生成AIの著作権はどうなるか?〜文化庁が考え方の概要を発表
2024/4に文化審議会 著作権分科会 法制度小委員会「AIと著作権に関する考え方について」が発表されました。
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/pdf/94037901_02.pdf?utm_source=pocket_saves
昨年、文化庁が著作権に関する考え方について素案をまとめていましたが、そのときに書いたブログは以下です。
今回は新しく発表された資料を読んでみたいと思います。
AIと著作権に関する3つの観点〜分けて考える!
まずは全部を同じに考えるのではなくて、3つに分けて考えましょうということですね。
「AI開発・学習段階」と「生成・利用段階」では、行われている著作物の利用行為が異なり、
関係する著作権法の条文も異なります。そのため、両者は分けて考える必要があります
- ①AI開発・学習段階
- ②生成・利用段階
- ③AI生成物が著作物にあたるかどうか?
実際利用する側の中小事業者であれば、①の開発・学習段階については携わらないでしょうから、それほど気にする必要はないでしょう。②生成・利用段階については正しく内容を把握しておく必要があるでしょう。
①AI開発・学習段階
この段階の論点は、
AI(学習済みモデル)作成等のための著作物の利用について(法第30条の4等)
・「非享受目的」に該当する場合
・ 著作権者の利益を不当に害することとなる場合
享受しない場合 (非享受目的)
AI開発のような情報解析等において、著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用行為(非享受目的の利用行為)は、原則として著作権者の許諾なく行うことが可能
享受する場合(享受目的)
- 享受する目的が併存しているような場合」には、法第30条の4は適用されない
- 「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」等も、法第30条の4は適用されない
- 情報解析用に販売されているデータベースの著作物を情報解析(AI学習)目的で複製する場合等
- AI学習の場面での著作物の利用(学習データの収集等)
- 生成AIの基盤モデルに対する追加学習(ファインチューニング)のうち、意図的な「過学習」等、学習データである著作物の類似物を生成させること目的としたものを行うための、学習データ(著作物)の収集
- AI学習以外の場面での著作物の利用
- 一部の検索拡張生成(RAG)等で用いるための、生成AIへの入力用データ(著作物)の収集
RAGとは Retrieval-Augmented Generation (RAG) は、大規模言語モデル(LLM)によるテキスト生成に、外部情報の検索を組み合わせることで、回答精度を向上させる技術
AIによって既存の絵師の作風を似せると・・・
作風がアイデアの場合は、著作権侵害にはならない。アイデア・・・構図とかはアイデアになるのでしょうか。
一方で、特定のクリエイターを狙い撃ちしたAI学習は適用されない可能性、つまり著作権違反となることがある。
わかってて、海賊版の内容を学習させるのは違法
” ウェブサイトが海賊版等の権利侵害複製物を掲載していることを知りながら、当該ウェブサイトから学習データの収集を行うといった行為は、厳にこれを慎むべきもの”とされています。
②生成・利用段階
著作権侵害の要件:「類似性」と「依拠性」
あくまで類似性と依拠性があれば、AIを利用しようがしまいが、著作権侵害となるということですね。
一方で、AI生成物に、既存の著作物との「類似性」 又は「依拠性」が認められない場合、既存の著作物の著作権侵害とはならないとのこと。
依拠性があるのか?
明らかに自身が特定の絵師のイラストを学習させてそれで生成イラストを描いていたら、依拠性でありで著作権違反ですね。一方で多くの生成AIユーザは、どのイラストが学習されたものかは把握することができません。そのため、プロンプトに工夫を重ねることで結果的にオリジナルとにたイラストを作成することがあるかもしれません。この場合は著作権違反になるのでしょうか?
→既存の著作物が学習データに含まれているか不明でも、依拠性を立証することは可能(著作権違反になることがある)
→生成AIユーザが使う生成AIが違法な学習をしていたことを知らなくても結果的に似たイラストができても、依拠性ありと推認されるとのこと。著作権違反になることがある)
このあたりが悩ましいですが、でもまあ、そらそうですよね。
プロンプトに工夫を重ねて、ドラゴンボールの孫悟空のそっくりを作った、有名俳優そっくりの写真を生成したら、そらアウトでしょうね。プロンプトを頑張ったから俺の著作権だ!と主張することは結果的にはできないでしょうね
③AI生成物が著作物にあたるかどうか?
AIが自律的に生成したものは、「思想又は感情を創作的に表現したもの」ではなく、著作物に該当しないと考えられる
→人が何ら指示を与えず(又は簡単な指示を与えるにとどまり) 「生成」のボタンを押すだけでAIが生成したもの
一方で、人が思想又は感情を創作的に表現するための「道具」としてAIを使用したものと認められれば、著作物に該当し、AI利用者が著作者となると考えられる。
著作権について議論する日本の男女のイラストレーターたちのイラストを描いて!
トップのサムネ写真もこのプロンプトでお願いして描いてもらいました
そんなところで。