第2章 生産計画と生産統制

この章のねらい 運営管理(生産管理)の心臓部です。工場では「いつ・何を・どれだけ作るか」を決める=生産計画と、 計画どおりに進んでいるかを見張って手を打つ=生産統制の、この2つを回して製品を作っています。 本章では、①需要をどう読むか(需要予測)、②それを計画にどう落とすか(大・中・小日程計画)、 ③部品を過不足なく手配するしくみ(MRP)、④ムダなく作るしくみ(JIT・かんばん)、 ⑤計画からのズレを直すしくみ(生産統制)という5つの土台を、順番に頭に入れます。

過去問での出方:運営管理の第1問〜第14問前後(生産管理パート)の中心テーマで、 毎年5〜7問がこの章から出ます。特に需要予測(移動平均・指数平滑法の計算)かんばん・JIT生産統制の3機能(進捗・現品・余力)は"ほぼ毎年"の超頻出。 計算問題も出ますが、公式と手順を覚えれば確実な得点源になります。


2-0 この章の地図

この章は、「需要を読む → 計画にする → 部品を手配する → ムダなく作る → ズレを直す」という、 モノづくりの一連の流れに沿って進みます。まず全体像をつかみましょう。

2-1 需要予測と生産計画     … 何がどれだけ売れるか読む → 計画に落とす
   │  (移動平均法・指数平滑法/大日程・中日程・小日程)
   ▼
2-2 MRP(資材所要量計画)  … 計画から「部品を何個いつ」手配するか計算
   │  (部品表BOM・部品展開・従属需要)
   ▼
2-3 JIT・かんばん・平準化   … 必要なものを必要なだけ、ムダなく作る
   │  (トヨタ生産方式・7つのムダ・後工程引取り)
   ▼
2-4 生産統制               … 計画どおり進んでいるか見張って手を打つ
      (進捗管理・現品管理・余力管理の3機能)
  • 2-1〜2-2は「計画を立てる」側(プランニング)。
  • 2-3は「どういう思想で作るか」(JIT=プル型と、MRP=プッシュ型の対比が超重要)。
  • 2-4は「立てた計画を実行・統制する」側(コントロール)。

💡 いちばん大事な対立軸:この章全体を貫くのは「プッシュ型(MRP)vs プル型(JIT)」の対比です。 MRPは「計画から逆算して前工程が押し出す」、JITは「後工程が必要な分だけ引き取る」。 どの論点も、この2つのどちらの話かを意識すると迷いません。


2-1 需要予測と生産計画

まず「生産管理」という言葉の全体像

工場のマネジメント(工程管理)は、大きく次の2つに分かれます。この対比が本章の骨格です。

生産計画 生産統制
役割 事前に「いつ・何を・どれだけ作るか」を決める 計画どおり進むよう実行中に見張り・調整する
たとえ 旅行の「しおり」づくり 旅行中の「予定変更・遅れの立て直し」
本章 2-1〜2-2 2-4

計画のいちばん上流にあるのが、これから作る量を左右する「需要予測」です。

需要予測とは

需要予測とは、ひとことで言えば

「過去の販売実績などをもとに、これから(次の期)どれだけ売れるかを数字で見積もること」

です。特に、あらかじめ在庫を持って売る見込生産(例:家電・食品)では、 需要予測を誤ると「作りすぎ(過剰在庫)」や「品切れ(機会損失)」に直結するため、とても重要です。

需要の動き(時系列変動)は、次の4つが混ざり合っています。名前だけ押さえておきましょう。

変動の種類 中身
傾向変動(トレンド) 長期的な右上がり・右下がりの趨勢 市場の成長・衰退
循環変動 数年周期の景気の波 好況・不況のサイクル
季節変動 1年周期の規則的な波 夏の飲料、冬の暖房器具
不規則変動 偶然の予測できないブレ 突発イベント

📝 過去問はこう出る(H19 第18問)傾向変動(トレンド)のある需要系列の予測モデルとして最も不適切なもの」を選ぶ問題。 正解(=不適切)は「自己回帰モデル」。自己回帰モデルは平均のまわりで変動する 定常的な系列に向くもので、右上がり等の傾向そのものを表す道具ではありません。 一方、直線モデル・多項式モデル・指数関数モデルは傾向を表せるので適切。 → H19 第18問

移動平均法 ― 直近の実績を平均する

移動平均法は、「直近の何期分かの実績を単純に平均して、次期の予測にする」いちばん素朴な方法です。

【例】過去3期の移動平均法
  t-2期=100, t-1期=120, t期=140 の実績があるとき
  → t+1期の予測 =(100 + 120 + 140)÷ 3 = 120

ポイントは「対象範囲(何期分を平均するか)」の効き方です。

  • 範囲を広げる(3→5カ月):古いデータも平均に入るので、予測はなめらかになるが、 直近の変化への反応は鈍くなる。
  • 範囲を狭める(5→3カ月):直近データの比重が上がり、直近の変化に敏感になる。

指数平滑法 ― 直近ほど重く、過去は指数的に軽く

指数平滑法は、移動平均法を発展させ、「新しいデータほど重く、古いデータほど(指数的に)軽く」 重みづけして予測する方法です。試験では計算問題として頻出なので、公式を丸暗記しましょう。

【指数平滑法の公式】 次期の予測値 = 当期の予測値 + α ×(当期の実績値 - 当期の予測値) (変形すると)= α × 当期実績 +(1-α)× 当期予測

α(アルファ)=平滑化定数(0〜1)。「実績をどれだけ強く反映するか」のツマミ。

計算手順(H27 第9問の実例)

【与件】α=0.4、当期予測値=75、当期実績値=55
【手順1】実績と予測の差(誤差)を出す:55 - 75 = -20
【手順2】差に α を掛ける:0.4 ×(-20)= -8
【手順3】当期予測に足す:75 +(-8)= 67
【検算】0.4×55 + 0.6×75 = 22 + 45 = 67 ✓
→ 次期予測値は 67

実績(55)が予測(75)を下回ったので、次期予測が下方修正されている、という感覚を持てると安心です。

α(平滑化定数)の効き方が、移動平均の「対象範囲」と並ぶ最頻出ポイントです。

αの大きさ 直近実績の重み 予測の性格
α を大きく(例 0.3→0.5) 大きくなる 直近の変化に敏感(追随が速い)
α を小さく(例 0.5→0.3) 小さくなる なめらか(過去全体の影響が大きい)

📝 過去問はこう出る(H30 第12問) 「直近の実績ほど次月需要に強く影響すると分かった。予測精度を上げる調整は?」 =直近重視に振る組み合わせを選ぶ問題。正解はbとc(=ウ)。 - b 移動平均:対象範囲を5→3カ月に短縮(○=直近の比重↑) - c 指数平滑:α を0.3→0.5に大きく(○=直近の重み↑) - a(3→5に拡大)・d(α 0.5→0.3に縮小)は逆方向なのでバツ。 → H30 第12問

📝 過去問はこう出る(R06 第34問) 表の実績値から移動平均法と指数平滑法の翌期予測を実際に計算させる問題。 指数平滑法(α=0.8)は 0.8×t期実績 + 0.2×t期予測 に表の値を代入して求めます。 公式(新予測=α×実績+(1−α)×旧予測)を正確に当てはめられるかがカギ。 → R06 第34問

⚠️ 混同注意:「範囲を広げる」と「α を大きくする」は逆向き - 移動平均で対象範囲を広げる=なめらか・鈍い(=直近軽視) - 指数平滑でα を大きくする=敏感・速い(=直近重視) "広げる=重視"と勘違いしやすいので、移動平均は狭めると直近重視/α は大きいと直近重視とセットで。

生産計画:大日程・中日程・小日程

需要予測ができたら、それを実際の生産計画(日程計画)に落とし込みます。 日程計画は、対象期間の長さによって3段階に分かれます。この区分は頻出です。

区分 期間の目安 別名 主な目的・中身
大日程計画 半年〜1年程度 大綱計画 将来必要な設備能力・作業者数・資材量などの概略を算定
中日程計画 月単位 月度生産計画 各工場・各月の生産品目と量を決める(実務の中心)
小日程計画 日・週単位 作業手配 稼働率の最大化・仕掛在庫の最小化を狙う詳細な作業日程
大日程(半年〜1年・ざっくり/人・設備・資材の準備)
   │  だんだん細かく・直近に
中日程(月単位=月度生産計画/何をどれだけ作る)
   │
小日程(日・週単位/だれがどの機械で何時に)

📝 過去問はこう出る(H25 第11問) 日程計画の区分を問う問題。最も不適切なのは「大日程計画は月単位で月度生産計画とも呼ばれる」=ウ。 月度生産計画は"中日程計画"であって大日程ではありません(ここが引っかけ)。 「大日程=設備能力・人員・資材の概略算定」「小日程=稼働率最大化・仕掛在庫最小化」は正しい。 → H25 第11問

基準日程計画と「山積み・山崩し」

基準日程計画は、いつ・どのロットを流すかの基準となる日程です。ここで大切なのが、 各期の仕事量(負荷)が生産能力の上限を超えないよう平準化する山積み・山崩し」の考え方です。

【山積み・山崩し のイメージ】能力上限=60時間、ロット分割不可・1期前倒し可
   (山積み:能力無視で負荷を積むと超過が出る)
   3期 ████████ 80  ← 上限60超過!
   →(山崩し:超過分を前の期へ前倒しして平準化)
   2期 ██████ 60    3期 ██████ 60   ← すべて60以内に収める
  • 山積み:まず能力を考えずに各期の必要生産時間(負荷)を積み上げる。
  • 山崩し:上限を超えた期の負荷を、制約(例:1期分だけ前倒し可・ロット分割不可)を守りつつ 前の期へずらして、すべての期を上限内に収める。

📝 過去問はこう出る(H30 第7問) 1台の機械で製品A・Bを加工する基準日程計画の問題。能力無視だと3期・5期が上限60時間を超えるため、 「1期だけ前倒し可・ロット分割不可」の制約を守って山崩しし、全期を60時間以内に収める配分(=イ)が正解。 「2期以上前倒し」や「どこかの期が60超」の選択肢は制約違反でバツ。 → H30 第7問

📝 過去問はこう出る(R02 第10問) 段取り費と在庫保管費の合計を最小にする生産計画を選ぶ計算問題。 総費用 = 段取り費(生産回数×単価)+ 在庫保管費(翌日繰越在庫×単価の合計)。 まとめて作れば段取り回数は減るが繰越在庫が増える、というトレードオフを、 各案で「生産回数」と「日末繰越在庫の累計」を出して比較します(正解は総費用最小の案=ウ)。 → R02 第10問


2-2 MRP(資材所要量計画)

MRPとは

MRP(Material Requirements Planning=資材所要量計画)とは、ひとことで言えば

最終製品を何個いつ作るか(生産計画)から逆算して、部品や材料を何個・いつ手配すればよいかを コンピュータで計算するしくみ」

です。「計画から逆算して必要量を割り出し、前もって手配(押し出す)」ので、プッシュ型の代表格です (これが2-3のJIT=プル型と真逆、というのが最重要の対比)。

独立需要と従属需要 ― MRPの前提

MRPを理解する土台が、この2つの需要の区別です。

用語 意味
独立需要品目 他の品目に依存せず、市場需要(顧客)で量が決まる品目 最終製品そのもの
従属需要品目 上位品目(製品)の生産量から従属的に所要量が決まる品目 製品を構成する部品・材料
  • 最終製品の需要(独立需要)は予測するしかありません。
  • しかし部品の必要数(従属需要)は、製品の生産量が決まれば計算で正確に出せます。 この「部品は計算で出す」がMRPの発想の核です。

部品構成表(BOM)と部品展開

部品構成表(BOM:Bill of Materials)とは、

「製品がどの部品・材料から、親子関係で、何個ずつ(員数)組み立てられるかを表したもの」

です。「購買部門が買う資材のリスト」ではない点に注意(=引っかけ選択肢)。

部品展開とは、このBOMを使って「最終製品の種類・数量が決まったとき、必要な構成部品の 種類と数量を計算すること」です。MRPの中心的な処理です。

所要量計算の手順(R03 第9問の実例)

BOMを"上から下へ"たどり、各段階の員数を掛け算しながら積み上げるのが所要量計算です。 同じ部品が複数の経路に登場する場合は、すべての経路を合算します。

【例】製品Z を10個作るのに必要な部品Aの数(()内=親1個あたりの員数)

  経路1:Z→X(2)→A(5)           = 2×5      = 10
  経路2:Z→X(2)→R(3)→A(2)      = 2×3×2    = 12
  経路3:Z→Y(1)→S(5)→A(2)      = 1×5×2    = 10
  経路4:Z→Y(1)→T(10)→A(5)     = 1×10×5   = 50
                                 ─────────────
  製品Z 1個あたりの A 所要量  = 10+12+10+50 = 82個

  製品Z を10個 → 82 × 10 = 820個  ← Aは820個必要

手順のコツ:①Aが出てくる経路を全部見つける → ②各経路で員数を掛け算 → ③全経路を足す(1個あたり所要量)→ ④製品の生産数を掛ける。経路の見落としが最大のミス要因です。

📝 過去問はこう出る(R03 第9問) BOMを展開して製品Z 10個に必要な部品Aの数量の範囲を選ぶ計算問題。 上記のとおり1個あたり82個 → 10個で820個なので「800以上」(=エ)が正解。 複数経路のAを合算し忘れると過少になり誤答します。 → R03 第9問

タイムバケットと用語の整理

MRPで所要量を計算するときの区切りの単位期間(週など)タイムバケットと呼びます。 「調達リードタイム」の意味ではありません(頻出の引っかけ)。用語を表で整理します。

用語 正しい意味 よくある誤り(引っかけ)
従属需要品目 上位品目から所要量が決まる部品 「調達先の要望で決まる品目」は×
独立需要品目 市場需要で決まる品目(製品) 「営業と無関係に生産部門が予測して決める」は×
タイムバケット 所要量計算を区切る単位期間(週など) 「調達にかかる所要時間」は×
部品構成表(BOM) 部品の親子関係・員数を表した表 「購買が調達する資材リスト」は×
部品展開 BOMから必要部品の種類・数量を算出

📝 過去問はこう出る(R04 第6問) MRPの用語の定義を問う問題。正解は「部品展開=最終製品の種類・数量が決まったとき、 生産に必要な構成部品の種類とその数量を求めること」(=オ)。 「従属需要=調達先の要望で決まる」「タイムバケット=調達所要時間」「BOM=購買の資材リスト」は すべて定義のすり替えでバツ。用語の正確な定義を押さえれば得点できます。 → R04 第6問


2-3 JIT・かんばん方式・平準化(トヨタ生産方式)

トヨタ生産方式(TPS)の全体像

トヨタ生産方式(TPS:Toyota Production System)は、徹底的にムダを省く生産思想で、 2本柱からできています。この2本柱は必ず覚えましょう。

        トヨタ生産方式(TPS)
        ┌──────────┴──────────┐
   ①ジャストインタイム(JIT)        ②自働化(じどうか)
   必要なものを・必要なときに・       異常が起きたら機械が自ら止まる
   必要な量だけ                     (不良品を後工程に流さない)
   → かんばん方式で実現              → あんどん で見える化
  • ①JITを支える道具がかんばん方式
  • ②自働化(ニンベンの付いた"働")を支える道具があんどん(異常を表示板で知らせラインを止める)。

📝 過去問はこう出る(H30 第11問) 「トヨタ生産方式の特徴を表す用語の組み合わせ」を選ぶ問題。正解はb かんばん方式 と e あんどん方式(=エ)。 - b かんばん方式(○):JITを実現する情報伝達のしくみ。TPSの代表。 - e あんどん方式(○):異常を表示して停止を促す。自働化を支えるTPSの特徴。 - ×になるのは a MRP(プッシュ型で別体系)・c セル生産方式d 製番管理方式(いずれもTPS固有ではない)。 → H30 第11問

JIT=「後工程引取方式」=プル(引張)型

JIT(ジャストインタイム)とは、

「すべての工程が、後工程の要求に合わせて、必要な物を・必要なときに・必要な量だけ生産する方式」

です。カギは後工程引取方式という点。後工程が必要な分を前工程に引き取りに行き前工程は引き取られた分だけ作って補充します。この「引っぱる」動きから引張(プル)方式と呼ばれます。

【プッシュ型(MRP)】計画から前工程が"押し出す"
   前工程 ──押→ 中工程 ──押→ 後工程 ──→ 出荷

【プル型(JIT)】後工程が"引き取る"/前工程は引かれた分だけ補充
   前工程 ←引── 中工程 ←引── 後工程 ←── 顧客の需要
  • JITの実現には、最終工程の生産量を平準化することが重要(波が大きいと前工程が振り回される)。
  • 引き取られた量を補充するしくみなので、押し出すMRP(プッシュ)とは正反対

📝 過去問はこう出る(R03 第6問) JITの定義の穴埋め。正解はA:後、B:最終、C:引張(=エ)。 「すべての工程が工程の要求に合わせ…実現には最終工程の生産量の平準化が重要… 引き取られた量を補充するので引張(プル)方式とも呼ぶ」。 Aを「前」、Cを「押出し」とした選択肢はJITの本質(プル型)と逆でバツ。 → R03 第6問

📝 過去問はこう出る(R06 第10問) 各生産方式の定義の正誤問題。b「JITは、全工程があらかじめ作成された生産計画に従って生産する」は誤り =これはMRPなどプッシュ型の説明で、JITは後工程引取り(プル)です。ここは頻出の引っかけ。 (正しいのはd 製番管理方式の定義のみ。オーダエントリー方式と生産座席予約方式は説明が入れ替えられていた。) → R06 第10問

かんばん方式 ― JITを実現する道具

かんばんは、後工程引取りを現場で回すための情報伝達の札(カード)です。2種類あります。

かんばんの種類 別名 役割
引取りかんばん 運搬指示かんばん 後工程が前工程へ「これだけ引き取る(運ぶ)」と指示
仕掛けかんばん 生産指示かんばん 前工程に「引き取られた分だけ作れ」と生産を指示
  • 仕掛けかんばんには、品名・品番・工程名・生産指示量・完成品置場名などが記載されます。
  • かんばんは、あらかじめ定めた工程間・職場間で循環的(ぐるぐる)に使われます。
  • かんばんの枚数=工程間に置ける仕掛在庫(部材総保有数)の上限。枚数を減らせば仕掛在庫を絞れます。

⚠️ 因果に注意:かんばんと平準化の関係 「かんばんを導入すれば平準化が達成される」は誤り(因果が逆)。 正しくは「平準化生産が前提として実現されて初めて、かんばんが有効に機能する」。 平準化はかんばん導入の"前提条件"であって"結果"ではありません。

📝 過去問はこう出る(H29 第9問) かんばん方式の最も不適切を選ぶ問題。正解(=誤り)は 「かんばん方式を導入することにより平準化生産が達成される」(=イ)。上の因果が逆。 「工程間で循環的に用いる」「仕掛けかんばんに品名・品番等を記載」「引取りかんばんの枚数で 部材総保有数を調整」はいずれも正しい記述です。 → H29 第9問

📝 過去問はこう出る(H21 第11問) かんばん枚数=仕掛在庫(WIP)の上限であることを使って、ある品番の処理開始時刻を求める計算問題。 かんばん3枚なら、ループ内の仕掛は最大3個 → ある品番に札が付くのは3つ前の品番のかんばんが 後工程で解放された後、という制約で開始時刻が決まります。「かんばん枚数=WIP上限」を体感できる良問。 → H21 第11問

平準化生産

平準化とは、生産量・生産品種のデコボコをならし、一定のペースで均等に作ることです。 需要の波をそのまま工程に流すと、前工程が振り回されて仕掛在庫や手待ちが増えます。 平準化しておくことが、JIT・かんばんが機能する土台になります。

7つのムダ(トヨタ生産方式)

TPSは、次の7つのムダを徹底的に排除します。名前だけでも押さえておきましょう。

ムダ 中身
つくりすぎのムダ 必要以上に早く・多く作る(最も悪いムダとされる)
手待ちのムダ 材料待ち・機械待ちで手が空く
運搬のムダ 不要な運搬・積み替え
加工そのもののムダ 本来不要な加工・過剰な精度
在庫のムダ 過剰な仕掛品・製品在庫
動作のムダ 探す・かがむなど付加価値を生まない動作
不良(手直し)のムダ 不良品の発生・つくり直し

💡 覚え方つくりすぎが諸悪の根源。作りすぎると在庫が増え、運搬が増え、 手待ち(作りすぎて後は暇)を隠してしまう…とムダの連鎖を生むため、TPSは「つくりすぎ」を最も嫌います。

生産リードタイムの短縮

生産リードタイム(着手〜完成までの総所要時間)の短縮は、在庫削減・納期短縮に直結する重要テーマです。 「手段(手法)が目的(短縮)にかみ合っているか」を問う出題がよくあります。

  • ディスパッチングルール(作業の優先順位づけルール)の見直し → 総所要時間に影響(適切)
  • 流れ線図でレイアウトを見直し、運搬距離×物量を最小化 → 移動時間削減(適切)
  • マンマシンチャートで人・機械の手待ちを削減(適切)
  • PERTは日程・クリティカルパスの分析手法で、ロットサイズの決定手法ではない(手段と目的がズレ=不適切)

📝 過去問はこう出る(H28 第1問) リードタイム短縮の改善活動で最も不適切を選ぶ問題。正解(=不適切)は 「PERTでロットサイズを決定する」(=ウ)。PERTは日程管理・クリティカルパス分析の道具で、 ロットサイズを決める手法ではありません。他の3つ(ディスパッチング・流れ線図・マンマシンチャート)は適切。 → H28 第1問

製番管理方式(個別受注生産)

製番管理方式は、受注(製品)ごとに製造番号(製番)を付け、その製番に部品の手配〜加工〜組立まで 一貫して紐づけて管理する方式です。個別受注生産(1品ごとに作る)に向きます。

  • メリット:製番ごとに部品が紐づくので、納期変更・仕様変更が起きても、その製番の指示を追跡・変更しやすい。 また品質保証上のトレース(追跡)が容易
  • 弱点:製番ごとに専用手配するため、多くの製品に共通する部品の発注継続(繰返し)生産の数量統制には不向き (そこは常備品管理が向く)。1点でも部品が遅れると、その製番の組立が始められない。

📝 過去問はこう出る(H28 第7問/R02 第8問) 製番管理方式の特徴を問う問題。H28 第7問の正解は「納期変更・製品仕様変更があった場合に、 特定部品の発注・生産指示の変更が容易」(=エ)。共通部品の発注・継続生産の数量統制は常備品管理の話でバツ。 R02 第8問の正解はc(1点でも部品が遅延すると組立を開始できない)とd(トレースが容易)(=オ)。 → H28 第7問R02 第8問


2-4 生産統制(進捗管理・現品管理・余力管理)

生産統制とは ― 3つの機能

生産統制とは、立てた生産計画に対して、実際の進行を見張り、ズレがあれば手を打つ活動です。 工程管理は「生産計画+生産統制」でワンセット。生産統制は次の3つの機能から構成されます(超頻出)。

         生産統制(計画に対する実行・統制)
   ┌───────────┼───────────┐
 ①進捗管理        ②現品管理        ③余力管理
(日程管理)       (現物の把握)     (能力と負荷の調整)
 予定どおり進んで   モノが今どこに      各工程・作業者の
 いるか?遅れは?   何個あるか?        余力(=能力-負荷)
                                    を調整する
  • 担当するのは計画部門ではなく、主に現場の管理者・監督者
  • 生産統制には、実績の報告(進捗・生産の把握)と、その評価(計画との差異分析)が含まれます。

⚠️ 混同注意:3機能を「2つ」にしない 生産統制の3機能は進捗管理・現品管理・余力管理進捗管理を落として「現品と余力の2つ」とする のが定番の引っかけです(H21 第1問)。「進・現・余」の3つと唱えて覚えましょう。

📝 過去問はこう出る(H21 第1問) 生産統制の最も不適切を選ぶ問題。正解(=誤り)は「生産統制は現品管理と余力管理の2つの機能から構成される」(=ウ)。 正しくは進捗管理・現品管理・余力管理の3つ。進捗管理の欠落が誤りの急所です。 「担当は現場の管理者・監督者」「実績報告と評価を含む」「工程管理の一環で計画に対応する」は正しい。 → H21 第1問

①進捗管理(日程管理)

進捗管理は、「仕事が予定どおり進んでいるか」を把握し、遅れがあれば対策する機能です。 使う手法は、生産形態(個別生産か連続生産か)で向き・不向きがあり、これがよく問われます。

生産形態 向く進捗管理手法
個別生産(受注・多品種少量)=作業ごとに進度把握 差立て板カムアップシステムガントチャート
連続生産(繰返し)=累積数量で進度把握 製造三角図追番管理(追番=連続番号)
  • 差立て板:各作業者・工程に作業指示票を差して、着手順・進度を示す。
  • カムアップシステム:予定日順に作業票を整理し、期日が来たものを引き出して着手・督促。
  • 製造三角図:縦軸に累積生産量・横軸に時間をとり、計画線と実績を比較する連続生産向けの図。
  • 追番管理:製品に連続番号を付け、累積数で進度を管理する連続生産向け(自動車など)。

📝 過去問はこう出る(R05 第13問) 個別生産に適した進捗管理手法の組み合わせを選ぶ問題。正解はa差立て板・bカムアップシステム・ eガントチャート(=イ)。c製造三角図・d追番管理は"連続生産"向けなので個別生産では×。 「個別=作業ごと/連続=累積数量」の切り分けがカギ。 → R05 第13問

②現品管理

現品管理は、資材・仕掛品・製品などの現物について、所在(どこに)と数量(何個)を正確に把握・管理する機能です。

  • 目的:過剰仕掛品の防止運搬・保管の容易化品質の維持など。
  • RFID(ICタグ)に製造番号・品名・納期などを登録し、仕掛品に付ければ、非接触で読み取り現品の流れを管理できます。

⚠️ 混同注意:現品管理の目的に「運搬ロットの最小化」は入らない 「運搬ロットの最小化」は運搬計画・運搬管理の課題であって、現品管理(=所在・数量の把握)の目的ではありません。 ここが頻出の引っかけです。

📝 過去問はこう出る(H25 第14問) 現品管理の目的として最も不適切を選ぶ問題。正解(=目的でない)は「運搬ロットの最小化」(=イ)。 「運搬・保管の容易化」「過剰仕掛品の防止」「品質の維持」は現品管理の目的で正しい。 → H25 第14問

📝 過去問はこう出る(R06 第3問) 進捗管理・現品管理のツールの正誤問題。あんどん=目で見る管理(見える化)RFIDで仕掛品の流れを管理は正しい(正)。 一方、後工程引取りのかんばんを「運搬指示かんばんと引き取りかんばん」とした記述は誤り =正しくは「引き取りかんばん(運搬指示)と仕掛けかんばん(生産指示)」で、生産指示側が抜けています。 → R06 第3問

③余力管理と工数計画

余力とは、各工程・各作業者の「現有の作業能力 - 現在の作業負荷」の差です。 余力管理は、この能力と負荷のバランスをとり、平準化する機能です。前提として工数計画があります。

まず、関連用語を正確に押さえましょう(用語対応が頻出)。

用語 正しい定義
工数 仕事量の全体を表す尺度。1人の作業者で遂行するのに要する時間(人・時間)
標準時間 1単位の作業量を行うのに必要な時間(※工数=全体量とは別物)
余力 現有作業能力 - 作業負荷(=能力と負荷の差)
工数低減 作業習熟・改善・設計改良などで作業時間(工数)を減らすこと
工数の山積み・山崩し 負荷を積み上げ(山積み)、超過分の実施時期をずらして(山崩し)平準化する手法

余力がマイナス(能力不足)のときの対策:就業時間の延長・作業員の増員・外注の利用・機械設備の増強など。 逆に余力がプラス(能力余り)なら、他工程への応援・受注拡大などを検討します。

⚠️ 混同注意:能力と負荷の調整による「再スケジュール」は日程計画の役割 手持仕事量と現有能力を比べて再スケジュールするのは日程計画の仕事。 手順計画(加工順序・使用設備を定める)はこれを行いません。ここも引っかけ頻出です。

📝 過去問はこう出る(R05 第10問) 工数管理・余力管理の用語と定義の対応問題。正解は a=工数、b=余力、c=工数低減、d=工数の山積み山崩し(=イ)。 aを「標準時間」、cを「工程分割」、dを「工程編成」とした選択肢は定義がズレていてバツ。 → R05 第10問

📝 過去問はこう出る(H28 第11問) 工数計画・余力管理の最も不適切を選ぶ問題。正解(=誤り)は 「手持仕事量と現有能力を比較したうえで手順計画で再スケジュールする」(=ア)。 能力・負荷の調整による再スケジュールは日程計画の役割で、手順計画ではありません。 「工数は作業時間・作業量で算定」「余力がマイナスなら延長・増員・外注・設備増強」は正しい。 → H28 第11問


この章のまとめ(試験直前チェック)

  • ☐ 工程管理=生産計画(事前に決める)+生産統制(実行中に統制する)
  • ☐ 需要の変動=傾向・循環・季節・不規則/傾向(トレンド)に自己回帰モデルは不向き
  • 移動平均法:対象範囲を狭めるほど直近重視(広げると鈍い)
  • 指数平滑法次期予測=当期予測+α×(当期実績−当期予測)αを大きくするほど直近重視
  • ☐ 日程計画=大日程(半年〜1年・設備/人員/資材)/中日程(月=月度生産計画)/小日程(日・週)
  • ☐ 基準日程計画は山積み・山崩しで能力上限内に平準化(前倒し・ロット分割の制約に注意)
  • ☐ 生産計画のトレードオフ=段取り費 ↔ 在庫保管費(まとめ生産で段取り減・在庫増)
  • MRP=プッシュ型:計画から逆算し部品を手配。独立需要(製品)は予測/従属需要(部品)は計算
  • BOM(部品構成表)=親子関係・員数の表部品展開=必要部品の種類・数量を算出
  • ☐ 所要量計算=同じ部品の全経路を員数で掛けて合算 × 生産数(経路の見落とし注意)
  • タイムバケット=計算の単位期間(週など)(調達所要時間ではない)
  • JIT=後工程引取り=プル(引張)型/実現には最終工程の平準化が重要
  • ☐ TPSの2本柱=JIT(かんばん)+自働化(あんどん)/MRP・セル・製番はTPS固有ではない
  • ☐ かんばん2種=引取り(運搬指示)+仕掛け(生産指示)枚数=仕掛在庫の上限
  • 平準化はかんばんの"前提"(かんばんで平準化が"達成される"は因果が逆でバツ)
  • 7つのムダ:つくりすぎ・手待ち・運搬・加工・在庫・動作・不良(つくりすぎが諸悪の根源)
  • 製番管理=個別受注生産向け(仕様/納期変更に強い・トレース容易/共通部品・継続生産には不向き)
  • ☐ 生産統制の3機能=進捗管理・現品管理・余力管理(「2つ」にしない)
  • ☐ 進捗管理:個別生産=差立て板・カムアップ・ガントチャート/連続生産=製造三角図・追番管理
  • ☐ 現品管理=所在と数量の把握(目的に「運搬ロット最小化」は入らない)
  • ☐ 余力=能力−負荷/用語:工数・標準時間・工数低減・山積み山崩しを取り違えない

この章に対応する主な過去問

年度・問 論点 リンク
H19 第18問 傾向変動の需要予測モデル 問題
H27 第9問 指数平滑法による需要予測(計算) 問題
H30 第12問 移動平均法・指数平滑法(直近重視の調整) 問題
R06 第34問 移動平均法・指数平滑法(計算) 問題
H25 第11問 日程計画(大・中・小日程) 問題
H30 第7問 基準日程計画(山積み・山崩し) 問題
R02 第10問 生産計画(段取り費・在庫費の最小化) 問題
R04 第6問 資材所要量計画(MRP・用語) 問題
R03 第9問 部品構成表(BOM・所要量計算) 問題
H30 第11問 トヨタ生産方式 問題
R03 第6問 ジャストインタイム(プル型) 問題
R06 第10問 生産システムの管理方式(JIT・製番ほか) 問題
H29 第9問 かんばん方式 問題
H21 第11問 かんばん枚数と仕掛在庫制御(計算) 問題
H28 第1問 生産リードタイムの短縮 問題
H28 第7問 製番管理方式 問題
R02 第8問 製番管理方式 問題
H21 第1問 生産統制(3機能) 問題
R05 第13問 個別生産の進捗管理手法 問題
H25 第14問 現品管理の目的 問題
R06 第3問 進捗管理・現品管理 問題
R05 第10問 工数管理・余力管理(用語) 問題
H28 第11問 工数計画と余力管理 問題

次章予告 ▶ 第3章「作業研究とIE(生産の効率化)」 本章で「計画・統制」の骨格をつかんだら、次は個々の作業を科学的にムダなく設計する道具=IE(インダストリアル・エンジニアリング)へ。 方法研究(工程分析・動作研究)作業測定(時間研究・標準時間・稼働分析)、 そして頻出のライン生産と編成効率(ラインバランシング)を扱います。