第18章 マーケティング・リサーチ

この章のねらい マーケティングは「顧客を知ること」から始まります。その"顧客を知るための道具箱"が マーケティング・リサーチ(市場調査)です。ここでは、①どんな順番・種類で調べるか(調査の設計)、 ②どんなデータをどんな方法で集めるか、③数字で測る調査(定量)と気持ちを深く探る調査(定性)の違い、 ④誰を対象に選ぶか(標本抽出)と、集めた数字の"ものさし"(尺度)、⑤本番前の小さな実験(テスト・マーケティング) ——という一連の流れを学びます。

過去問での出方:この分野は毎年のように第28〜40問あたり(マーケティング領域)で1問出ます。 論点は「用語のすり替え」がほとんど。モチベーション・リサーチ/投影法1次データと2次データ尺度(名義・順序・間隔・比率)全数調査と標本調査探索的/記述的/因果的調査観察法(エスノグラフィー)などの言葉を、正しい意味とセットで覚えれば得点源になります。 難しい計算はほとんど出ません。"言葉と定義の正確な対応づけ"がすべての分野です。


18-0 この章の地図

この章は、「調査をどう組み立てるか(手順・種類)」→「データと集め方」→「数字で測るか/気持ちを探るか」→ 「誰を選ぶか・どう測るか」→「本番前の試し打ち」という順に進みます。全体像を先につかみましょう。

18-1 リサーチの手順と種類        … 探索的 → 記述的 → 因果的(調べる目的で3タイプ)
   │
18-2 データの種類と調査法        … 1次/2次データ、質問法・観察法・実験法
   │
18-3 定量調査と定性調査          … デプス/グループインタビュー、投影法(★頻出)
   │
18-4 標本抽出と尺度・信頼性/妥当性 … 確率/非確率抽出、名義・順序・間隔・比率尺度
   │
18-5 テスト・マーケティング       … 本格導入前の小さな実験(代表市場で試す)

💡 いちばん大事な合言葉:この章は「言葉のすり替えを見抜くゲーム」です。 過去問の誤り選択肢は、ほぼ全部「Aの説明をBの名前で言う」という形の引っかけです。 だから、勉強法は「用語 ↔ 定義」を1対1でひもづけて覚えること。これに尽きます。


18-1 リサーチの手順と種類

マーケティング・リサーチとは

マーケティング・リサーチ(marketing research=市場調査)とは、ひとことで言えば

「マーケティングの意思決定に役立てるために、市場・顧客・競合についての データを集めて分析し、判断材料をつくる一連の活動」

です。「なんとなくの勘」ではなく、データにもとづいて決めるための土台づくりだと考えてください。

リサーチの標準的な手順

調査は、思いつきで質問を作るのではなく、次の順序で進めるのが基本です。

① 問題・課題の設定   … 何を知りたいのか(意思決定の論点)をはっきりさせる
   ↓
② 調査の設計         … どのタイプの調査で、どんなデータを、どう集めるか決める
   ↓
③ データ収集         … 質問法・観察法・実験法などで実際に集める
   ↓
④ 分析・解釈         … 集計・統計分析し、意味を読み取る
   ↓
⑤ 報告・意思決定      … 結果を判断材料として活かす
  • 一番大事なのは①。「何を知りたいか(課題)」が曖昧なまま調べても、使えない結果しか出ません。

調査の3つのタイプ(目的で分ける)

調査は「何を目的にするか」で、次の3タイプに分けられます。この3分類は頻出です。

タイプ 目的(何のために) ひとことで 主な方法
① 探索的調査 問題やアイデアの手がかりを見つける(仮説づくり) ぼんやりした問題を"あたりをつける" 文献調査、デプス/グループインタビュー、観察、リード・ユーザー法
② 記述的調査 市場の実態を数字で描く(誰が・何を・どのくらい) 現状を"きちんと測る" アンケート(サーベイ)、統計データ
③ 因果的調査 「AだからB」という原因と結果の関係を確かめる 「値下げしたら売れるか?」を"実験で確かめる" 実験法
  • 探索的調査は、まだ問題がはっきりしない初期段階に使い、仮説(こうではないか、という仮の答え)を作るのが役目。 ここでは1つの方法にこだわらず、複数の方法を組み合わせて多面的に探るのが有効です。
  • 記述的調査は、探索で立てた仮説を前提に、「どのくらい」を数量的に測る段階。
  • 因果的調査は、条件を変えて結果を比べる実験が中心。「本当にそれが原因か」を突き止めます。

⚠️ 混同注意:探索的調査は「1つの方法で」ではない R03年第37問では「探索的調査は原則として調査目的に対して1つの方法で実施される」が 誤りとされました。探索段階はむしろ複数の方法を組み合わせて多面的に把握するのが有効です。 「探索=1つの方法に絞る」という思い込みは引っかけです。

📝 過去問はこう出る(R03 第37問) マーケティング・リサーチの手法と質的・量的研究を問う問題。正解は 「アイトラッキング・fMRI・GPSなどで得られる無意識・非言語の反応データを、 アンケートなどの意識データと併せて分析することで、より正確な結果が得られる」(選択肢ア)。 一方、「探索的調査は原則1つの方法で実施」(イ)や、 「家庭にビデオを設置して使用状況を観察する調査をギャング・サーベイと呼ぶ」(ウ)は誤り (それは観察法であって、ギャング・サーベイ=多人数を1会場に集める調査ではない)。 → R03 第37問


18-2 データの種類と調査法

1次データと2次データ ★頻出

集めるデータは、「誰が・何のために集めたか」で2種類に分けます。ここは毎年のように引っかけが出ます。

区分 定義(ここが決め手) 特徴
1次データ(プライマリー・データ) 今回の調査目的のために、自分で新たに集めるデータ 自社が実施したアンケート、インタビュー、実験の結果 目的に合うが、時間・コストがかかる
2次データ(セカンダリー・データ) すでに存在する(他の目的で集められた)データ 官公庁の統計、業界レポート、社内に蓄積済みの売上・顧客データ、他社の調査 早く・安く手に入るが、目的にぴったりとは限らない
  • 見分けの決め手は「今回の調査のために新しく集めたか」。 自社の売上データも、"すでに蓄積されている"なら2次データです(自社のものでも1次とは限らない!)。
  • 調査の定石:まず安い・早い2次データから調べ、それで足りなければ1次データを新たに集める。 いきなり1次データから始めるのは、ふつう非効率です。

⚠️ 混同注意:「社内データ=1次データ」ではない R06年第39問(選択肢オ)で「自社にすでに蓄積された内部データは1次データ、 他組織が集めた外部データは2次データ」という記述が誤りとされました。 今回の目的で新規に集めたものだけが1次データ。すでにある社内データも他社データも、 どちらも2次データです。「内部=1次/外部=2次」という分け方は間違いです。

⚠️ 混同注意:調査は2次データ → 1次データの順 H28年第29問(選択肢エ)で「担当者は自社に適した最新データを得るため、 一次データの収集から始めるのが一般的」が誤りとされました。 定石は「まず2次データ → 足りなければ1次データ」です。

主な調査法(データの集め方)

データを実際に集める方法は、大きく次の3つです。

調査法 どうやって集めるか 向いているもの 具体例
① 質問法(サーベイ法) 対象者に質問して答えてもらう 意識・意見・態度の把握 アンケート、面接調査、電話・郵送・Web調査
② 観察法 対象者の行動をそのまま観る 本人が言葉にしにくい行動・実態 店頭での動線観察、エスノグラフィー、POSデータ、アイトラッキング
③ 実験法 条件を操作して結果の差を測る 原因と結果の関係(因果) 価格・広告を変えて売上を比較、テスト・マーケティング

観察法の代表:エスノグラフィー

エスノグラフィー(ethnography)は、もともと文化人類学の手法で、 調査者が対象者の生活の中に入り込み、行動をありのままに観察・記録する調査法です。 「顧客の生活に密着して、本人も気づいていない行動やニーズを発見する」のが強みです。

  • アンケートでは「本人が言葉にできること」しか集まりませんが、 観察法なら「本人が無自覚な行動」まで捉えられるのが大きな違いです。

📝 過去問はこう出る(H28 第29問) 設問1のマーケティング・リサーチの正解は「コールセンターやWebサイトに寄せられる ユーザーの声(蓄積データ)にデータマイニングを行うのは一般に有効」(選択肢イ)。 誤りの選択肢では、「売上高・利益・GRPは間隔尺度」(→正しくは比率尺度)、 「1つの選択項目に複数の論点を詰め込む」(→ダブルバーレル質問でNG)、 「まず1次データ収集から始める」(→2次データが先)が引っかけでした。 また設問2の「顧客の生活に入り込んで観察する手法=エスノグラフィー」も要暗記。 セントラル・ロケーション・テスト(会場集合型)やニューロ・マーケティング(脳科学測定)とは別物です。 → H28 第29問

💡 ダブルバーレル質問に注意 「あと味がすっきりかつ健康促進効果があるのが望ましいか?」のように、 1つの質問に2つの論点を詰め込むと、回答者はどちらに答えたのか分からなくなります。 これをダブルバーレル質問(一石二鳥のマズい質問)といい、質問票づくりでは避けるべき失敗例です。


18-3 定量調査と定性調査

2つの調査スタイル

マーケティング・リサーチは、大きく「数字で測る」定量調査と「気持ちを深く探る」定性調査に分かれます。

定量調査(量的研究) 定性調査(質的研究)
集めるもの 数字(何人が・何%が・いくつ) 言葉・行動・気持ち(なぜ・どう感じるか)
代表的な方法 アンケート(サーベイ)、実験 デプスインタビュー、グループインタビュー、観察、投影法
目的 実態の測定・仮説の検証 深層心理の探索・仮説の発見
仮説との関係 演繹的(理論から仮説→検証) 帰納的(データから仮説を生成)
サンプル数 多い(統計処理する) 少ない(深く掘る)

⚠️ 混同注意:量的=演繹/質的=帰納(逆に注意) R03年第37問(選択肢エ)は、量的研究と質的研究の説明をにした引っかけでした。 正しくは—— - 量的研究=演繹的:先に理論・仮説を立て、実験・調査で検証する - 質的研究=帰納的:データを集めながら、そこから仮説を作り出していく 「演繹=先に仮説あり(量的)」「帰納=データから仮説(質的)」とセットで覚えましょう。

定性調査の代表的な手法

手法 内容 ポイント
デプスインタビュー(深層面接) 調査者と対象者が1対1でじっくり深く聞く 個人の深層心理を掘る。集団ではない
グループインタビュー(FGI=フォーカス・グループ・インタビュー) 数人を集めて座談会形式で語り合ってもらう グループダイナミクス(参加者同士の相互作用)で思わぬ発見が生まれる
投影法 直接聞きにくい本音を、別のもの・他者に投影させて引き出す 語句連想法・文章完成法・物語法・第三者技法など

⚠️ 混同注意:デプス(1対1)とグループ(複数人) H26年第27問(設問2・選択肢イ)は「複数の消費者を集めてデプス・インタビューを実施し、 グループダイナミクスの効果で発見を得る」を誤りとしました。 グループダイナミクス(集団の相互作用)が働くのはグループインタビュー(FGI)であって、 1対1のデプスインタビューではありません。「集団=グループ/1対1=デプス」の取り違えが定番です。

モチベーション・リサーチ(動機調査)と投影法 ★頻出

モチベーション・リサーチ(motivation research=動機調査)は、 消費者の購買行動の根っこにある"深層心理・無意識の動機"を探る定性調査です。

  • 時代背景1950〜60年代のアメリカで、精神分析や臨床心理学を応用して盛んに行われました。
  • 代表的な技法が「投影法」。「あなたは?」と直接聞くと本音が出にくいので、 他者やモノに気持ちを投影させて、無意識の本音を引き出します。
投影法の種類 やり方
語句連想法 提示した語句から連想する言葉を答えさせる
文章完成法 未完成の文を提示して続きを書かせる
物語法 絵や状況から物語を作らせる
第三者技法 一般的な主婦はどう考えるか」のように、第三者に語らせて本人の本音を投影させる
ロールプレイング法 ある役割を演じさせる
  • モチベーション・リサーチの弱点(方法論上の問題)は2つ。 ① サンプル・サイズの確保が困難(少数を深く掘るため)、 ② 解釈の客観性の確保が困難(専門家の主観的解釈に依存するため)。 近年はインターネット調査+テキスト・マイニングでこの弱点を克服しつつあります。
  • 逆に、モチベーション・リサーチは「非合理的な動機の把握」はむしろ得意です(弱点ではありません)。

📝 過去問はこう出る(H24 第28問) 「一般的な主婦はどう考えるか」と第三者に語らせて本音を投影させる手法は第三者技法(設問1=イ)。 また、モチベーション・リサーチの方法論上の問題は「サンプル・サイズの確保が困難」と 「解釈の客観性の確保が困難」の組み合わせ(設問2=ア)。 「非合理的な動機の把握が困難」は逆(むしろ得意)なので誤りです。 → H24 第28問

⚠️ 混同注意:モチベーション・リサーチ ≠ ニューロ・マーケティング R07年第28問(選択肢ア)は、「1950〜60年代に精神分析・臨床心理学で深層心理を探った手法」を ニューロ・マーケティング・リサーチと呼んだため誤りでした。 それはモチベーション・リサーチです。 ニューロ・マーケティングは、脳科学・生理反応(脳血流やfMRIなど)を使う近年の手法。 「古い=モチベーション(精神分析)/新しい=ニューロ(脳科学)」と時代で区別しましょう。

ジョハリの窓とリサーチ手法

ジョハリの窓は、自己を「自分でわかっている/わからない」×「他人がわかっている/わからない」の 4象限に分けた図です。もとは心理学の概念ですが、「どのリサーチ手法がどの自己データに有効か」という形で出題されました。

                自分でわかっている   自分ではわからない
他人がわかっている  ┌──────────┬──────────┐
                  │ 開放の窓    │ 盲点の窓    │
他人はわからない    ├──────────┼──────────┤
                  │ 隠された窓   │ 未知の窓    │
                  └──────────┴──────────┘
状態 有効なリサーチ手法
開放の窓 自他とも認識 インタビュー、行動観察、アンケート
盲点の窓 他人は認識・本人は無自覚 行動観察調査(本人が語れないため観察で捉える)
隠された窓 本人は認識・他人は知らない インタビュー(本人が語れる)
未知の窓 自他とも未認識 どの手法でも捉えにくい
  • ポイント本人が無自覚な「盲点の窓」は、自己申告のアンケートでは取れない。 第三者が外から観る行動観察調査が有効です。ここが正解の急所でした。

📝 過去問はこう出る(R06 第40問) 正解は「行動観察調査は『盲点の窓』のデータ収集に有効」(選択肢ウ)。 「盲点の窓」は本人が無自覚な領域なので、本人の自己申告に頼る定量アンケートでは取れず、 外から観察する行動観察が向いています。「未知の窓をアンケートで把握」なども、 自他とも未認識の領域を自己申告で測れるはずがなく誤りです。 → R06 第40問


18-4 標本抽出(サンプリング)と尺度・信頼性/妥当性

全数調査と標本調査

調査の対象を「全員」にするか「一部」にするかで、次の2つに分かれます。

区分 別名 内容 特徴
全数調査 悉皆(しっかい)調査 母集団の全員を調べる 正確だが、時間・コストが大きく現実的でないことが多い
標本調査 サンプリング調査 母集団の一部(標本)を抽出して調べる 効率的。母集団を正しく代表する標本を選べるかがカギ
  • 母集団=知りたい対象の全体(例:全顧客)。標本(サンプル)=そこから抜き出した一部。
  • 標本調査で大事なのは、「母集団の特徴を反映した、偏りのない標本」を選ぶこと(代表性)。

⚠️ 混同注意:「悉皆調査」=全数調査 R06年第39問(選択肢エ)は「母集団の一部を標本として抽出する調査を悉皆調査」と呼んで誤りでした。 悉皆(しっかい)=全部という意味。悉皆調査=全数調査です。 一部を抽出するのは標本(サンプリング)調査。言葉の意味を取り違えないようにしましょう。

標本抽出(サンプリング)の方法

標本の選び方は、大きく確率抽出法非確率抽出法の2系統に分かれます。

系統 考え方 代表的な方法
確率抽出法(無作為抽出) 偶然(くじ引き)で選ぶ。誰が選ばれる確率も分かっている 単純無作為抽出法、層化抽出法、系統(等間隔)抽出法、多段抽出法、クラスター抽出法
非確率抽出法(有意抽出) 調査者の判断・都合で選ぶ。確率的な代表性は保証されない 有意抽出法、割当法(クォータ)、機縁法(縁故)、応募法
  • 確率抽出法は、統計的に「母集団を代表している」と言えるのが強み。推測統計はこれが前提
  • 単純無作為抽出法:全員から純粋にランダムに選ぶ(いちばん基本)。
  • 層化抽出法:母集団を年齢や地域などの層に分けてから、各層から抽出する(偏りを防ぐ)。
  • 非確率抽出法は、手軽だが代表性が保証されない(結果を母集団全体に一般化しにくい)。

⚠️ 混同注意:サービスセンターへの声・投書は「代表性がない」 R07年第28問(選択肢エ)で、「サービスセンターに寄せられる手紙・ハガキの分析で 製品Bの不満が多い→直ちに販売中止」が誤りとされました。 自発的に寄せられる声は、不満を持った一部の人に偏った標本であり、代表性がありません。 偏った一部の声だけで全体を判断してはいけない、という典型例です。

📝 過去問はこう出る(R07 第28問)★最重要 正解は「全数調査は正確だがコスト・時間の制約で現実的でないことが多いため、 単純無作為抽出法・層化抽出法などの標本抽出によるサンプリング調査が行われる」(選択肢オ)。 誤りの選択肢は総ざらいで復習価値が高いです—— ・モチベーション・リサーチをニューロ・マーケティングと呼ぶ(ア) ・相関係数ゼロ=無関係と断定(イ/非線形の関係が残る可能性を無視) ・満足度(連続尺度)と居住地の関係にカイ2乗分析(ウ/本来は分散分析ANOVA) ・偏った投書だけで販売中止(エ/代表性の欠如) → R07 第28問

尺度の4分類(データのものさし)★頻出

集めた数字には「どこまで計算していいか」を決める"ものさしの種類(尺度)"があります。4つの尺度は頻出です。

尺度 内容 数字の意味
名義尺度 単に分類・区別するだけ 数字は"ラベル"(大小に意味なし) 性別(1=男,2=女)、居住地、血液型
順序尺度(序数尺度) 順位・大小の並びに意味がある 順番は分かるが間隔は不均等 満足度の順位、成績の1位・2位
間隔尺度 目盛りの間隔が均等(差に意味あり)。ゼロは"無"ではない 差は計算できるが、比率は無意味 温度(℃)、西暦
比率尺度(比例尺度) 間隔尺度+絶対的なゼロ点あり 差も比率も意味を持つ(2倍など) 売上高、利益、金額、長さ、重さ、GRP

⚠️ 混同注意:名義尺度と間隔尺度/間隔尺度と比率尺度 - R06年第39問(選択肢ア):「回答番号が数字の意味を持たず単に質的分類するだけの尺度は間隔尺度」は 誤り。それは名義尺度です(単なる分類=名義)。 - H28年第29問(選択肢ア):「売上高・利益・GRP間隔尺度」は誤り。 これらは絶対的なゼロ点をもち比率が意味を持つので比率尺度です。 決め手は「絶対的なゼロがあるか」。ゼロが"何もない"を意味し、2倍・3倍が言えるなら比率尺度

💡 尺度と分析手法の対応(R07年で問われた急所) - 相関分析が測るのは「直線的(線形)な関係」だけ。相関係数がゼロでも、 U字型など非線形の関係は残りうるので「無関係」と断定してはいけません。 - カイ2乗分析は「質的(カテゴリ)データ同士の関連」を調べる手法。 連続変数と質的変数の関係なら分散分析(ANOVA)を使うのが適切です。

コーディングと客観性

インタビューなどで集めた発言データ(言葉)は、そのままでは分析できません。 コーディング(発言に符号・カテゴリを割り当てる作業)を行い、頻度を数えたり、コード間の結びつきを図示したりして解釈します。

  • このとき大事なのが、分析者の主観を排除し、客観的に結果を示す姿勢です。 (定性データほど"解釈"が入り込みやすいので、意識して客観性を担保します。)

📝 過去問はこう出る(R06 第39問) 正解は「発言データはコーディングして頻度算出・コード間関係の図示で解釈され、 分析者の主観を排し客観性を重視する」(選択肢ウ)。 誤りは、名義尺度を間隔尺度と呼ぶ(ア)、仮説検証型調査をインサイト・リサーチと誤称(イ)、 悉皆調査を標本調査と取り違え(エ)、内部データを1次データと誤分類(オ)。 用語のすり替えオンパレードで、この章の総復習に最適な1問です。 → R06 第39問

信頼性と妥当性

「良い調査(測定)」の条件として、信頼性妥当性という2つのものさしがあります。混同しやすいので対で覚えます。

用語 意味 ひとことで ダーツの例え
信頼性(reliability) 何度測っても同じ結果になる(測定のブレの小ささ・安定性) いつも同じところに集まるか 毎回同じ場所に刺さる(的の中心でなくても)
妥当性(validity) 測りたいものを正しく測れている(的を射ているか) 測るべきものを測れているか 狙った的の中心に刺さる
  • 信頼性が高くても妥当性が低いことがあります(毎回同じところに集まるが、狙いとズレている)。 逆に、妥当性のためにはまず信頼性が必要、という関係です。

18-5 テスト・マーケティング

テスト・マーケティングとは

テスト・マーケティング(test marketing)とは、

「新製品を全国で本格発売する前に限定した市場(テスト市場)で実際に売ってみて、 売れ行きやマーケティング施策の反応を確かめる、いわば"本番前の小さな実験"」

です。因果的調査(実験法)の一種で、本格導入のリスクを減らすのが目的です。

テスト・マーケティングの要点

ポイント 内容
複数施策の比較 複数のプロモーション手段などを試して成果を比べ、最善のものを本格導入で採用する
テスト市場の選び方 無作為ではなく、本格展開する市場を代表する"典型的な特性"を持つ市場(都市)を選ぶ
結果の読み方 「試用購買率」と「反復購入率」を分けて見る(下記)
情報漏れリスク 競合に新製品情報が漏れる弱点あり。ただし重要属性を改変してテストするのはNG(本来の反応が測れない)
  • 試用購買率と反復購入率
  • 試用購買率が高いのに反復購入率が低い場合、問題は「プロモーション不足」とは限りません。 むしろ製品そのものへの満足度(リピートしたくなる魅力)に問題がある可能性が高いのです。 「反応が弱い=広告を増やせばよい」と短絡してはいけません。

⚠️ 混同注意:テスト市場は"無作為"では選ばない 標本抽出(18-4)では無作為抽出が基本でしたが、テスト市場の選定は別です。 テスト市場は、本格展開先を代表する典型的な特性を持つ市場を意図的に選ぶべきで、 単なる無作為抽出が望ましいわけではありません。ここは混同注意ポイントです。

📝 過去問はこう出る(H19 第31問) 正解は「テスト段階で複数のプロモーション手段を試行し、成果を比較して 最善のものを本格導入時に採用するのが望ましい」(選択肢イ)。 誤りは、「試用購買率が高く反復購入率が低い→プロモーション不足だから予算増額」(ア/製品満足の問題かも)、 「情報漏れ対策で重要属性を改変してテスト」(ウ/本来の反応が測れずテストの意味を失う)、 「テスト都市は無作為抽出で選ぶ」(エ/代表的な典型市場を選ぶべき)。 → H19 第31問

コーザルデータとPOSデータ(発展)

  • POSデータ:レジ(Point of Sales)で得られる「いつ・何が・いくつ売れたか」の販売データ。
  • コーザルデータ(causal data):売上に影響する要因データ(陳列・販促・天候・曜日など)。 「なぜ売れた/売れなかったか」の原因(cause)を探るためのデータです。
  • 注意:コーザルデータはPOSデータから直接・簡単に取得できるものではありません(別途集める必要がある)。

📝 過去問はこう出る(H26 第27問) 果物のブランド化と市場調査の事例問題。設問2(マーケティング・リサーチ)の正解は 「年齢・時代・世代の3要因を分解して分析する(コウホート分析的)アプローチは有効」(選択肢エ)。 誤りは、複数人を集めるのにデプス・インタビューと呼ぶ(イ/正しくはグループインタビュー)、 コーザルデータはPOSから直接・簡単に取得できる(ウ/取得できない)など。 なお設問1(ブランド化)の正解は「顧客データ・販売データを分析し、廃棄ロスの少ない形で ブランド育成を探る」(イ)でした。 → H26 第27問


この章のまとめ(試験直前チェック)

  • ☐ リサーチの手順=課題設定 → 設計 → データ収集 → 分析 → 意思決定(課題設定が最重要)
  • ☐ 調査の3タイプ=探索的(手がかり・仮説づくり)/記述的(実態を数量化)/因果的(原因結果を実験)
  • 探索的調査は複数の方法を組み合わせる("1つの方法に絞る"は誤り)
  • 1次データ=今回のために新規収集/2次データ=既存(社内蓄積データも2次!内部=1次ではない)
  • ☐ 調査の定石は2次データ → 足りなければ1次データの順
  • ☐ 調査法=質問法(サーベイ)・観察法・実験法。生活に入り込む観察=エスノグラフィー
  • 量的研究=演繹(仮説→検証)/質的研究=帰納(データ→仮説生成)(逆に注意)
  • デプスインタビュー=1対1/グループインタビュー(FGI)=複数人・グループダイナミクス
  • モチベーション・リサーチ=1950〜60年代・精神分析/投影法(第三者技法・語句連想・文章完成・物語法)
  • ☐ 弱点=サンプル・サイズ確保が困難+解釈の客観性確保が困難(非合理的動機は"得意")
  • 古い=モチベーション(精神分析)/新しい=ニューロ・マーケティング(脳科学)
  • ☐ ジョハリの窓:盲点の窓(本人無自覚)=行動観察調査が有効(アンケートでは取れない)
  • 全数調査=悉皆調査/一部抽出=標本(サンプリング)調査(悉皆=全部!)
  • ☐ 標本抽出=確率抽出(単純無作為・層化…/代表性あり)非確率抽出(有意・割当…/代表性なし)
  • ☐ 尺度4分類=名義(分類)・順序(順位)・間隔(差/ゼロは無でない)・比率(差+比率/絶対ゼロ)
  • 単なる分類=名義尺度売上・利益・GRP=比率尺度
  • 相関ゼロ≠無関係(非線形は残る)/カイ2乗=質的データ、連続×質的は分散分析
  • 信頼性=同じ結果が出る安定性/妥当性=測りたいものを正しく測れているか
  • ☐ テスト・マーケティング=複数施策を比較して最善を採用/テスト市場は代表的な典型市場(無作為ではない)
  • 試用購買率が高く反復購入率が低い=製品満足の問題かも(広告増額とは限らない)

この章に対応する主な過去問

年度・問 論点 リンク
R07 第28問 マーケティング・リサーチ(全数/標本・尺度・分析手法) 問題
R06 第39問 尺度・悉皆調査・1次/2次データ・コーディング 問題
R06 第40問 ジョハリの窓とリサーチ手法(行動観察=盲点の窓) 問題
R03 第37問 調査手法・探索的調査・量的/質的研究 問題
H28 第29問 マーケティング・リサーチ/エスノグラフィー 問題
H26 第27問 果物のブランド化と市場調査(デプス/FGI・コーザルデータ) 問題
H24 第28問 モチベーション・リサーチ(第三者技法・方法論上の問題) 問題
H19 第31問 テスト・マーケティング 問題

次章予告 ▶ 第19章「消費者行動」 本章で「顧客をどう調べるか(リサーチ)」を学びました。次章では、その調べる対象である 消費者そのものに踏み込みます。購買意思決定のプロセス、関与、知覚、態度形成、 そして準拠集団やオピニオンリーダーといった消費者行動のモデルを扱います。