エフェクチュエーションが注目されている!?〜中小企業診断士試験でも3年連続出題されている。

エフェクチュエーションがなぜ注目される?

エフェクチュエーションとは

エフェクチュエーションとは、サラス・サラスバシーが提唱した理論で、優れた起業家に共通する意思決定プロセスや思考や考え方を発見・体系化した市場創造の実行理論です。

エフェクチュエーションは、「手段(means)」からスタートし、「これらの手段を使って、何ができるだろうか」と問いかけることから始める。 その点で、「結果(effect)」からスタートし、「これを達成するためには何をすればよいか」を問うコーゼーション(causation)と対比されるものです。

なぜ注目されるの?

現代は、不確実で将来の予測がまったくできないVUCA時代と言われています。VUCAとは、Volatility(変動性)・Uncertainty(不確実性)・Complexity(複雑性)・Ambiguity(曖昧性)の略語で、社会やビジネスにとって、未来の予測が難しくなる状況のことです。

そうした中で、不確実な状況下でも新たなビジネスを創造していく起業家の共通思考が注目され、コーゼーションとは対極に、手持ちの手段から新しいゴールを発見していく問題解決型アプローチであるエフェクチュエーションが注目されるようになったと言えるでしょう。

それでは過去3年の問題を見てみましょう。

中小企業診断士試験 企業経営理論での出題

R5の出題は、一つの選択肢に登場しただけなので、その部分だけ抽出しています。R3,4はエフェクチュエーション自体の出題だったので全体を掲載しています。

令和5年度 第8問

新事業や新市場の創出に関する記述として,最も適切なものはどれか

選択肢ウ
S. D. サラスバシーの「エフェクチュエーション」理論に基づけば,熟達した起業家は,事前に市場を明確に定義して,セグメンテーションやターゲティング,ポジショニングを設定することによって,不確実性の高い状況でも 新事業を創出することができる。

選択肢ウは不適切です。事前に市場を明確に定義して,セグメンテーションやターゲティング,ポジショニングを設定するような,目標を設定してから達成の手段を検討する逆算的な方法を「コーゼーション」と呼ぶため,めです。対極として,手持ちの手段から新しいゴールを発見していく問題解決型アプ ローチがエフェクチュエーションです。

■令和4年度 第8問

 次の文章の空欄に入る記述として、最も適切なものを下記の解答群から選べ

エフェクチュエーションは、S.D.サラスバシーが経験豊富な起業家の行動から抽出した実践的なロジックである。
エフェクチュエーションは、[    ]である。

〔解答群〕
ア 成功と失敗の確率が事前に分かっている場合に有効
イ 特定の事業機会における競合分析や市場分析を行う場合に有効
ウ どのような環境に注目し、どのような環境を無視すべきかが不明瞭な場合に有効
エ 目的からさかのぼって手段を考えることができる場合に有効
オ 目的の選好順位が明確な場合に有効

選択肢ア、エ、オはコーゼーションの内容となっています。また、エフェクチュエーションは、特定の事業機会の分析ではなく、意思決定プロセスであるため、選択肢イも不適切です。
よって、選択肢ウの、「どのような環境に注目し、どのような環境を無視すべきかが不明瞭な場合に有効」という内容が適切です。

エフェクチュエーションとは、サラス・サラスバシーが提唱した理論で、優れた起業家に共通する意思決定プロセスや思考や考え方を発見・体系化した市場創造の実行理論です。
参考著書:「エフェクチュエーション:市場創造の実効理論」サラス・サラスバシー


ある程度将来が予測できる状況においては、はじめに目標を設定して、それを実現していくための最適手段を検討していく手法が取られてきました。このような目標設定型の逆算的アプローチを「コーゼーション(Causation)」といいます。ただし、コーゼーションはある程度将来が予測できる場合においては有効ですが、不確実で将来の予測がまったくできないVUCA時代では、通用しないと言われています。

VUCAとは、Volatility(変動性)・Uncertainty(不確実性)・Complexity(複雑性)・Ambiguity(曖昧性)の略語で、社会やビジネスにとって、未来の予測が難しくなる状況のことです。

VUCAのイラスを描いてくださいとChatGPTに頼んだらよくわからないのが出てきました。

そうした中で、不確実な状況下でも新たなビジネスを創造していく起業家の共通思考が注目され、コーゼーションとは対極に、手持ちの手段から新しいゴールを発見していく問題解決型アプローチであるエフェクチュエーションが注目されるようになっています。


■令和3年度 第8問

 サラス・サラスバシー(S. D. Sarasvathy)は、経験豊富な起業家の経験より抽出された実践的なロジックから構成されるエフェクチュエーション(effectuation)と いう概念を生み出した。エフェクチュエーションは、「手段(means)」からスタートし、「これらの手段を使って、何ができるだろうか」と問いかけることから始める。 その点で、「結果(effect)」からスタートし、「これを達成するためには何をすればよいか」を問うコーゼーション(causation)と対比されるものである。
このエフェクチュエーションを構成する5つの行動原則に関する記述として、最も不適切なものはどれか。

  • ア 許容可能な損失(affordable loss)の原則とは、創業後に事業を継続するかどうかを判断する際に、事前に設定した許容可能な損失の上限に達したという理由で、事業を途中でやめないということである。
  • イ クレイジーキルト(crazy-quilt)の原則とは、起業活動に必要な自分以外との関 係性をあらかじめ作成した設計図に基づいてつくるのではなく、起業後に自分を 取り巻く関与者と交渉しながら関係性を構築していくことである。
  • ウ 手中の鳥(bird in hand)の原則とは、もともと自分が持っているリソースを使って行うことである。具体的には自分が何者であるか、自分は誰を知っているか、そして自分は何を知っているのかを認識して、それらを活用することから始めることである。
  • エ 飛行機の中のパイロット(pilot in the plane)の原則とは、予測できないことを 避けようとするのではなく、予測できないことのうち自分自身でコントロール可 能な側面に焦点を合わせ、自らの力と才覚を頼って生き残りを図ることである。
  • オ レモネード(lemonade)の原則とは、予測できないことを前向きに捉え、不確実性を梃子(てこ)のように利用しようとすることである。

解答→最も不適切な選択肢はアであり、許容可能な損失の上限に達した致命的にならないように事業を途中で止めることも必要でしょう。

 エフェクチュエーションには5原則があります。

 エフェクチュエーションの5原則

  • 許容可能な損失の原則 (Affordable Loss)
    • 仮に損失が生じても致命的にはならないコストを予め設定することです。従来のように、将来期待できる利益をベースに戦略を練るのではなく、どこまでの損失であれば許容できるのかを決めておき、それを上回らないように行動することです。
  • クレイジーキルトの原則(Crazy-Quilt)
    • 形や柄の違う布を縫いつけて1枚の布を作るクレイジーキルトのように、顧客や競合他社、協力会社、従業員などのさまざまな繋がりをパートナーと捉えて、一体となってゴールを目指していくことが求められます。
  • 手中の鳥の原則(Bird in Hand)
    • 新しい方法ではなく既存の手段を用いて、新しい何かを生み出すことです。目標やプランによって手段を選択する目標設定型アプローチとは異なり、企業や組織がすでに保有している人材のスキルや技術力、ノウハウ、人脈などの手段を用いた問題解決型のアプローチを行うことです。
  • 飛行機の中のパイロットの原則(Pilot-in-the-plane)
    • 他の4つの原則を網羅した原則でもあり、状況に応じて臨機応変な行動をすることです。常に数値を確認し臨機応変な対応をするパイロットのように、不測の事態に備え、外部環境の変化に対して柔軟に行動することが重要です。
  • レモネードの原則(Lemonade)
    • アメリカのことわざに「When life gives you lemons, make lemonade.」というものがあり、これは「人生がレモン(粗悪品)を与えたときには、レモネードを作りなさい。」という意味です。レモネードの原則は、使い物にならない欠陥品でも工夫を凝らして、新たな価値を持つ製品へと生まれ変わらせるという考え方です。



不透明な時代を切り開いていこうとする元気いっぱいの猫のイラスト

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