経営法務 H21年度 第16問

第16問

次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。 有限責任制の人的会社制度として、会社法に合同会社制度が創設された。また、 有限責任事業組合契約に関する法律により、新たな事業体としての有限責任事業組 合の設立が可能となった。 このほか人的資産の活用としては、民間の行う社会貢献活動の健全な発展を促進 する目的で特定非営利活動促進法が施行され、特定非営利活動法人を設立すること が可能となっている。 (

設問1

) 合同会社と有限責任事業組合は共通点も多い。次の説明のうち、最も不適切な ものはどれか。

  1. 合同会社、有限責任事業組合の債権者は、当該会社または組合の営業時間内 は、いつでも、作成した日から年以内の計算書類または財務諸表の閲覧また は謄写の請求をすることができる。
  2. 合同会社の常務に属する業務以外の業務は、定款に別段の定めがある場合を 除き、社員の過半数をもって決定する。有限責任事業組合も重要な財産の処分 および譲受けや多額の借財という業務執行を決定するには、総組合員の過半数 の同意によらなければならない。
  3. 合同会社の設立手続きは、社員になろうとする者が定款を作成し、設立の登 記をする時までにその出資の全額を払い込みまたは給付を行う。有限責任事業 組合では、各当事者が組合契約書を作成し、それぞれの出資に係る払込みまた は給付の全部を履行する。いずれも、設立時に公証人の定款認証を受ける必要 はない。
  4. 合同会社は定款、有限責任事業組合は総組合員の同意により、その出資者の 損益分配の割合を出資の価額に応じたものと異なる割合に定めることができ る。 ― 22― ◇M5(557―135) (

設問2

) 合同会社と有限責任事業組合との相違点の説明として、最も不適切なものはど れか。

  1. 合同会社は、合同会社名義で特許権の出願ができる。これに対し有限責任事 業組合では、有限責任事業組合名義で特許権の出願をすることはできない。
  2. 合同会社は、合名会社、合資会社、株式会社に組織変更することができる。 これに対して有限責任事業組合は、このような組織変更ができず、当該有限責 任事業組合を解散し、新たに会社を設立しなければならない。
  3. 合同会社は社員名でも設立できる。これに対し有限責任事業組合は、名 以上の個人または法人の組合員が必要となる。ただし、組合員のうち過半数以 上は、日本の居住者または内国法人でなければならない。
  4. 合同会社は、配当額が当該利益の配当をする日における利益額を超える場合 には、当該利益の配当をすることができない。有限責任事業組合の組合財産 は、その分配の日における純資産額から組合員の出資の総額と300万円のいず れか小さい額を控除した額を超えて分配することができない。 ― 23― ◇M5(557―136) (

設問3

) 特定非営利活動法人の説明として、最も不適切なものはどれか。

  1. 特定非営利活動法人の役員として、理事名以上および監事名以上を置か なければならない。なお、役員のうち報酬を受ける者の数は役員総数の分の 以下でなければならない。
  2. 特定非営利活動法人は、特定非営利活動を目的としなければならないが、特 定非営利活動の事業に支障のない範囲で、その他の事業を行うことができる。
  3. 特定非営利活動法人は、毎事業年度初めのか月以内に、前事業年度の事業 報告書等ならびに役員名簿等を作成し、定款等とともに、その社員その他の利 害関係人が閲覧できるよう主たる事務所に備え置かなければならない。
  4. 特定非営利活動法人を設立するためには、定款、役員名簿、社員名以上の 名簿、設立趣旨書などの必要書類を添付した申請書を所轄庁に提出して、設立 の認証を受けなければならない。 ― 24― ◇M5(557―137)
▼ 解答・解説を見る

正解: 設問1 設問2 設問3

解答:設問1=イ、設問2=ウ、設問3=エ

〔リード〕合同会社(会社法)、有限責任事業組合(LLP、有限責任事業組合契約に関する法律)、特定非営利活動法人(NPO法人、特定非営利活動促進法)の比較問題。いずれも各設問で「最も不適切なもの」を選ぶ。

【設問1(共通点)=イが最も不適切】 合同会社とLLPの共通点に関する設問。LLPは内部自治が広く認められ、損益分配割合を出資割合と異なる定めにできること、設立時に出資全額の払込み・給付を要すること、公証人の定款認証が不要なことなど、合同会社と共通する。

  • ア(×=適切):債権者による計算書類・財務諸表の閲覧謄写請求(作成後一定期間内)ができる点は共通し、適切。
  • イ(○=最も不適切=正解):LLPの業務執行の意思決定について「重要な財産の処分・譲受けや多額の借財を総組合員の過半数の同意で決定できる」とする点が誤り。LLPの重要な業務執行の決定は原則**総組合員の同意(全員一致)**を要するのが基本であり、過半数でよいとする記載が不適切。
  • ウ(×=適切):いずれも設立時までに出資の全部の払込み・給付を要し、公証人の定款認証は不要、という点は適切。
  • エ(×=適切):出資価額と異なる損益分配割合を定款(合同会社)または総組合員の同意(LLP)で定められる点は適切。

【設問2(相違点)=ウが最も不適切】

  • ア(×=適切):合同会社は法人なので自社名義で特許出願できるが、LLPは法人格がないため組合名義で出願できない、という相違は適切。
  • イ(×=適切):合同会社は他の会社類型へ組織変更できるが、LLPは組織変更できず解散して新たに会社を設立する必要がある、という点は適切。
  • ウ(○=最も不適切=正解):「合同会社は社員1名でも設立できる。これに対しLLPは2名以上の組合員が必要」という前半は正しいが、「組合員のうち過半数以上は日本の居住者または内国法人でなければならない」という限定は誤り。LLPにそのような居住者・内国法人の過半数要件はない。
  • エ(×=適切):合同会社の配当規制(利益額を超える配当不可)とLLPの分配規制(純資産額から出資総額と300万円のいずれか小さい額を控除した額を超えて分配不可)の相違は適切。

【設問3(NPO法人)=エが最も不適切】

  • ア(×=適切):理事3名以上・監事1名以上を置き、報酬を受ける役員数は役員総数の3分の1以下、という点は適切。
  • イ(×=適切):特定非営利活動を目的としつつ、支障のない範囲でその他の事業を行える、という点は適切。
  • ウ(×=適切):毎事業年度初めの3か月以内に事業報告書等・役員名簿等を作成し主たる事務所に備え置く、という点は適切。
  • エ(○=最も不適切=正解):NPO法人の設立は所轄庁の認証を受けて成立する点や添付書類の趣旨は概ね正しいが、必要書類の要件(社員名簿の人数等)の記載が法の定めと一致せず誤りを含む。本設問では最も不適切なものとしてエが選ばれている。

よって 設問1=イ、設問2=ウ、設問3=エ

#会社の種類・設立#計算・配当#特許・実用新案#民法・契約・PL

← 経営法務の一覧へ戻る