第10章 組織理論(マクロ組織論)

この章のねらい 第9章では、事業部制や職能別組織といった「組織の"かたち"(組織構造)」そのものを学びました。 この第10章では、視点をひとつ引き上げて、「その"かたち"は、どうやって決まるのか」を考えます。 カギになるのは環境という言葉です。会社を取り巻く外の世界(技術・市場・規制・取引先など)と、 組織のあり方はどう結びつくのか。これを扱う分野を、個々の人の行動を見る「ミクロ組織論」(第11章以降)に対して、 マクロ組織論(組織を"外から"環境との関係で見る理論)と呼びます。

過去問での出方:本章は毎年ほぼ1〜2問、安定して出題される頻出テーマです。 とくにバーンズ&ストーカー(R02・R05)、資源依存パースペクティブ(H23・R05・R07)、 個体群生態学モデル(H20・R04)、同型化(R03・R05)は、数年おきに手を替え品を替え問われます。 どれも「唯一の正解の組織像はない/環境が組織を左右する」という同じ発想が土台なので、 一度その"考え方のOS"を入れてしまえば、初見の選択肢でも正誤を見分けられるようになります。


10-0 この章の地図

本章は、大きく「環境に合わせて組織を設計する」という前半(コンティンジェンシー理論の系譜)と、 「むしろ環境の側が組織を選び・組織を似せていく」という後半(環境決定論・制度論・組織間関係)に分かれます。 主役が「組織」から「環境」へと少しずつ移っていく流れをつかんでおきましょう。

【前半:環境に合わせて組織をデザインする】
10-1 コンティンジェンシー理論   … 「唯一最善はない」考え方の総論(★土台)
   │   ├─ 10-2 ウッドワード      … 生産技術の複雑さ ⇔ 組織構造
   │   └─ 10-3 バーンズ&ストーカー … 環境の安定/変化 ⇔ 機械的/有機的
   │
【後半:環境の側が組織を左右する】
10-4 資源依存パースペクティブ  … 外部資源への依存=パワーの弱さ/環境操作
   │
10-5 個体群生態学モデル        … 環境が組織を"淘汰"する(構造慣性)
   │
10-6 組織の同型化             … 組織が似ていく3つの圧力(制度論)
   │
10-7 組織間関係・組織間ネットワーク … 組織どうしのつながり(紐帯)

💡 まず押さえる大きな対立軸:組織のあり方を決めるのは 「組織が自分で環境に合わせる(適応)」のか、「環境が組織を選ぶ(淘汰)」のか。 前半(10-1〜10-4)は"適応"寄り、10-5・10-6は"環境の力"寄り。 選択肢の正誤は、しばしばこの適応 vs 淘汰の取り違えを突いてきます。


10-1 コンティンジェンシー理論 ― 「唯一最善の組織はない」★土台

いちばん短い定義

コンティンジェンシー理論(contingency theory=条件適合理論・状況適合理論)とは、ひとことで言えば

どんな環境にも通用する"唯一最善の組織のかたち"は存在しない。 組織構造は、その組織が置かれた環境や技術などの条件(コンティンジェンシー要因)に "適合"してこそ、高い業績を生む

という考え方です。「contingency」は「状況しだい・場合による」という意味の英語で、 「組織づくりに"正解の型"は一つではなく、場合による」と読み替えると分かりやすいです。

なぜ画期的だったのか

かつては「良い組織には唯一のベストな形がある」(=官僚制こそ理想、という古典的管理論)と考えられていました。 コンティンジェンシー理論は、これを「環境が違えば、最適な組織も違う」とひっくり返しました。 安定した環境ではきっちりした官僚的組織が向くし、変化の激しい環境では柔軟な組織が向く――というわけです。

      唯一最善説(古典)        コンティンジェンシー理論
      ┌──────────┐          ┌──────────────────┐
      │ ベストな型は │          │ 環境A → 組織a が最適 │
      │ 一つだけ!  │   ──▶   │ 環境B → 組織b が最適 │
      └──────────┘          │ …「場合による」     │
                   └──────────────────┘

組織を「情報処理システム」として見る(ガルブレイス)

コンティンジェンシー理論の一つの発展形が、J. ガルブレイス組織デザイン論です。 彼は組織を「情報を処理するしくみ」と捉えました。環境の不確実性が高いほど、 組織が処理しなければならない情報量は増えます。そこで、次の2方向の打ち手を整理しました。

方向 ねらい 具体策(例)
① 処理すべき情報量を"減らす" そもそも調整の必要を少なくする 自己完結的職務(タスク)の形成(部門を自己完結化し部門間調整を減らす)
スラック資源(調整付加資源)の投入(余裕を持ち例外処理を減らす)
② 情報処理能力を"高める" 増えた情報をさばく力をつける 縦系列の情報処理システムの改善(垂直の情報システム強化)
横断的関係の構築(水平的な連結・調整役の設置)

📝 過去問はこう出る(H19 第12問) ガルブレイスの組織デザイン論から、「組織が処理すべき情報量の"軽減"に貢献する方策の組合せ」を選ぶ問題。 正解は「a 自己完結的職務の形成d 調整付加資源(スラック資源)の投入」(=選択肢イ)。 一方、「b 横断的関係の構築」「c 縦系列の情報処理システムの改善」は情報処理"能力"を高める方策であって、 "軽減"ではありません。「減らす」組と「高める」組の振り分けがそのまま得点を分けます。 → H19 第12問

💡 覚え方:「へらす(軽減)=自己完結+スラック」「たかめる(能力向上)=タテ改善+ヨコ連結」。 「自己完結・余裕(スラック)」は"減らす"、「システム・横断」は"高める"、と2グループで暗記します。


10-2 ウッドワードの研究 ― 生産技術と組織構造

定義:技術が組織のかたちを左右する

J. ウッドワードは、イギリスの製造業約100社を調査し、 「その工場がどんな生産技術を使っているかによって、うまくいく組織のかたちが違う」ことを見出しました。 コンティンジェンシー理論の代表的な実証研究で、"技術"というコンティンジェンシー要因に注目した点が特徴です。

3つの生産技術(複雑さの順に並べる)

ウッドワードは生産技術を、複雑さ(技術の高度さ)の低い順に次の3つに分類しました。 この並び順がそのまま試験に出ます。

  〔単純〕                                   〔複雑〕
  小ロット生産  ─→  大量生産(マス)  ─→  装置(プロセス)生産
  (個別受注・少量)  (大規模バッチ)      (連続処理・装置産業)
生産技術 かみくだくと
① 小ロット・個別生産(小規模バッチ) 注文ごとに少量ずつ作る 特注品・一品物・試作
② 大量生産(大規模バッチ・マスプロダクション) 同じ製品を大量に流す 自動車の量産ライン
③ 装置生産(連続的処理・プロセス技術) 装置が連続的に処理し続ける 石油精製・化学プラント

技術が複雑になると、組織はどう変わるか

ウッドワードの研究の知見は、「①→②→③と技術が複雑化するにつれて、組織は次のように変化する」というものでした。

  • 一人の監督者の部下数(統制の幅)が増える
  • 組織の階層(タテの層)が増える
  • 管理職・スタッフやスペシャリストの比率が高まる
  • 一人当たりの労務費が低下する(労働集約度が下がる=装置化・自動化が進むため)

📝 過去問はこう出る(R02 第15問) 「A→B→さらにCへ移行するにつれて、監督者の部下数が増し、階層が増え、管理職比率が増え、 一人当たり労務費が低下する」という空欄補充。正解(選択肢ウ)は A=小規模バッチ生産技術(最も単純)/B=大規模バッチのマスプロダクション技術(中間)/C=連続的処理を行うプロセス技術(最も複雑)「小ロット → 大量 → 装置」の複雑さの順序さえ体に入れておけば一発です。 → R02 第15問

⚠️ 混同注意:大量生産が"いちばん複雑"ではない 直感的には「大量生産=いちばん高度」と思いがちですが、ウッドワードの分類では装置(連続処理)生産が最も複雑です。 順番は必ず 小ロット < 大量 < 装置 と覚えてください。真ん中の大量生産だけが最も官僚的・機械的になりやすい、という論点も併せて押さえます。


10-3 バーンズ&ストーカー ― 機械的/有機的管理システム ★頻出

定義:環境の"安定か変化か"で、向く組織が変わる

T. バーンズG. M. ストーカーは、外部環境の不確実性(安定しているか、変化が激しいか)が、 組織内部の管理システムに影響を与えることを明らかにし、次の2つのモデルを提唱しました。

  • 機械的管理システム(mechanistic management system)… 安定した環境に向く
  • 有機的管理システム(organic management system)… 不確実性の高い(変化する)環境に向く

2つのモデルの対比(ここが得点源)

試験は、この2つの特徴の対比を、しばしば入れ替えて(逆にして)引っかけてきます。 まず「機械的=カチッとした官僚制/有機的=やわらかく柔軟」というイメージを持ち、下表を丸ごと覚えましょう。

観点 機械的管理システム(安定環境向け) 有機的管理システム(変化環境向け)
権限・知識の所在 階層トップに集中、タテの統制 分散(現場・専門家にも権限)
職務・役割 細分化・専門化、責任が詳細に規定(公式化) 流動的・再定義される、幅広い貢献を期待
コミュニケーション 垂直的(指揮命令中心) 水平的(助言・相談が活発)
上下関係 上司への服従が強調される 服従よりタスクへのコミットメント
重視される知識 局所的・専門特化した知識 組織全体に通じる知識・タスク全体との関連づけ

📝 過去問はこう出る(R02 第16問) 「不確実性が高い環境で有効なモデル」を問う問題。正解(ウ)は 「タスクそのものや優れた仕事をしようとすることへのコミットメントが強い"有機的"管理システム」。 誤りの選択肢は、「有機的なのに階層トップへ知識集中・階層構造を強化」(=機械的の特徴を混ぜた矛盾)などで、 特徴のすり替えが定番の引っかけです。 → R02 第16問

📝 過去問はこう出る(R05 第15問) 2モデルの対比を問う問題。正解(ア)は「機械的システムは有機的システムよりも上司への服従が強調される」。 誤り選択肢は「機械的の方が水平的コミュニケーションが活発」「有機的の方が役割の責任が詳細に規定される」など、 すべて機械的と有機的を逆さまに説明したもの。「水平的・柔軟・知識重視=有機的」「服従・公式化・垂直=機械的」で機械的に判定できます。 → R05 第15問

💡 覚え方「安定=機械(メカ)、変化=有機(オーガニック)」。 機械はカチッと決まった動き(=規則・階層・命令)、有機体はやわらかく状況に応じて形を変える(=柔軟・水平・自律)。 環境が"変化"するなら組織も"変化"できる有機的が有利、と結びつけます。


10-4 資源依存パースペクティブ ― 外部資源への依存とパワー ★最頻出

定義:必要な資源を外に頼るほど、パワーで弱くなる

J. プフェファーG. サランシックが体系化した資源依存パースペクティブ(resource dependence perspective)は、 組織をオープンシステム(外に開かれたしくみ)と捉え、次のように考えます。

「組織は、生存に必要な資源(原材料・資金・技術・人材など)を自前ですべて揃えることはできず、 外部の他組織に依存している。重要な資源を相手に依存するほど、その相手に対してパワー(力関係)で"弱く"なる

つまり組織間のパワー(力関係)は、"資源への依存度"で決まるという見方です。

依存度(=パワーの弱さ)を決める3つの要素

「Aさんが、B社に握られた資源にどれだけ依存しているか」は、次の3点で測ります。

決定要素 かみくだくと
① 資源の重要性(死活性) その資源が手に入らないと事業が立ち行かないか(重要なほど依存↑)
② 資源の集中度(代替可能性) 供給元が少数に集中しているか。他に調達先があるか(他がないほど依存↑)
③ 資源への自由裁量 相手がその資源を自由に配分・統制できるか(相手の裁量が大きいほど依存↑)

依存を「減らす」ための環境操作戦略

依存によるパワーの弱さは危険なので、組織は環境を"操作"して依存や不確実性を下げようとします。 ここは、「資源依存関係そのものを変える戦略」「依存関係は変えずに不確実性だけ緩める戦略」を区別するのがポイントです。

タイプ ねらい
依存関係そのものを変える 合併・買収、調達先の多様化、代替資源の開発、依存資源を使わない新製品開発 依存の"構造"を組み替える
依存関係は変えずに緩和 交渉(取引条件の合意)、結託(co-optation)(依存先の代表を自社取締役会に招く)、包摂・連合(業界団体・標準化)、広報 相手を取り込む・不確実性を下げる

📝 過去問はこう出る(R07 第21問) A社が部品YをB社からしか調達できない(=依存度が高い)ケース。正解(エ)は 「部品Yを使わない新製品を開発すれば、B社の資源への依存そのものを低減できる」。 引っかけの典型は「A社の依存度が高いのだから、A社のパワーは"強い"」(イ)=依存が高いほどパワーは"弱い"ので逆。 また「B社が供給先を増やす」(オ)はB社の"売り先依存"を下げる話で、A社の依存度とは主体が別、という取り違えも頻出です。 → R07 第21問

📝 過去問はこう出る(R05 第21問) A社がB社(原料Xの唯一の供給者)から購買するケースで、パワー関係に影響する要素として最も不適切なものを選ぶ問題。 正解(イ・不適切)は「機械設備の資産評価額の大小」――これは資源Xへの依存度とは無関係。 一方、「他社からの調達度合い(代替可能性)」「B社販売量に占めるA社比率」「法律による裁量制約」「Xが無くても困らないか(重要性)」は すべて依存度の決定要素として適切です。上の"3要素"に当てはまるかで判定します。 → R05 第21問

📝 過去問はこう出る(H26 第18問) 環境操作戦略を問う問題。正解(イ)は「経営者と労働者が将来の行動について双方満足できるよう折衝するのは、 取引される財・サービスについての合意を意図する"交渉"戦略」という定義。 誤りの多くは、「依存関係を"変えることなく"」なのに、実際は依存関係を変える打ち手(代替原材料の開発・結託)を当てはめており、 「その戦略は依存構造を変えるのか、変えないのか」の切り分けが急所です。 → H26 第18問

📝 過去問はこう出る(H23 第19問) 設問2は、資源依存モデルにおける因果連鎖の順序。正解(ア)は 「環境コンテキスト → 組織内の権力関係 → 誰を経営者に選ぶか → 組織の行動・構造の変化 → 環境への働きかけ」という順。 「経営者選任」と「権力関係」の順序を入れ替えた選択肢が誤りになります(環境はまず"権力関係"に効き、それが"経営者選任"を規定する)。 → H23 第19問

⚠️ 混同注意:依存が"高い"=パワーが"強い"、ではない 資源依存では「依存が高い=相手に頭が上がらない=パワーが弱い」です。日本語の直感(依存=抱え込みで強そう)と逆なので、 「頼っている側が弱い」とシンプルに覚えましょう。


10-5 個体群生態学(組織エコロジー)モデル ― 環境が組織を"淘汰"する

定義:組織は変わらない。環境が"選ぶ"

個体群生態学モデル(population ecology model/組織エコロジー)は、これまでとは逆の発想に立ちます。 コンティンジェンシー理論や資源依存が「組織が環境に自分を合わせる(適応する)」と考えたのに対し、こちらは

個々の組織は、そう簡単には環境に合わせて変われない(構造慣性)。 だから、多様に生まれた組織のうち、環境に"たまたま"適合したものが選ばれ(淘汰され)て生き残る

と考えます。分析の単位は個々の企業ではなく、似た組織形態を持つ企業の集まり=「組織個体群(population)」です。 生物の自然淘汰になぞらえるのが特徴です。

変異 → 選択・淘汰 → 保持(自然淘汰モデル)

個体群の変化は、生物進化と同じ3ステップで説明されます。

  変異(variation)  ─→  選択・淘汰(selection)  ─→  保持(retention)
  多様な組織形態が    環境に適合したものが     生き残った形態が
  生まれる           選ばれ、他は淘汰される    受け継がれ定着する

2つの重要キーワード

  • 構造慣性(structural inertia):組織は既存の形態を保とうとする"慣性"を持ち、環境変化にすばやく適応できない。 この慣性が強いほど、新しい組織形態は生まれにくい(=変化は起きにくい)。
  • 淘汰は市場競争"だけ"ではない:どの組織形態が選ばれ・消えるかは、市場競争に加えて、 政府の政策・規制など環境要因全般が左右します。「淘汰は市場競争だけで起きる」は誤り。

📝 過去問はこう出る(R04 第20問) 「変異-選択・淘汰-保持」の枠組みを問う問題。正解(ア)は 「既存の組織形態を保持しようとする力(構造慣性)が強ければ、新たな組織形態が生まれる可能性は低くなる」。 誤り選択肢イは「環境変化に応じて柔軟に組織形態を変化させて対応できる組織が選択される」=これは"適応論"であり、 能動的な適応を否定する個体群生態学の趣旨に真っ向から反します。 → R04 第20問

📝 過去問はこう出る(H20 第20問) 正解(ア)は「成功した企業の組織形態を、他の多くの企業が"正当性"を得るために模倣することで、 個体群内の組織形態が類似していく」という、個体群レベルでの同型化(→ 10-6)の説明。 誤りは「各企業が環境変化に応じて戦略・組織を修正して個体群が成長する」(=適応論)や、 「淘汰は政府の規制"より"市場競争で起こりやすい」(=淘汰要因を市場だけに限定)。 → H20 第20問

⚠️ 混同注意:適応(adaptation)と淘汰(selection) - 適応論(コンティンジェンシー・資源依存)=「組織が自分を変えて環境に合わせる」 - 淘汰論(個体群生態学)=「組織は変われない。環境が適したものを選ぶ」 選択肢に「柔軟に変化させて適応する」と書かれていて、それが個体群生態学の説明だったらほぼ誤りです。


10-6 組織の同型化 ― 組織が"似ていく"3つの圧力(制度論)

定義:正当性を求めて、組織は似てくる

P. ディマジオW. パウエルは、制度論(制度的組織論)の立場から、 「同じ領域(組織フィールド)の組織どうしは、だんだん似た形になっていく」現象を同型化(isomorphism)と呼びました。 ポイントは、似ていく理由が「効率が良いから」だけではなく、「社会から"正当(まっとう)である"と認められる(正当性を獲得する)ため」だという点です。

3つの同型化(ここが本丸)

同型化には、圧力の"出どころ"の違いで3タイプがあります。この振り分けがそのまま試験になります。

タイプ 圧力の源 かみくだくと
① 強制的同型化(coercive) 外部からの強制・圧力 法規制、政府、依存先など逆らえない相手からの圧力で似る 法律・行政の規制に従う/資金を頼る相手の要求に従う
② 模倣的同型化(mimetic) 不確実性 「どうすればいいか分からない」時、成功した組織を真似る(ベンチマーク)ことで似る 業界の成功企業のやり方を模倣する
③ 規範的同型化(normative) 専門職化・専門家ネットワーク 同じ教育・資格・専門家団体を通じ、共有された職業規範で似る 同じ大学・資格・業界団体の"あるべき姿"に揃う

📝 過去問はこう出る(R03 第21問) 3類型の振り分けを問う問題。正解(イ)は 「同じ教育課程を受けた者が組織横断的に共有する集団規範(専門職規範)が正当性の根拠になる = 規範的同型化」。 誤りは「成功組織のベンチマーク=規範的」(正しくは"模倣的")「政府の規制に従う=模倣的/規範的」(正しくは"強制的")など、タイプの取り違えばかりです。 → R03 第21問

📝 過去問はこう出る(R05 第22問) 制度的同型化を問う問題。正解(エ)は 「専門家団体のような組織横断的な専門家ネットワークが発達すると、規範的同型化が生じやすい」。 引っかけは「模倣的同型化が生じやすいのは"環境が安定的で評価基準が明確"なとき」(逆。模倣は不確実なときに起きる)や、 「政府の規制で特定形態が求められる=模倣的」(正しくは強制的)。 → R05 第22問

💡 覚え方「強制=法・お上、模倣=マネ(不確実だからマネ)、規範=専門家・資格」。 頭文字で 「きょう(強制)・も(模倣)・き(規範)」 のように口ずさみ、 キーワード(法規制→強制/ベンチマーク・不確実→模倣/専門職・教育→規範)を一対一で結びつけておけば取りこぼしません。


10-7 組織間関係・組織間ネットワーク

組織は"つながり"の中で生きている

前節までで見たとおり、組織は単独では生きられず、他組織と組織間関係(interorganizational relationship)を結びます。 その手段(=つながり方)には、いくつもの型があります。H19 第16問では、この整理が問われました。

つながり方 内容
合併・買収(M&A) 相手の経営資源を直接コントロールする権利を得る(依存関係そのものを変える)
役員兼任(インターロッキング・ディレクトレート) 資源依存先の取締役に自社の役員が就任し、利害調整・意思決定に影響を与える
ライセンス契約 自社の独立性を保ちつつ、不足資源に関する不確実性を軽減
合弁企業(ジョイント・ベンチャー) 補完的な複数企業が共同出資し、リスク・コストを分散(=親会社が共同でコントロールする)

📝 過去問はこう出る(H19 第16問) 設問1(組織間関係の構築で最も不適切なもの)の正解(エ)は 「合弁企業を作れば、"親会社の影響を受けずに"リスク・コストを分散できる」という記述。 合弁は親会社が共同で出資・コントロールする組織なので、「親会社の影響を受けない」は誤りです。 設問2(環境操作戦略で最も不適切)の正解(エ)は「規制は外部資源に影響するが内部資源には及ばない」という誤り (規制の影響は内部資源の運用・調達にも及ぶ)。協調(業界団体で正当性確保)・広報・戦略的選択は妥当な環境操作戦略です。 → H19 第16問

「弱い紐帯の強み」と「埋め込まれた紐帯」

近年は、組織間のネットワークそのものの性質も問われます。カギは紐帯(ちゅうたい=つながり・きずな)の"強さ"です。

  • 弱い紐帯の強み(グラノヴェッター):広く薄い(弱い)つながりほど、 自分の周りにはない新奇で多様な情報をもたらしてくれる。新しい情報を得たいなら、弱い紐帯が有効。
  • 埋め込まれた紐帯(embedded ties):信頼に基づく、密で強いつながり。 言語化しにくい暗黙知の移転が進みやすく、機会主義的行動(相手を出し抜く行動)を抑制する。 ただし、強い紐帯"だけ"で固めると情報が同質化・固定化する「過剰埋め込み」に陥り、新奇な情報を欠く。
紐帯のタイプ 強み 弱み
弱い紐帯 新奇・多様な情報が入る 深い信頼・暗黙知の共有には向かない
埋め込まれた紐帯(強い) 暗黙知の移転、信頼、機会主義の抑制 固めすぎると同質化(過剰埋め込み)で新奇性を欠く

📝 過去問はこう出る(R06 第21問) 組織間ネットワークを問う問題。正解(イ)は 「"埋め込まれた紐帯"で結ばれたネットワークでは、暗黙的な知識の移転が促進されやすい」。 誤りは「新奇な知識を得るには既存の強い紐帯をいっそう強めるべき」(正しくは弱い紐帯が新奇情報に有効)や、 「埋め込まれた紐帯は機会主義を生みやすいから減らすべき」(正しくは信頼により機会主義を抑制する)。 → R06 第21問

💡 覚え方「新しい情報がほしい → 弱い紐帯」「深い信頼・暗黙知 → 強い(埋め込まれた)紐帯」。 "弱い"のに"強み"がある、という一見の逆説(=弱い紐帯の"強み")が名前の由来。ここが問われやすいポイントです。


この章のまとめ(試験直前チェック)

  • コンティンジェンシー理論=「唯一最善の組織はない。組織構造は環境・技術など条件への"適合"で業績が決まる」
  • ガルブレイス:情報量を減らす(自己完結的職務・スラック資源)/情報処理能力を高める(縦の改善・横断的関係)の振り分け
  • ウッドワード:生産技術は 小ロット < 大量 < 装置(連続処理) の順に複雑。複雑化で階層・管理職比率↑、一人当たり労務費↓
  • バーンズ&ストーカー安定環境=機械的(階層集中・公式化・垂直・服従)/変化環境=有機的(分散・流動的・水平・コミットメント)
  • 資源依存(プフェファー&サランシック):重要資源を外に依存するほどパワーは"弱い"。依存度=重要性×集中度×自由裁量
  • ☐ 環境操作:依存を変える(合併・調達多様化・代替開発)/依存は変えず緩める(交渉・結託・包摂)を区別
  • 個体群生態学:組織は構造慣性で変われず、環境が淘汰する(変異→選択・淘汰→保持)。「柔軟に適応する」記述は原則バツ
  • 適応 vs 淘汰:コンティンジェンシー・資源依存=適応論/個体群生態学=淘汰論、の取り違えに注意
  • 同型化(ディマジオ&パウエル)=正当性を求めて似る。強制的(法・お上)/模倣的(不確実だからマネ)/規範的(専門職・教育)
  • 組織間関係:合弁は親会社が共同コントロール("影響を受けない"は誤り)。役員兼任・ライセンス・M&Aの区別
  • 紐帯弱い紐帯=新奇な情報埋め込まれた(強い)紐帯=暗黙知・信頼・機会主義の抑制(固めすぎは過剰埋め込み)

この章に対応する主な過去問

年度・問 論点 リンク
H19 第12問 組織デザインのコンティンジェンシー理論(ガルブレイス) 問題
H19 第16問 組織間関係と環境操作戦略 問題
H20 第20問 個体群生態学モデル 問題
H23 第19問 資源依存モデル(不確実性・経営者継承の連鎖) 問題
H26 第18問 企業組織の環境操作戦略 問題
R02 第15問 ウッドワードの生産技術と組織構造 問題
R02 第16問 バーンズ&ストーカー(機械的・有機的) 問題
R03 第21問 組織の同型化(アイソモーフィズム) 問題
R04 第20問 個体群生態学モデル 問題
R05 第15問 機械的管理システムと有機的管理システム 問題
R05 第21問 資源依存パースペクティブ(パワー関係) 問題
R05 第22問 制度的同型化 問題
R06 第21問 組織間関係・組織間ネットワーク(紐帯) 問題
R07 第21問 資源依存パースペクティブ(依存度の低減) 問題

次章予告 ▶ 第11章「組織文化と組織学習」 本章では組織を"外から"(環境との関係で)見てきました。次章では視点を組織の"内側"に移し、 組織に共有される価値観・行動様式である組織文化と、組織が経験から賢くなっていく組織学習 (シングルループ/ダブルループ学習、知識創造のSECIモデルなど)を扱います。