マイナポータルアプリが「マイナアプリ」になった話 〜アプリはひとつになったのに、なぜカードをかざす手間は減らないのか

2026年8月25日、「マイナポータルアプリ」が「マイナアプリ」という名前になりました(デジタル庁)。
それまで別のアプリだった「デジタル認証アプリ」の機能もここに統合されて、アイコンも水色にうさぎのマークから、ピンクに桜のマークへ変わっています。
中小企業のDX支援をやっていると、マイナンバーカードがらみの本人確認の話は本当によく出てくるので、この手のアップデートはつい追いかけてしまうわけです。今回はその話を書きます。
そもそも、なぜアプリが2つあったのか
まず整理しておくと、この2つのアプリは役割が違っていました。
「マイナポータルアプリ」は、私たち個人が確定申告や年金記録の確認、引っ越し手続きなど、行政サービスを使うための入り口です。
一方の「デジタル認証アプリ」は、2024年6月24日に公開されたもので、行政機関や民間企業が自分たちのWebサービスに組み込むための、本人確認の部品のようなアプリでした。ネット証券の口座開設や携帯電話の契約時などに、企業側がこれを導入する形です。
つまり片方は「自分が行政手続きをするため」、もう片方は「よその会社のサービスにログイン・本人確認するため」という、似ているようで別物のアプリだったわけです。
それが2026年8月25日、マイナアプリという1本にまとまりました。デジタル認証アプリ自体はこの日をもって提供を終え、機能はマイナアプリに引き継がれています。
良くなった点(1)〜アプリがひとつにまとまった
まずシンプルに、スマホに2つ入れておく必要がなくなりました。
これは地味なようでいて、けっこう大きいと思っています。どちらも「マイナンバーカード」「認証」という似た名前で、お客さんに説明するときも「あ、それはマイナポータルの方で」「いや、それはデジタル認証アプリの方で」と、いちいち区別して案内する場面がありました(^^;
1本になったことで、少なくとも「どっちのアプリだっけ」という混乱はなくなります。
良くなった点(2)〜他サービスの本人確認がアプリの中で完結するようになった
もうひとつは、行政・民間サービスのログインや本人確認が、マイナアプリの中で完結するようになったことです。
以前は「このサービスはデジタル認証アプリ経由」「こっちはマイナポータルアプリ経由」と、サービスによって入り口が分かれていました。それが同じアプリの中の機能として並ぶようになったので、利用者から見た体験としては素直に一本化されたと言えます。
このあたりは、デジタル庁が「利用者から見た分かりやすさ」を優先した判断だと思いますし、率直に評価したいところです。
でも、いちばん面倒なところは変わっていない
とはいえ、です。
実際に使ってみると、認証のたびに暗証番号を入れて、カードをスマホの背面にかざして読み取らせる、という動作そのものは変わっていません。
アプリがひとつになっても、「その都度カードを取り出して、かざす」という手間は残ったままなわけです。これが正直な感想です。
もちろん、アプリを統合するだけでもかなりの開発・調整コストがかかっていると思いますし、それ自体にケチをつけたいわけではありません。ただ、利用者にとっていちばんストレスなのは「アプリが2つあること」より「カードを財布から出す手間」の方だったんじゃないかなと。
アプリだけで認証できへんのか?
なぜそうなるのか 〜カードという物理的な鍵に依存する構造
これはたぶん、UI(見た目の操作画面)の統合と、認証の仕組みそのものが別レイヤーの話だからだと思います。
マイナアプリでの本人確認は、基本的にマイナンバーカードのICチップに入っている電子証明書を、スマホのNFC機能で読み取る方式です。アプリの中身がどれだけ整理されても、「ICチップという物理的な鍵」を毎回読み取りに行く構造自体は変わっていません。
なので今回のアップデートは、あくまで入り口の整理であって、認証の仕組み自体を変えるものではなかった、というのが私の理解です。
スマホ搭載が進めば、この手間は消えるのか
ここが今回いちばん考えたかったところです。
実は「カードを持ち歩かなくても本人確認ができる」仕組み自体は、すでに一部始まっています。マイナンバーカードの電子証明書をスマホ本体に搭載する「スマホ用電子証明書搭載サービス」で、Android版は2023年5月11日から始まっていました。
そこからさらに進んで、2025年6月24日には「iPhoneのマイナンバーカード」が始まっています。これは単に証明書を積むだけでなく、氏名・生年月日・顔写真などの「属性証明機能」も備えていて、Face IDやTouch IDの生体認証だけで、口座開設や年齢確認といった、これまでカード実物の提示が必要だった場面に対応できるとのことです。
Androidはここで一歩遅れていて、この属性証明機能つきの「Androidのマイナンバーカード」への刷新は2026年秋頃を予定していると発表されています。
つまり整理すると、こういう順番になっています。
- 2023年5月:Androidにマイナンバーカードの電子証明書だけ搭載できるようになる
- 2024年6月:デジタル認証アプリで、民間サービスの本人確認が楽になる
- 2025年6月:iPhoneで属性証明機能つきの「マイナンバーカード」が使えるようになる(カード提示なしで本人確認・年齢確認)
- 2026年8月:マイナポータルアプリとデジタル認証アプリが「マイナアプリ」に統合される
- 2026年秋:Androidにも属性証明機能が追加される予定
こうして時系列で並べると、今回の「マイナアプリ」統合は、この一連の流れの通過点のひとつにすぎないんだなと分かります。「カードをかざす手間」が本当になくなるとしたら、それはアプリの統合そのものより、この属性証明機能がAndroidにも行き渡ってからの話になりそうです。
行政デジタル全体への見方
中小企業診断士としてこの手のニュースを見るとき、つい「これでお客さんの手続きは何分短縮できるか」という物差しで見てしまいます(←職業病)。
その物差しで言うと、今回のマイナアプリ化は「分かりやすさ」への投資であって、「時間短縮」への投資はまだこれから、という段階だと思います。もちろん、順番としてはUIを整理してから中身の仕組みを変えていく、というのは間違ったやり方ではないですし、一足飛びに全部変えようとして混乱するよりは堅実なんじゃないかとも思います。
ただ正直なところ、アプリの見た目を先に揃えて、面倒な部分は後回し」という進め方は、行政のデジタル化ではよく見る構図やなあ、という気もしています。
マイナンバーカードの保有率は2026年2月末時点で81.7%、約1億174万枚に達しているそうです(BCN+R)。これだけ普及したからこそ、次は「持たせる」から「使わせる」段階に入ってきているわけで、そこでの体験の良し悪しが、これから数年の評価を分けるんじゃないかと思っています。
Androidの属性証明機能が今秋どこまで浸透するか、引き続き追いかけてみようと思います。
そんなところで。
出典

