第6章 設備管理・保全
この章のねらい 工場の生産能力は、結局のところ「設備がどれだけ止まらず、速く、良品を作り続けられるか」で決まります。 この章では、その設備を壊れる前に守る/壊れにくく直すための考え方(保全の種類)と、 設備の実力を数字で測るモノサシ(設備総合効率・MTBF/MTTR)を学びます。
過去問での出方:運営管理の生産管理パートで、ほぼ毎年1〜2問出る超・頻出分野です。 出方は大きく2つ。①保全の種類・TPMの用語を区別させる正誤問題(言葉の定義勝負)、 ②設備総合効率・MTBF・アベイラビリティを計算させる問題(電卓なしの算数)。 どちらもパターンが決まっているので、いったん型を覚えれば得点源になります。 逆に、用語(予防保全・事後保全・改良保全…)を曖昧にしたままだと毎年取りこぼす、コスパの分かれ目の章です。
6-0 この章の地図
設備管理は「守り方の種類(どう保全するか)」→「測り方(設備の実力を数字にする)」→ 「信頼性の理論(どれだけ壊れにくいか)」の順に進みます。まず全体像をつかみましょう。
6-1 保全の種類 … 予防保全/事後保全/改良保全/保全予防(★用語の土台)
│ ├ 予防保全=時間基準(TBM)/状態基準(CBM)
│ └ 維持活動と改善活動の区別
│
6-2 TPMと設備総合効率 … 全員参加の生産保全/効率=時間×性能×良品(★計算頻出)
│ └ 7大ロス・自主保全の7ステップ
│
6-3 設備の信頼性 … MTBF・MTTR・アベイラビリティ/バスタブ曲線/直列・並列(★計算頻出)
6-1で「言葉」を固め、6-2と6-3で「計算」を手順化する――これがこの章の攻略ルートです。
6-1 保全の種類 ― 「守り方」を4つに分ける
まず大きな枠:保全は「維持」と「改善」の2グループ
設備保全(せつびほぜん)とは、ひとことで言えば 「設備が本来の機能を発揮し続けられるように面倒を見る活動」です。 この活動は、大きく次の2グループに分かれます(R06 第8問でこの区別がそのまま問われました)。
設備保全
├─【維持活動】今の状態を保つ
│ ├ 予防保全(PM)… 壊れる前に手を打つ
│ └ 事後保全(BM)… 壊れてから直す
│
└─【改善活動】設備そのものを良くする
├ 改良保全(CM)… 壊れにくいように直す・改造する
└ 保全予防(MP)… 次の設備は壊れにくく設計する
💡 覚え方:維持=予防保全+事後保全、改善=改良保全+保全予防。 「今を保つ2つ」と「もっと良くする2つ」に分けると、4種類が頭に入ります。
① 予防保全(PM:Preventive Maintenance)=壊れる前に手を打つ
故障が起きる前に、点検・部品交換・調整をして故障を未然に防ぐ保全です。 予防保全は、「いつ手を打つか」の決め方でさらに2つに分かれます。ここが試験の急所です。
| 種類 | 何を基準に保全するか | ひとことで | 別名 |
|---|---|---|---|
| 時間基準保全(TBM) | 時間・周期(例:3か月ごと) | カレンダーで決める | 定期保全 |
| 状態基準保全(CBM) | 設備の状態・劣化の兆候 | 状態を見て決める | 予知保全 |
- 時間基準保全(TBM=Time Based Maintenance):「前回から○か月たったら交換」というように、 時間・稼働回数で区切って計画的に保全します。=定期保全。
- 状態基準保全(CBM=Condition Based Maintenance):振動・温度・音などを設備診断技術で監視し、 「劣化が進んできたな」という兆候をつかんでから保全します。=予知保全/状態監視保全。
⚠️ 混同注意:TBMとCBMの取り違え - TBM(時間基準)=時計・カレンダーで決める(まだ使えても周期が来たら交換) - CBM(状態基準)=状態を見て決める(診断技術で劣化を捉えてから交換。ムダな交換が減る) R04 第17問では「劣化傾向を設備診断技術で管理し保全時期を決める」=状態監視保全(予知保全)が正解でした。
② 事後保全(BM:Breakdown Maintenance)=壊れてから直す
故障が発生してから修理する保全です。「壊れるまで使い倒す」ように見えますが、 わざと事後保全を選ぶのが合理的な場面もあります。
- 故障してもすぐ代替機に切り替えられる、修理も安いなら、予防にお金をかけるより事後保全が得(R04 第17問)。
- 故障が頻発している状況では、保全費の多くが事後保全(修復)に使われます(R02 第19問)。
⚠️ 混同注意:予防保全(壊れる前)と事後保全(壊れた後)は時間の前後が逆。 「代替機を用意して故障後に直す方が安い場合に選ぶ」のは事後保全であって予防保全ではありません(R04 第17問アの引っかけ)。
③ 改良保全(CM:Corrective Maintenance)=壊れにくいように"直す・改造する"
故障の原因そのものを取り除くため、設備自体に改良を加える活動です。 単に元に戻す修理(事後保全)とは違い、「二度と同じ故障を起こさない」ように設備を作り変えるのがポイント。
- 過去の故障が再発しないよう改善を加えるのは改良保全(R04 第17問イ)。
- 初期故障期にある設備の弱点を除去するのに改良保全は妥当(H23 第18問イ)。
④ 保全予防(MP:Maintenance Prevention)=次の設備は"壊れにくく設計する"
いちばん上流の考え方です。過去の保全データ(どこがよく壊れたか)を 新しい設備の計画・設計段階にフィードバックして、最初から故障・トラブルの起きにくい設備を作り込む活動です。
- 保全予防(MP)は、設計・製作段階で故障が起きにくいよう作り込む活動(H30 第19問イが正解)。
- 過去の保全実績情報を計画・設計段階にフィードバックして将来の故障を未然排除(R07 第11問エが正解)。
💡 覚え方(4種類の一言タグ) - 予防保全=壊れる前に手当て(時間基準TBM/状態基準CBM) - 事後保全=壊れたら直す - 改良保全=壊れにくく直す - 保全予防=壊れにくく設計する(設備を"作る前"の話)
つまずきポイント:故障率曲線(バスタブ曲線)と保全方式の対応
設備の一生を通じた故障率の変化を描いたのが故障率曲線(バスタブ曲線)です(詳しくは6-3)。 時期ごとに「どの保全が向いているか」がセットで問われます(H23 第18問/R01 第18問)。
| 時期 | 故障の様子 | 向いている保全 |
|---|---|---|
| 初期故障期 | 設計・製作上の欠陥で故障が多い(故障率は減っていく) | 改良保全で弱点除去/保全予防で未然防止 |
| 偶発故障期 | 故障がランダム・一定率で発生 | 事後保全が合理的(定期保全は効果が薄い) |
| 摩耗故障期 | 劣化が進み故障率が上昇 | 予知保全(CBM)や定期保全(TBM) |
⚠️ 定番の引っかけ:「偶発故障期に定期保全(時間基準保全)を実施する」は不適切。 偶発故障期は故障がランダムなので、時間で区切る定期保全は効きにくく、事後保全のほうが合理的です(H23 第18問ア=正解=誤り)。
📝 過去問はこう出る(H23 第18問) 「生産保全の観点から見た保全活動」で最も不適切なものを選ぶ問題。正解(=誤り)は 「偶発故障期にある設備に定期保全を実施する」。他の肢(初期故障期に改良保全・保全予防、摩耗故障期に予知保全)はすべて妥当。 → H23 第18問 / R01 第18問 / R04 第17問
6-2 TPMと設備総合効率
TPM=全員参加の生産保全
TPM(Total Productive Maintenance=全員参加の生産保全)は、 「トップから現場の作業者まで、全部門・全員が参加して」、故障ゼロ・不良ゼロ・災害ゼロを目指す活動です。 過去問で繰り返し問われるTPMの特徴は、次の3点に集約されます。
- 全員参加:保全は保全部門だけの仕事ではない。生産部門を含む全部門が参加する。 → 「生産部門と独立して保全部門だけを強化」はTPMの趣旨に反する(R04 第19問a=誤り)。
- 重複小集団活動:経営トップから現場まで、職制(組織階層)を基礎に重ね合わせた小集団で展開する。 → 職制にとらわれない自主的サークル活動(QCサークル)とは違う点に注意(R01 第20問c=誤り)。
- 設備のライフサイクル全体が対象:設計から廃棄まで、あらゆるロスを未然防止する。 → 「製品のライフサイクル全体」は誤り。正しくは「設備のライフサイクル全体」(R01 第20問a=誤り)。
自主保全 ― 作業者が自分の設備を守る
TPMの中核が自主保全(じしゅほぜん)です。「自分の設備は自分で守る」を合言葉に、 オペレーター(作業者)自身が日常の清掃・点検・給油を行い、設備の劣化を防ぎます。
- 自主保全の基本は、清掃・給油・増し締めの3項目(=劣化を防ぐ「基本条件の整備」)(R05 第19問a)。
- 自主保全がねらうのは、無理な使い方や放置による強制劣化を防ぐこと。 時間経過で必ず進む自然劣化そのものを止める活動ではない(R05 第19問b=誤り)。
- 改良保全(設備自体を改善する活動)は主に保全部門が担い、オペレーター主体の自主保全の役割ではない(R05 第19問e=誤り)。
自主保全の7ステップ(順番がそのまま問われます。H25 第19問/R05 第19問):
① 初期清掃(清掃・点検) ← 第1ステップは必ずコレ
② 発生源・困難箇所対策
③ 自主保全仮基準の作成 ← 「仮基準づくり」は第3ステップ
④ 総点検 ← 総点検は第4ステップ(最初の3つには入らない)
⑤ 自主点検
⑥ 標準化
⑦ 自主管理の徹底
⚠️ 定番の引っかけ:「自主保全の最初のステップは仮基準の作成」は誤り。 最初は必ず①初期清掃。仮基準づくりは③、総点検は④です(R05・R07・H25で繰り返し出題)。
設備総合効率(OEE)― 設備の実力を測る一本の数字 ★計算頻出
設備総合効率(OEE:Overall Equipment Effectiveness)は、設備がどれだけ有効に使われているかを 1つの数字で表す指標です。設備の効率を下げる7大ロス(故障・段取など)を数値化したものと言えます。 計算式は必ず暗記してください。
設備総合効率 = 時間稼働率 × 性能稼働率 × 良品率
3つの要素は、それぞれ違う種類のロスに対応しています。
| 要素 | 計算式 | 何のロスを測るか |
|---|---|---|
| 時間稼働率 | 稼働時間 ÷ 負荷時間 =(負荷時間−停止時間)÷ 負荷時間 |
停止ロス(故障・段取・立上りなど) |
| 性能稼働率 | (基準サイクルタイム × 加工数量)÷ 稼働時間 | 速度ロス(チョコ停・空転・速度低下) |
| 良品率 | 良品数量 ÷ 加工数量 = 1 − 不良率 |
不良ロス(不良・手直し) |
⚠️ 混同注意:どのロスがどの率に効くか(R02 第20問がこれを直撃) - 段取時間の短縮・立上り短縮 → 停止が減る → 時間稼働率が向上 - チョコ停(小停止)の削減 → 速度ロスが減る → 性能稼働率が向上 - 不良率の改善 → 良品率が向上 「チョコ停削減で時間稼働率が向上」などの取り違えが定番の誤り選択肢です。
⚠️ よくある勘違い:「付加価値率」は設備総合効率の要素ではありません。 必要なのは時間稼働率・性能稼働率・良品率の3つ(H19 第8問の正解は「付加価値率が不要」)。
設備総合効率の計算ステップ(H29 第18問の数字で練習)
例題:負荷時間1,000時間、稼働時間800時間、加工数量18,000個、 基準サイクルタイム2分/個、不適合品率(不良率)20%。設備総合効率は?
Step1 時間稼働率 = 稼働時間 ÷ 負荷時間
= 800 ÷ 1,000 = 0.8
Step2 性能稼働率 =(基準サイクルタイム × 加工数量)÷ 稼働時間
※分母の稼働時間を「分」にそろえる:800時間 = 48,000分
=(2分 × 18,000個)÷ 48,000分
= 36,000 ÷ 48,000 = 0.75
Step3 良品率 = 1 − 不良率 = 1 − 0.20 = 0.8
Step4 設備総合効率 = 0.8 × 0.75 × 0.8 = 0.48(=48%)
💡 計算のコツ①(単位そろえ):性能稼働率の計算で、サイクルタイムが「分」なら 稼働時間も「分」に直す(1時間=60分)。ここの単位ミスが失点の最大要因です。
💡 計算のコツ②(約分で速く):3つの率を全部展開すると 設備総合効率 =(基準サイクルタイム × 良品数量)÷ 負荷時間 に約分できます。 途中で「稼働時間」と「加工数量」が消えるので、必要なデータは実は 基準サイクルタイム・良品数量・負荷時間の3つだけ(H26 第19問の正解の考え方)。
📝 過去問はこう出る(H29 第18問) 上の数字で設備総合効率を計算させ、正解は0.48。手順どおり ①0.8 ②0.75 ③0.8 を掛けるだけ。単位(時間→分)のそろえさえ外さなければ確実に取れます。 → H29 第18問 / R04 第18問 / R02 第20問
📝 過去問はこう出る(R04 第19問) TPMの記述の正誤を組み合わせる問題。a(保全部門だけ強化)=誤り、 b(MTBFを短く・MTTRを長く)=誤り(後述のとおり逆)、 c(設備総合効率=7大ロスを数値化)=正しい、d(全員参加・重複小集団)=正しい。 → R04 第19問 / R01 第20問 / R07 第11問
6-3 設備の信頼性 ― MTBF・MTTR・アベイラビリティ
3つの用語(まず定義を固める)★計算頻出
設備が「どれだけ壊れにくく、壊れてもどれだけ早く直せるか」を測る指標です。 MTBF・MTTR・アベイラビリティの3点セットは、計算問題で毎年のように出ます。
| 指標 | 読み・意味 | 計算式 | 大きい方が良い? |
|---|---|---|---|
| MTBF | 平均故障間隔 (Mean Time Between Failures) |
総稼働時間 ÷ 故障回数 | 長いほど良い(壊れにくい) |
| MTTR | 平均修復時間 (Mean Time To Repair) |
総修復時間 ÷ 修復回数 | 短いほど良い(すぐ直る) |
| アベイラビリティ | 可用率(使える割合) | MTBF ÷(MTBF+MTTR) | 高いほど良い |
- MTBF=「故障と故障の間、平均どれくらい動き続けられるか」。長いほど信頼性が高い。
- MTTR=「壊れてから直るまで平均どれくらいかかるか」。短いほど保全性が高い。
- アベイラビリティ(可用率)= 全時間のうち使える状態だった割合。稼働時間 ÷ 総時間 でも同じ。
⚠️ 混同注意(毎年の引っかけ): - アベイラビリティ = MTBF ÷(MTBF+MTTR)。分子はMTBF。 分子をMTTRにした「MTTR÷(MTBF+MTTR)」は不稼働の割合で逆(R06 第8問e=誤り)。 - 故障ゼロを目指すなら MTBFは長く・MTTRは短く。 「MTBFを短く・MTTRを長く」は逆で誤り(R04 第19問b/R07 第11問オ)。
信頼性指標の計算ステップ(H24 第17問の数字で練習)
例題:設備を300時間使ったところ、稼働と修復を次のように繰り返した。 稼働:0〜80/95〜170/195〜280、修復:80〜95/170〜195/280〜300。
Step1 総稼働時間と故障回数を数える
稼働= 80 + 75 + 85 = 240(時間)、故障(稼働区間)= 3回
Step2 総修復時間と修復回数を数える
修復= 15 + 25 + 20 = 60(時間)、修復= 3回
Step3 MTBF = 総稼働時間 ÷ 故障回数 = 240 ÷ 3 = 80(時間)
Step4 MTTR = 総修復時間 ÷ 修復回数 = 60 ÷ 3 = 20(時間)
Step5 アベイラビリティ = MTBF ÷(MTBF+MTTR)
= 80 ÷(80+20)= 80 ÷ 100 = 0.8
答えは MTBF=80、MTTR=20、可用率=0.8。
💡 図から読むコツ:帯グラフ問題(H24 第17問・R03 第19問)は、 ①稼働の帯を全部足す=総稼働時間、②修復の帯を全部足す=総修復時間、③帯の本数=回数、 の3つを数えるだけ。2台を比べる問題(R03 第19問)でも、稼働の帯が長い方がMTBFもアベイラビリティも高いと考えれば早いです。
📝 過去問はこう出る(H24 第17問) 帯グラフからMTBF・MTTR・アベイラビリティを求める頻出型。正解は①80 ②20 ③0.8。 アベイラビリティを0.2(=1−0.8)と取り違える肢が引っかけ。分子は必ずMTBFです。 → H24 第17問 / R03 第19問
MTBFを「期待値」で求めるタイプ(H20 第8問)
故障までの月数と、その確率が表で与えられたら、MTBFは期待値(月数×確率の合計)で求めます。
例:故障までの月数 1/2/3/4/5/6 か月、
確率 0.15/0.05/0.10/0.15/0.20/0.35 のとき
MTBF = Σ(月数 × 確率)
= 1×0.15 + 2×0.05 + 3×0.10 + 4×0.15 + 5×0.20 + 6×0.35
= 0.15 + 0.10 + 0.30 + 0.60 + 1.00 + 2.10
= 4.25(か月)
📝 過去問はこう出る(H20 第8問) 故障分布(確率)が与えられ、MTBF=約4.25か月。「月数×確率の合計=期待値」が解法です。 → H20 第8問
故障率曲線(バスタブ曲線)
設備の一生を通じた故障率の移り変わりを描くと、浴槽(バスタブ)を横から見た形になります。 横軸が時間、縦軸が故障率です。
故障率
高 │\ ╱
│ \_ ╱
│ \________________╱
低 │
└─────────────────────────────────────→ 時間
[初期故障期] [偶発故障期] [摩耗故障期]
故障率↓減少 故障率一定・低 故障率↑増加
- 初期故障期:使い始め。設計・製造の欠陥が原因で故障が多いが、だんだん減っていく。 → バーンイン(ならし運転)で初期故障をあぶり出して取り除く(H26 第18問エの背景)。
- 偶発故障期:安定期。故障はランダム・一定率でまれに起きる。→ 事後保全が合理的。
- 摩耗故障期:末期。摩耗・劣化で故障率が上がっていく。→ 予知保全・定期保全で対応。
⚠️ 定番の引っかけ:故障率は使い始めが高く、減っていく(初期故障期)。 「徐々に増加し、その後減少」は推移が逆で誤り(R01 第18問ウ)。
信頼性を高める設計の考え方(用語問題)
H26 第18問では、信頼性・安全性を高める設計用語の定義の正確さが問われました。混同注意です。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| フェールセーフ | 故障しても安全側に移行させる(例:信号機が故障したら赤で停止) |
| フールプルーフ | 人が操作を間違えても、事故・誤動作が起きないようにする(例:ドアを閉めないと回らない電子レンジ) |
| ディレーティング | 部品・設備を定格(最大能力)より低い負荷で余裕をもって使い、故障率を下げて寿命を延ばす |
| バーンイン | 本稼働前にならし運転して初期故障を顕在化させ取り除く |
⚠️ 混同注意:フェールセーフ(故障時に安全側へ)とフールプルーフ(誤操作しても安全)は よく入れ替えて出題されます。「故障が生じても安全を確保」=フェールセーフ、 「人為的な誤操作があっても問題が生じない」=フールプルーフ(H26 第18問ア・イはこの取り違えで誤り)。
📝 過去問はこう出る(H26 第18問) 信頼性・安全性向上策の用語問題。正解はディレーティング(定格より低い負荷で使い信頼性向上・寿命延長)。 フェールセーフとフールプルーフを入れ替えた肢が引っかけ。 → H26 第18問
直列システムと並列システム(信頼性の合成)
複数の部品・設備を組み合わせたシステムの信頼性(故障せず動き続ける確率)は、 つなぎ方で計算が変わります。各要素の信頼度(動く確率)を R とします。
■ 直列システム(どれか1つでも壊れると全体が止まる)
入力 ─[ R₁ ]─[ R₂ ]─ 出力
- 全部が正常なときだけ動くので、信頼度は掛け算:Rsystem = R₁ × R₂ × …
- 例:R₁=0.9、R₂=0.9 → 0.9 × 0.9 = 0.81
- 要素が増えるほど、全体の信頼度は下がる(掛け算だから)。
■ 並列システム(1つでも生きていれば全体は動く=冗長化)
┌─[ R₁ ]─┐
入力┤ ├─ 出力
└─[ R₂ ]─┘
- 全部が同時に壊れたときだけ止まるので、「1−(全部が壊れる確率)」で計算: Rsystem = 1 −(1−R₁)×(1−R₂)×…
- 例:R₁=0.9、R₂=0.9 → 1 −(0.1 × 0.1)= 1 − 0.01 = 0.99
- 並列(冗長)にすると全体の信頼度は上がる。予備を持つ=信頼性を高める設計です。
💡 覚え方:直列は掛け算(下がる)/並列は「1から引く」(上がる)。 「大事な設備は並列(冗長化)にして止まらないようにする」とイメージすると式を忘れません。
この章のまとめ(試験直前チェック)
- ☐ 保全は維持活動(予防保全+事後保全)と改善活動(改良保全+保全予防)の2グループ
- ☐ 予防保全は「壊れる前」/事後保全は「壊れた後」(時間の前後が逆)
- ☐ 予防保全は時間基準(TBM=定期保全)と状態基準(CBM=予知保全)に分かれる
- ☐ 改良保全=壊れにくく直す/保全予防(MP)=設計段階で壊れにくく作り込む
- ☐ バスタブ曲線:初期故障期→改良保全・保全予防、偶発故障期→事後保全、摩耗故障期→予知・定期保全
- ☐ 「偶発故障期に定期保全」は不適切(ランダムなので効きにくい)
- ☐ TPM=全員参加・重複小集団活動・設備のライフサイクル全体が対象(製品ではない)
- ☐ 自主保全=作業者主体。清掃・給油・増し締めが基本。強制劣化を防ぐ(自然劣化を止める活動ではない)
- ☐ 自主保全7ステップの第1は初期清掃(仮基準は第3、総点検は第4)
- ☐ 設備総合効率 = 時間稼働率 × 性能稼働率 × 良品率(付加価値率は不要)
- ☐ 時間稼働率=停止ロス/性能稼働率=速度ロス(チョコ停)/良品率=不良ロス
- ☐ 計算は単位(時間↔分)をそろえる。約分すると(基準CT×良品数)÷負荷時間
- ☐ MTBF=総稼働時間÷故障回数(長いほど良い)/MTTR=総修復時間÷修復回数(短いほど良い)
- ☐ アベイラビリティ=MTBF÷(MTBF+MTTR)(分子はMTBF。MTTRにすると逆)
- ☐ 故障確率が表で与えられたらMTBFは期待値(月数×確率の合計)
- ☐ フェールセーフ(故障時に安全側)/フールプルーフ(誤操作しても安全)/ディレーティング(低負荷で使う)
- ☐ 直列=信頼度の掛け算(下がる)/並列=1−(1−R)…(冗長化で上がる)
この章に対応する主な過去問
| 年度・問 | 論点 | リンク |
|---|---|---|
| H19 第8問 | 設備総合効率(必要な項目) | 問題 |
| H20 第8問 | MTBF(期待値計算) | 問題 |
| H21 第19問 | 設備総合効率の計算式 | 問題 |
| H23 第18問 | 保全活動とバスタブ曲線 | 問題 |
| H24 第17問 | MTBF・MTTR・アベイラビリティ | 問題 |
| H25 第19問 | 自主保全の7ステップ | 問題 |
| H26 第18問 | 信頼性・安全性の向上策 | 問題 |
| H26 第19問 | 設備総合効率に必要なデータ | 問題 |
| H29 第18問 | 設備総合効率の計算 | 問題 |
| H30 第19問 | JISの設備故障と保全活動 | 問題 |
| R01 第18問 | 生産保全(保全活動) | 問題 |
| R01 第20問 | TPM | 問題 |
| R02 第19問 | 保全体制と保全費 | 問題 |
| R02 第20問 | 設備総合効率とロスの対応 | 問題 |
| R03 第19問 | MTBF・MTTR・可用率の比較 | 問題 |
| R04 第17問 | 生産保全の保全活動 | 問題 |
| R04 第18問 | 設備総合効率と改善施策 | 問題 |
| R04 第19問 | TPM(全員参加の生産保全) | 問題 |
| R05 第19問 | TPMの自主保全 | 問題 |
| R06 第8問 | 設備管理(総合効率・保全・可用率) | 問題 |
| R07 第11問 | TPM(保全概念の定義) | 問題 |
次章予告 ▶ 第7章「資材・在庫管理」 本章で「設備を止めない」ことを学びました。次は「モノを切らさず、かつ余らせない」管理へ。 発注方式(定量発注・定期発注)、経済的発注量(EOQ)の計算、ABC分析、在庫回転率など、 運営管理のもう一つの計算頻出テーマを扱います。