第1章 会社の種類と設立

この章のねらい 経営法務の入り口です。ここでは「会社にはどんな種類があるのか」「会社をつくるにはどんな手続きがいるのか」という 会社の"かたち"と"生まれ方"を学びます。会社法の全体像を理解する土台であり、第2章以降で扱う 株式・機関・M&Aなどの話も、すべてこの「会社の類型」の理解の上に乗っています。

過去問での出方:経営法務では毎年ほぼ確実に、第1問〜第6問あたりで会社法の総論が出ます。 とくに「持分会社(合名・合資・合同)の比較」「株式会社と合同会社の比較」「株式会社の設立手続」は 数年に一度どころか、ほぼ隔年ペースで登場する超頻出テーマです。細かい条文の暗記より、 「誰が・どこまで責任を負うか(責任)」「所有と経営が分かれているか」「何が定款で自由に決められるか(定款自治)」の 3つの軸で整理できると、初見の選択肢でも正誤を見分けられます。ここは得点源にすべき分野です。


1-0 この章の地図

この章は、「会社にはどんな種類があるか(類型)」→「それぞれどう違うか(比較)」→「会社以外の選択肢」→ 「株式会社の作り方(設立)」→「できあがった会社を書類で確認する(登記)」という順に進みます。

1-1 会社の4類型と持分会社     … 株式・合名・合資・合同/無限責任と有限責任
   │                            所有と経営の分離(ことばの土台)
   │
1-2 株式会社 vs 合同会社       … 有限責任・機関の要否・定款自治(★頻出比較)
   │
1-3 特例有限会社・LLP・NPO     … 「会社」以外も含めた事業組織の選択肢
   │
1-4 株式会社の設立手続         … 発起設立/募集設立・定款・現物出資・発起人の責任
   │                            (★毎年のように出る)
   │
1-5 登記事項証明書の読み取り   … できあがった会社を"書類"で読む

まずは1-1で、すべての基礎になる「責任」と「所有と経営」という2つのキーワードを頭に入れましょう。


1-1 会社の4類型と持分会社

会社法上の「会社」は4種類

私たちが「会社」と聞くと株式会社を思い浮かべますが、会社法が定める会社は次の4種類です。

会社の種類 社員(出資者)の責任 グループ
株式会社 全員が間接有限責任 (株式会社)
合名会社 全員が無限責任社員 持分会社
合資会社 無限責任社員+有限責任社員の両方 持分会社
合同会社(LLC) 全員が有限責任社員 持分会社

ことばのかみくだき - 社員=ここでは「従業員」ではなく、会社に出資した人(出資者・オーナー)のこと。会社法独特の言い方です。 - 持分会社=合名・合資・合同の3つをまとめた呼び名。株式会社以外の3つがこれにあたります。

いちばん大事な区別:「無限責任」と「有限責任」

会社の類型を分ける最大のポイントは、会社が借金を返せなくなったとき、出資者がどこまで責任を負うかです。

  • 無限責任社員:会社の借金を、自分の個人財産をはたいてでも限度なしに払わなければならない。
  • 有限責任社員:責任は自分が出資した金額まで。それ以上は個人財産で払う必要がない。
    会社が1億円の借金を返せない!
        │
   ┌────┴────┐
無限責任社員          有限責任社員
自宅も預金も出して      出資した100万円が
全額を返す責任         パーになるだけ(それ以上は無し)

この考え方で4類型を並べると、次のように整理できます。

  • 合名会社=無限責任社員だけ(全員が重い責任)
  • 合資会社=無限責任社員と有限責任社員が混在
  • 合同会社=有限責任社員だけ(全員が軽い責任)
  • 株式会社=株主は有限責任(しかも「間接」有限責任=下記)

⚠️ 「間接」有限責任って何? 株式会社の株主や合同会社の社員は、会社の債権者に直接お金を払うのではなく、あくまで 「出資したお金が返ってこないかもしれない」というかたちでしか損をしません。これを間接有限責任といいます。 H30年第1問では、合同会社の社員を「直接無限責任を負う」とした選択肢がバツ(正しくは間接有限責任)でした。

もうひとつの軸:「所有と経営の分離」

  • 株式会社は、出資する人(株主=所有)実際に経営する人(取締役=経営)分かれているのが原則です。 お金を出すだけで経営に加わらない株主がいてOK、という仕組みです(=所有と経営の分離)。
  • 持分会社は、原則として出資した社員が自分で経営もする(所有と経営が一致)。 だから「みんなで出資して、みんなで会社を動かす」という、より人的なつながりの強い会社になります。

💡 覚え方:株式会社は「お金の会社」、持分会社は「人の会社」 株式会社は資本(お金)中心で他人同士でも集まりやすく、持分会社は信頼できる仲間同士でやる会社、 とイメージすると、後の細かい違い(定款自治の広さなど)も腑に落ちます。

持分会社の共通ルール(頻出)

持分会社(合名・合資・合同)には、株式会社とは違う共通の特徴があります。過去問で問われた点を挙げます。

  • 社員の加入:会社成立後でも、定款を変更すれば新しい社員を加入させられる(原則、総社員の同意)。 合同・合名・合資のいずれも可能です(R01年第1問・正解肢)。
  • 社員の人数:合同会社・合名会社は社員1名でも設立できる。合資会社だけは 「無限責任社員」と「有限責任社員」が最低1人ずつ必要なので、実質2名以上です。 「持分会社は2名以上必要」は誤り(R01年第1問の引っかけ)。
  • 業務執行社員:原則は各社員が業務執行権を持ちますが、定款で「一部の社員だけを業務執行社員にする」ことも可能です。

📝 過去問はこう出る(H22 第6問) 会話文の空欄に会社の種類を当てはめる問題。 合名会社=無限責任社員のみ/合同会社=有限責任社員のみ/合資会社=無限・有限の両方、 そして「平成18年5月から設立できなくなった会社」=有限会社、という基本の対応がそのまま問われました。 ここは経営法務の"九九"にあたる部分。丸暗記でよいので確実に押さえましょう。 → H22 第6問

📝 過去問はこう出る(R01 第1問) 持分会社3種の比較。正解は「いずれの会社も、会社成立後に新たに社員を加入させることができる」。 引っかけは「社員は2名以上でなければならない」(合同・合名は1名でOK)、 「一部の社員のみを業務執行社員とすることはできない」(定款で可能)、 「合同会社と合名会社の社員は無限責任のみ」(合同は有限責任=説明が逆)。 → R01 第1問


1-2 株式会社と合同会社の比較 ★超頻出

なぜこの2つを比べるのか

株式会社と合同会社は、どちらも「社員全員が間接有限責任」という共通点があります。 そのため「有限責任で会社をやりたいなら、どっちを選ぶ?」という実務上の判断が生じ、試験でも 両者の違いが繰り返し問われます(H30年第1問、R04年第4問など)。

一目でわかる比較表

比較項目 株式会社 合同会社(LLC)
社員(出資者)の責任 間接有限責任 間接有限責任(同じ)
所有と経営 分離が原則 一致が原則(出資者が経営)
意思決定 株主総会・取締役会など機関による 原則社員の多数決(機関は任意)
機関設計 株主総会は必須、取締役も必須 社員総会・取締役などの機関は不要
定款自治 法律の枠がやや厳格 広い(内部ルールを自由に設計できる)
損益分配 原則出資比率に応じる 定款で出資比率と違う配分も可能
決算公告 義務あり(貸借対照表の公告) 義務なし
配当規制(純資産300万円未満は不可) 適用あり 適用なし
役員(取締役・業務執行社員)に法人が就任 不可(取締役は自然人のみ) 可能(法人が業務執行社員になれる)

つまずきポイント:合同会社の「自由さ」を押さえる

合同会社は「有限責任の安心」と「持分会社の自由さ(定款自治)」をいいとこ取りした会社です。 だから次のような、株式会社にはない柔軟さがあります。

  • 出資が少ない社員に、あえて多くの利益を分配することも、定款に定めれば可能(H26年第17問・正解肢)。 「たくさん働くが出資は少ない人」に報いる設計ができるわけです。
  • 法人が業務執行社員になれる(R04年第4問・正解肢)。株式会社の取締役は自然人(生身の人間)に限られます。
  • 決算公告が不要で、配当規制もゆるいので、事務負担が軽い。

一方、次の点は引っかけとして頻出です。

  • 合同会社にも資本金の概念はあるし、設立には登録免許税(最低6万円)が必要。 「資本金の概念がなく登録免許税も不要」はバツ(H26年第17問)。
  • 合同会社の社員は全員が有限責任。業務執行社員であっても無限責任は負わない。 「業務執行社員は無限責任を負う」はバツ(R07年第5問)。
  • 合同会社の社員は財産の出資が前提で、労務・信用を出資の目的にできない(労務・信用出資が できるのは合名・合資会社の無限責任社員)。「合同会社で労務出資できる」はバツ(R07年第5問)。

📝 過去問はこう出る(H30 第1問) 株式会社と合同会社の比較。正解は「株式会社では資本金を増やさずに出資による資金調達はできないが、 合同会社ではできる」(合同会社は払込金を資本剰余金にでき、資本金を増やさず調達できる)。 バツの選択肢:合同会社の社員を「直接無限責任」とする(→間接有限責任)、 「純資産300万円未満は両社とも配当不可」(→株式会社のみの規制)、 「両社とも貸借対照表を公告」(→公告義務は株式会社のみ)。 → H30 第1問

📝 過去問はこう出る(R04 第4問) 同じく株式会社と合同会社の比較。正解は「株式会社では法人は取締役になれないが、 合同会社では法人が業務執行社員になれる」(法人が業務執行社員のときは職務執行者を選任)。 バツ:「合同会社の社員は2名以上必要」(1名でOK)、「合同会社の社員は無限責任」(有限責任)。 → R04 第4問R07 第5問

⚠️ 混同注意:「法人が業務執行社員」になったときの職務執行者 合同会社では法人も業務執行社員になれますが、その法人は実際に手を動かす人=職務執行者を選任します。 このとき職務執行者は自然人(生身の人間)でなければならず、「別の法人」を職務執行者にはできません(R07年第5問)。


1-3 特例有限会社・LLP・NPO法人 ― 会社以外も含めた選択肢

「事業をやるための組織」は、株式会社や持分会社だけではありません。試験では、会社に似た別の器として 特例有限会社・LLP・NPO法人が問われます。それぞれ「根拠となる法律」と「特徴」をセットで覚えます。

特例有限会社(かつての有限会社)

  • 平成18年5月の会社法施行で、有限会社は新しく作れなくなりました。 ただし、それ以前からある有限会社は「特例有限会社」として、株式会社の一種としてそのまま存続しています。
  • 特例有限会社の特徴(H22年第5問で問われた点):
  • 取締役会・監査役会・会計監査人などは設置できない(機関はシンプル)。
  • 取締役・監査役の任期に制限がない(通常の株式会社のような「最長10年」等の縛りがない)。
  • 株式会社への移行は、定款を変更して商号を「〇〇株式会社」に改め、 有限会社の解散登記+株式会社の設立登記をすれば足りる(組織変更のような重い手続きは不要)。

📝 過去問はこう出る(H22 第5問) 特例有限会社の代表者へのアドバイスとして正しいものを選ぶ問題。正解は 「特例有限会社から株式会社へは、定款変更で商号を変更して登記すれば移行できる」。 バツ:「取締役会をいつでも設置できる」(→設置できない)、「取締役の任期は10年に制限される」(→任期制限なし)、 「募集株式の割当先を代表取締役が自由に決められる」(→株主総会の決議等が必要)。 → H22 第5問

LLP(有限責任事業組合)

  • 根拠法は有限責任事業組合契約に関する法律。会社ではなく「組合」です。
  • 合同会社(LLC)とよく似た共通点を持ちますが、決定的な違いは「法人格がない」こと。
合同会社(LLC) LLP(有限責任事業組合)
正体 会社(法人格あり) 組合(法人格なし)
社員/組合員の責任 有限責任 有限責任
損益分配 定款で自由に設定可 総組合員の同意で自由に設定可
公証人の定款認証 不要 不要
特許などの出願名義 会社名義でできる 組合名義ではできない(法人格がないため)
組織変更 他の会社類型へ変更できる できない(解散して会社を新設するしかない)
課税 法人課税 構成員課税(組合員に直接課税=パススルー)

📝 過去問はこう出る(H21 第16問) 合同会社・LLP・NPO法人を横断的に問う3設問。 - 設問1(共通点で不適切なもの)=LLPの重要な業務執行を「総組合員の過半数」で決められるとした肢が誤り (原則は総組合員の同意=全員一致)。 - 設問2(相違点で不適切なもの)=「LLPは組合員の過半数が日本の居住者・内国法人でなければならない」とした肢が誤り (そのような居住者要件はない)。 - LLPは法人格がないので特許を組合名義で出願できない、組織変更できず解散して会社を新設する、といった点は正しい。 → H21 第16問

NPO法人(特定非営利活動法人)

  • 根拠法は特定非営利活動促進法(NPO法)社会貢献活動を行う団体に法人格を与える仕組みです。
  • 特徴(H21年第16問・設問3):
  • 特定非営利活動を目的とするが、支障のない範囲でその他の事業も行える。
  • 役員は理事3名以上・監事1名以上。報酬を受ける役員は役員総数の3分の1以下
  • 設立には、所轄庁の認証を受ける必要がある(許可ではなく「認証」という点に注意)。

💡 覚え方:LLP=「組合」だから法人格なし、NPO=「認証」で成立 LLPは名前に「会社」がつかない=法人格がない組合(だから特許を組合名義で出願できない)。 NPO法人の設立は所轄庁の認証(許可・認可ではない)というキーワードで押さえます。


1-4 株式会社の設立手続 ★毎年のように出る

株式会社をつくる手続きは、経営法務で最も出題頻度が高い論点のひとつです。 「発起設立と募集設立の違い」「定款の絶対的記載事項」「現物出資」「発起人の責任」の4本柱で整理します。

(1) 発起設立と募集設立

株式会社の設立には、大きく2つのやり方があります。

発起設立 募集設立
意味 発起人だけが全株式を引き受ける 発起人が一部を引き受け、残りを他から募集する
出資者 発起人のみ 発起人+募集に応じた株主
設立時取締役の選任 発起人の議決権の過半数で選任 創立総会の決議で選任
払込金の扱い 払込金保管証明制度は廃止(残高証明で足りる) 払込金保管証明制度が残っている
  • 発起人とは、会社設立を企画し、定款に署名(または記名押印)する人のこと。
  • 発起人は必ず1株以上を引き受けなければなりません(発起設立でも募集設立でも同じ)。
  • 法人も発起人になれます(自然人に限られない)。
  • 発起人の氏名・名称・住所は定款の絶対的記載事項(下記(2))です。

⚠️ 「発起人」と「設立時取締役」は別物 発起人は「会社を作る言い出しっぺ」、設立時取締役は「設立時の役員」です。 発起人が必ず設立時取締役になるわけではありません。発起人であっても、設立時取締役に就任しないことも可能です。

(2) 定款の絶対的記載事項

定款は会社の「根本ルール(憲法のようなもの)」です。記載事項には3種類あります。

  • 絶対的記載事項書かないと定款そのものが無効になる、必ず書くべき事項。
  • 相対的記載事項:書かないとその効力が生じない事項(例:現物出資などの変態設立事項)。
  • 任意的記載事項:他の方法で定めてもよいが、会社の判断で定款に書く事項。

株式会社の絶対的記載事項は、会社法27条の次の5つです。

① 目的        (何をする会社か)
② 商号        (会社の名前)
③ 本店の所在地
④ 設立に際して出資される財産の価額 または その最低額
⑤ 発起人の氏名または名称および住所

💡 覚え方:「目・商・本・財・発(もく・しょう・ほん・ざい・はつ)」の5つ取締役の員数」や「定時株主総会の招集時期」は、書いてもよいが絶対的記載事項ではありません(任意的)。 ここが引っかけの定番です。

📝 過去問はこう出る(R06 第6問) 「絶対的記載事項ではないもの」の組み合わせを選ぶ問題。正解は 「取締役の員数(d)」と「定時株主総会の招集時期(e)」の組(=どちらも任意的記載事項)。 一方、本店の所在地・出資財産の価額または最低額・発起人の氏名等はいずれも絶対的記載事項です。 → R06 第6問

(3) 現物出資と検査役の調査

  • 現物出資とは、お金ではなくモノ(土地・建物・商品・株式など)で出資すること。 現物は金額の水増しがしやすいので、会社法は慎重なチェックを求めます(変態設立事項)。
  • 原則として、裁判所が選任する検査役の調査が必要ですが、次のいずれかにあたれば調査を省略できます。
検査役の調査が不要になる主なケース(会社法33条10項)
 ① 現物出資・財産引受けの目的財産の総額が 500万円を超えない とき
 ② 市場価格のある有価証券で、定款記載価額がその市場価格を超えないとき
 ③ 価額が相当であることについて 弁護士・公認会計士・税理士等の証明
    (不動産のときは加えて不動産鑑定士の鑑定評価)を受けたとき
  • 500万円基準は「現物出資の総額」で判定します。一部を取り出して「これだけなら500万円以下」と 考えるのは誤り(H23年第1問の引っかけ)。金銭出資は500万円基準の対象外です。
  • 専門家の証明(③)でも、現物出資をする発起人本人や財産の譲渡人、設立時の役員などは証明者になれません (利害関係のある人はチェック役になれない)。

📝 過去問はこう出る(H21 第3問) 約800万円の現物出資について正しいアドバイスを選ぶ問題。正解は 「800万円は500万円を超えるので原則検査役の調査が必要だが、弁護士や税理士などの証明書があれば調査は不要になる」。 バツ:「300万円を超えると調査が必要」(→正しくは500万円超)、「現金と合わせて500万円超で必要」(→現物出資額のみで判定)。 → H21 第3問

📝 過去問はこう出る(H23 第1問) 現物出資総額650万円のケースで正しい発言を選ぶ問題。正解(エ)は 「株式を250→150万円、商品を300→250万円に減らして現金を増やせば、現物出資の総額が500万円ちょうどになり検査役の調査は不要」。 バツ:税理士Dが証明する案(→Dは設立時監査役に就任予定なので証明者になれない)、 什器100万円だけで判定する案(→総額650万円で判定するので不可)。 → H23 第1問

(4) 募集株式の割当ては「自由」/発起人の責任

  • 募集設立で割当方法を定めなかった場合、発起人は誰に何株を割り当てるか自由に決められます割当自由の原則)。 申込みの先着順や希望株数に縛られず、ある申込者への割当てをゼロにすることもできます。
  • 発起人の責任:現物出資した財産の価額が定款の額に足りなかったとき、発起人は原則として 不足額を穴埋めする責任(不足額填補責任)を負います。ただし裁判所選任の検査役の調査を経た場合は免れます (その財産の出資者・譲渡人自身は免責されません)。

📝 過去問はこう出る(H22 第1問) 募集設立で「発起人の希望(BとDに引き受けてもらいたい)を最大限実現する割当て」を選ぶ問題。 割当自由の原則により、正解はB300株・D100株、A・Cはゼロという割当て。 申込みの先後や希望株数に発起人は拘束されません。 → H22 第1問

📝 過去問はこう出る(R02 第2問・R05 第5問) - R02第2問の正解は「検査役の調査を経れば、発起人は不足額填補責任を免れる(出資者・譲渡人自身を除く)」。 バツ:「発起人の氏名は定款に不要」(→絶対的記載事項)、「発起設立の設立時取締役は発起人全員の同意で選任」(→議決権の過半数)、 「募集設立では発起人1人が引き受ければよい」(→各発起人が1株以上引き受ける)。 - R05第5問は、募集設立なら発起人以外の乙氏は発起人でなくてよい/法人(X社)も発起人になれる/ 発起人が必ず設立時取締役になる必要はない/定款に定めなければ発起設立は発起人の議決権の過半数・募集設立は創立総会で選任、 という設立手続の基本がまとめて問われました。 → R02 第2問R05 第5問

⚠️ 設立まわりの数字・届出(H20年第16問) 会社法施行(平成18年5月)で、最低資本金制度は廃止(資本金1円でも設立可)、類似商号規制も廃止 (ただし同一住所・同一商号の登記は不可)されました。設立時の公告方法は絶対的記載事項ではなく、 定めるなら官報・日刊新聞紙・電子公告から選べます。設立後の届出では、雇用保険の届出先は ハローワーク(公共職業安定所)であって労働基準監督署ではない点が引っかけでした。 → H20 第16問


1-5 登記事項証明書(現在事項全部証明書)の読み取り

会社ができあがると、その内容は登記され、誰でも登記事項証明書で確認できます。 実務では取引先の信用調査などに使い、試験では「証明書から何が読み取れるか」が問われます。

証明書に載っている主な項目

記載項目 何がわかるか
商号・本店 会社の名前・住所
会社成立の年月日 いつ設立されたか
公告をする方法 官報/日刊新聞紙/電子公告のどれか
発行可能株式総数・発行済株式の総数 株式の発行状況
資本金の額 資本金(大会社かどうかの手がかり)
役員に関する事項 取締役・代表取締役・監査役など
取締役会設置会社/監査役設置会社 どんな機関を置いているか
株式の譲渡制限に関する規定 記載がなければ譲渡制限なし=公開会社

読み取りのコツ:「書いていないこと」も情報になる

登記事項証明書は「現に効力を有する事項の全部」を載せています。だから、 本来なら登記されるはずの事項が書かれていない=その定めがない、と読めます。

  • 株式の譲渡制限の記載がない → 譲渡制限がない=公開会社だと分かる(「分からない」は誤り)。
  • 支店の所在地の記載がない → 支店は設置されていないと分かる。
  • 会計監査人設置会社の記載がない → 取締役会決議だけで毎期の剰余金配当をすることはできない (取締役会決議での配当には、会計監査人設置会社であることなどの要件が必要)。
  • 資本金が5億円未満(例:1億9500万円)→ 資本金の要件からは大会社ではない (大会社=資本金5億円以上または負債200億円以上。負債は証明書に載らないので、大会社と「断定」はできない)。

📝 過去問はこう出る(H19 第2問) 資本金1億9500万円のA株式会社の現在事項全部証明書を読み取る問題。正解は 「この会社では、株主総会決議によらず取締役会決議のみで毎期の剰余金配当を行うことはできない」 (会計監査人設置会社の登記がないため)。 バツ:「公開会社かどうか分からない」(→譲渡制限の記載がない=公開会社と分かる)、 「支店の有無が分からない」(→記載がなければ支店なし)、「大会社である」(→資本金5億円未満なので断定できない)。 → H19 第2問


この章のまとめ(試験直前チェック)

  • ☐ 会社は4種類=株式会社・合名会社・合資会社・合同会社(後ろ3つが持分会社
  • ☐ 責任の区別:合名=無限のみ/合資=無限+有限/合同=有限のみ/株式会社=間接有限
  • ☐ 株主・合同会社の社員は間接有限責任(「直接無限責任」は合名会社等の話)
  • 株式会社=所有と経営の分離持分会社=所有と経営の一致(+定款自治が広い)
  • ☐ 持分会社は成立後も定款変更で社員を加入できる/合同・合名は社員1名でOK
  • ☐ 株式会社 vs 合同会社:合同会社は機関不要・決算公告不要・配当規制ゆるい・法人も業務執行社員になれる・出資比率と違う損益分配も可
  • ☐ 合同会社にも資本金の概念あり・登録免許税(最低6万円)必要/社員は全員有限責任・労務信用出資は不可
  • 特例有限会社=新設不可・機関シンプル・任期制限なし・定款変更+登記で株式会社へ移行
  • LLP法人格のない組合・構成員課税・組織変更不可・組合名義で特許出願不可(重要業務は総組合員の同意
  • NPO法人=理事3名以上・監事1名以上・報酬役員は総数の3分の1以下・所轄庁の認証で成立
  • ☐ 設立:発起設立(発起人の議決権の過半数で取締役選任)/募集設立(創立総会で選任・払込金保管証明あり)
  • ☐ 発起人は必ず1株以上引受け・法人も可・氏名等は定款の絶対的記載事項(設立時取締役とは別物)
  • ☐ 定款の絶対的記載事項=目的・商号・本店所在地・出資財産の価額または最低額・発起人の氏名等(取締役員数や総会招集時期は×)
  • ☐ 現物出資は原則検査役の調査総額500万円以下・有価証券の特則・専門家の証明で省略可(総額で判定)
  • 募集株式の割当ては自由/検査役の調査を経れば発起人は不足額填補責任を免れる(出資者・譲渡人自身は除く)
  • ☐ 登記事項証明書は「書いていない=その定めがない」と読む(譲渡制限の記載なし=公開会社)

この章に対応する主な過去問

年度・問 論点 リンク
H19 第2問 現在事項全部証明書の読み取り 問題
H20 第16問 会社法による株式会社の設立・届出 問題
H21 第3問 会社設立と現物出資(検査役調査) 問題
H21 第16問 合同会社・LLP・NPO法人 問題
H22 第1問 募集設立における株式の割当て 問題
H22 第5問 特例有限会社 問題
H22 第6問 会社の種類(持分会社) 問題
H23 第1問 株式会社の設立(現物出資・検査役) 問題
H30 第1問 株式会社と合同会社の比較 問題
R01 第1問 持分会社の比較(合同・合名・合資) 問題
R02 第2問 株式会社の設立(発起人・填補責任) 問題
R04 第4問 株式会社と合同会社の比較 問題
R05 第5問 株式会社の設立(発起人・設立時取締役) 問題
R06 第6問 定款の絶対的記載事項 問題
R07 第5問 合同会社 問題

次章予告 ▶ 第2章「株式と社債」 本章で生まれた「株式会社」の中身に踏み込みます。株式の種類(種類株式・譲渡制限)、株主の権利、 自己株式、そして資金調達のもう一つの柱である社債を扱います。本章の「公開会社/譲渡制限」の話が、 そのまま次章の入り口になります。