第3章 IE(方法研究・作業測定)

この章のねらい IE(インダストリアル・エンジニアリング=生産工学)は、運営管理の得点源のど真ん中です。 「作業を科学的に観察して、ムダを見つけ、標準を決める」ための道具箱を学びます。 大きく分けると、方法研究(作業のやり方を分析・改善する)と、作業測定(作業にかかる時間を測って標準時間を決める)の 2本柱でできています。この2本柱の地図が頭に入っていると、細かい手法(工程図記号・サーブリッグ・ワークサンプリングなど)が "どっちの引き出しの話か"を見失わずに済みます。

過去問での出方:運営管理では毎年2〜4問がこの分野から出ます(H19〜R06で40問前後)。 とくに標準時間の計算(正味時間×余裕・レイティング)はほぼ毎年工程図記号ワークサンプリングもローテーションで頻出します。 計算問題は「解き方の型」が決まっているので、一度手順を覚えれば確実な得点源になります。


3-0 この章の地図

この章は、まず「IEって何を分けて考えるの?」という体系(3-1)を押さえ、 そのうえで方法研究(3-2)→ 作業測定(3-3・3-4)の順に、道具を1つずつ見ていきます。

3-1 IEの体系            … 方法研究と作業測定の2本柱(★まず地図)
   │
   ├─【方法研究】=やり方を分析・改善する
   │   3-2 工程分析・運搬分析・動作研究
   │       ・工程図記号(加工○/運搬⇨/停滞▽/検査□◇)
   │       ・製品工程分析 と 作業者工程分析
   │       ・流れ線図/サーブリッグ分析/動作経済の原則
   │
   └─【作業測定】=時間を測って標準を決める
       3-3 時間研究と標準時間
       ・標準時間=正味時間×(1+余裕率)(★毎年出る計算)
       ・レイティング/内掛け法・外掛け法/PTS法
       3-4 稼働分析
       ・ワークサンプリング(瞬間観測・必要サンプル数)
       ・連合作業分析/マンマシンチャート

3-1 IEの体系 ― 「方法研究」と「作業測定」の2本柱 ★まず地図

IE(作業研究)は大きく2つに分かれる

現場のムダをなくす活動の土台が 作業研究(work study) で、これは次の2つからできています。 まずこの分岐を、地図の一番上に置いてください。

2本柱 何をするか ねらい 主な手法
① 方法研究(method study) 作業や製造の方法(やり方)を分析し、標準化・統合などで設計・改善する ムダのない標準作業を決める 工程分析、運搬分析、動作研究(サーブリッグ)、流れ線図
② 作業測定(work measurement) 作業にどれだけ時間がかかるかを測る 標準時間を設定する 時間研究(ストップウォッチ)、PTS法、ワークサンプリング(稼働分析)

💡 覚え方方法研究=「やり方」を良くする作業測定=「時間」を測る。 「良くしてから、測る」の順番です。まず方法研究でムダのない作業を決め、そのうえで作業測定で標準時間を決めます。

方法研究の定義(H26 第16問より)

方法研究とは、JIS的に言えば 「作業または製造方法を分析し、標準化・統合化などによって作業方法や製造工程を設計・改善する」活動です。 この定義そのものが選択肢の正解になったのが H26 第16問です。

つまずきポイント:ことばの引っかけ

この分野は「用語のすり替え」で引っかけてきます。H26 第16問で問われた急所を先に潰しておきましょう。

  • 1 DM(デシマルミニット)= 0.01分(1分の100分の1)。0.1分ではない(←ここが定番の引っかけ)。
  • モーションマインド=動作のムダに気づいて改善しようとする「心構え・意識」のこと。 「分析手法を的確に活用する能力」といった広い説明にすり替えると誤り。

📝 過去問はこう出る(H26 第16問) 「作業研究(作業測定と方法研究)」の定義を問う問題。正解は 「方法研究では、作業または製造方法を分析し、標準化・統合化によって作業方法または製造工程を設計・改善する」。 「1 DM=0.1分」(正しくは0.01分)などの数値・定義のすり替えがバツ選択肢です。 → H26 第16問


3-2 方法研究① 工程分析・運搬分析・動作研究

方法研究は、見る単位の大きさでレベルが分かれます。大きい方から順に見ていきます。

大きい ┌ 工程分析   … 「工程」の流れ(加工・運搬・停滞・検査)を追う
      │ 運搬分析   … モノの運搬・レイアウト(流れ線図)を追う
小さい └ 動作研究   … 手の「動作」まで細かく追う(サーブリッグ)

(1) 工程分析と工程図記号(JIS Z 8206)

工程分析は、モノ(品物)や作業者が製品になる(作業する)過程を、 工程図記号を使って「加工→運搬→…」と順番に表して調べる手法です。

基本図記号は4つだけです。ここは丸暗記の価値があります。

要素工程 記号 意味(かみくだき)
加工 ○(大きい丸) モノに変化を与える(切る・削る・組む)
運搬 ⇨(矢印)または小さい○ モノを運ぶ・移動させる
停滞 ▽(貯蔵)/ D(滞留) モノが止まっている
検査 □(数量検査)/ ◇(品質検査) 数や品質を調べる
  • 停滞はさらに2つ:貯蔵▽=計画的に貯えている滞留D=計画外に止まっている。 「計画により貯えている過程」は貯蔵であって滞留ではありません(H22 第15問の引っかけ)。
  • 検査も2つ:数量検査□(数を数える)/品質検査◇(良し悪しを見る)。
  • 複合記号複数の要素工程を同時に行うとき、基本図記号を組み合わせて表します (例:加工しながら検査する)。「基本図記号を単に並べる」のではありません(H26 第14問エの引っかけ)。

⚠️ 混同注意:製品工程分析 と 作業者工程分析 - 製品工程分析モノ(品物)を中心に、原材料・部品が製品になる過程を追う。 - 作業者工程分析人(作業者)の行動を中心に追う。 「作業者と製品を"同時に"分析する」のは、どちらでもなく 連合作業分析(3-4) です。 主語が「モノ」か「人」かで振り分けましょう。

📝 過去問はこう出る(H26 第14問) 工程分析の記述で正しいものを選ぶ問題。正解は 「基本図記号は、加工・運搬・停滞・検査の4つの要素工程を示すために用いられる」。 「工程図はレイアウトを示すため」(←それは流れ線図)、「作業者工程分析で作業者と製品を同時に分析」(←それは連合作業分析)は すべて別手法とのすり替えでバツ。 → H26 第14問

📝 過去問はこう出る(R05 第16問) JISの作業者工程分析の正誤を問う難問。正解は「a〜dが誤、eのみ正」。 ・作業者工程分析は「作業者の行動」を分析する(物の流れを追うのは製品工程分析)→ aは混同でバツ ・基本記号は加工・運搬・停滞・検査の4種(「作業・検査・移動・手待ち・余裕の5つ」は誤り)→ bバツ ・複合記号は主となる工程を外側、従を内側に書く(内外が逆)→ cバツ ・運搬作業者にとって物の運搬は主体の「作業」なので「作業」記号で表す → eのみ正しい。 → R05 第16問H22 第15問

製品工程分析の記号の並べ方は、そのまま図で問われます(R02 第7問)。 「保管▽ → 運搬⇨ → 加工○ → 検査◇ → …」のように、流れを記号の列で正確に書けるかがカギです。

【例】部品倉庫→切削→検査→穴あけ→検査→製品倉庫(R02 第7問の流れ)
 ▽保管 → ⇨運搬 → ○切削 → ◇質の検査 → ⇨運搬 → ○穴あけ → ◇質の検査 → ⇨運搬 → ▽保管

📝 過去問はこう出る(R02 第7問 / H29 第6問) R02 第7問は、文章の流れを正しい工程図(記号の並び)に対応させる問題。運搬と停滞の取り違え・検査記号の欠落が誤り選択肢です。 H29 第6問は、各記号の出現回数の表から「加工の割合」などを計算させる問題。 「加工の割合=加工回数÷合計」を電卓的に確かめるだけで解けます(例:15÷28≒53.6%)。 → R02 第7問H29 第6問

(2) 運搬分析・流れ線図(フローダイアグラム)

工程分析で「運搬や停滞が多い」と分かったら、次はモノの動き方(レイアウト)を疑います。 そこで使うのが 流れ線図(フローダイアグラム) です。

  • 流れ線図=工場・職場の見取り図(レイアウト図)の上に、モノや人の流れの線を書き込むもの。 「どこで行ったり来たり(交差・逆流)しているか」が一目で分かり、レイアウト改善に使います。
  • 工程図(工程分析)が「順序」を示すのに対し、流れ線図は「空間的な配置(どこを通るか)」を示す、と区別します。

📝 過去問はこう出る(R06 第16問) 工程分析図を読んで改善施策を選ぶ問題。「圧着と切断の間に部品が停滞している」という図から、 正解は「切断設備の処理能力を上げて停滞を減らす」=停滞の原因は後工程(切断)の能力不足、という読み。 「設備を近づける(=運搬距離の話)」では、仮置場の停滞量は減らない、という引っかけが定番です。 → R06 第16問

(3) 動作研究 ― サーブリッグ分析と動作経済の原則

いちばん細かいレベルが 動作研究。手の動きを細かく分けて「ムダな動き」を探します。

サーブリッグ分析(微動作分析) は、人の動作を18種類の基本動作要素(サーブリッグ記号)に 分解して分析する手法です(Gilbreth=ギルブレスの名を逆さ読みした造語)。18記号は3つのグループに分かれます。

分類 意味 例(記号) 改善の方針
第1類(有効・仕事をする動作) 作業を進める必要な動作 運ぶTL(Transport Loaded)、使うU(Use)、つかむG(Grasp) 効率化する
第2類(補助・仕事を遅らせる動作) あると仕事が遅れる 探すSh、選ぶSt、位置決めP なるべく減らす
第3類(ムダ・仕事をしない動作) 作業が進まない 保持H(Hold)、手待ちUD(Unavoidable Delay)、休むR なくすべき
  • 第3類(保持H・手待ちUD など)が最優先の排除対象です。 たとえば「片手が部品を保持Hしっぱなしで、その手が作業できていない」なら、 保持具(治具)を導入して両手作業にするのが定番の改善策(R03 第18問)。

⚠️ 記号の取り違えに注意 - G(Grasp)=つかむ(容器の中から部品をつまみ取る) - H(Hold)=保持(つかんだものを持ち続けて固定) 「つかみ取る動作」を H とするのは誤り(H25 第17問の正解=誤り選択肢)。

📝 過去問はこう出る(H25 第17問 / R03 第18問) H25 第17問は各サーブリッグ記号の意味を問う問題。「容器の中でつかみ取る動作=H」は誤りで、正しくはG(Grasp)。 R03 第18問は分析結果からの改善判断。「保持・手待ちは第3類(なくすべき動作)」であり、 左手の保持が続くなら「両手作業できる保持具を導入」が正解。「保持・手待ちは第1類」は分類の誤り。 → H25 第17問R03 第18問

動作経済の原則(=疲れず速い動作にするための経験則)と関連して、作業域も出ます。

【水平作業域】上から見た手の届く範囲
   ┌───────────────┐
   │   最大作業域(腕を伸ばしきって届く外側) │
   │   ┌───────────┐              │
   │   │ 正常作業域(前腕だけで届く内側)│  ← 標準作業域ともいう
   │   └───────────┘              │
   └───────────────┘
  • 正常作業域(=標準作業域):上腕を体につけ、前腕だけを動かして届く内側の範囲。ラクに届く。
  • 最大作業域腕全体を伸ばしてやっと届く外側の範囲。
  • 動作経済の考えでは、よく使う部品ほど正常作業域(内側)に置くのが原則です。

📝 過去問はこう出る(H19 第9問) 図の網掛け(外側の領域)の名称を問う問題。正解は「最大作業域」。 内側(前腕だけで届く)は正常作業域=標準作業域、との対比で覚えます。 → H19 第9問


3-3 作業測定① 時間研究と標準時間 ★毎年出る計算

ここからが作業測定。標準時間の計算はこの章で最重要(ほぼ毎年出る)です。 まず「標準時間とは何の合計か」から、ゆっくり組み立てます。

標準時間の骨組み

標準時間 = 正味時間 + 余裕時間

  • 正味時間(しょうみじかん)規則的・周期的に繰り返される作業そのものに必要な時間(主体作業+付随作業)。
  • 余裕時間:作業をするうえで避けられない遅れに対して見込む時間 (作業余裕・職場余裕・人的余裕・用達(ようたし)余裕など)。

📝 過去問はこう出る(R03 第15問) 「正味時間」と「余裕時間」の定義文を選ぶ穴埋め。正解は ①正味時間=「規則的・周期的に繰り返される作業のために必要な(c)」、 ②余裕時間=「作業を遂行するために必要と認められる遅れの(d)」。 → R03 第15問

発生事象の分類(作業と余裕の仕分け)

標準時間を出すには、観測した1つ1つの事象を「作業」か「余裕」かに正しく仕分ける必要があります(H25 第16問)。

作業 ┌ 主体作業 ┌ 主作業 …目的を直接達成(切る・詰める)
    │        └ 付随作業 …主作業に付随し規則的に発生(材料の取付け・取外し)
    └ 準備段取作業 …ロットごと・始業終業に発生する段取(金型交換など)

余裕 ┌ 作業余裕 …作業に伴い不規則に発生(注油・工具交換)
    ├ 職場余裕 …職場の都合で発生(部品待ち・突発的な設備停止)
    ├ 人的余裕 …生理的な休憩など
    └ 用達余裕 …用足しなど

⚠️ 混同注意(H25 第16問)金型交換(段取)は「準備段取作業」であって「付随作業」ではない。 ここが正解(=最も不適切な選択肢)でした。付随作業は「材料の取付け・取外し」のような、主作業に規則的にくっつく要素です。 → H25 第16問

レイティング ― 観測時間を「標準ペース」に直す

観測した作業者が速い人・遅い人だと、そのままの時間では公平な標準になりません。 そこで観測時間を標準的なペース(100)に補正します。これがレイティングです。

正味時間 = 観測時間 × レイティング係数 ÷ 100

  • レイティング係数120なら「観測した人は標準より2割速かった」→ 正味時間は観測時間より大きくなる。
  • レイティング係数80なら「標準より2割遅かった」→ 正味時間は観測時間より小さくなる。

【計算ステップ:正味時間】(H29 第16問より)

穴あけ:観測1.2分 × レイティング110 ÷ 100 = 1.32分/個
曲げ :観測1.5分 × レイティング 80 ÷ 100 = 1.20分/個
       ────────────────────────
正味時間合計 = 1.32 + 1.20 = 2.52分/個

余裕率 ― 内掛け法と外掛け法(★頻出の分かれ道)

余裕時間の見込み方(余裕率の分母の取り方)が2通りあり、標準時間の式が変わります。ここが最頻出の論点です。

方法 余裕率の定義(分母) 標準時間の式
内掛け法 余裕時間 ÷(正味時間+余裕時間)=全体に対する割合 標準時間 = 正味時間 ÷(1 − 余裕率)
外掛け法 余裕時間 ÷ 正味時間=正味時間に対する割合 標準時間 = 正味時間 ×(1 + 余裕率)

💡 見分け方:問題文で余裕を「全計測数(全体)に対する割合」で与えたら内掛け法(÷で割る)。 「正味時間に対する割合」で与えたら外掛け法(×で掛ける)。 ワークサンプリングで「全計測に占める余裕の割合」を出したときは、たいてい内掛け法です。

両者の換算式(R05 第15問で問われた):

外掛け余裕率 = 内掛け率 ÷(1 − 内掛け率)

【例】内掛け0.20 → 外掛け = 0.20 ÷(1 − 0.20)= 0.20 ÷ 0.80 = 0.25

【計算ステップ:標準時間(総合例・R05 第15問)】

① 正味時間 = 観測5分 × レイティング120 ÷ 100 = 6.0分/個
② 内掛け余裕率0.20 → 外掛けに換算 = 0.20 ÷ 0.80 = 0.25
③ 標準時間 = 6.0 ×(1 + 0.25)= 7.50分/個
   (内掛けのまま計算しても 6.0 ÷(1 − 0.20)= 7.50分/個 で一致)

📝 過去問はこう出る(R05 第15問) 設問1は内掛け0.20を外掛けに換算 →0.25。設問2は標準時間 →7.50分/個。 内掛け・外掛けどちらで計算しても同じ答えになる、と確かめられれば完璧です。 → R05 第15問

📝 過去問はこう出る(H29 第16問 / H26 第15問) H29 第16問は、レイティングで正味時間(2.52分)を出し、ワークサンプリングの余裕率10%を内掛け法で加味 → 標準時間 = 2.52 ÷(1 − 0.1)= 2.80分/個。 H26 第15問は、余裕率が「全計測数に対する割合」なので内掛け法、正解の式は 正味時間 ÷(1 − 余裕率)。 → H29 第16問H26 第15問

📝 過去問はこう出る(R01 第14問) ストップウォッチの連続観測(累積読み)から標準時間を出す問題。単位DM(1分=100DM、1DM=0.6秒)に注意。 ①各サイクルの時間=「その回の終了時刻 − 直前の区切り時刻」で平均を出す。 ②標準時間=観測時間×レイティング係数×(1+余裕率)。例:6秒×0.90×1.05=5.67≒5.7秒。 DM値をそのまま秒と取り違えるのが定番ミスです。 → R01 第14問

直接測定法と間接測定法 ― PTS法

標準時間の測り方は、実際に測るか・資料から求めるかで分かれます。

分類 手法 中身
直接測定法 ストップウォッチ法(時間研究) 作業を要素作業・単位作業に分割し、繰り返しのサイクル作業を実測する
ワークサンプリング 瞬間観測(→3-4で詳述)
間接測定法 PTS法(既定時間標準法) 基本動作ごとにあらかじめ定めた時間値を積み上げて求める。実測不要
標準時間資料法 過去に測って資料化した時間値を組み合わせて求める。類似作業が多い職場向き
  • PTS法(Predetermined Time Standard)の特徴:人の基本動作に決められた時間値を割り当てて合成するので、 実際に作業を再現・実測しなくてよいレイティング(習熟度調整)も不要(標準的な熟練を前提とするため)。 ただし設備の自動加工時間は対象外なので、それは別途実測して付け足す必要があります(H30 第15問)。

📝 過去問はこう出る(R03 第17問 / H30 第15問) R03 第17問の正解は「標準時間資料法は間接測定法で、類似作業が多い職場に適する」。 「PTS法は実測が必要」(←逆。実測不要が特徴)、「ストップウォッチ法はサイクル作業に適さない」(←逆。サイクル作業向き)が引っかけ。 H30 第15問はPTS法の準備で適切な組合せ=「設備加工時間は別途実測(b)」「模擬ラインで標準作業を決める(d)」。 就業年数で習熟度調整(a)はPTS法では不要でバツ。 → R03 第17問H30 第15問


3-4 作業測定② 稼働分析 ― ワークサンプリング・連合作業分析・マンマシンチャート

稼働分析は「作業者や機械が、時間のうちどれだけ実際に働いているか(稼働率)」を調べる分析です。 その代表がワークサンプリングです。

(1) ワークサンプリング(WS)

ワークサンプリングは、時刻をランダムに決めて"瞬間"を多数回観測し、 各作業・状態が観測全体に占める出現率(時間構成比)を、統計的に推定する手法です。

特徴 かみくだき
瞬間観測(連続で追わない) パッと見て「今この人は何をしている」を記録するだけ
1人の観測者で多くの対象を観測できる 効率的・労力が少ない
確率論(二項分布)が基本 必要な観測回数を信頼度・精度から計算する
得られるのは出現"率" ←ここ重要

⚠️ 最頻出の引っかけ:ワークサンプリングで得られるのは各作業の「出現率(割合)」であって、 「時間値(所要時間そのもの)」を直接は得られません。 各作業の時間値を直接測るのはストップウォッチ法(連続観測法)です。ここを逆にした選択肢が定番のバツ。

📝 過去問はこう出る(H20 第4問) WSの記述で「最も不適切」を選ぶ問題。正解(=誤り)は「作業の時間値を直接得ることができる」。 WSは出現率を求める手法なので、時間値の直接測定はできません。他の3つ(1人で多数観測・確率論が基本・労力が少ない)は正しい。 → H20 第4問

必要サンプル数の計算(信頼度95%)。式そのものが与えられるので、誤差の換算さえできれば解けます。

n = 1.96² × p(1 − p) ÷ a² (a=絶対誤差、p=予想出現率)

  • 絶対誤差と相対誤差の関係絶対誤差 a = 相対誤差 × p。 問題が「相対誤差」で与えられたら、まず a=相対誤差×p で絶対誤差に直してから代入します。

【計算ステップ:必要サンプル数(H23 第17問)】

p = 0.5、相対誤差0.1 → 絶対誤差 a = 0.1 × 0.5 = 0.05
n = 1.96² × 0.5 ×(1 − 0.5)÷ 0.05²
  = 3.8416 × 0.25 ÷ 0.0025
  = 0.9604 ÷ 0.0025 ≒ 384
→ 必要サンプル数は約384(「1,000」は過大でバツ)

📝 過去問はこう出る(H23 第17問 / H30 第18問) H23 第17問は上記の計算で約384。H30 第18問は、相対誤差の式を絶対誤差eの式に変形する問題で、 空欄には p(1 − p) が入る(e=a×pを代入して整理)。どちらも「絶対誤差=相対誤差×p」がカギです。 → H23 第17問H30 第18問

ワークサンプリングの結果は、パレート分析(改善対象の優先順位づけ)とセットでも出ます。

📝 過去問はこう出る(H29 第7問) WSの観測回数表から、主作業を除いてパレート分析し「累積80%を超えない範囲で最多の作業数」を選ぶ問題。 観測回数の多い順に累積%を出し、累積80.0%までの4作業が答え(5番目を足すと80%超)。 → H29 第7問

(2) 連合作業分析(人・機械分析)とマンマシンチャート

連合作業分析は、人と機械、または複数の人が協同する作業を、 一緒にやる「連合作業」・単独でやる「単独作業」・待ち「不稼働(手待ち)」に分けて、 時間の対応関係を表にする手法です。人・機械の手待ちや稼働率が見え、配置人員(受持ち台数)の検討に使えます。

  • 人と機械の時間の対応を横に並べた図を マンマシンチャート(人・機械図表) と呼びます。
  • ねらいは「機械の自動運転中に生まれる人の手空き時間を、別の作業に振り向けて手待ちを減らす」こと。
【マンマシンチャート(イメージ)】機械の自動加工20秒の間に人が別の段取をする
時間→ 0    5   10   15   20   25   30
作業者 [セット]  [取出][検査][他方へセット] …手待ちを詰める
設備A  [セット|――― 自動加工20秒 ―――|取出]
設備B         [セット|――― 自動加工20秒 ―――|

⚠️ 混同注意:連合作業分析の3分類は「単独作業・連合作業・不稼働(手待ち)」。 「単独・連合・連続作業」は誤り(H24 第16問の引っかけ)。 また、要素動作の単位に分けるのはサーブリッグ分析であって連合作業分析ではありません。

📝 過去問はこう出る(H24 第16問 / H27 第16問) H24 第16問の正解は「連合作業分析は配置人員の検討に利用できる」。 H27 第16問は、作業者1名が設備A・B(各自動加工20秒)を受け持つマンマシンチャートで、 作業順序を並べ替えて手待ちを詰めると総作業時間90秒→75秒(=15秒短縮)が最大、という計算問題。 → H24 第16問H27 第16問


この章のまとめ(試験直前チェック)

  • ☐ IE(作業研究)の2本柱=方法研究(やり方を改善)作業測定(時間を測る)
  • 1 DM = 0.01分(0.1分ではない)/モーションマインド=動作のムダに気づく心構え
  • ☐ 工程図記号の基本は加工○・運搬⇨・停滞▽D・検査□◇の4つ。停滞=貯蔵▽+滞留D、検査=数量□+品質◇
  • 複合記号=複数工程を同時に表す/主が外側・従が内側
  • 製品工程分析=モノ中心作業者工程分析=人中心作業者と製品を同時=連合作業分析
  • 流れ線図(フローダイアグラム)=レイアウト上に流れの線を描く(順序ではなく配置)
  • サーブリッグ=18の基本動作。第3類(保持H・手待ちUD)が最優先の排除対象。G(つかむ)とH(保持)を混同しない
  • ☐ 作業域:正常作業域(=標準作業域)=内側(前腕)/最大作業域=外側(腕全体)
  • 標準時間 = 正味時間 + 余裕時間。正味時間=観測時間×レイティング係数÷100
  • 内掛け法:標準時間=正味÷(1−余裕率)外掛け法:標準時間=正味×(1+余裕率)
  • ☐ 換算:外掛け率=内掛け率÷(1−内掛け率)(例 0.20→0.25)
  • PTS法=実測不要・レイティング不要(設備加工時間は別途実測)/標準時間資料法=類似作業が多い職場向き
  • ワークサンプリング=瞬間観測で"出現率"(時間値は直接得られない/それはストップウォッチ法)
  • ☐ 必要サンプル数 n=1.96²×p(1−p)÷a²絶対誤差a=相対誤差×p に直してから代入
  • 連合作業分析=単独・連合・不稼働の3分類/マンマシンチャートで手空きを詰めて手待ちを減らす

この章に対応する主な過去問

年度・問 論点 リンク
H26 第16問 作業研究(方法研究・作業測定の定義) 問題
H26 第14問 工程分析・工程図記号 問題
R05 第16問 作業者工程分析(JIS) 問題
H22 第15問 製品工程分析・記号 問題
R02 第7問 製品工程分析の工程図 問題
H29 第6問 工程分析記号の出現回数 問題
R06 第16問 工程分析(改善施策) 問題
H19 第9問 作業領域(最大作業域) 問題
H25 第17問 サーブリッグ分析 問題
R03 第18問 サーブリッグ分析(改善判断) 問題
R03 第15問 標準時間(正味時間と余裕時間) 問題
H25 第16問 発生事象の分類 問題
R05 第15問 標準時間(レイティング・内外掛け) 問題
H29 第16問 正味時間と余裕率による標準時間 問題
H26 第15問 ワークサンプリングによる標準時間 問題
R01 第14問 標準時間の算出(時間観測・DM) 問題
R03 第17問 作業測定(直接・間接測定法) 問題
H30 第15問 PTS法による標準時間設定 問題
H20 第4問 ワークサンプリング 問題
H23 第17問 ワークサンプリングの必要サンプル数 問題
H30 第18問 ワークサンプリングの必要サンプル数 問題
H29 第7問 ワークサンプリングとパレート分析 問題
H24 第16問 連合作業分析 問題
H27 第16問 マンマシンチャート(設備割当) 問題

次章予告 ▶ 第4章「生産計画と生産統制」 本章の「作業を測って標準を決める」の先にある、生産をどう計画し、どう回すかを扱います。 需要予測、日程計画(大・中・小日程)、MRP、そして進捗・現品・余力の管理まで、 現場を"動かす"仕組みを見ていきます。