているのか?そのお客様は、既存顧客なのか、新規顧客なのか?自社のサイトの何に興味を持って見ているのか?
ホームページの解析をすれば今まで見えていなかった情報をつかむことができます。
○ホームページの活用
ホームページ内の技術面で一番大事なことは、顧客動線の改善です。どこで動線が切れて、お客様が帰ってしまっているのか、確認することで、次の対策が見えてきます。
また、顧客動線は、ホームページの中で確認する以上に、ネット全体、さらに自社のマーケティング戦略全体の中でも考える必要があります。
ホームページだけの部分最適ではなく、もっと大きな枠組みの全体最適を図ることができれば、実世界とネットを融合でき、総合力が発揮できるはずです。
○ソーシャルメディアの活用
昔から言われていることですが、口コミが商売を行なっていく上で最も大切ではないでしょうか?高い品質が信頼を生み、そして口コミを発生させます。特にサービス業、さらに士業は生命線と言っても過言ではないと思います。
お客様との直接のコミュニケーション、そして信頼出来る情報としての口コミは、ネットより直接のやりとりのほうが間違いなく効果があるでしょう。しかし、実世界の口コミを補助的に拡散してくれるソーシャルメディアの活用は、商品ではなく、サービスでもなく、人そのものを売っていく士業にとって親和性は非常に高いでしょう。
また、直接自分を売り込むのではなく、他人が自分を売ってくれる、そんなソーシャルメディアを育てていく必要があるのではないでしょうか。
○広告の活用
テレビやラジオの広告が力を失ってくる一方で、インターネット広告の力はより大きくなってきています。とは言え商品ならともかく、自分を広告するのは気が引ける面もあります。
しかし、広告を実施することで、一番簡単にマーケティングの効果検証が行えます。また、広告自体もお金を出せばいいというものではなく、広告の質が問われます。質とは、見た目の綺麗さではなく、自社サイトの目的が明確なのか、お客様にとって役立つ情報があるかということです。
広告を出すと思うのではなく、マーケティングの一環として広告に取り組んでみてはいかがでしょうか?
なお、本日の資料は、抜粋版を以下のURLにおいていますので、必要な方はダウンロードしてご覧ください。
https://london3.jp/seminar/professional/