インボイス制度のスタートで事務処理コストは月3400億円も本当に増えるのか!?

ついにインボイス制度がスタート

いよいよインボイス制度がスタートしますね。思えば2012年頃に、日本商工会議所の軽減税率対策の小冊子の作成に携わりました。その中にもインボイス制度のことを記載していました。私が担当したのはあくまでデジタルで対応していくところでしたが。

あれから10年以上たったのですね。延期もあり、普及のためには十分すぎる時間がありましたが、実際の所、まだ準備していない事業者の方も多いですね。後10日ですけど、いまだ対応について相談されることは多いです。

インボイス制度の事務処理負担は大きい!?

実際にインボイス対応は大変なのでしょうか?今回は取引排除されるとか、値引きされるとかの話は除きます。事務処理がどう変わっていくのか?という点を紹介します。

以下のような記事が出ていました。インボイスにアナログ手作業で対応すると月3400億円の費用が増大するというものです。

10月以降「インボイス残業」発生へ 人件費「全国で月3400億円分」増加か LayerX試算
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2309/20/news081.html

わざわざ事務処理負担を増やす仕組みをスタートするのは、もちろんあまり感心はしませんが、果たして本当にそんなに大変なのでしょうか?

インボイスで対応すべき主な対応項目

実際に対応する内容は色々とありますが、大きく分けると以下の4つに整理されるのかと思います。

  • ①請求書の書式変更
  • ②日々の事務処理
  • ③消費税額計算の変更
  • ④電帳法の対応

このうち、③は税理士にお願いしたりされているケースが大半で、事業者の方への影響は大きくありません。また④の電帳法については、また別制度の話にもなるので今回は触れません。(実際、電帳法対応も個人事業主レベルだと会計ソフトを使うだけで対応可能ですが)

そうすると、まず①の請求書の書式変更は、最初は手間ですが、一度対応してしまえば、継続的に業務負荷を高めるものではありません。請求書ソフトを使っている事業者はソフトをアップデートして、エクセル使っているヒトは書式を変更するくらいでしょう。私はFreeeというクラウドの会計ソフトを使っていますが、すでにインボイス対応がなされていたので、もう7月くらいからインボイス対応の請求書(適格請求書)を発行しています。

ということで、インボイスの事務処理が大変なのは、 ③日々の事務処理ということで、(4)インボイスの判定、 (5)税区分の判定などになると思います。

システム対応項目概要
請求書の 書式が変わる(1)登録番号の表示請求書に登録番号を表示する
(2)税額等の表示税率ごとに区分した消費税額等を表示する
(3)端数処理の変更税率ごとに1回の端数処理とする
②日々の事務処理
経理を 楽にする 推測機能 AI-OCR の活用など
(4)インボイスの判定インボイスが登録された番号か確認する 取引先マスタに登録番号を登録
(5)仕訳時の   
税区分の判定
請求書、領収書などの登録番号の有無によって 税区分を推測する 
(6)電子明細と  インボイス紐付けクレカデータなどの電子明細とインボイス証憑の紐付けを推測する
③消費税額計算の制度変更 対応(7)経過措置の対応免税事業者等からの仕入れについても、一定期間は一定割合を仕入税額控除可能な対応
(8)支援措置の対応課税売上1億円以下の場合に6年間は1万円未満のインボイスは保存無しで仕入税額控除可能等
(9)消費税納税額計算積上計算や消費税申告書の更新
④電帳法改正 対応(10)電子帳簿保存法
   対応
スキャナ保存や電子取引データの保存 (履歴管理等)

日々の事務処理のインボイス制度による大変さ

(4)インボイスの判定〜登録番号を本物か確認する

では実際のインボイスの判定をするには請求書等を受け取って記載している番号が本物かを国税庁のサイトにいって検索するわけです。めんどい・・・

しかし、会計ソフトを使うと自動でチェックしてくれます。

実際にもらった領収で見てみます。スマホで写真をとって、会計ソフトで確認すると、自動で番号が本物かを確認してくれています。 つまりインボイス登録番号の確認は、自動で手間がかかるものではありません。(会計ソフトを使っていれば)

(5)仕訳時の税区分の判定 ←これが手作業だとつらい

次に日々の仕訳を確認してみます。日付や登録番号、勘定科目をいれて、税区分を選びます。

今までは 8%か10%かを選択するわけでしたが、これからは、インボイスの有無も含めて確認しないといけないわけです。やることが増える。。。

しかし、これも会計ソフトのスマホアプリで写真を撮って登録すると、インボイスの有無や、税区分まで自動で登録してくれます。

つまり税区分の登録は、自動で手間がかかるものではありません。(会計ソフトを使っていれば)

まとめ

インボイス制度のスタートで事務処理が増えるのは確実です。実際に手作業で全てをこなせば、月3400億円の負担がかかるのかもしれません。

しかし、会計ソフトを使っていればインボイスの事務処理は、特に複雑でも負担でもありません。

ある程度規模のある企業なら、業務フローを見直したり、複数人でどのようにソフトを活用していくか、色々考えることもあるでしょう。

しかし、私のように個人レベルで仕事をしている者にとっては、会計ソフトを活用すれば、日常の事務処理に特に大きな変更はなく、ソフトが自動でやってくれるわけです。

これは、何もインボイスに始まった話でもなく、会計や確定申告が大変だという前に、ソフトを使って日常的にやっていれば、それほど負担感は有りません。

インボイスで事務処理が大変だから廃業する!など考える前に、制度に則って自分の作業の効率化を図る方が建設的かと感じます。 

(もちろん制度の良し悪しは議論されてしかるべきだと思いますが)

さらに、そもそも多くの個人事業主は簡易課税にしてそうなので、そもそもインボイスの業務処理負担は増えません。 

何れにせよ、10月1日はすぐそこです。

そんなところで

消費税

Posted by tomoyamurakami