第19章 消費者行動

この章のねらい マーケティング論(第III部)の"人の心"を扱う章です。製品戦略・価格・チャネル・プロモーションは、 どれも「消費者がどう考え、どう買うか」を土台にして設計されます。ここが分かっていると、 第20章以降の各論(ブランド・価格・広告)が「なぜその打ち手が効くのか」まで腑に落ちます。 この章の主役は買い手の頭の中、つまり「どんな順番で買うか(プロセス)」「どれくらい真剣か(関与)」 「どう情報を処理するか」「まわりの人にどう影響されるか」「買った後どう感じるか」の5つです。

過去問での出方:企業経営理論のマーケティング分野で、ほぼ毎年1〜2問出る安定した頻出テーマです。 ①購買意思決定プロセス(考慮集合・情報探索)、②関与(高関与/低関与の対比)、 ③準拠集団・社会的アイデンティティ(公的消費/私的消費の対比)、④認知的不協和(購買後)が 特に繰り返し問われます。定義さえ押さえれば「特徴の逆」を書いた選択肢を落とせる、得点源にしやすい分野です。


19-0 この章の地図

この章は、消費者を「買うまで」→「どんな心のモード(関与)で」→「頭の中でどう処理するか」 →「まわりの誰に影響されるか」→「買った後どう感じるか」という順で追いかけます。 一人の消費者が商品を買う「時間の流れ」に沿って並んでいる、とイメージしてください。

19-1 購買意思決定プロセス   … 問題認識→情報探索→代替案評価→購買→購買後(★基本の型)
   │
19-2 関与と購買行動の類型   … どれくらい真剣か(アサエルの4類型)
   │
19-3 消費者の情報処理       … 知覚・記憶・態度・ELM(頭の中のしくみ)
   │
19-4 まわりの影響           … 準拠集団・家族・オピニオンリーダー・社会的アイデンティティ
   │
19-5 購買後の消費者行動     … 顧客満足・期待不確認モデル・認知的不協和(★頻出)

19-1 購買意思決定プロセス

まず「買うまでの5段階」を丸ごと覚える

消費者は、いきなり「これを買う」と決めているわけではありません。多くの場合、次の5つの段階を 順に踏んで買い物をしています(コトラーらの標準モデル)。ここは消費者行動論の基本の型です。

① 問題認識 ──→ ② 情報探索 ──→ ③ 代替案評価 ──→ ④ 購買決定 ──→ ⑤ 購買後行動
(欲しい/困った)(情報を集める)(比べて絞る)  (実際に買う)  (満足/不満・口コミ)
段階 何が起きるか かみくだくと
① 問題認識 「今の状態」と「望ましい状態」のズレに気づく シャンプーが切れた、もっと良い状態になりたい
② 情報探索 記憶(内部)や広告・店頭・口コミ(外部)から情報を集める ネットで調べる・店員に聞く
③ 代替案評価 集めた候補を、自分の基準で比べて絞り込む A社とB社を機能・価格で比較
④ 購買決定 どれを・どこで・いつ買うかを決めて実行する レジで会計
⑤ 購買後行動 使ってみて満足/不満を感じ、口コミや再購入につながる 「買ってよかった」→リピート(→ 19-5)

①問題認識の"きっかけ" ― 内部刺激と外部刺激

買い物のスタート地点である問題認識は、2種類のきっかけで生まれます。

  • 内部刺激:自分の中から生じるもの。例)家庭内の在庫(ストック)が減った、お腹が空いた。
  • 外部刺激:外から与えられるもの。例)広告を見た、店頭で新商品に気づいた。

最寄品(日用品など)では、この「家庭内ストックの減少」=内部刺激「広告など」=外部刺激が 問題認識の主な引き金になります。

②情報探索と③代替案評価 ― 「考慮集合」がカギ

ここが試験の急所です。消費者は「知っている商品すべて」を平等に検討するわけではありません。 頭の中では、次のように候補がだんだん絞り込まれていきます。

入手可能な全ブランド
   ↓(知っているものだけ)
知名集合(想起集合の外側)
   ↓(実際に「買ってもいいかな」と検討する)
考慮集合(=想起集合)  ← 消費者はここに絞って情報収集・評価する
   ↓
最終的に1つを選択
  • 考慮集合(想起集合):消費者が実際に購入候補として検討する、少数のブランドの集まり
  • 消費者は「知っている商品をすべて評価する」のではなく、この考慮集合に絞り込んで情報収集・評価します。 ここを「知っている全商品を検討する」とすり替えるのが定番の引っかけです。

代替案を評価するときは、消費者の選好(好み)が重要で、これは主観的な評価に基づきます。 また、各ブランドを平面上の位置関係で表した図を知覚マップ(ポジショニング・マップ)と呼びます。

📝 過去問はこう出る(H20 第36問) 購買行動の5段階に関する「最も不適切なもの」を選ぶ問題。正解(=誤り)は 「選択の対象として、存在を知っている商品のすべてについて情報収集・評価を行う傾向にある」。 実際は考慮集合(想起集合)に絞り込んで検討するのが通常なので、これがバツ。 「知覚マップ」「高関与だと広範囲に情報探索」「最寄品の問題認識は内部・外部刺激」「選好は主観的評価」は すべて正しい記述でした。 → H20 第36問

💡 覚え方:探索は"外"だけじゃない 情報探索には、記憶の中を探す内部探索と、広告・店頭・口コミを探す外部探索の2つがあります。 よく知っている低関与の商品ほど内部探索で済み、初めての高関与の商品ほど外部探索が広がります。


19-2 関与と購買行動の類型

関与(involvement)とは ― 「どれくらい真剣か」

関与(インボルブメント)とは、ひとことで言えば

ある対象(製品・購買・広告など)に対して、消費者が感じる関心の高さ・重要度の程度

です。同じ買い物でも、「絶対に失敗したくない」と真剣になる高関与の状態と、「なんでもいい」と軽く済ませる 低関与の状態があります。ここを混同させる選択肢が頻出なので、次の対比を体で覚えましょう。

高関与 低関与
情報探索 広く・慎重に行う 簡略化し、あまり行わない
購買前の評価 慎重に評価してから買う 慎重な事前評価はしない
車・住宅・保険 ガム・ティッシュ

関与でつまずかないための3点

  • 関与は製品カテゴリーへの関心「だけ」に限らない。購買状況・広告など、さまざまな対象に対して生じます (購買関与・状況関与など)。「製品カテゴリーに限定される」は誤り。
  • 関与の水準は変動する。消費者によって違うだけでなく、同じ人でも状況(用途・リスク・時間の制約)で変わります。 「同一人物なら常に安定・不変」は誤り。
  • 高関与ほど事前に慎重評価する/低関与では情報処理を簡略化する。この高低を逆にした選択肢は必ずバツ。

📝 過去問はこう出る(R01 第34問) 関与に関する「最も適切なもの」を選ぶ問題。正解は 「高関与な消費者に金銭的・社会的リスクや専門性を知覚させることで、企業はマーケティング・ コミュニケーションへの反応を高められる」。 「関与は製品カテゴリーに限定」(×)、「同一消費者では変動せず安定的」(×)、 「低関与でも購買前に慎重な評価を行う」(×=高低が逆)はすべて誤りでした。 → R01 第34問

アサエルの購買行動4類型

H. アサエルは、①関与の高さ②ブランド間の知覚差異(ブランドの違いをどれだけ感じるか)の 2軸で、消費者の購買行動を4つのタイプに分けました。R06 第38問でも問われた重要フレームです。

                ブランド間の知覚差異
                  大            小
         ┌─────────────┬─────────────┐
   関与 高 │ ① 複雑な       │ ② 不協和低減  │
         │   購買行動      │   の購買行動   │
         ├─────────────┼─────────────┤
   関与 低 │ ④ バラエティ    │ ③ 習慣的      │
         │   シーキング     │   購買行動     │
         └─────────────┴─────────────┘
類型 関与 × 知覚差異 特徴
① 複雑な購買行動 高関与 × 差異大 じっくり調べ、慎重に比較して選ぶ 自動車・パソコン
② 不協和低減の購買行動 高関与 × 差異小 高価だが違いが分かりにくく、買った後に不安(不協和)が残りやすい カーペット・宝飾品
③ 習慣的購買行動 低関与 × 差異小 深く考えず、いつものものを惰性で買う 塩・ティッシュ
④ バラエティシーキング 低関与 × 差異大 不満ではなく「飽き・変化」を求めて別ブランドを試す お菓子・清涼飲料
  • バラエティシーキングは、低関与かつブランド間の知覚差異が大きい場合に最も起こりやすい行動です。 「不満だから乗り換える」のではなく、刺激や目新しさを求めて意図的に違うものを試すのがポイント。
  • ④を「ブランドスイッチング(乗り換え)」と混同しないよう注意。バラエティシーキングは満足していても起こります。

📝 過去問はこう出る(R06 第38問・設問2) アサエルの類型に関する正解は「関与が低く、ブランド間の知覚差異が大きい場合に バラエティ・シーキング(多様性追求)が最も起こりやすい」。 同じ問題の設問1では、デモグラフィック変数(性別・年齢・年収・社会的地位・ライフステージ)と サイコグラフィック変数(趣味・価値観・関与・ライフスタイル)の区分が正しい選択肢が正解でした。 あわせて覚えておきましょう。 → R06 第38問

⚠️ 混同注意:バラエティシーキング と 認知的不協和 - バラエティシーキング低関与で「飽きたから別のを試す」(購買"時"の行動) - 認知的不協和高関与で「この選択で良かったか不安」(購買"後"の心理/→ 19-5) 関与の高低が真逆です。H27第31問では、この2つ+ブランドスイッチングを選択肢に並べて惑わせてきました。


19-3 消費者の情報処理(知覚・記憶・態度・ELM)

消費者の頭の中では、外から入った情報が「知覚 → 記憶 → 態度」という順で処理され、買うかどうかの 判断につながります。ここは、企業が広告や店頭づくりを考えるときの土台になります。

知覚 ― 五感を通じて意味づける(感覚マーケティング)

知覚とは、五感(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚)を通じて外の刺激を受け取り、意味づける働きです。 近年は五感に働きかける感覚マーケティングが問われます。ポイントは、知覚は「物理的な刺激そのまま」 ではなく、消費者が経験・文化を通じて学習した"連想"に強く影響されるという点です。

  • への反応は、物理的な波長だけでなく、経験を通じて学習した連想(意味づけ)に影響される
  • 音・音楽とブランドを結びつけるサウンド・ロゴ(オーディオブランディング)は、むしろ有効な戦略
  • 味覚の評価も、受容体の反応だけでなく文化的要因・期待に強く影響される
  • においは脳の大脳辺縁系で処理され、記憶・感情と強く結びつき、消費者行動に直接的で強い影響を与える。
  • また消費者は、自分に関連する情報だけに注意を向ける選択的注意を働かせています。

📝 過去問はこう出る(R03 第29問) 消費者の知覚に対応したマーケティング(感覚マーケティング)の「最も適切なもの」を選ぶ問題。正解は 「オンライン販売でも、視覚を通じて製品の重さ(触覚的属性)を知覚させることは可能」。 「色の知覚は連想に影響されない」「音とブランドの結びつきは作らない方がよい」「味覚は文化的要因の影響を受けない」 「においは行動への直接の影響がほとんどない」は、いずれも知覚のしくみとでバツでした。 → R03 第29問

態度と多属性態度モデル ― 「補償型」か「非補償型」か

態度とは、ある対象への「好き・嫌い」といった一貫した評価の傾向です。消費者が複数の属性 (価格・デザイン・性能…)を総合して態度を決めるしくみを説明するのが多属性態度モデルです。

  • 補償型(線形補償モデル):ある属性のマイナスを、他の属性のプラスで埋め合わせて総合評価する。 「価格は高いがデザインが良いので買う」といった、トレードオフを許す評価方式。
  • 非補償型:ある基準を満たさないとその1点で候補から外す(埋め合わせを認めない)。
  • 「人は属性のマイナスを他属性のプラスで相殺しない」と断定するのは、補償型を見落とした誤りです。

精緻化見込みモデル(ELM=Elaboration Likelihood Model)

ELM(精緻化見込みモデル)は、人が説得情報をどう処理して態度を決めるかを、2つのルートで説明する理論です。

ルート どんなとき通るか 何を手がかりにするか
中心的ルート 動機づけが高く、能力があり、時間・機会もある(高関与寄り) 情報の中身・論理をじっくり吟味(=精緻な処理)
周辺的ルート 動機づけ・能力・機会が乏しい(低関与寄り) 周辺的手がかり(好感度・タレント・雰囲気)で簡単に判断
  • ここが最頻出の急所です。中心的ルート(時間や労力をかけた精緻な処理)がとられるのは、 「動機づけが高い」「処理能力がある」「処理の機会・時間がある」の3条件がすべて満たされたときです。
  • これを「いずれか1つの条件が満たされれば中心的ルートを通る」と書くのは誤りAND(すべて)であって OR(どれか)ではありません。

📝 過去問はこう出る(H28 第33問) 消費者の購買行動に関する「最も適切なもの」を選ぶ問題。正解は 「関与が高く、かつ製品知識が豊富な人は、評価基準が確立しているため、限定的(簡略な)意思決定プロセスをとりやすい」。 一方、ELMの選択肢は「中心的ルートの条件がいずれか1つ満たされた場合」となっていた点が誤り(正しくは3条件すべて)。 多属性態度理論で「マイナスを相殺しない」と断定した選択肢も、補償型を無視していてバツでした。 → H28 第33問

関与と知識で「重視する情報源」が変わる

関与の高低と製品知識の高低の組み合わせで、消費者が頼りにする情報源は変わります。 H24 第26問は、この対応関係を表で問いました。

低関与 高関与
低知識 テレビCMなど(受動的に受け取る) 販売員の説明(人に頼る)
高知識 店頭の現物(自分で確かめる) 製品仕様書(自分で詳細に精査)

📝 過去問はこう出る(H24 第26問) 設問1(関与の説明)の正解は「関与が高まると、消費者の注意や情報探索の量が増加する」。 「関与が高まると情報処理が単純化される」はでバツ。 設問2は上の表のとおり、A=テレビCM/B=販売員の説明/C=店頭の現物/D=製品仕様書の組み合わせが正解でした (低関与・低知識=テレビCM…)。 → H24 第26問


19-4 まわりの人の影響 ― 準拠集団・家族・オピニオンリーダー

消費者は一人で決めているようで、実はまわりの人や集団の影響を強く受けています。ここも頻出テーマです。

準拠集団 ― 態度・行動の"ものさし"になる集団

準拠集団とは、個人が自分の態度や行動を決めるときに基準(ものさし)とする集団です。 「今、自分が所属している集団」だけではない点が最大のポイントです。

タイプ 意味
所属集団 実際に属している集団 家族・職場・仲間
願望集団(憧れの集団) 属したいと憧れる集団・人物 好きな有名人・セレブ
拒否集団(負の準拠集団) あんなふうになりたくない集団 避けたい層
  • 準拠集団は所属集団に限らず、願望集団や拒否集団も含みます。「準拠集団=所属集団のこと」と限定するのは誤り。
  • 「拒否集団を連想させるブランドを避ける」という形でも、準拠集団は購買に影響します。

公的消費 vs 私的消費 ― 影響が効くのはどっち?

準拠集団の影響が大きくなるのは、人の目に触れる場で使う「公的消費財」のほうです。ここは何度も問われます。

  • 公的消費財(服・時計・車など人目につくもの)… 他者・準拠集団の影響が大きい
  • 私的消費財(人目につかない場で使うもの)… 影響は小さい
  • 人の目に触れない商品で準拠集団の影響が大きい」は、方向がでバツ(頻出の引っかけ)。

📝 過去問はこう出る(H19 第32問) 準拠集団に関する「最も不適切なもの」。正解(=誤り)は 「他人の目に触れないような商品のブランド選択行動について、準拠集団が与える影響は大きい」。 正しくは、影響が大きいのは公的・顕示的に消費される商品です。 「憧れの有名人と同じものが欲しい(願望集団)」「模範にしたくない(拒否集団)」も準拠集団の影響として正しい記述でした。 → H19 第32問

オピニオンリーダー・口コミネットワーク

  • オピニオンリーダー:ある分野で情報発信し、他者の購買に影響を与える人。 必ずしも最初に買うイノベーター(革新的採用者)とは一致しません。「オピニオンリーダー=イノベーター」は誤り。
  • 口コミの広がり:情報を広く拡散させるには、グラノヴェッターの「弱いつながりの強さ」のとおり、 異なるネットワークを橋渡しする弱い紐帯(ゆるいつながり)が重要な役割を果たします。

社会的アイデンティティ ― 「自分は何者か」で選ぶ

社会的アイデンティティとは、「自分は◯◯の一員だ」という所属による自己認識です。消費者は 「自分らしさ・所属を示す」ために商品やブランドを選ぶことがあります。

  • 自己高揚:他者から肯定的な評価を得たい、否定的評価を避けたいという欲求。 自己高揚の強い消費者ほど、所属集団より願望集団(憧れの集団)で使われるブランドとの結びつきを強めます。
  • 傍観者の影響:「自分に影響を与えようとする意図をもつ他者」だけでなく、単にその場に居合わせるだけの他者からも 消費者行動は影響を受けます。「その場にいるだけの他者からは影響を受けない」は誤り。

📝 過去問はこう出る(R02 第33問) 社会的アイデンティティに関する「最も適切なもの」。正解は 「自己高揚のレベルが高い消費者は、所属集団よりも願望集団で使用されるブランドとの結びつきを強める」。 「拒否集団を避ける傾向は見られていない状況で強い」(×=公的状況で強い)、 「外集団すべてに無関心になる」(×)、「その場にいるだけの他者からは影響を受けない」(×)は誤りでした。 → R02 第33問H29 第35問

消費の分析単位 ― 個人か、家族・家計か

消費行動の分析では、個人ではなく「家族」「家計」を単位とすることがよくあります。 家族の人数などの規模的な要因が消費に大きく影響するためです。H26 第30問は、この分析視点を問いました。

アプローチ 着目点 ひとことで
ライフサイクル・アプローチ 家族を人の一生になぞらえた、普遍的・共通的な段階 みんなに共通する家族の段階
ライフスタイル・アプローチ 価値観・生活様式。サイコグラフィクスを源流とする 生き方・価値観で分ける
ライフコース・アプローチ 個人のライフイベントの選択による人生の多様化 一人ひとりの人生の分岐
  • ライフサイクルは「みんなに共通の段階」、ライフコースは「個人ごとの多様な道筋」。この2つの説明の すり替えが定番です(「個別家族に固有の出来事を反映」するのはライフコースの特徴)。
  • ライフスタイル・アプローチは、モチベーション・リサーチやパーソナリティ研究から発展した サイコグラフィクスを源流とします。

📝 過去問はこう出る(H26 第30問) 空欄補充(設問1)の正解は「A社会/B経済/C消費様式/D支出」=家族という「社会」単位、家計という「経済」単位。 設問2は「ライフスタイル・アプローチはサイコグラフィクスを源流とする」が正解。 設問3は「ライフコースは、ライフイベントごとの選択が人生の道筋を多様化させ、社会人教育や婚活など新たな消費機会を生む」が正解でした。 なお、女性の年齢別労働力率は「V字」ではなく「M字曲線」と呼ぶ点も引っかけとして出ています。 → H26 第30問

📝 過去問はこう出る(R07 第36問) 「購買関与度」×「製品判断力」で意思決定を4分類した図の問題。 店員との会話や知人・友人・家族のクチコミ(人的情報源)で意思決定されやすいのは、 「関与は高いが、自分で良し悪しを判断する力(製品判断力)が低い」セル。 自分で評価できないぶん、店員や信頼できる他者のクチコミに頼るからです。 → R07 第36問


19-5 購買後の消費者行動(顧客満足・期待不確認・認知的不協和)

買い物はレジで終わりではありません。買った後の満足・不満は、リピートや口コミを通じて次の売上を左右します。

顧客満足と「期待不確認モデル(期待‐不一致モデル)」

顧客満足は、その商品の絶対的な性能だけでは決まりません。次の比較で決まります。

   事前の期待     と     実際の成果(パフォーマンス)  を くらべる
        │                        │
   成果 > 期待 → 満足(うれしい)
   成果 = 期待 → まあ満足
   成果 < 期待 → 不満(がっかり)

この考え方を期待不確認モデル(期待‐不一致モデル)といいます。ここから、実務上の大事な教訓が出ます。

  • 事前の期待を上げすぎると、かえって不満につながる。広告で期待を過度にあおると、成果が追いつかず 「思ったほどではなかった」となりやすいからです。
  • したがって「満足度を高めるために、広告で事前の期待を大きく高めておく必要がある」は誤り
  • 逆に、高満足の顧客に広告の推奨者(口コミ・証言型広告)になってもらうのは有効な打ち手です。

📝 過去問はこう出る(H19 第27問) 購買後行動に関する「最も不適切なもの」。正解(=誤り)は 「購買後の満足度を高めるために、広告などを活用して事前の期待を大きく高めておく必要がある」。 満足は期待と成果の比較で決まるため、期待を過度に上げると満足度が下がるおそれがあります。 「高満足の顧客を広告の推奨者に」「廃棄段階の環境意識に配慮」「購買後評価はブログ等で広く伝わる」 「企業の想定しない用途の発見に耳を傾ける」は、すべて正しい記述でした。 → H19 第27問

認知的不協和 ― 「本当にこの選択でよかったのか」

高価な買い物や高関与の商品では、買った後に「本当にこれで良かったのか、もう一方が良かったのでは」と 心理的な緊張・不快感を覚えることがあります。これを認知的不協和(フェスティンガーの理論)と呼びます。

  • いつ起きやすいか高関与で、選んだものと選ばなかったものの魅力が拮抗しているとき (=アサエルの「不協和低減の購買行動」/19-2)。
  • どう解消するか:人は不快を減らそうと、自分の選択を正当化します。具体的には、購入後にあえて その商品の広告や企業のホームページを見て「やっぱり良い買い物だった」と確信を得ようとします。
  • 企業側は、購入後に「良い選択でしたよ」と後押しする情報提供(アフターフォロー)で不協和をやわらげられます。

📝 過去問はこう出る(H27 第31問) 「購入後に生じる、2つの認識の矛盾による心理的緊張」を表す語句を選ぶ問題。 正解はイ 認知的不協和。サイコグラフィックス(消費者分類の手法)、バラエティシーキング(飽きから別を試す行動)、 ブランドスイッチング(乗り換え行動)は、いずれも"購入後の心理的緊張"を表す語ではありません。 設問2では「この状態が生じると、好ましい情報を求めて当該企業のHPや広告を見る傾向がある」が適切とされました。 → H27 第31問

⚠️ 混同注意:ロイヤルティの2つの落とし穴 - 潜在的ロイヤルティ=好ましい態度・高い購買意向はあるのに、購買行動に移していない人。 - 見せかけのロイヤルティ=態度は低いのに、惰性・利便性などで反復購買してしまっている人。 「態度」と「行動」がねじれている点が違います(H28第33問の選択肢で説明が逆にされていました)。


この章のまとめ(試験直前チェック)

  • ☐ 購買意思決定プロセス=問題認識→情報探索→代替案評価→購買決定→購買後行動の5段階
  • ☐ 問題認識のきっかけ=内部刺激(在庫減など)外部刺激(広告など)
  • ☐ 消費者は知っている全商品ではなく考慮集合(想起集合)に絞って評価する(★頻出の引っかけ)
  • 関与=関心・重要度の高さ。高関与=広く慎重に探索・評価/低関与=簡略化(高低の逆に注意)
  • ☐ 関与は製品カテゴリーに限らず、状況で変動する(「限定・不変」は誤り)
  • ☐ アサエルの4類型=複雑/不協和低減(高関与)習慣的/バラエティシーキング(低関与)
  • バラエティシーキング=低関与×知覚差異大(飽き・変化を求めて試す)
  • ☐ 知覚(感覚マーケティング)は学習した連想・文化に影響される/においは大脳辺縁系で記憶・感情と直結
  • ELMの中心的ルートは「動機づけ・能力・機会」の3条件すべてが必要(「いずれか1つ」は誤り)
  • ☐ 多属性態度=補償型(マイナスを他でカバー)非補償型がある
  • 準拠集団=所属集団に限らず、願望集団・拒否集団も含む
  • ☐ 準拠集団の影響は公的消費財(人目につく)で大きい(「私的消費財で大きい」は逆で誤り)
  • ☐ オピニオンリーダー≠イノベーター/口コミ拡散は弱い紐帯が重要
  • ☐ 消費の分析単位=家族・家計。ライフサイクル(共通段階)/ライフスタイル(サイコグラフィクス)/ライフコース(個人の多様化)
  • ☐ 顧客満足=期待と成果の比較(期待不確認モデル)。期待を上げすぎると不満に
  • 認知的不協和=高関与での購入後の心理的緊張(フェスティンガー)。正当化のため広告等を見る

この章に対応する主な過去問

年度・問 論点 リンク
H19 第27問 購買後の消費者行動(期待不確認) 問題
H19 第32問 準拠集団と消費者行動 問題
H20 第36問 購買行動プロセス・考慮集合 問題
H24 第26問 関与・知識と情報源 問題
H26 第30問 消費の分析単位(家族・家計) 問題
H27 第31問 認知的不協和(購買後の心理) 問題
H28 第33問 精緻化見込みモデル(ELM)・態度 問題
H29 第35問 準拠集団・口コミ・オピニオンリーダー 問題
R01 第34問 消費者の関与 問題
R02 第33問 社会的アイデンティティ 問題
R03 第29問 消費者の知覚(感覚マーケティング) 問題
R06 第38問 消費者市場の分析・アサエルの類型 問題
R07 第36問 関与度×製品判断力と情報源 問題

次章予告 ▶ 第20章「製品戦略・ブランド戦略」 本章で見た「消費者の頭の中」を踏まえて、いよいよ企業側の打ち手に入ります。 製品の3層モデル、製品ミックス、そして頻出のブランド戦略(ブランド・エクイティ、ブランド拡張)を扱います。