第23章 プロモーション(マーケティング・コミュニケーション)
この章のねらい マーケティングの4P(Product=製品・Price=価格・Place=チャネル・Promotion=プロモーション)の 最後、Promotion(プロモーション=販売促進・コミュニケーション)を扱います。 どんなに良い製品を、適切な価格で、良いお店に並べても、 「その存在や価値がお客さまに伝わらなければ売れない」——ここを担うのがプロモーションです。 近年は「一方的に伝える」から「お客さまと双方向でつながる」へと考え方が大きく変わり、 SNS・クチコミ・インターネット広告などデジタル領域が毎年のように出題されます。
過去問での出方:企業経営理論の第30問〜第35問あたりに、ほぼ毎年2〜3問が出ます。 「プロモーションの4手段の区別」「プッシュ/プル戦略」といった古典論点と、 「SNS・クチコミ・ネット広告・クッキー規制」といった最新トレンド論点の 二本立てで問われるのが特徴です。最新論点は用語が新しく難しく見えますが、 選択肢の言い切り(『影響はない』『変わりはない』など)が引っかけという 定番パターンを知っていれば、意外と得点できます。
23-0 この章の地図
この章は、まず古くからある4つの伝え方(プロモーション・ミックス)を押さえ、 それらを一貫したメッセージでまとめる考え方(IMC)へ進み、 最後に広告・販売促進・デジタル・店頭という個別の手段を掘り下げます。
23-1 プロモーション・ミックス … 広告/販売促進/人的販売/PR の4手段(★土台)
│ (+プッシュ戦略とプル戦略)
23-2 IMC とコミュニケーション・プロセス … 4手段を1つの声にまとめる/AIDMA・AISAS
│
23-3 広告戦略 … 媒体の種類・リスティング広告・フリーペーパー・効果測定
│
23-4 販売促進(SP) … 消費者向け/流通向け/社内向け・ポイント制度・FSP
│
23-5 デジタル・マーケティング … SNS・クチコミ・CGM・インフルエンサー・トリプルメディア
│
23-6 インストア・プロモーション … POP・購買行動(計画購買/非計画購買)
最初の2節(23-1・23-2)が全体の骨格、あとの4節が各手段の詳細という構成です。
23-1 プロモーション・ミックス ― 4つの伝え方
プロモーションとは何か
プロモーション(Promotion)とは、ひとことで言えば
「自社の製品・サービスの存在や価値を、お客さまに伝えて・動かすための働きかけ全体」
です。「販売促進」と訳されることも多いのですが、値引きやおまけだけを指すのではなく、 広告・宣伝・営業・広報まで含むコミュニケーション活動の総称だと考えてください。 そのため近年はマーケティング・コミュニケーションという呼び方も一般的です。
伝統的な4つの手段(プロモーション・ミックス)
伝統的には、プロモーションは次の4つの手段で構成されると整理します。 この4分類は最頻出で、R06年第34問やH30年第35問でも「4手段の区別」がそのまま問われました。
| 手段 | 中身 | 特徴(お金・向き・向く商品) |
|---|---|---|
| ① 広告(Advertising) | テレビ・新聞・Webなど有料の媒体で、非人的に多数へ伝える | 費用を払って枠を買う/一度に大量到達/1人あたりコストは安い |
| ② 販売促進(SP=Sales Promotion) | クーポン・値引き・おまけ・試供品など、短期的に買う気を刺激 | 即効性が高い/低関与商品に効く/使いすぎるとブランドを傷める |
| ③ 人的販売(Personal Selling) | 営業担当・販売員が直接、対面で説明・推奨・交渉する | 1人あたりコストは高いが、双方向で説得力大/専門品・生産財に強い |
| ④ PR/パブリシティ(Public Relations) | メディアや社会との良好な関係づくり。報道で取り上げてもらう | 原則無料で信頼性が高い/内容を自社で完全にはコントロールできない |
💡 覚え方:4手段を「払う/刺激する/会う/評判を得る」で区別しましょう。 - 広告=お金を払って枠を買い、多数に伝える - 販売促進=短期の刺激(クーポン・おまけ)で今すぐ買わせる - 人的販売=人が会って説得する - PR=評判・信頼を、原則タダで積み上げる
混同しやすい「PR」「パブリシティ」「広告」の関係
ここはR06年第34問でも問われた、間違えやすいポイントです。
- パブリシティ=企業がニュースリリース等を出し、メディアに無料で報道してもらう活動。 費用を払って枠を確保する広告とは区別されます(H30年第35問の引っかけ)。
- ペイド・パブリシティ=企業が取材費・記事制作費などを負担して記事を載せてもらう手法。 お金を払う点で実質的に広告に近いものです(R06年第34問の正解肢)。
- PR(パブリック・リレーションズ)=より広く、社会・関係者との良好な関係づくり全体を指します。 たとえば従業員や家族向けの運動会・職場見学会なども、関係構築というPRの一環と捉えられます(H30年第35問)。
⚠️ 混同注意:PRは「宣伝」ではなく「関係づくり」 日本語の「PR」は日常だと「宣伝・アピール」の意味で使われますが、 マーケティングのPR=Public Relations=社会との関係づくりです。 屋外広告(OOH)や試供品配布を「PRの手法」と並べる選択肢は誤り(それぞれ広告・販売促進)。 R06年第34問はこの取り違えを狙っています。
プッシュ戦略とプル戦略
4手段をどう組み合わせるかを考えるとき、大きく2つの方向があります。 R07年第33問でそのまま問われた、超重要な対比です。
| プッシュ戦略(Push) | プル戦略(Pull) | |
|---|---|---|
| イメージ | メーカー →(押す)→ 流通 →(押す)→ 消費者 | メーカー →(広告)→ 消費者 →(指名買いで引く)→ 流通 |
| 主な手段 | 人的販売・流通向け販促 | 広告(マスメディア等) |
| 向く商品 | 説明が要る専門品・生産財 | 誰でも分かる最寄品・消費財 |
| 狙い | 流通段階に商品を押し込む | 消費者の需要を喚起し指名買いさせる |
📝 過去問はこう出る(R07 第33問) プッシュ/プル戦略の正誤を4つ(a〜d)判定させる問題。正解はオ(a誤・b誤・c正・d誤)。 - c(正):プッシュ戦略は「店頭で知識豊富な店員が丁寧に説明・推奨」が適する。◯ - a(誤):プル戦略は広告で多数の需要を喚起する手法で、大規模店舗とも親和性が高い。「小規模店舗が適する」は× - b(誤):プル戦略は広告を多用する戦略。「広告を用いずコスト削減」は矛盾で× - d(誤):投資の早期回収を図る価格は上澄み吸収価格(スキミング)。浸透価格(ペネトレーション)は 低価格でシェアを早期に取る戦略で、早期回収とは結びつかない(→ 第22章の価格戦略と接続) → R07 第33問
つまずきポイント:人的販売のコストと「消費財=広告」の思い込み
H30年第35問が突いたのは、次の2つの誤解です。
- 人的販売は1人あたりの情報伝達コストが「高い」(マス広告より高い)。「小さい」は誤り。 そのぶん、双方向で深く説得できるので、生産財(BtoB)や専門品で重要度が上がります。
- 「消費財も生産財も広告が最も重要」は誤り。生産財では人的販売の重要性が高いなど、 4手段の重み付けは商品や相手によって変わります。
📝 過去問はこう出る(H30 第35問) 設問1・設問2ともに正解はイ。 設問1の正解肢は「従業員・家族向けの運動会や職場見学会など、関係者との良好な関係構築はPRの一環」。 設問2の正解肢は「広告には、再購買時のブランド想起促進や、購買後の認知的不協和の低減の効果が期待できる」。 「ネット広告がテレビ広告費を上回ったのは2016年度」(実際は2019年)などの年号引っかけにも注意。 → H30 第35問
23-2 統合マーケティング・コミュニケーション(IMC)とコミュニケーション・プロセス
IMC ― 4手段を「1つの声」にまとめる
IMC(Integrated Marketing Communications=統合マーケティング・コミュニケーション)とは、
「広告・販売促進・人的販売・PRなど、バラバラになりがちな伝え方を、一貫したメッセージに統合して、 顧客との良好な関係を長期に築こうとする考え方」
です。テレビでは高級感、店頭では安売り、SNSでは砕けた口調…と声がちぐはぐだと、 お客さまは混乱してブランドを信頼できません。そこで、企業理念・戦略・ブランド戦略のもとで 「ひとつの統一されたメッセージ」に束ねよう、というのがIMCの中核思想です。
IMCの4つの特徴(H21年第27問)
H21年第27問は、IMCの特徴を問いました。ここを丸ごと押さえておきましょう。
| 特徴 | 中身 |
|---|---|
| 顧客シェア重視 | 市場占有率(マーケットシェア)だけでなく、一人の顧客の生涯価値(LTV=Life Time Value)=顧客シェアに着目 |
| 効果測定の重視 | コミュニケーション投資の効果(投下資本回収率)を測ろうとする。ただし現実の測定は非常に難しい |
| 双方向(インタラクティブ) | 送り手→受け手の一方通行ではなく、顧客起点の双方向コミュニケーションを重視 |
| 一貫性(統合) | 広告・販促・広報をひとつの統一メッセージで結びつける |
📝 過去問はこう出る(H21 第27問) 「最も不適切なもの」を選ぶ問題。正解(=誤り)はウ。 「IMCも伝統的広告と同じく、送り手から受け手への一方通行であることに変わりはない」——ここが誤り。 IMCの本質はまさに双方向(インタラクティブ)で顧客起点。「一方通行」と言い切った時点でバツと分かります。 → H21 第27問
⚠️ 混同注意:IMCは「一方通行」ではない 選択肢に「一方通行のまま」「双方向にはならない」とあれば、まず疑ってください。 IMC・デジタル時代のコミュニケーションは双方向が合言葉です。
コミュニケーション・プロセスと反応モデル(AIDMA/AISAS)
お客さまは、広告に接してから買うまで、心の中でいくつかの段階を経ます。 これを表したのが反応モデル(階層モデル)です。代表がAIDMAとAISAS。
【AIDMA(アイドマ)】 …マス広告時代の古典モデル
Attention(注意) → Interest(関心) → Desire(欲求) → Memory(記憶) → Action(行動=購買)
【AISAS(アイサス)】 …ネット時代のモデル(電通提唱)
Attention(注意) → Interest(関心) → Search(検索) → Action(行動=購買) → Share(共有)
- AIDMAは「記憶して、後で買う」というマス広告時代の流れ。
- AISASは、間にSearch(検索)が入り、最後にShare(SNSなどで共有)が加わるのがポイント。 ネットで調べて買い、感想を拡散するという現代の行動を反映しています。
- 両モデルとも、認知段階 → 感情段階 → 行動段階へと一段ずつ進むと考える点で共通します。
📝 過去問はこう出る(R07 第31問) マーケティング・コミュニケーション全般の問題。正解はア。 正解肢は「インフィード広告は、SNSのコンテキストやデザインと調和し、あたかも投稿の1つのように タイムラインに溶け込み、利用体験を妨げないことを目指す広告」——適切。 一方、引っかけのイは「AIDMA・AISAS・FCBグリッドはいずれも認知→感情→行動の階層モデル」。 ここが誤りで、FCBグリッドは「関与の高低×思考型/感情型」の2軸で製品を4象限に分ける枠組みであり、 一段ずつ進む階層モデルではありません。「同列に並べた」時点でバツです。 → R07 第31問
💡 覚え方:AISASは「検索」と「共有」が足された AIDMA →(ネット化)→ AISAS。増えたのは S(Search=検索) と S(Share=共有) の2つのS。 「調べて・買って・広める」時代の行動、と覚えましょう。
23-3 広告戦略 ― 媒体・リスティング・効果測定
広告の媒体(メディア)の種類
広告は「どの媒体に載せるか」で性格が大きく変わります。
| 分類 | 例 | 特徴 |
|---|---|---|
| マス4媒体 | テレビ・新聞・雑誌・ラジオ | 一度に大量到達。ただし相手を絞りにくい・費用が大きい |
| 屋外・交通(OOH) | 看板・電車内・デジタルサイネージ | 生活動線で反復接触。OOHはOut Of Homeの略 |
| 無料印刷媒体 | フリーペーパー・折込チラシ | 無料配布で地域を絞れる。地域の中小事業者にも使いやすい |
| インターネット広告 | リスティング・SNS広告・動画広告など | 相手を細かく絞れる/効果測定が容易/少額から出稿可 |
近年はインターネット広告費がテレビ広告費を上回り(2019年)、 デジタル媒体の比重がますます高まっています(H30年第35問の年号ポイント)。
検索連動型広告(リスティング広告)
検索連動型広告=リスティング広告は、H19年第38問やR03年第33問で問われる頻出テーマです。
ユーザーが検索したキーワードに連動して、検索結果の画面に表示される広告。 「知りたい」と思った瞬間の能動的なニーズに合わせて表示できるのが最大の強みです。
- 多くはクリック課金(入札方式)の成果連動型。表示されただけでは課金されず、クリックされて初めて費用が発生。
- 少額から出稿でき、キーワードごとの反応を短時間で効果測定できるため、中小企業も含め幅広く利用されます。
- 登録キーワードや関連語の組み合わせ次第で効果が変わるので、キーワード設計が腕の見せどころ。
📝 過去問はこう出る(H19 第38問) 検索連動型広告についての「最も不適切なもの」を選ぶ問題。正解(=誤り)はエ。 「検索連動型広告は固定費が高く、主に大企業が出稿している」——ここが誤り。 実際はクリック課金で少額から出稿でき、中小企業も多数利用しています。 「少額・成果連動・中小企業も使える」がキーワードだと覚えておきましょう。 → H19 第38問
フリーペーパー(無料印刷媒体)
H19年第34問では、フリーペーパー(無料で配布される印刷媒体)が取り上げられました。 広告収入で成り立ち、無料配布によって地域や読者層を絞って届けられるのが特徴です。 大手マス媒体を使いにくい地域の中小事業者にとっても、活用しやすい広告手段です。
インターネット広告の仕組みと効果測定
R03年第33問は、インターネット広告の業界構造と指標を問いました。
- インプレッション=広告の総表示回数。リーチ=ターゲットの何%に到達したかを示す指標。 (ネット広告でもリーチの考え方は使えます。「リーチは適さない」は誤りでした。)
- 広告主と媒体社の間に、配信技術を担う多様なプレーヤー(アドネットワーク等)が介在し、業界構造は複雑。
- アドブロック(広告表示を遮断する仕組み)が普及しすぎると、広告収入で成り立つ無料サービスが立ち行かなくなる恐れも。 対策として「消費者が見たくなる広告」を提供することが有効、とされました。
📝 過去問はこう出る(R03 第33問) 「最も適切なもの」を選ぶ問題。正解はウ。 「アドブロックを全消費者が導入すると、広告料収入に支えられた多くの無料サービスが成り立たなくなる。 対策として、消費者が見たくなる広告を提供することも有効」——適切。 他の肢は「消費者にメリットがないから媒体社と直接やりとりすべき」「リーチは適さない」など、 言い切り・断定の引っかけでした。 → R03 第33問
⚠️ 混同注意:ネット広告の3用語 - インフィード広告=SNSのタイムラインに、投稿のように溶け込んで表示(R07年第31問の正解肢) - ネイティブ広告=媒体のコンテンツと形式・機能を一体化。遷移先も媒体の文脈に沿わせる必要あり - リ・ターゲティング(リマーケティング)広告=サイト訪問履歴を追って再配信。クッキー規制の影響を大きく受ける (「クッキー規制でも影響はない」は誤り。R07年第31問の引っかけ肢)
23-4 販売促進(SP) ― 消費者向け・流通向け・社内向け
販売促進(Sales Promotion)の3方向
販売促進(SP)は「短期的に買う気・売る気を刺激する仕掛け」で、誰に向けるかで3つに分けます。
| 向ける相手 | 名称 | 具体例 |
|---|---|---|
| 消費者へ | 消費者向けSP | クーポン、値引き、試供品(サンプル)、増量、景品、ポイント制度 |
| 流通業者へ | 流通向け(トレード)SP | リベート、販売助成金、店頭陳列協力、販売コンテスト(対 小売) |
| 社内(販売員)へ | 社内向けSP(インターナル・プロモーション) | セールスコンテスト、研修・セミナー、セールスマニュアル配布 |
社内向け販売促進(H20年第37問)
見落とされがちですが、自社の販売員をやる気にさせるのも立派な販売促進です。 H20年第37問がこのテーマでした。
- シーズンオフの販売刺激、訪問回数を増やす動機づけ、新製品のコンセプト理解のためのセールスマニュアル、 研修・セミナーによる販売スキル向上——これらはすべて社内向けSPとして適切です。
- ただしセールスコンテストは、一時的な目標と刺激を与えるため期間を区切って実施するのが通常。 通年(常時)行うと刺激が薄れて効果が落ちます。
📝 過去問はこう出る(H20 第37問) 「最も不適切なもの」を選ぶ問題。正解(=誤り)はオ。 「セールスコンテストは通常、通年で行われている」——ここが誤り。 コンテストは期間限定だからこそ刺激になる、という常識で判断できます。 → H20 第37問
ポイント制度とFSP(フリークエント・ショッパーズ・プログラム)
ポイント制度は、購買金額に応じてポイントを付与し、顧客を囲い込む(固定化する)販促手法です。 これを体系化したのがFSP(Frequent Shoppers Program=フリークエント・ショッパーズ・プログラム)で、 優良顧客を識別し、その顧客を重点的に優遇して固定客にしていく考え方です。 (航空会社のFFP=フリークエント・フライヤーズ・プログラム=マイレージも同じ発想。H19年第30問)
ポイント制度のうまみと限界を、H19年第30問が問いました。
- うまみ:次回来店を促し顧客を固定化できる/表示価格を大きく下げずに実質値引きができる/ 決済コストの高いクレジット客のポイント率を現金客より低くしてコスト差を縮小する、といった設計も可能。
- 限界:制度の仕組み自体は単純で他社に容易に模倣されるため、それ単独で持続的な競争優位を保つのは難しい。
📝 過去問はこう出る(H19 第30問) FSP・ポイント制度についての「最も不適切なもの」を選ぶ問題。正解(=誤り)はイ。 「ポイント制度は模倣されにくく、それ自体で持続的な競争優位を維持できる」——ここが誤り。 ポイント制度はまねされやすいので、それだけでは差別化になりません(→ 第4章RBVの「模倣困難性」と接続)。 → H19 第30問
💡 覚え方:FSPは「常連さんを見つけて厚遇する」 Frequent(ひんぱんに来る)Shoppers(買い物客)Program。 よく来る優良顧客を識別して重点優遇——「全員一律の値引き」ではない点がポイントです。
23-5 デジタル・マーケティング ― SNS・クチコミ・トリプルメディア
トリプルメディア(ペイド/オウンド/アーンド)
デジタル時代のメディアは、「お金で買うか・自分で持つか・信頼で稼ぐか」で3つに整理します。 H24年第33問でそのまま問われた重要フレームです。
| メディア | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| ペイド・メディア(Paid) | お金を払って露出を買う媒体 | 広告、スポンサーシップ |
| オウンド・メディア(Owned) | 自社が保有する媒体 | 自社サイト、自社アプリ、販売員、自社の店舗 |
| アーンド・メディア(Earned) | 信頼・評判を稼いで(earn)得る媒体 | ソーシャルメディア上のクチコミ、報道 |
📝 過去問はこう出る(H24 第33問) 設問1(空欄補充)・設問2(クチコミ)の2問構成。正解は設問1=イ、設問2=オ。 - 設問1:消費者自身が情報を生成・発信するメディアはCGM(Consumer Generated Media)。 広告・スポンサーシップ=Paid、自社サイト・販売員=Owned、と対応づけるのが正解。 - 設問2(最も不適切):「購買意思決定の後半(評価・選択段階)ほどクチコミの影響は小さくなる」が誤り。 実際は後半ほど、信頼できる他者のクチコミの影響はむしろ大きくなります。 → H24 第33問
CGM とクチコミ(WOM)
- CGM(Consumer Generated Media)=ブログ・SNS・レビューサイトなど、消費者自身が内容をつくるメディア。
- クチコミ(WOM=Word Of Mouth)は、信頼できる第三者の声として重視されます。 ネット上のクチコミは、対面より広く・速く伝播します(H24年第33問)。
- クチコミが特に力を発揮するのは、買って・使ってみないと分からない情報—— 経験属性・信頼属性に関する情報です(探索属性=事前に確認できる仕様等ではない。R05年第32問)。
- 悪用(ステルスマーケティング=ステマ)を防ぐため、倫理ガイドラインの整備が必要。 ステマは2023年に景品表示法上の不当表示(優良誤認等)として規制対象になりました(R05年第32問)。
インフルエンサーとSNS広告
- インフルエンサーは、自身の表現・裁量で発信するところに信頼性の源があります。 企業が厳密に統制して意図通りに発信させると、かえって信頼を損ないます(R06年第33問の引っかけ)。
- SNS広告の多くは、リンク先(LP・ECサイト)へ利用者を遷移させることを意図しています。
- クッキー規制(サードパーティ・クッキーの制限)が進むと、追跡型広告の精度は落ちますが、 SNSはログイン情報(ログインベースのアカウント情報)を使えるため、 クッキーに依存せずターゲティング配信ができる強みがあります(R06年第33問の正解肢)。
📝 過去問はこう出る(R06 第33問) SNSのマーケティング利用の問題。正解はオ。 「多くの利用者はログイン状態でSNSを使うため、事業者はログインベースのアカウント情報を用いて、 サードパーティ・クッキーに依存せずターゲティング配信できる」——適切。 引っかけ:「SNS広告は遷移させることを意図していない」「企業アカウントから投稿されることはない」など、 『ない』の言い切りはほぼ誤りです。 → R06 第33問 / R05 第32問
⚠️ 混同注意:クチコミが強いのは「経験属性・信頼属性」 - 探索属性=仕様・価格など事前に確認できる情報 → クチコミの強みではない - 経験属性=使ってみて分かる情報/信頼属性=使った後も評価しにくい情報 → クチコミが力を発揮 R05年第32問・R06年第33問の両方で狙われた急所です。
23-6 インストア・プロモーションと購買行動
店頭こそ最後の勝負どころ
インストア・プロモーションとは、店内で買う気を後押しする仕掛けの総称です。 とくにスーパーなどでは、買うブランドを店頭で決めるお客さまが多いため、 フロアレイアウト・陳列・POPが売上を大きく左右します。この店内の総合的な工夫を インストア・マーチャンダイジング(ISM)と呼びます。
- POP(Point Of Purchase)広告=購買時点(=店頭)に置く広告。値札・棚札・のぼり・陳列台など。 お客さまがまさに買おうとしている場所で、最後のひと押しをする役割です。
計画購買と非計画購買
店頭プロモーションが効くかどうかは、その商品が計画的に買われるかで決まります。 H23年第31問がこの論点でした。
計画購買 … 来店前から「これを買う」と決めている → 店頭施策が効きにくい
非計画購買 … 店頭で見て「買おう」と決める → 店頭施策(POP・陳列)が効く!
- スーパーの品揃えの中心は、日常的にくり返し買う最寄品。
- 最寄品は消費者の関与が低い(低関与)商品で、店頭で決まる非計画購買が多い。
- だからこそ、陳列・レイアウト・店内プロモーションがブランド選択を大きく左右します。
📝 過去問はこう出る(H23 第31問) スーパーでの購買行動を問う空欄補充問題。正解はオ。 A=最寄品/B=低関与/C=非計画購買の組み合わせが正解。 「Aを買回品」「Cを計画購買」とする肢はすべて誤り——最寄品・低関与・非計画購買の3点セットで覚えましょう。 なお発展として、関連商品を隣に並べて「ついで買い」を促すクロス・マーチャンダイジング (効果はリフト値=条件付購買確率÷通常購買確率で測る)も出題されます。 → H23 第31問
💡 覚え方:店頭施策が効くのは「非計画購買」 決めて来る人(計画購買)には店頭の工夫は響きにくい。 迷って決める人(非計画購買)にこそPOP・陳列が効く——ここがインストアの狙いどころです。
この章のまとめ(試験直前チェック)
- ☐ プロモーション・ミックス=広告/販売促進/人的販売/PR(パブリシティ)の4手段
- ☐ 人的販売は1人あたりコストが高いが双方向で説得力大。生産財・専門品で重要度アップ
- ☐ パブリシティ=無料の報道(広告ではない)/ペイド・パブリシティ=有料で実質広告に近い
- ☐ PR=Public Relations=社会・関係者との関係づくり(宣伝・アピールの意味ではない)
- ☐ プッシュ=人的販売で流通に押し込む/プル=広告で需要喚起し指名買い(R07年第33問)
- ☐ IMC=4手段を一貫メッセージに統合。双方向が本質(「一方通行」は誤り)
- ☐ AIDMA →(Search・Shareを追加)→ AISAS。認知→感情→行動の階層。FCBグリッドは2軸4象限で階層モデルではない
- ☐ リスティング広告(検索連動型)=クリック課金・少額出稿・効果測定容易(中小企業も使える)
- ☐ ポイント制度・FSPは模倣されやすく、それ単独では持続的競争優位にならない(H19年第30問)
- ☐ 社内向けSPのセールスコンテストは期間限定(通年だと効果が薄れる)
- ☐ トリプルメディア=ペイド(買う)・オウンド(持つ)・アーンド(稼ぐ)/CGM=消費者生成メディア
- ☐ クチコミが強いのは経験属性・信頼属性(探索属性ではない)/ステマは2023年に景表法で規制
- ☐ インフルエンサーは自身の裁量で発信(企業が過度に統制すると信頼を損なう)
- ☐ SNSはログイン情報でクッキーに依存せずターゲティングできる
- ☐ POP=購買時点広告。効くのは非計画購買(最寄品・低関与・店頭決定)
この章に対応する主な過去問
| 年度・問 | 論点 | リンク |
|---|---|---|
| R07 第31問 | マーケティング・コミュニケーション(インフィード広告・階層モデル) | 問題 |
| R07 第33問 | プッシュ戦略とプル戦略 | 問題 |
| H21 第27問 | 統合マーケティング・コミュニケーション(IMC) | 問題 |
| H30 第35問 | プロモーション・ミックス(4手段) | 問題 |
| H19 第38問 | 検索連動型広告(リスティング広告) | 問題 |
| H19 第34問 | 無料印刷媒体(フリーペーパー) | 問題 |
| R03 第33問 | インターネット広告 | 問題 |
| H19 第30問 | フリークエント・ショッパーズ・プログラム(FSP) | 問題 |
| H20 第37問 | 社内向け販売促進 | 問題 |
| H20 第31問 | ポイント制度 | 問題 |
| H24 第33問 | CGM(ブログ・SNS)とクチコミ・トリプルメディア | 問題 |
| R05 第32問 | デジタル・マーケティング(クチコミ・インフルエンサー) | 問題 |
| R06 第33問 | マーケティング・コミュニケーションにおけるSNSの利用 | 問題 |
| R06 第34問 | PR(パブリック・リレーションズ) | 問題 |
| H23 第31問 | スーパーでの購買行動とインストア・プロモーション | 問題 |
| H27 第27問 | 人的販売 | 問題 |
全23章の学習、お疲れさまでした 🎓
これで、企業経営理論の本編(経営戦略論 → 組織論 → マーケティング論)を全23章、走り抜けました。 最後のプロモーションまでたどり着いたあなたは、「限られた資源で競争優位をつくり、それをお客さまに届ける」 という企業経営理論の背骨を、ひととおり手に入れたことになります。本当にお疲れさまでした。
学んだ知識を得点力に変えるために、このあとは付録を活用してください。
付録の案内 ▶ - 付録A 頻出人名・提唱者マップ:アンゾフ・チャンドラー・ポーター・バーニー・ミンツバーグ…と、 「誰が何を言ったか」を一枚で総ざらい。人名の取り違え引っかけ対策に。 - 付録B 紛らわしい用語ペア集:戦略/戦術、プッシュ/プル、探索属性/経験属性…など、 本文の⚠️混同注意を集約した「間違えやすい対比」の総まとめ。 - 付録C 直前総まとめチェックリスト:全23章の「試験直前チェック」を1本につなげた最終確認リスト。 試験当日の朝、これだけを見返せば全体を思い出せます。
知識は「思い出せて初めて得点」になります。付録で横断的に見直し、過去問を繰り返して、 本番でしっかり実力を出しきってください。合格をお祈りしています。