第2章 財務諸表と会計基準

この章のねらい 財務・会計の土台となる「財務諸表の読み方」と「会計のルール(会計基準)」を身につける章です。 貸借対照表(B/S)と損益計算書(P/L)が「何を・どんな順番で・いくらで並べているか」が分かると、 後の章で学ぶ経営分析(財務指標)キャッシュフロー計算書連結会計が、 ぜんぶ「この2枚の表の上で起きている話」として整理できます。

過去問での出方:財務・会計の第1問〜第10問あたりに毎年3〜6問は本章の論点が並びます。 出方は大きく2タイプ。①知識型(引当金の要件、繰延資産の範囲、有価証券の評価方法など「基準の文章」を問う正誤問題)、 ②計算型(減価償却費・のれん・資産合計などを実際に計算させる)。 どちらもパターンが決まっていて反復が効くので、本章は財務・会計の中でも得点源にしやすい分野です。 なお会計基準は改正が続いており、本章では改正論点に「※現行基準では」と注記します。


2-0 この章の地図

まず「財務諸表の2枚看板(B/SとP/L)」を押さえ、そのあとで「各項目をいくらで載せるか(会計基準)」へ進みます。 資産 → 負債・純資産 → 個別論点、という順で、だんだん細かくしていきます。

2-1 貸借対照表 B/S の構造     … 資産・負債・純資産の「3つの箱」(左右がバランス)
   │
2-2 損益計算書 P/L の5つの利益  … 売上総利益→営業→経常→税引前→当期純(★頻出)
   │
2-3 資産の会計               … 棚卸資産・固定資産・減価償却・減損(計算が多い)
   │
2-4 負債・純資産の会計         … 引当金・繰延資産・株主資本(要件の暗記が効く)
   │
2-5 個別論点                 … のれん・リース・金融商品・収益認識・外貨換算

💡 全体像のコツ:B/S=「決算日という一瞬の"財産の記念写真"(ストック)」、 P/L=「1年間の"もうけの動画"(フロー)」。まずこの対比を頭に入れると迷いません。


2-1 貸借対照表(B/S)の構造

いちばん短い説明

貸借対照表(Balance Sheet:B/S) は、決算日時点で会社が 「どうやってお金を集め(右側)、それを何に使っているか(左側)」を一覧にした表です。

┌─────────────┬─────────────┐
│  【資産の部】   │  【負債の部】         │ ← 他人資本(返す義務あり)
│ (お金の使い道)  │  (借りたお金)        │
│              ├─────────────┤
│              │  【純資産の部】        │ ← 自己資本(返さなくてよい)
│              │  (株主のお金・稼ぎ)    │
├─────────────┼─────────────┤
│  資産合計     =   負債+純資産 合計     │ ← 左右は必ず一致(バランス)
└─────────────┴─────────────┘
  • 左側(借方)=資産:現金・売掛金・商品・建物など、会社が持っている財産。
  • 右側(貸方)=負債+純資産:そのお金をどこから調達したか
  • 左右の合計は必ず一致します(だから「バランスシート」)。

資産・負債は「1年基準」で並べ替える

B/Sの項目は、流動(1年以内)か固定(1年超)かで区分します。これを ワン・イヤー・ルール(1年基準) と呼びます。

区分 中身の例
流動資産 現金預金・売掛金・受取手形・有価証券(売買目的)・棚卸資産・前払費用
固定資産 有形固定資産(建物・機械)/無形固定資産(のれん・ソフトウェア)/投資その他の資産(投資有価証券・長期貸付金)
繰延資産 株式交付費・創立費など(→2-4)
流動負債 買掛金・支払手形・短期借入金・1年内返済の債務
固定負債 長期借入金・社債・退職給付引当金
純資産 資本金・資本剰余金・利益剰余金・自己株式(控除)など(→2-4)

⚠️ 混同注意:「累計額」「貸倒引当金」は"マイナスの資産" B/Sには控除項目(マイナスで効く項目)が混ざります。 - 減価償却累計額 … 建物などから差し引く(=正味の帳簿価額にする) - 貸倒引当金 … 売掛金などの債権から差し引く(=取り立て不能見込みを反映) - 自己株式 … これは資産ではなく純資産のマイナス(株主資本の控除項目) 「資産合計」を計算するときは、控除項目をきちんと引き、自己株式は資産に入れないのがポイントです。

計算のつまずき:残高勘定から「資産合計」を出す

H23 第1問は、決算で作る閉鎖残高勘定(残高勘定)の借方・貸方から、 B/Sの「資産合計」を計算させる問題でした。ここに上の"控除項目"の罠がすべて詰まっています。

解き方の手順

  1. 借方に並ぶ資産と繰延資産を全部足す 現金預金2,400,000+売掛金12,000,000+有価証券7,000,000+繰越商品1,500,000+前払保険料600,000+建物36,000,000+長期貸付金8,200,000+株式交付費1,000,000 = 68,700,000円 (※株式交付費は繰延資産で、資産の部に含めます)
  2. 控除項目を引く 貸倒引当金600,000+建物減価償却累計額8,100,000 = 8,700,000円 を差し引く。
  3. 資産合計 = 68,700,000 − 8,700,000 = 60,000,000円 (自己株式6,000,000は純資産のマイナスなので、資産合計に加えも引きもしない)

📝 過去問はこう出る(H23 第1問) 正解は イ 60,000,000円。 ・エ 74,700,000円は「残高勘定の借方合計(自己株式・株式交付費も含む総額)」であって、資産合計ではない、という引っかけ。 ・減価償却累計額や貸倒引当金の控除を忘れると過大になります。 控除項目を引く/自己株式は資産に入れない――この2点が急所です。 → H23 第1問


2-2 損益計算書(P/L)の「5つの利益」

いちばん短い説明

損益計算書(Profit and Loss Statement:P/L) は、1年の 「もうけ(利益)が、どういう段階を経て生まれたか」を上から順に示す表です。 ポイントは、利益が5段階に分かれていること。それぞれ「何を差し引いた後の利益か」で意味が変わります。

5つの利益は「上から順に引いていく」

  売上高
 −売上原価
 ──────────
 ① 売上総利益(粗利)           … 商品そのものの"もうけ"
 −販売費及び一般管理費
 ──────────
 ② 営業利益                   … 本業のもうけ
 +営業外収益 −営業外費用       … 受取利息・支払利息など財務の損益
 ──────────
 ③ 経常利益                   … 本業+財務の"通常の実力"(★最重要)
 +特別利益 −特別損失          … 固定資産売却損益・災害損失など臨時のもの
 ──────────
 ④ 税引前当期純利益
 −法人税等                    … 税金
 ──────────
 ⑤ 当期純利益                 … 最終的に株主に残るもうけ
利益 何を測っているか ここに入る代表的な項目
① 売上総利益 商品・製品そのものの利幅(粗利) 売上高 − 売上原価
② 営業利益 本業のもうけ 販管費(人件費・広告費・減価償却費など)
③ 経常利益 本業+財務を含めた通常の実力 受取利息・受取配当金/支払利息・為替差損益(→2-5)
④ 税引前当期純利益 臨時分も含めた税引前 固定資産売却損益・減損損失・災害損失など特別項目
⑤ 当期純利益 最終的な純もうけ 法人税・住民税・事業税

💡 覚え方(どの費用がどの段階か) - 売上原価 → ①で引く。「棚卸資産の評価損」も原則ここ(売上原価)です(→2-3)。 - 減価償却費 → ふつうは②の手前(販管費/製造原価)。 - 支払利息・受取利息・為替差損益 → ②の後の営業外(=③経常利益に効く)。 - 固定資産売却損益・減損損失 → ④の手前の特別項目(=③には影響しない)。 「その項目は本業か・財務か・臨時か」を仕分ければ、どの利益で効くか自動的に決まります。

⚠️ 混同注意:経常利益と当期純利益 経営分析では経常利益(通常の実力)がよく使われます。 「たまたま土地を売って出た利益(特別利益)」は経常利益には含まれず、税引前当期純利益で初めて乗ってきます。 本業の調子を見たいなら営業利益・経常利益、と覚えておきましょう。


2-3 資産の会計(棚卸資産・固定資産・減価償却・減損)

ここからは「その資産を、B/Sにいくらで載せるか」という評価のルールです。計算問題が集中する山場です。

(1)棚卸資産(在庫)の評価

売れ残った在庫(商品・製品・原材料)をいくらで次期に繰り越すか、という論点です。

  • 評価方法個別法・先入先出法・平均原価法・売価還元法などが認められています。
  • 売価還元法:取扱品種が非常に多く、個々の原価管理が難しい小売業・卸売業で使う、値入率の類似性でグループ分けする方法。
  • 期末の評価(低価法):期末の正味売却価額が取得原価より下がっていたら、正味売却価額まで簿価を切り下げます(収益性の低下を反映)。
  • このとき生じる評価損(簿価切下額)は、原則として売上原価に計上します(=①売上総利益を押し下げる)。
  • ※臨時かつ多額のときに特別損失とする例外はありますが、「原則は売上原価」が基本です。

📝 過去問はこう出る(R01 第6問) 正解は :「売価還元法は取扱品種が極めて多い小売業等で用いる」――これが適切。 ・「個別法は認められない」は誤り(個別法も認められる)。 ・「評価損は原則として営業外費用または特別損失」は誤り(原則は売上原価)。 → R01 第6問

(2)固定資産と減価償却

建物・機械などの有形固定資産は、使ううちに価値が減るので、取得原価を使用期間にわたって費用に配分します。これが減価償却です。

主な方法

方法 計算の考え方 特徴
定額法 (取得原価−残存価額)÷耐用年数、毎年同額 単純・分かりやすい
定率法 期首帳簿価額×償却率、初めは大きく後で小さく 早期に多く費用化
生産高比例法 使った量に比例 走行距離など向き

(3)200%定率法(計算頻出)

いまの実務・試験でよく出るのが 200%定率法 です。 「定額法の償却率を2倍(200%)にした率」で定率法を行い、最後は取り残しが出ないよう調整します。

用語(ここだけ押さえる) - 償却率 = 定額法償却率(=1÷耐用年数)× 200% - 償却保証額 = 取得原価 × 保証率(毎年これを下回ってはいけない最低ライン) - 改定償却率 … 通常計算が保証額を下回った年から、期首簿価(改定取得価額)× 改定償却率に切り替える

解き方の手順(R05 第3問:取得原価300,000円・耐用年数5年・保証率0.10800・改定償却率0.500)

  1. 償却率=(1÷5)×200%=0.2×2=0.4
  2. 償却保証額=300,000×0.10800=32,400円(これが毎年の最低ライン)
  3. 各年、期首簿価×0.4 を計算し、簿価を減らしていく
年度 期首簿価 期首簿価×0.4 判定
X1 300,000 120,000 → 簿価180,000
X2 180,000 72,000 → 簿価108,000
X3 108,000 43,200 → 簿価64,800
X4 64,800 25,920 32,400未満 → 切替
  1. X4年度は 64,800×0.4=25,920円 が保証額32,400円を下回るので、改定に切替。 X4期首簿価64,800 × 改定償却率0.500 = 32,400円 が、その年の減価償却費。

📝 過去問はこう出る(R05 第3問) 正解は エ 32,400円。 ・イ 25,920円は「切替前の定率法計算値」で、保証額を下回るため採用しない、という引っかけ。 通常計算が償却保証額を下回ったら改定償却率に切り替える――この手順を知っていれば解けます。 → R05 第3問

💡 除却・売却の計算:固定資産を売ったり捨てたりしたときは、 まずその時点の帳簿価額(取得原価−減価償却累計額)を求め、 売却額との差が固定資産売却損益(P/Lの特別項目)になります。 「まず簿価を出す」が共通の第一歩です(R03 第3問・除却損、H30 第2問・売却損益)。

(4)減損会計

減損とは、固定資産の収益力が落ちて、投資額を回収できなくなったとき、 B/S上の帳簿価額を回収可能な水準まで思い切って引き下げる処理です。手順が決まっています。

① 減損の兆候         … 業績悪化など"あやしいサイン"があるか
   ↓(兆候あり)
② 減損損失の認識判定    … 帳簿価額 と「割引前」将来キャッシュ・フロー総額 を比較
                       割引前CF<帳簿価額 なら「認識する」
   ↓(認識する)
③ 減損損失の測定       … 帳簿価額 を「回収可能価額」まで減額
                       減損損失 = 帳簿価額 − 回収可能価額
  • 回収可能価額正味売却価額(売ったらいくら)と 使用価値(使い続けた場合の割引後CF)の、高い方
  • ②の判定は「割引前」CF、③の測定は「回収可能価額(割引後を含む)」 ――ここが最大の引っかけです。

📝 過去問はこう出る(H23 第3問) 「減損損失を算定する式」を選ぶ問題。正解は イ:帳簿価額 − 回収可能価額。 ・エ「帳簿価額 − 割引前将来CF」は、損失額の算定式ではなく②認識判定の比較に使う値。 ・「帳簿価額 − 時価」も誤り(回収可能価額は時価と使用価値の高い方で、単純な時価控除ではない)。 判定は割引前・測定は回収可能価額をセットで覚えましょう。 → H23 第3問


2-4 負債・純資産の会計(引当金・繰延資産・株主資本)

(1)引当金

引当金とは、「将来の費用・損失に備えて、当期のうちに費用計上しておく」仕組みです。 計上できる要件(企業会計原則注解18)が明確に決まっており、正誤問題で頻出です。

引当金の4要件(すべて満たす必要あり) 1. 将来の特定の費用または損失であること 2. その発生が当期以前の事象に起因すること 3. 発生の可能性が高いこと 4. その金額を合理的に見積ることができること

B/Sでの表示場所 - 原則は負債の部(例:退職給付引当金・修繕引当金・商品保証引当金)。 - ただし貸倒引当金のような評価性引当金は、対応する資産(売掛金など)から控除する形で資産の部に表示。 - したがって表示場所は「負債の部または資産の部」となります。

📝 過去問はこう出る(H20 第5問) 空欄Aは引当金の要件(=「当期以前の事象に起因し、発生可能性が高く、合理的に見積れる」)、 空欄Bは表示場所。正解は (A=上記要件・B=負債の部又は資産の部)。 ・「既に支払が完了し役務提供を受けた…将来発現」はA群のダミーで、前払費用の説明(引当金ではない)という引っかけ。 → H20 第5問

債務性引当金と非債務性引当金(性格による分類)

分類 中身
債務性引当金 特定の相手への支払義務(債務)を伴う 退職給付引当金、商品保証引当金
非債務性引当金 支払義務は伴わないが将来の費用配分 修繕引当金
(参考)評価性引当金 資産のマイナス評価。負債性引当金ではない 貸倒引当金

📝 過去問はこう出る(R03 第5問) 「非債務性引当金」を選ぶ問題。正解は イ 修繕引当金(特定の相手への支払義務がない)。 ・退職給付引当金・商品保証引当金は債務性、貸倒引当金はそもそも評価性(負債性引当金ではない)。 → R03 第5問

(2)繰延資産

繰延資産とは、「すでに支払い済みで、その効果が将来にもおよぶ費用」を、 資産として計上して数年で費用化するもの。計上できる項目は5つに限定されています。

💡 繰延資産の5項目株式交付費・社債発行費・創立費・開業費・開発費 (※現行の「繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い」で認められる範囲。任意計上で、原則は費用処理も可)

  • 研究開発費は繰延資産にできません(発生時に費用処理。研究開発費等に係る会計基準)。
  • 「社債発行差金」という項目も現行制度では存在しません(社債は払込金額で計上)。

📝 過去問はこう出る(H20 第3問) 繰延資産に計上できる組み合わせを選ぶ問題。正解は イ:株式交付費 と 創立費。 ・研究開発費(費用処理)、社債発行差金(現行制度で存在しない)は繰延資産にできないという引っかけ。 → H20 第3問 / 繰延資産は R07 第6問 でも問われています。

(3)純資産(株主資本)と株主資本等変動計算書

純資産の部は、ざっくり「株主が出したお金」と「稼いで貯めたお金」に分かれます。

【純資産の部】
 ├ 株主資本
 │   ├ 資本金
 │   ├ 資本剰余金(資本準備金・その他資本剰余金)
 │   ├ 利益剰余金(利益準備金・その他利益剰余金〔任意積立金・繰越利益剰余金〕)
 │   └ 自己株式(△:控除)
 ├ 評価・換算差額等(その他有価証券評価差額金 など)
 └ 新株予約権
  • 資本剰余金=元手(株主の払込)由来利益剰余金=稼ぎの蓄積。この線引きが基本です。
  • 自己株式は株主資本のマイナス(控除項目)。

純資産が1年間でどう動いたかを示すのが 株主資本等変動計算書 です。 当期末残高 = 当期首残高 + 当期変動額(増資・剰余金の配当・当期純利益・積立金の積立など)で各欄を埋めます。

📝 過去問はこう出る(H25 第3問/H28 第5問) H25 第3問は株主資本等変動計算書から当期末の純資産合計を求める計算問題。 「期首+当期純利益などの変動=期末」という関係で欄を埋めるのがコツ。 別途積立金の積立は利益剰余金の中の振替にすぎず純資産合計は変わらない、当期純利益は純資産を増やす、という点が急所です。 → H25 第3問H28 第5問

※純資産の変動と当期純損益の関係(期末純資産−期首純資産−増資等=当期純利益)は H19 第1問 でも出題。


2-5 個別論点(のれん・リース・金融商品・収益認識・外貨換算)

基準ごとに「ひとことの結論」を押さえれば正誤問題で失点しません。

(1)のれん

のれんとは、他社を買収したときに払った金額のうち、 受け入れた純資産(時価)を超えて支払った差額。=相手の「超過収益力(ブランド・顧客基盤など目に見えない稼ぐ力)」への対価です。

のれん = 買収価額(取得原価) − 受け入れた純資産の"時価"評価額

計算の手順(H25 第6問:現金620,000千円で買収)

  1. 受け入れる資産を時価に評価し直す:売掛金150,000+棚卸資産450,000+備品220,000 = 820,000千円
  2. 負債(時価=簿価)を引く:借入金300,000 → 純資産の時価 = 820,000−300,000 = 520,000千円
  3. のれん = 620,000 − 520,000 = 100,000千円(正ののれん)
  • 買収価額が純資産時価を下回る負ののれん
  • 負ののれんは発生した期の特別利益(負ののれん発生益)として一括計上(※特別損失ではない)。

📝 過去問はこう出る(H25 第6問・R03 第4問) H25 第6問の正解は イ のれん100,000千円(資産を時価に直してから差額を計算するのがカギ)。 R03 第4問は正誤問題で、のれんは日本基準では 20年以内に規則的に償却(※現行の日本基準)。 ・「5年以内で償却」は誤り(繰延資産の規定との混同を狙った引っかけ)。 ・「負ののれんは特別損失」も誤り(特別利益)。 → H25 第6問R03 第4問

(2)リース会計

リースは大きく2種類。ファイナンス・リースオペレーティング・リースかで処理が変わります。

種類 中身 会計処理
ファイナンス・リース 途中解約できず、資産をほぼ買ったのと同じ実態 売買取引に準じて処理(資産・債務を計上し、減価償却する)
オペレーティング・リース 上記以外(ふつうの賃貸借) 賃貸借取引に準じて処理(支払リース料を費用計上)
  • ファイナンス・リースのリース債務は、支払期限で流動・固定に区分(ワン・イヤー・ルール)。
  • 解約不能のオペレーティング・リースの未経過リース料は原則注記する。

📝 過去問はこう出る(R02 第7問) 「最も不適切なもの」を選ぶ問題。正解(=誤り)は : 「ファイナンス・リース債務は支払期限にかかわらず固定負債」――これが誤り。 正しくは支払期限により流動・固定に区分します。 → R02 第7問 / リースは H28 第4問H30 第6問 でも頻出。

(3)金融商品(有価証券の評価)

有価証券は、保有目的別に評価方法が変わります(金融商品会計基準)。ここは表で丸暗記が効きます。

保有目的 評価 評価差額の扱い B/S表示
売買目的有価証券 時価 当期の損益(P/L) 流動資産
満期保有目的の債券 取得原価(差額が金利調整なら償却原価法 投資その他の資産
子会社株式・関連会社株式 取得原価 投資その他の資産
その他有価証券 時価 純資産の部(その他有価証券評価差額金) 投資その他の資産
  • 時価評価するのは「売買目的」と「その他」。子会社・関連会社株式は取得原価
  • 評価差額の行き先が最大の論点:売買目的はP/L(当期損益)、その他は純資産直入。ここを入れ替えた選択肢が引っかけ。

📝 過去問はこう出る(R02 第3問・R06 第3問) R02 第3問の正解は :子会社・関連会社株式は取得原価。 ・「その他有価証券の評価差額を当期損益に計上」は誤り(→純資産)。 ・「売買目的の評価差額を純資産に計上」も誤り(→当期損益)。 R06 第3問(金融商品会計基準)でも、時価評価の対象や償却原価法の理解が問われます。 → R02 第3問R06 第3問 / その他有価証券評価差額 H21 第3問

(4)収益認識(※現行基準では「収益認識に関する会計基準」)

いつ・いくらの売上を計上するか」のルールです。現行基準では 履行義務(顧客への約束)を果たした(充足した)ときに、その分の収益を認識します。

押さえどころ - 原則は引渡し等で認識:割賦販売は引き渡した時点、試用販売は買取りの意思表示をした時点、予約販売は引き渡した時点(予約金は前受金にすぎない)。 - 契約資産と契約負債(現行基準の新しい科目) - 契約資産:収益は認識したが、対価の請求権がまだ無条件でない(残りの履行が条件)とき計上する権利。 - 契約負債:先に対価を受け取った(前受)とき計上する義務。 - 無条件に請求できる状態になれば、契約資産は売掛金へ振り替える。

仕訳の例(R05 第2問:商品B25,000円とC35,000円。両方引き渡し後に一括請求。B・Cは別々の履行義務)

  • 8/12(Bを引渡し。Bの履行義務を充足。ただし請求はC引渡し後という条件付き)
  • (借)契約資産 25,000 (貸)売上 25,000
  • 8/25(Cを引渡し。両方の引渡し完了で請求権が無条件に確定)
  • (借)売掛金 60,000 (貸)契約資産 25,000/売上 35,000

📝 過去問はこう出る(R05 第2問・R04 第3問) R05 第2問の正解は :Bの引渡しでは請求が条件付きなので契約資産で計上し、 C引渡しで契約資産→売掛金へ振り替える、という流れ。 ・8/12を契約負債にするのは誤り(契約負債は"前受"のときの科目)。 R04 第3問は認識タイミング(割賦=引渡時、試用=買取意思表示時、予約=引渡時)。 → R05 第2問R04 第3問 / 収益認識 R03 第6問

(5)外貨換算

外貨建ての取引を、円に直す(換算する)ときのルールです。

  • 為替差損益(決済・換算で生じる差)は、原則 営業外収益/営業外費用(=③経常利益に効く)。
  • 二取引基準:外貨建取引の発生時と決済時を別個の取引とみなし、為替差損益を独立して認識する考え方(※「帳簿を二通貨で作る」ことではない)。
  • 在外支店:本店と同じ会計単位として、原則取引時・取得時レートなどで換算。 一方 在外子会社決算日レート法(決算日レートで一括換算)。ここは支店と子会社で扱いが逆になりやすい引っかけ。

📝 過去問はこう出る(R04 第4問) 正解は :為替差損益は原則営業外収益または営業外費用。 ・「在外支店を決算日レートで一律換算」は誤り(それは在外子会社の方)。 ・「二取引基準=帳簿を二通貨で作成」も誤り(発生時と決済時を別取引とみなす考え方)。 → R04 第4問 / 外貨建取引の振当処理 H30 第19問


この章のまとめ(試験直前チェック)

  • B/S=決算日の"財産の記念写真"(ストック)、P/L=1年間の"もうけの動画"(フロー)
  • ☐ B/Sは1年基準(ワン・イヤー・ルール)で流動/固定を区分
  • ☐ 資産合計の計算:控除項目(減価償却累計額・貸倒引当金)を引く/自己株式は資産に入れない
  • ☐ P/Lの5つの利益:売上総利益→営業利益(本業)経常利益(本業+財務)→税引前→当期純利益
  • ☐ 支払利息・為替差損益=営業外(経常に効く)/固定資産売却損益・減損=特別(経常に効かない)
  • ☐ 棚卸資産の評価損は原則 売上原価(営業外・特別ではない)/売価還元法は小売業向け
  • 200%定率法:償却率=(1÷耐用年数)×200%。通常計算が償却保証額を下回ったら改定償却率に切替
  • 減損:②認識判定は割引前将来CF、③測定は帳簿価額−回収可能価額(正味売却価額と使用価値の高い方)
  • 引当金の4要件(特定の費用/損失・当期以前の事象・可能性高い・合理的に見積れる)。表示は負債の部又は資産の部
  • 修繕引当金=非債務性、退職給付・商品保証=債務性、貸倒=評価性
  • 繰延資産は5項目(株式交付費・社債発行費・創立費・開業費・開発費)。研究開発費は不可
  • ☐ 純資産:資本剰余金=元手/利益剰余金=稼ぎ、自己株式は控除。変動計算書は期首+変動=期末
  • のれん=買収価額−純資産の時価。日本基準は20年以内償却(※現行)、負ののれんは特別利益
  • ファイナンス・リース=売買処理(債務は流動・固定に区分)/オペレーティング=賃貸借処理
  • ☐ 有価証券:時価評価は売買目的(差額P/L)とその他(差額 純資産)/子会社・関連会社は取得原価
  • ☐ 収益認識(※現行):履行義務の充足で認識契約資産=条件付きの請求権/契約負債=前受
  • ☐ 外貨:為替差損益は営業外在外支店=取引時レート等/在外子会社=決算日レート法

この章に対応する主な過去問

年度・問 論点 リンク
H23 第1問 B/Sの資産合計(控除項目・自己株式) 問題
R01 第6問 棚卸資産の評価(売価還元法・評価損) 問題
R05 第3問 200%定率法による減価償却費 問題
H23 第3問 有形固定資産の減損損失の算定式 問題
H20 第5問 引当金の計上要件と表示場所 問題
R03 第5問 非債務性引当金(修繕引当金) 問題
H20 第3問 繰延資産の範囲(5項目) 問題
H25 第3問 株主資本等変動計算書(当期末純資産) 問題
H25 第6問 会計上ののれんの計算 問題
R03 第4問 のれん(償却期間・負ののれん) 問題
R02 第7問 リース取引の借手の会計処理 問題
R02 第3問 有価証券の期末評価(保有目的別) 問題
R06 第3問 金融商品に関する会計基準 問題
R05 第2問 収益認識(契約資産・履行義務) 問題
R04 第3問 収益認識のタイミング 問題
R04 第4問 外貨建取引(為替差損益・換算) 問題

次章予告 ▶ 第3章「経営分析(財務指標)」 本章で読めるようになったB/SとP/Lを"道具"として使い、会社の収益性・安全性・効率性を 数字で診断します。売上高利益率・総資本回転率・流動比率・自己資本比率など、 中小企業診断士の実務にも直結する財務指標を、計算手順つきで攻略します。