第13章 リーダーシップ論
この章のねらい この章は「リーダーはどうあるべきか」を扱う分野です。第12章のモチベーション(動機づけ)が 「メンバー1人ひとりのやる気の仕組み」だったのに対し、リーダーシップは「その人たちをまとめて成果に導く力」の話です。 リーダーシップ研究は、100年かけて「生まれつきの資質か → 行動か → 状況しだいか → 変革か」と 発想が移り変わってきました。この歴史の流れを頭に入れておくと、たくさんの理論名が "どの時代のどんな問題意識から出たものか"で整理でき、丸暗記から解放されます。
過去問での出方:企業経営理論ではほぼ毎年1問、リーダーシップから出ます(R07第20問、R06第17問、 R05第18問、R03第16問…)。出題の型は決まっていて、①理論名と中身の対応(提唱者・キーワードのすり替え)、 ②フィードラー/SL/パス・ゴールの状況適合の3理論の区別、③変革型と交換型の分類、の3パターンです。 引っかけの急所(「志向型が逆」「軸の名前がすり替え」など)を知っていれば、得点源にしやすい分野です。
13-0 この章の地図
リーダーシップ研究は、大きく次の4つの世代を追って進んできました。時代順に並べると、 それぞれが「前の世代の弱点を埋めるために生まれた」という関係が見えてきます。
【第1世代】資質論(特性論) … 優れたリーダーは"生まれつき"の資質を持つ?
│ (でも共通する資質が見つからない…という限界)
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【第2世代】行動論 … 資質より"行動スタイル"が大事だ
│ アイオワ研究/オハイオ研究/PM理論/マネジリアル・グリッド/ミシガン研究
│ (でも「唯一最善の行動」は状況で変わるのでは?という疑問)
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【第3世代】コンティンジェンシー理論(状況適合)… 有効なスタイルは"状況しだい"
│ フィードラーのLPCモデル/SL理論/パス・ゴール理論
│ (でも"組織を変える"ような強いリーダーは説明できない)
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【第4世代】新しいリーダーシップ論 … 変革型/交換型/LMX/サーバント/オーセンティック 等
この章は、この流れに沿って 13-1(資質論・行動論)→ 13-2(状況適合)→ 13-3(変革型・交換型) → 13-4(LMX・エンパワーメント・新潮流) の順に進みます。
13-1 リーダーシップ研究の流れと資質論・行動論
まず「資質論(特性論)」― うまくいかなかった第1世代
いちばん古い発想が 資質論(特性論、Trait Theory) です。 「優れたリーダーには、生まれつきの共通した資質(知能・外向性・自信など)があるはずだ」と考え、 その資質を探しました。しかし、すべての優れたリーダーに共通する資質は見つかりませんでした。 そこで研究の関心は「資質(何であるか)」から「行動(何をするか)」へと移っていきます。これが行動論です。
行動論①:アイオワ研究(レヴィン)― 3つのスタイル
K. レヴィン(Lewin)らのアイオワ大学の研究は、リーダーの行動を次の3スタイルに分け、 どれが集団に良い影響を与えるかを実験しました。
| スタイル | 中身 | 傾向 |
|---|---|---|
| 専制型(独裁型) | リーダーが1人で決めて命令する | 短期の作業量は多いが、不満・敵意が生まれやすい |
| 民主型(参加型) | メンバーと話し合って決める | 質・意欲・人間関係が良好になりやすい(総合的に良好) |
| 放任型 | リーダーがほとんど関与しない | 作業も質も低くなりがち |
一般に 民主型(参加型) が最も望ましいという結果でした。
行動論②:オハイオ研究 ― ★超頻出の「2次元」
オハイオ州立大学の研究は、リーダーの行動を2つの独立した次元で捉えました。ここが試験の最頻出ポイントです。
| 次元 | 読み替え | 中身(何を大事にする行動か) |
|---|---|---|
| 構造づくり(Initiating Structure) | 課題志向 | 仕事の役割・手順・目標を明確に組み立てる |
| 配慮(Consideration) | 人間関係志向 | メンバーの気持ち・信頼・良好な人間関係に気を配る |
- この2軸は「独立した別次元」です。つまり、どちらも高い(構造づくりも配慮も高い)という 組み合わせがあり得ます。トレードオフ(一方を立てれば他方が下がる関係)ではありません。
- ここがR07第20問の引っかけで使われました(後述)。
行動論③:三隅二不二の PM 理論 ― 日本発の2次元
日本の社会心理学者 三隅二不二(みすみ じゅうじ) の PM理論 も、オハイオ研究と似た2軸の発想です。
- P機能(Performance=目標達成機能):仕事を進め、成果を上げさせる働き
- M機能(Maintenance=集団維持機能):人間関係を整え、集団をまとめる働き
この2機能の高低で PM型・Pm型・pM型・pm型の4類型に分け、 両方が高い「PM型」が最も有効だとしました(=どんな状況でも良いという普遍的な理論)。
⚠️ ここが引っかけ(H20第15問) 「PM理論は、有効なスタイルが組織形態によって変わる」という選択肢は誤り。 PM理論は「PM型が最も有効」という唯一最善型(普遍論)であって、 状況で変わる(コンティンジェンシー的)理論ではありません。この"すり替え"に注意。
行動論④:マネジリアル・グリッド(ブレイク&ムートン)
R. ブレイクと J. ムートンの マネジリアル・グリッド は、リーダーの関心を 2軸×各9段階(9×9の格子=グリッド) で表す道具です。
- 縦軸・横軸は「業績(生産)への関心」と「人間への関心」。
- 両方が最高の (9,9)型 が理想(「チーム型」)とされます。
⚠️ 混同注意:軸の名前をすり替える引っかけ(H22第12問) マネジリアル・グリッドの2軸は「業績への関心/人間への関心」です。 これをオハイオ研究の2軸「構造づくり/配慮」とすり替えた選択肢が誤りとして出ました。 「構造づくり・配慮=オハイオ」「業績への関心・人間への関心=グリッド」とセットで覚えましょう。
行動論⑤:ミシガン研究とリッカートのシステム4
ミシガン大学の研究(R. リッカートら)は、監督者の行動を 「職務中心型」と「従業員中心型」に分け、高業績部門では"従業員中心型"が多いことを見いだしました。
- リッカートはさらに、組織をシステム1〜4(独善的専制→温情的専制→相談型→参加型=システム4)に分類。
- システム4(参加型)が最も望ましいとし、支持的関係の原理(上司が部下を尊重・支援する)や、 各集団を上位とつなぐ連結ピン(リンキング・ピン)機能が、 従業員の信頼感などの媒介変数を経て、生産性・欠勤率といった成果に影響すると考えました。
📝 過去問はこう出る(H20 第15問) リーダーシップ理論の総合問題。正解はオ(リッカート)で、 「支持的関係の原理や連結ピン機能が、媒介変数(信頼感・高い目標設定)に作用し、 結果として生産性・欠勤率に影響する」という因果連鎖の記述が適切。 一方、「PM理論は組織形態でスタイルが変わる」「オハイオ研究は参加型が専制型より望ましいと結論した」などは それぞれの理論の説明として不正確でバツ。 → H20 第15問
📝 過去問はこう出る(R03 第16問) 各理論の"軸"や"要因"の正確さを問う良問。正解はイ(フィードラーの3要因)。 ミシガン研究は「高業績=従業員中心/低業績=職務中心」が正しく、これを逆にした選択肢はバツ。 オハイオ研究の「構造づくり=課題/配慮=人間関係」を入れ替えた選択肢もバツ。 → R03 第16問
13-2 コンティンジェンシー理論(状況適合)― ★この章の主戦場
行動論は「唯一最善のスタイル」を探しましたが、現実には 「厳しく引っ張るべき場面」も「温かく支えるべき場面」もあります。そこで 「有効なスタイルは状況しだい(条件しだい)で変わる」と考えるのが コンティンジェンシー理論(条件適合理論/状況適合理論) です。 試験で最も差がつくのは、この節のフィードラー/SL理論/パス・ゴール理論の3つの区別です。
① フィードラーの LPC モデル
F. フィードラーは、リーダーのスタイルを LPC尺度 で測りました。
LPC=Least Preferred Coworker=「最も苦手な同僚」の評価。 「一緒に働きにくかった人」を、それでも好意的に評価できる人=高LPC、 辛口に評価する人=低LPC、と分類します。
| LPC | リーダーの志向 | ひとことで |
|---|---|---|
| 高LPC | 人間関係志向 | 苦手な人にも寛容 = 人づきあい重視 |
| 低LPC | タスク志向(課業志向) | 苦手な人には厳しい = 仕事の成果重視 |
そして、状況の好意性(リーダーにとって状況が有利かどうか)は、次の3要因で決まります(R03第16問で出題)。
- リーダーとメンバーの関係(信頼・良好さ)
- タスクの構造化の度合い(仕事の手順が明確か)
- リーダーの地位パワー(職位パワー)(人事権など公式の力の強さ)
結論はやや直感に反するので、表で丸暗記してしまうのが得策です。
| 状況の好意性 | 有効なリーダー |
|---|---|
| 極めて好意的(すべて有利) | タスク志向(低LPC) |
| 中程度(有利・不利が混在) | 人間関係志向(高LPC) |
| 極めて非好意的(すべて不利) | タスク志向(低LPC) |
💡 覚え方:両極端(すごく楽 or すごく大変)はタスク志向、真ん中は人間関係志向。 楽な時は淡々と成果を、大変な時は強力に引っ張り、微妙な時は人間関係でまとめる、とイメージ。
② SL理論(ハーシー&ブランチャード)= 状況対応リーダーシップ
P. ハーシーと K. ブランチャードの SL理論(Situational Leadership=状況対応リーダーシップ) は、 部下の成熟度(レディネス=能力+意欲)に応じて、リーダーが4つのスタイルを使い分けるべきだとしました。
部下の成熟度:低 ──────────────────→ 高
①教示型 ②説得型 ③参加型 ④委任型
(具体的に (説明して (一緒に決 (任せる/
指示する) 納得させる) め支援) 見守る)
高課題 高課題 低課題 低課題
低関係 高関係 高関係 低関係
- 部下が未熟なうちは手取り足取りの 教示型、
- 成熟が進むにつれ 説得型 → 参加型 → 委任型(任せる)へと移していきます。
- 「成熟度が最も高い→委任型」が対応の要。ここがR01第17問の引っかけでした。
📝 過去問はこう出る(R01 第17問) 「状況に即したリーダーシップ」の総合問題。正解はウ(パス・ゴール理論)。 SL理論の選択肢は「成熟度が高く自律的なら"参加型"」→ 誤り(正しくは委任型)。 フィードラーの選択肢も志向型が逆でバツ。3理論を混ぜてくる典型パターンです。 → R01 第17問
③ ハウスのパス・ゴール理論 ― ★出題頻度No.1
R. ハウスの パス・ゴール理論(Path-Goal Theory) は、 「リーダーの仕事は、部下が目標(ゴール)に至る道筋(パス)を明るく照らし、 そこを進めば報酬に届くと分からせて動機づけること」と考えます。 土台には第12章の期待理論(努力→成果→報酬の期待を高める)があります。
リーダーは、部下の特性と環境(タスク構造など)に応じて、次の4スタイルを使い分けます。
| スタイル | 中身 | 特に有効な状況 |
|---|---|---|
| 指示型 | やり方・手順を具体的に指示 | タスクが曖昧・不明確なとき/外的統制型の部下 |
| 支援型 | 気持ちに配慮し支える | タスクが単調・ストレスが高いとき、退屈なルーチンワーク |
| 参加型 | 相談し、意見を求める | 内的統制型(自分で結果を決めると考える)の部下 |
| 達成志向型 | 高い目標を掲げ全力を求める | タスクが構造化されていないとき(期待を高める) |
このスタイルの当てはめが、そのまま設問になります。「逆」を作るのが定番の引っかけです。
- タスクが構造化済み(明確)なら、指示型は冗長でむしろ満足度を下げる → 支援型が有効
- 内的統制型の部下 → 参加型で満足度が上がる/外的統制型の部下 → 指示型が向く
- 高能力の部下に細かい指示型 → かえって満足度を下げる
📝 過去問はこう出る(R05 第18問) パス・ゴール理論の単独問題。正解はア: 「結果を自分で統制すると考える(内的統制型の)部下は、参加型リーダーシップ(相談・提案を求められること)に強い満足を得る」。 「構造化済みの方が指示型の満足が高い」「能力が高いほど指示型の満足が高い」「性格特性に応じて1つのスタイルをとる」は すべて逆または特性論的な誤り。 → R05 第18問
📝 過去問はこう出る(H30 第16問) こちらもパス・ゴール理論の単独問題。正解はイ: 「構造化されたルーチンワークの部下には、支援型リーダーシップが高業績と高い満足度をもたらす」。 「構造化タスクに指示型」「決定権がないと感じる部下に参加型」などは当てはめが逆でバツ。 → H30 第16問 / H22 第12問
⚠️ 3理論の区別(暗記の急所) | 理論 | 状況要因(何を見るか) | リーダーは? | |---|---|---| | フィードラー | 状況の好意性(関係・タスク構造・地位パワーの3要因) | スタイルは固定的(LPCで決まる。状況の方に合わせて配置) | | SL理論 | 部下の成熟度(レディネス) | 4スタイルを使い分ける | | パス・ゴール | 部下の特性+タスク環境 | 4スタイルを使い分ける | フィードラーだけ「リーダーは変わりにくく、状況に合わせて人を配置する」という発想である点が対比の鍵です。
13-3 変革型リーダーシップと交換型(取引型)リーダーシップ
状況適合理論の次に登場したのが、組織そのものを大きく変える力に注目する 変革型リーダーシップ(Transformational Leadership) です。その対比として置かれるのが 交換型(取引型)リーダーシップ(Transactional Leadership) です。B. バス(Bass)が体系化しました。
| 交換型(取引型) | 変革型 | |
|---|---|---|
| 関係の基本 | ギブ・アンド・テイクの交換(報酬 ↔ 貢献) | フォロワーの価値観・態度を変える、高め合う |
| 向く場面 | 定常的(安定した状況)で成果を出す | 転換期(変革が必要な状況) |
| ひとことで | 「やったら報いる」取引 | 「一緒に高みへ」変革 |
バスの「次元」= 分類問題の正体
R06第17問はこの次元(構成要素)をそのまま分類させました。中身を押さえておきましょう。
変革型リーダーシップの4次元(覚え方:理・鼓・知・個)
| 次元 | 中身 |
|---|---|
| 理想化された影響(カリスマ) | 理想的な模範として率先行動し、誇り・尊敬を集める |
| 鼓舞による動機づけ | 魅力的なビジョンを打ち出し、その意義を語る |
| 知的刺激 | 前提を見直させ、新しい視点で問題解決を促す |
| 個別配慮 | 一人ひとりのニーズ・強みを認めて支援する |
交換型リーダーシップの次元
| 次元 | 中身 |
|---|---|
| 条件付き報酬 | 目標達成に対して報酬を約束・提供する |
| 例外による管理(能動的) | ルール逸脱がないか日常的に監視する |
| 例外による管理(受動的) | 問題が深刻化してから事後的に介入する |
📝 過去問はこう出る(R06 第17問) 8つの行動例を変革型/交換型に振り分ける問題。正解はオ。 変革型=b・d・e・f・g(ビジョン・模範・知的刺激・個別配慮・誇り)/ 交換型=a・c・h(報酬提示・日常的な逸脱監視・事後介入)。 ポイントは「報酬でつるのは交換型、内面を変えるのは変革型」「"監視・事後介入"の管理は交換型」。 → R06 第17問
💡 覚え方:「報酬」と「監視・介入」が出てきたら交換型。「ビジョン・模範・刺激・配慮」なら変革型。
13-4 LMX理論・エンパワーメント・サーバント/オーセンティック等の新潮流
第4世代には、変革型のほかにも「リーダーとメンバーの1対1の関係」「権限を与えて任せる」 「リーダーが尽くす」といった新しい視点が加わりました。
① リーダー・メンバー交換(LMX)理論
LMX=Leader-Member Exchange=リーダー・メンバー交換理論。 「リーダーは全員に同じように接するのではなく、部下1人ひとりと"個別の交換関係"を結び、 その質に差ができる」という点に着目します。
- 質の高い関係を結んだ人たちが 内集団(インナー・グループ)、そうでない人たちが 外集団。
- 内集団:信頼に基づき、追加の役割・責任を引き受け(=リスクや負担を負う)、 代わりに多くの資源・機会・支援を得る。
- 外集団:公式権限に基づく形式的なやり取りにとどまり、業績評価や満足度が低く、離職意向が高まりやすい。
- リーダーは、自分と似た考え方・特性を持ち能力の高い者を内集団に選ぶ傾向がある。
- 関係は「他人的 → 知人的 → 成熟した関係」と段階的に深まり、信頼ベースへ移っていきます。
⚠️ ここが引っかけ(H23第17問/R07第20問) - 「内集団はリスクをとらずに多くの資源・機会を得る」→ 誤り。内集団はむしろリスク・負担を引き受ける見返りに資源を得ます(H23第17問の正解肢)。 - 「LMXは集団全体との包括的な関係の質が影響する」→ 誤り。LMXは個々のメンバーとの個別の関係の質を見ます(R07第20問の誤答肢)。
📝 過去問はこう出る(H23 第17問) LMX理論で「最も不適切なもの」を選ぶ問題。正解(=誤り)はウ: 「内集団のメンバーはリスクをとらずにより多くの資源や機会を活かす」。 正しくは、内集団は追加の役割・責任というリスクを負う代わりに多くの資源を得ます。 → H23 第17問
② エンパワーメントと「逆ピラミッド型組織」
エンパワーメント(empowerment) とは、現場の従業員に「自分で判断し行動する権限」を与えることです。 顧客対応の速さが命のサービス業でよく使われ、こうした組織は 「逆ピラミッド型組織」 と呼ばれます。
通常のピラミッド 逆ピラミッド型
┌──────┐ ▽▽▽▽▽▽ ← 顧客接点の従業員(最上位)
│ 経営者 │ ▽▽▽▽ ← 中間管理職は"支える側"
│中間管理│ ▽▽ ← 経営者は土台で支援
│ 従業員 │ ▽
└──────┘
- 上司は命令者ではなく、コーチとして従業員を信頼し、支援する役割に回ります。
- 複雑なマニュアルより、サービス哲学・価値観を象徴する単純なメッセージを共有させるのが有効。
📝 過去問はこう出る(H21 第14問) 逆ピラミッド型組織の管理で「最も不適切なもの」を選ぶ問題。正解(=不適切)はエ: 「上司のリーダーシップ評価を、部下が評価して上司に直接提出させる」。 部下が率直に評価しにくくなり、匿名性・信頼性を損なうので不適切です。 権限委譲・コーチとしての支援・価値観の共有は適切な記述。 → H21 第14問
③ サーバント・リーダーシップ
サーバント・リーダーシップ(Servant Leadership) は、リーダーが"奉仕者(サーバント)"として まずメンバーに尽くし、支援することでチームを導く考え方です(グリーンリーフが提唱)。
⚠️ ここが引っかけ(R07第20問) 「サーバント・リーダーシップの成立要件は、メンバーがリーダーに自己犠牲的な行動をとること」→ 正反対で誤り。 尽くすのはリーダーの側です。「サーバント=リーダーが仕える」と覚えましょう。
④ オーセンティック・リーダーシップ ほか
- オーセンティック・リーダーシップ:authentic=「本物の・自分に正直な」。 自分の価値観や信念に忠実で、誠実さ・透明性でフォロワーの信頼を得るリーダー像。
- カリスマ的リーダーシップ:並外れた魅力・ビジョンで強い influence を及ぼす(変革型と重なる部分が多い)。
⑤ R07第20問 ― この節の総まとめ問題
R07第20問は、この章のほぼ全論点を1問に詰め込んだ総合問題です。5肢の判定をそのまま暗記チェックに使えます。
| 肢 | 論点 | 判定 |
|---|---|---|
| ア | フィードラー:両極端は「人間関係志向」が高業績 | ×(正しくはタスク志向) |
| イ | オハイオ研究:構造づくりと配慮はトレードオフで両立不可 | ×(独立した別次元で両立可能) |
| ウ | サーバント:メンバーがリーダーに自己犠牲的行動をとる | ×(尽くすのはリーダー) |
| エ | パス・ゴール:欠けている要因を補完する行動で業績・満足が上がる | ○(正解) |
| オ | LMX:集団全体との包括的な関係の質が影響 | ×(個々の個別関係の質) |
📝 過去問はこう出る(R07 第20問) 正解はエ(パス・ゴール理論)。 「リーダーがメンバーや業務環境に欠けている要因を補完する行動をとると、業績と満足度が上がる」という パス・ゴール理論の中核を述べた肢です。他の4肢は、この章で見た定番の引っかけ(志向型が逆/トレードオフ/ サーバントが逆/LMXが集団全体)で構成されています。 → R07 第20問
この章のまとめ(試験直前チェック)
- ☐ 研究の流れ=資質論 → 行動論 → コンティンジェンシー(状況適合)→ 変革型など新潮流
- ☐ オハイオ研究=「構造づくり(課題)」と「配慮(人間関係)」の2次元。独立=両立可能(トレードオフではない)
- ☐ マネジリアル・グリッド=「業績への関心/人間への関心」(軸の名前をオハイオとすり替える引っかけ)
- ☐ PM理論(三隅)=P(目標達成)とM(集団維持)/PM型が最善の普遍論(状況で変わるは×)
- ☐ ミシガン研究=高業績は"従業員中心型"/低業績は"職務中心型"(逆にする引っかけ)
- ☐ リッカート=システム4(参加型)/連結ピン・支持的関係の原理
- ☐ フィードラー:LPCで低LPC=タスク志向/高LPC=人間関係志向。状況3要因=関係・タスク構造・地位パワー
- ☐ 両極端(極めて好意的・非好意的)=タスク志向/中程度=人間関係志向
- ☐ SL理論(ハーシー&ブランチャード):部下の成熟度で 教示→説得→参加→委任(成熟が最高なら委任型)
- ☐ パス・ゴール(ハウス):指示型/支援型/参加型/達成志向型を状況で使い分け
- ☐ 構造化済み→支援型(指示型は冗長)/内的統制型→参加型/未構造化→達成志向型
- ☐ 変革型=理想化された影響・鼓舞・知的刺激・個別配慮/交換型=条件付き報酬・例外による管理(バス)
- ☐ 「報酬」「監視・事後介入」なら交換型、「ビジョン・模範・刺激・配慮」なら変革型
- ☐ LMX:個々のメンバーとの個別関係の質/内集団はリスク・責任を負う代わりに資源を得る
- ☐ サーバント=リーダーが尽くす(メンバーが尽くすは×)、オーセンティック=自分に正直・誠実
- ☐ エンパワーメント=現場に権限委譲/逆ピラミッド型は上司がコーチとして支援
この章に対応する主な過去問
| 年度・問 | 論点 | リンク |
|---|---|---|
| H20 第15問 | リーダーシップ理論(リッカート・PM・オハイオ) | 問題 |
| H21 第14問 | 逆ピラミッド型組織とエンパワーメント | 問題 |
| H21 第16問 | 指向性(人間関係指向と課業指向/LPC) | 問題 |
| H22 第12問 | リーダーシップ諸学説(パス・ゴール/グリッド) | 問題 |
| H23 第17問 | リーダー・メンバー交換(LMX)理論 | 問題 |
| H25 第13問 | 期待理論に基づくリーダーシップ | 問題 |
| H30 第16問 | パス・ゴール理論 | 問題 |
| R01 第17問 | 状況対応リーダーシップ(SL・フィードラー) | 問題 |
| R03 第16問 | リーダーシップ理論(フィードラー3要因・ミシガン) | 問題 |
| R05 第18問 | パス・ゴール理論 | 問題 |
| R06 第17問 | 変革型リーダーシップと交換型リーダーシップ | 問題 |
| R07 第20問 | リーダーシップ理論(総合) | 問題 |
次章予告 ▶ 第14章「組織行動とパワー・意思決定」 リーダーシップの土台にある「パワー(影響力の源泉)」を掘り下げ、 集団の意思決定(コンフリクト、集団浅慮=グループシンク、意思決定モデル)へと進みます。 本章の「リーダーがどう人を動かすか」を、「そもそも影響力とは何か」から捉え直す章です。