KSK2のトラブルを整理してみた〜稼働から6週間、今度はe-Taxに「不審な通信」

2026年11月4日、e-Taxが緊急メンテナンスに入りました。
理由は「不審な通信を検知」したため。国税庁のお知らせには、終了時期は改めて案内するとだけ書かれています。
またか。。と思ってしまいましたが、今回はバグとかトラブルではなくて、不審な通信ということで不正アクセスがあったのでしょうね。

まず整理〜KSK2とe-Taxは同じものではない
KSK2は、国税の新しい基幹システムです。税務署の中で申告や納税の情報を扱う、いわば本体ですね。
e-Taxは、私たちが申告や納付で使う入口です。
今回の「不審な通信」がKSK2と関係あるのかは、分かっていません。 11月4日のお知らせに、KSK2への言及はありません。
時期が近いのでつなげて語りたくなりますが、そこは分けて見ておくのがよさそうです。
9月24日の稼働初日から、トラブルは同時多発だった
e-Taxを9月19日から約5日間止めて、9月24日に新システムへ切り替えました。
ところが初日から、次のようなことが起きています。
| 発生 | 内容 | 状況 |
|---|---|---|
| 9/24 | 税務署窓口で現金領収や納税証明書の交付が遅延 | 解消の発表なし |
| 9/24 | マイナポータル経由でe-Taxにログインできない | 9/25 8:30時点で解消 |
| 9/24 | ネットバンキング納付の完了表示の不具合 | 9/25 8:30時点で解消 |
| 9/24 | ネットバンキングで手数料を納付できない | 10/5に解消と更新 |
| 9/24 | e-Taxソフトのバージョンアップが正しく認識されない | 9/26 13時頃に修正版を公開 |
| 9/24〜25 | 他人の贈与税申告書等が閲覧できる状態 | 9/25に機能停止、10/2に公表 |
| 9/25 | e-Taxの一部機能が使えない | 9/27に解消と更新 |
| 9/28 | e-Gov経由のネットバンキング納付ができない | 9/30に解消と更新 |
| 10/6掲載 | 引き落とし済みなのに「振替不能」等と誤表示 | 10/13に改修完了 |
| 10/30 | e-Taxに接続しづらい、受信通知の格納が遅れる | 同日解消 |
| 11/4 | 不審な通信を検知し、e-Taxを緊急停止 | 11/5時点で再開の案内なし |
こう並べると、えらい数やな。。と思います。
もちろん、大規模システムの切り替えで初期トラブルをゼロにするのは、現実にはかなり難しいわけです。私も13年ERPコンサルタントをやっていたので、本番切り替えの怖さは少し想像がつきます。
なお、10月22日に国税庁ホームページが一時停止しましたが、こちらはPHPの脆弱性対応とのこと。これまでKSK2のせいにするのは、さすがに気の毒ですね(^^;
一番重いのは、贈与税の申告情報が見えてしまった件
個人的に一番重いと思うのが、これです。
e-Taxのマイページで、本人以外の贈与税申告書等が閲覧できる状態になっていました。報道をまとめたpiyologによると、期間は次の2回です。
- 9月24日 8時30分〜24時
- 9月25日 4時〜15時58分
合わせて約27時間です。 発覚のきっかけは、利用者からの連絡でした。
対象は79人分の申告で、本人以外の19人が閲覧した可能性があるとのこと。贈与者や関与税理士まで含めると、計203人分の個人情報に及びます。
国税庁は「9月24日のe-Taxのシステム改修の際に生じた不具合」と説明し、19人には保秘と消去を依頼したそうです。
10月16日には、贈与税関係情報のうち、更正・決定の情報などの提供を「当分の間」見合わせると発表しました。再開日は示されていません。
実は一番長引いているのが、納税証明書
派手さはないのですが、中小企業に一番効きそうなのはここだと思います。
国税庁の案内は10月19日に更新され、題名から「遅延」の文字が消えました。
ただ本文を読むと、窓口の手続きは今も「通常より時間を要する場合があります」のまま。システムの稼働についても「引き続き、改善に向けて取り組んでいます」とあります。
e-Taxで請求しても時間がかかる場合があり、電子交付を希望しても書面になることがあるとのこと。
名前は変わったけど、解消したとは書いていないわけです。
日経クロステックは、1カ月たっても遅れが続き、国税労組が解決を求めていると10月26日に報じました。
現場への影響も出ていて、スタンダード会計事務所のコラムでは、住宅ローンに必要な書類を出せず、お客様が強く怒る事態があったと書かれています。
融資でも入札でも、納税証明書は「急に必要になる」書類です。これはなかなか厳しいなあ、と思います。
そもそも、どれくらいの規模のシステムなのか?
- 2020年の開発契約は、アクセンチュア、NTTデータ、BSD、日本IBM、野村総合研究所の5社が受注
- 契約群の表示額の合計は、約558億円(全体の最終実績額ではないとのこと)
- 2025年度当初のKSKシステム予算は、単年度で約473億円
開発費の全体像を、この数字だけで言い切ることはできませんが、これだけの規模でも止まらずに切り替えるのは、やはり大変なんだと思います。
11月10日の納付期限が目の前にある
話を11月4日に戻します。
時事通信によると、緊急メンテナンスは午前11時40分ごろから。これまでに納税者情報の流出などは確認されていない、と国税庁は説明しています。
もちろん、「不審な通信」が攻撃だったのかどうかも、今のところ分かりません。不正アクセスがあったと発表されたわけではないので、ここは冷静に見ておきたいところです。
実務上の問題は、期限です。10月支給分の源泉所得税は、原則の納期限が11月10日。私が確認した11月5日時点のお知らせには、期限延長の案内も代替手段の案内もありません。
e-Taxが使えないときの現実的な手段は、納付書で金融機関の窓口に行くことになりそうです。国税庁も、現金なら金融機関の窓口で納付できると案内しています。税務署の窓口は時間がかかる場合があるので、金融機関の方が無難かもしれません。
あと、このタイミングでe-Taxを装う不審メールにも注意が必要ですね。国税庁も10月16日に注意喚起を更新しています。「メンテナンスの案内」みたいなメールが来ても、リンクは踏まないつもりです(しょっちゅう来ます)。
まとめ〜心配なのは確定申告シーズン
e-Taxの不具合の多くは解消されました。一方で、納税証明書の遅れと贈与税機能の見合わせは続いていて、そこに11月4日の緊急停止が重なった、というのが今の状況です。
もちろん、現場で対応している国税庁の職員やベンダーの方々は、相当大変だと思います。責めたいわけではありません。
ただ、年が明ければ確定申告の時期がやってきます。それまでに落ち着いてくれるのか。
とりあえず、e-Taxのお知らせページを毎日のぞいてみようと思います。
そんなところで。

