第9章 製造物責任と消費者保護

この章のねらい この章のテーマは、ひとことで言えば「弱い立場の消費者を、法律がどう守るか」です。 会社(事業者)と一般の消費者とでは、持っている情報も交渉力も大きく違います。 そこで法律は、①欠陥のある製品でケガをしたとき(製造物責任法=PL法)、 ②うまい言葉に乗せられて契約させられたとき(消費者契約法)、 ③しつこい訪問販売やネット通販でトラブルになったとき(特定商取引法)、 ④大げさ・ウソの広告やおまけ合戦(景品表示法=景表法)——という4つの場面で、 事業者にブレーキをかけ、消費者に「取消し」「無効」「返品」などの武器を与えています。

過去問での出方:経営法務では、この分野はほぼ毎年1〜2問顔を出す常連です。 特に PL法(製造物・欠陥・無過失責任・10年の期間制限)消費者契約法(免責条項の無効)景品表示法(不実証広告・課徴金・懸賞の限度額) は繰り返し問われる得点源です。 どれも「要件と例外を正確に」覚えれば取れる、暗記型の論点が中心です。


9-0 この章の地図

この章は、「製品そのものの安全」→「契約のさせられ方」→「売り方・広告」という順に、 消費者トラブルの入口を上流から下流へたどっていきます。まずは全体像をつかみましょう。

【トラブルの場面】            【守ってくれる法律】           【消費者の武器】
─────────────────────────────────────────────────────
① 欠陥製品でケガをした     → 9-1 製造物責任法(PL法)   → 損害賠償(無過失責任)
   (モノの安全の問題)                                    ※製造業者の過失を問わない
   │
② うまく言いくるめられて   → 9-2 消費者契約法          → 契約の取消し
   契約させられた                                          不当条項の無効
   (契約のさせられ方)
   │
③ 訪問販売・ネット通販で   → 9-3 特定商取引法          → クーリング・オフ
   しつこく/不透明に売られた                              (通販は法定返品権)
   │
④ 大げさ・ウソの広告や     → 9-3 景品表示法(景表法)   → 措置命令・課徴金
   過剰なおまけ                                            (行政が事業者を規制)
─────────────────────────────────────────────────────
  • 9-1 は「製品でケガをした場合」の損害賠償のしくみ(PL法)。★試験の最頻出。
  • 9-2 は「契約するとき」に消費者を守るしくみ(消費者契約法)。
  • 9-3 は「売り方・広告」を規制する2つの法律(特定商取引法・景品表示法)。

💡 大きな考え方:民法は「対等な当事者どうし」を前提にしています。 でも現実の会社対消費者は対等ではありません。そこで民法の"特例"として、 消費者に有利な特別ルールを上乗せしたのが、この章の法律たちです。 「この法律は、民法のどこを消費者有利に修正しているのか」という目で読むと、頭に入りやすくなります。


9-1 製造物責任法(PL法) ★最重要

いちばん短い定義

製造物責任法(PL法:Product Liability) とは、

製造物の"欠陥"が原因で、人の生命・身体・財産に損害が生じたとき、 製造業者などに損害賠償責任を負わせる

という法律です(正式名称「製造物責任法」、平成7年施行)。 「PL」は Product Liability(製造物+責任)の略です。

このしくみのいちばんの特徴は、被害者が製造業者の"落ち度(過失)"を証明しなくてよいことです。 これを 無過失責任 といいます。ここが最大のポイントなので、順番に見ていきましょう。

なぜPL法が必要なのか(民法との違い)

もともと、製品でケガをしたら民法の 不法行為責任(民法709条) で賠償請求ができます。 しかし民法709条では、被害者が「メーカーに過失(落ち度)があったこと」を証明しなければなりません。

  • 一消費者が、複雑な製造工程のどこに落ち度があったかを立証するのは、ほぼ不可能です。
  • そこでPL法は、「過失の証明」に代えて「製品に欠陥があったこと」を証明すれば足りるようにしました。

つまりPL法は、民法709条(過失責任)の"特例"として、証明のハードルを下げて消費者を助ける法律です。

【民法709条(原則)】          【PL法(特例)】
被害者が証明すべきこと          被害者が証明すべきこと
─────────────           ─────────────
・製造業者の過失         →    ・製造物の「欠陥」
・過失と損害の因果関係          ・欠陥と損害の因果関係
─────────────           ─────────────
過失の証明が難しい…            ★過失の証明が不要(無過失責任)

📝 過去問はこう出る(R05 第18問) PL法の性質を正しく説明した選択肢を選ぶ問題。正解は 「PL法は、過失責任が原則である民法709条の特例として、製造業者の過失や過失と欠陥の因果関係の証明に代えて、 被害者が"製品に欠陥があること"と"欠陥と損害との因果関係"を証明すれば、損害賠償を請求できるようにしたもの」。 まさに無過失責任の考え方そのものです。 → R05 第18問

3つの要件:「製造物」「欠陥」「損害と因果関係」

PL法で損害賠償を請求するには、被害者が次の3つを証明します。ひとつずつ、かみくだきます。

要件 かみくだくと 試験でのツボ
製造物であること 「製造または加工された動産 不動産・未加工の農産物・電気・ソフト単体は原則対象外
欠陥があること 通常有すべき安全性を欠いていること 単なる品質不良(性能不足)は欠陥ではない
損害と因果関係 欠陥が原因で、生命・身体・財産に拡大した損害が出た 製品そのものが壊れただけ(拡大損害なし)は対象外

① 「製造物」とは ― 加工された動産

製造物とは「製造または加工された動産」をいいます(PL法2条1項)。 「動産」とは、土地や建物(不動産)以外の、動かせるモノのことです。ここが引っかけの宝庫です。

製造物に該当するもの 製造物に該当しないもの
工業製品(家電・自動車・おもちゃ 等) 不動産(土地・建物)
魚の塩焼き(="加工された"動産) 加工していない農林水産物(未加工の野菜・生魚)
加工食品・加工された飲料 電気などの無体物、ソフトウェア単体

⚠️ 混同注意:「魚の塩焼き」は製造物、「不動産」は製造物でない - 魚の塩焼き … 生魚を焼く=「加工」しているので、製造物に該当する。 - 不動産(建物など) … そもそも「動産」ではないので、製造物に該当しない。 H29 第18問はこの2つを並べて出題しました。「加工の有無」と「動産か不動産か」で判断します。

📝 過去問はこう出る(H29 第18問) 「最も適切なもの」を選ぶ問題。正解は 「不動産は、製造物責任法に定める製造物に該当しない」(=動産ではないため)。 誤りの選択肢は、「魚の塩焼きは製造物に該当しない(×→該当する)」「表示製造業者は責任を負わない(×→負う)」 「引渡しから○年で請求できなくなる(×→10年)」など。要件の"すり替え"を見抜けば解けます。 → H29 第18問

② 「欠陥」とは ― 通常有すべき安全性を欠くこと

欠陥とは、「その製造物が通常有すべき安全性を欠いていること」をいいます(PL法2条2項)。 ここで大事なのは、"安全性"に関わる欠陥だけが対象だという点です。

  • 安全性に関わらない、単なる品質・性能の不足(例:「思ったより性能が低い」)は、PL法の「欠陥」に当たりません
  • それは品質不良の問題であって、契約不適合(民法)で処理する話になります。

📝 過去問はこう出る(R07 第23問) 「最も適切なもの」を選ぶ問題。正解は 「安全性に関わらない品質上の不具合は、PL法に基づく損害賠償責任の根拠となる"欠陥"に当たらない」。 一方、誤りの選択肢には次のような"ひっかけ"が並びました。 ・「PL法にはPL保険への加入を義務付ける規定がある」→そんな規定はない(PL保険は任意加入)。 ・「PL法には製造物の部品の保存期間に関する規定がある」→そんな規定もない。 ・「引渡しから5年で時効消滅」→10年の誤り(後述)。 → R07 第23問

③ 「損害」と拡大損害 ― 製品が壊れただけではダメ

PL法が賠償の対象とするのは、欠陥によって生じた生命・身体・財産への損害です。 ここで超頻出の例外があります。

⚠️ 拡大損害の要件:欠陥による損害が、その製造物"そのもの"の損害にとどまる場合(=ほかに被害が広がっていない場合)は、 PL法の賠償対象外です(PL法3条ただし書)。 - 例:買った扇風機が壊れて動かなくなっただけ → PL法の対象外(契約不適合などで処理)。 - 例:買った扇風機が発火して家が燃えた(=ほかの財産に被害が拡大)→ PL法の対象。

つまりPL法は、「欠陥品のせいで別のものにまで被害が及んだ(拡大損害)」場面を救う法律だと覚えましょう。 「製品自体の損害だけ」なら、それは"買った物がハズレだった"という契約の問題です。

📝 過去問はこう出る(R05 第18問・再掲) R05 第18問の誤り選択肢に、「製造物自体に損害が発生したのみであっても、製造業者はPL責任を負う」がありました。 これは拡大損害の要件を無視した誤りです(自体の損害のみは対象外)。正解の"イ"とセットで押さえましょう。

責任を負うのは誰か ― 「製造業者等」の3タイプ

「製造した会社だけ」が責任を負うわけではありません。PL法は責任主体を 「製造業者等」 として広くとらえます(PL法2条3項)。

タイプ 具体例 ツボ
製造・加工業者、輸入業者 メーカー、輸入事業者 外国製品でも、輸入した事業者が責任を負う
表示製造業者 自社ブランドとして名前を表示した者 実際に作っていなくても、製造業者と誤認させる表示をすれば責任を負う
③ 実質的製造業者と認められる表示者 販売者だが実質的な製造元と見える表示 表示の実態で判断
  • 輸入業者も責任を負う:外国メーカーを日本の被害者が訴えるのは難しいので、輸入した事業者に責任を負わせます。
  • 表示製造業者も責任を負う:「作っていないから知らない」は通りません。自社名を出した以上、責任がついてきます。

⚠️ 混同注意:「作っていない=責任なし」ではない 「輸入しただけ」「名前を表示しただけ(表示製造業者)」でも、PL法上の責任を負います。 H29 第18問・R05 第18問とも、「輸入業者/表示製造業者は責任を負わない」という選択肢を誤りとして出しています。

期間制限 ― 「知った時から3年(生命身体は5年)」と「引渡しから10年」

損害賠償請求権には、次の2つの期間制限があります(PL法5条)。特に「引渡しから10年」が頻出です。

起算点 期間 覚え方
被害者が損害+賠償義務者を知った時から 3年(人の生命・身体を侵害した場合は5年 「知ってから3年(人身は5年)」
製造業者等が製造物を引き渡した時から 10年 「渡してから10年」
  • 「引渡しから10年」は、知っているかどうかに関係なく、時の経過だけで請求権が消えます。
  • 試験では、この「10年」を「5年」「20年」などにすり替える選択肢が定番です。10年と即答できるようにしましょう。

💡 覚え方:PL法の期間は「知って3年(人身5年)/渡して10年」。 R07 第23問・H29 第18問とも、この「引渡しから10年」の数字を狙って出題しています。

免責事由 ― 開発危険の抗弁

無過失責任といっても、製造業者がまったく逃げられないわけではありません。 PL法は、製造業者が証明すれば責任を免れる 免責事由 を定めています(PL法4条)。代表が 開発危険の抗弁 です。

  • 開発危険の抗弁:製品を引き渡した時点の科学・技術の水準では、その欠陥を認識できなかったことを製造業者が証明すれば、責任を免れる。
  • 「当時の技術では、どうやっても気づけなかった」という場合の救済です。
  • あくまで引渡し時点の水準で判断します(後になって技術が進歩し、欠陥だと分かっても、当時分からなければ免責)。
  • もう一つの免責事由:部品・原材料の製造業者が、欠陥は完成品メーカーの設計指示に従ったために生じたもので、自分に過失がないと証明した場合。

💡 開発危険の抗弁のイメージ:「作った当時は、世界中の誰の目にも欠陥だと分からなかった」―― それでも結果責任を負わせるのは酷なので、逃げ道(抗弁)を用意した、という趣旨です。 ただし証明のハードルは高く、簡単には認められません。


9-2 消費者契約法

いちばん短い定義

消費者契約法 とは、

消費者と事業者の間の契約(消費者契約)について、 消費者を守るために、"契約の取消し"や"不当な条項の無効"を認める

法律です(平成13年施行)。9-1のPL法が「製品でケガ」の話だったのに対し、 消費者契約法は「契約のさせられ方/契約の中身」の問題を扱います。

消費者契約法が用意した消費者の武器は、大きく2つです。

  1. 取消し:不当な勧誘(ウソ・脅しなど)で契約させられたとき、後から契約を取り消せる。
  2. 無効:契約書の中の不当な条項(消費者に一方的に不利な条項)を無効にできる。

「消費者」と「事業者」とは ― 誰に適用されるか

  • 消費者:個人(ただし、事業として/事業のために契約の当事者になる場合を除く)。
  • 事業者:法人その他の団体、および事業として契約の当事者となる個人。

ポイントは、「個人事業主でも、プライベートな買い物なら"消費者"になる」という点です。 肩書きで決まるのではなく、その契約が"事業のため"かどうかで判断します。

📝 過去問はこう出る(H29 第19問) 「最も適切なもの」を選ぶ問題。正解は 「個人事業主が、ミネラルウォーターを"自宅で飲むために"購入した場合、消費者契約法が適用される」。 個人事業主でも、事業のためでない私的な購入なら消費者にあたる、というのがミソです。 誤り選択肢には「軽過失でも全部免除条項は有効(×→無効)」「重過失の一部免除条項は有効(×→無効)」などが並びました。 → H29 第19問

① 取消しできる場合 ― 不当な勧誘

事業者が次のような不当な勧誘をして、消費者が誤認・困惑して契約したときは、消費者は契約を取り消せます。 (条文用語をかみくだいて示します。)

類型 かみくだくと
不実告知 重要事項についてウソを言う 「この床は永久に無償で張り替えます」と事実と違う説明
断定的判断の提供 不確実なことを「必ず○○になる」と言い切る 「この株は必ず値上がりします」
不利益事実の不告知 消費者に不利なことをわざと隠す メリットだけ強調し、重大なデメリットを黙っている
不退去・退去妨害 帰ってくれない/帰らせてくれない(困惑させる) 「帰ってください」と言っても居座って勧誘し続ける
  • 取消しなので、契約は最初から無効だったことになり、支払ったお金は返してもらえます。
  • 取消権には期間制限があります(追認できる時=誤認に気づいた時などから1年、契約から5年)。 時間が経つと取り消せなくなる点に注意します。

💡 「取消し」と「無効」の違い - 取消し:消費者が「取り消す」と主張してはじめて無効になる(放っておけば有効のまま)。→ 不当な勧誘への武器。 - 無効:主張しなくても、はじめから効力がない。→ 不当な条項への武器(次項)。

② 無効となる不当条項 ― 免責条項がねらい目

契約書の中に、消費者に一方的に不利な条項があっても、消費者契約法はそれを無効にします。 試験で最頻出なのが、事業者の損害賠償責任を免除する条項(免責条項) です。

事業者の債務不履行(約束を守らなかったこと)で消費者に損害が出たとき——

免責条項の内容 効力
事業者の軽過失による損害賠償責任の全部を免除 無効
事業者の故意・重過失による損害賠償責任の一部を免除 無効
事業者の故意・重過失による損害賠償責任の全部を免除 無効

⚠️ ここが最頻出:免責条項の"効くライン"を正確に - 全部免除は、軽過失でも無効(=どんな場合でも全部免除はダメ)。 - 一部免除は、故意・重過失なら無効(=軽過失の一部免除だけはセーフの余地)。 ひとことで言えば「全部免除は常にアウト/一部免除は"故意・重過失"ならアウト」。 消費者が「説明を受けて納得・署名した」場合でも、無効は無効(同意していても効力は復活しません)。

このほか、令和4年(2022年)の改正で加わった論点も出ています。

  • 事業者の債務不履行による消費者の解除権について、その有無を事業者側が決められるとする条項 → 無効
  • 損害賠償額の予定・違約金の条項は、「平均的な損害の額」を超える部分だけが無効(条項全体が無効になるわけではない)。

📝 過去問はこう出る(R06 第23問) 「最も適切なもの」を選ぶ問題。正解は 「事業者の債務不履行により生じた消費者の解除権につき、その解除権の有無を事業者が決定する権限を付与する条項は、無効となる」 (令和4年改正で追加)。 誤り選択肢:「軽過失の全部免除条項は有効(×→無効)」「重過失の一部免除条項は有効(×→無効)」 「損害賠償額の予定・違約金条項はその"全体"が無効(×→"超える部分だけ"が無効)」。 → R06 第23問


9-3 特定商取引法・景品表示法の概要

売り方(訪問販売・通信販売など)と、広告・おまけ(表示・景品)を規制する2つの法律です。 まとめて「消費者取引のルール」と押さえましょう。

特定商取引法 ― クーリング・オフと通信販売の返品

特定商取引法(特商法) は、トラブルの起きやすい特定の取引類型 (訪問販売、通信販売、電話勧誘販売、連鎖販売取引=マルチ商法 など)について、 事業者に書面交付などの義務を課し、消費者にクーリング・オフなどの権利を与える法律です。

クーリング・オフとは、契約後の一定期間内なら、理由を問わず無条件で契約を解除できる制度です。 「頭を冷やす(cool off)期間」を消費者に与える、という発想です。

取引類型 クーリング・オフ期間の目安
訪問販売・電話勧誘販売 書面(契約書面)を受け取った日から 8日間
特定継続的役務提供(エステ・語学教室 等)・連鎖販売取引(マルチ商法) 20日間

⚠️ 最重要:通信販売にはクーリング・オフが"ない" インターネット通販・カタログ通販などの通信販売には、クーリング・オフの規定はありません。 通販は「自分でじっくり見て、自分の意思で申し込む」ものなので、不意打ち性が低いためです。 そのかわり、通販には次の法定返品権があります。 - 事業者が広告に返品の可否・条件を表示していない場合、消費者は商品を受け取った日から8日以内自己都合(=理由がなくても)で契約を解除(返品)できます(送料は消費者負担)。 - 逆に「返品不可」等ときちんと表示していれば、その特約が優先されます。

💡 クーリング・オフが進まないケース 事業者が法律で定められた書面をきちんと渡していないと、クーリング・オフ期間のカウントが始まりません。 「渡してから8日たったからもう無理」とは限らない、という点も引っかけになります。

📝 過去問はこう出る(H22 第14問) 訪問販売とネット通販で化粧品を売る会社の事例。正解は 「インターネット販売(通信販売)にはクーリング・オフの適用はないが、返品の可否・条件をサイト上に表示していない場合、 購入者は自己都合により契約を解除(返品)できる」。 誤り選択肢には、消費者契約法・特商法のひっかけが混ざっています。 ・「重過失でも損害賠償額を10万円に限る条項は、納得・署名すれば有効」→無効(消費者契約法8条)。 ・「免責条項があると当然に契約"全体"が無効」→無効になるのはその条項だけ。 → H22 第14問

(参考)ネット通販と定型約款 ― 民法のルール

ネット通販(BtoC)では、利用者に守ってもらう「利用規約」を用意します。 改正民法(平成29年改正、令和2年施行)は、こうした画一的なルールを 定型約款 として規律しました。

  • みなし合意:定型取引を行う合意をしたうえで、あらかじめ「その定型約款を契約内容とする旨」を相手方に表示していれば、 個々の条項に合意したものとみなされます(一つひとつ個別合意までは不要)。
  • 内容表示義務:相手方から請求があれば約款の内容を示す必要があり、合意前の請求を正当な理由なく拒むと、みなし合意が適用されません。
  • 変更:一方的な変更は無制限ではなく、①相手方の一般の利益に適合するか、②契約目的に反せず合理的な場合に限られ、 かつ周知(効力発生時期・変更内容などの周知)が必要です。「どんな特約でも自由に変更できる」わけではありません。

📝 過去問はこう出る(R02 第21問) BtoC電子商取引と定型約款の会話形式の問題(改正民法548条の2以下)。 設問1の正解は「A=あらかじめ定型約款を契約内容とする旨を表示していれば足りる(みなし合意)」 「B="合意前"に内容表示を請求されたのに示さないと契約内容とならない(合意後は同様ではない)」。 設問2(最も不適切を選ぶ)の正解は「民法と異なる特約を置けば、"いかなる特約でも自由に変更できる"」—— 変更には合理性・周知が必要なので、これが誤り(=正解)でした。 → R02 第21問

景品表示法(景表法) ― 不当表示と景品規制

景品表示法(正式名称:不当景品類及び不当表示防止法、略して景表法) は、 消費者が「よい商品だ」「お得だ」と誤解して選んでしまわないよう、 ① 不当な表示(広告) と ② 過大な景品(おまけ) を規制する法律です。

(1)不当表示の規制

「表示」とは広告・パッケージ・値札などの表示全般で、口頭のセールストークも含まれます(文書に限りません)。 不当表示の代表は次の2つです。

種類 かみくだくと
優良誤認表示 品質・内容が実際よりも著しく良いと誤解させる表示 国産でないのに「純国産」、根拠なく「業界No.1」
有利誤認表示 価格・取引条件が実際よりも著しく有利と誤解させる表示 実際は値引きしていないのに「今だけ半額」

ここで頻出なのが 不実証広告規制 です。

⚠️ 不実証広告規制:消費者庁長官が、事業者に「その表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料」の提出を求めたのに、 事業者が提出しなかった(または不十分だった)場合、その表示は優良誤認表示とみなされます。 「効果があると言うなら、その根拠を出しなさい。出せないなら誇大広告とみなす」というしくみです。

そのほか、試験で問われる論点: - 比較広告は一律禁止ではありません。客観的に実証された事実に基づく適正な比較は許されます。 - 優良誤認・有利誤認の該当性に、事業者の故意・過失は不要です(結果として誤認させる表示なら規制対象)。 - 規制対象は、表示をした事業者だけでなく、表示内容の決定に関与した事業者も含まれます。

📝 過去問はこう出る(R05 第19問/H26 第5問) どちらも「表示」の定義・不実証広告規制を問う問題で、正解の柱は同じです。 「合理的根拠を示す資料の提出を求められて提出しないと、(優良誤認)表示とみなされる」が正解。 誤り選択肢の定番:「比較広告は一律禁止(×)」「口頭のセールストークは表示に含まれない(×→含まれる)」 「優良誤認・有利誤認には故意・過失が必要(×→不要)」「決定に関与しただけの事業者は規制対象外(×→対象)」。 → R05 第19問H26 第5問

(2)課徴金制度

不当表示(優良誤認・有利誤認)を行った事業者には、課徴金(金銭的なペナルティ)が課されます(平成28年4月施行)。 細かい数字より、「例外・減額のライン」が問われます。

論点 内容
自主申告による減額 最初に自主申告した事業者は課徴金が2分の1減額(※全額免除ではない
相当の注意(過失なし) 表示期間を通じ相当の注意を払っても不当表示と知らなかった者は、課徴金を課されない
返金措置 所定の手続で返金した額が課徴金額以上なら、納付命令を受けない
除斥期間 課徴金対象行為をやめた日から5年を経過すると、納付を命じられない

📝 過去問はこう出る(H29 第20問) 「最も不適切なもの(=誤り)」を選ぶ問題。正解(誤り)は 「最初に自主申告した者に対しては、課徴金の納付を命じられない」——実際は2分の1"減額"にとどまり、全額免除ではないので誤り。 一方、「除斥期間5年」「相当の注意で知らなければ課されない」「返金額が課徴金額以上なら納付命令なし」は正しい記述です。 → H29 第20問

(3)景品(おまけ)の規制 ― 懸賞の限度額

おまけ(景品類)が高額すぎると、品質でなく「おまけ目当て」で商品が選ばれてしまいます。 そこで景表法は、景品類の限度額を定めています。特に懸賞の限度額が数値問題で出ます。

懸賞の種類 最高額 総額
一般懸賞(1社が単独で行う) 取引価額5,000円未満:取引価額の20倍5,000円以上10万円 懸賞に係る売上予定総額の2%
共同懸賞(複数事業者が共同で行う) 取引価額にかかわらず30万円 懸賞に係る売上予定総額の3%

💡 覚え方共同懸賞は規模が大きいので上限も大きい=「最高30万円/総額3%」。 一般懸賞は「最高10万円(5,000円以上)/総額2%」。数字の組み合わせ(30・3/10・2)で覚えます。

📝 過去問はこう出る(R03 第5問) 懸賞景品の限度額の空欄補充。正解は「A=30(共同懸賞の最高額30万円)/B=2(一般懸賞の総額2%)」。 「一般懸賞の総額は2%、共同懸賞の総額は3%」を取り違えさせるのが定番のひっかけです。 → R03 第5問


この章のまとめ(試験直前チェック)

  • PL法は無過失責任=被害者は「欠陥」と「欠陥と損害の因果関係」を証明すればよい(過失の証明は不要)
  • ☐ PL法は民法709条(過失責任)の特例
  • 製造物=製造または加工された動産。不動産・未加工農産物・電気・ソフト単体は対象外/魚の塩焼きは該当(加工)
  • 欠陥=通常有すべき安全性を欠くこと。単なる品質・性能不足(安全性に無関係)は欠陥でない
  • 製品自体の損害のみ(拡大損害なし)はPL法の対象外
  • 製造業者等には輸入業者・表示製造業者も含まれる(作っていなくても責任を負う)
  • ☐ PL法の期間制限=知って3年(人身は5年)/引渡しから10年
  • 開発危険の抗弁=引渡し時点の科学技術水準では欠陥を認識できなかったと証明すれば免責
  • ☐ 消費者契約法の消費者=個人(事業のためを除く)。個人事業主でも私的購入なら消費者
  • ☐ 消費者契約法の武器は取消し(不当な勧誘)と無効(不当な条項)
  • 免責条項:全部免除は軽過失でも無効/一部免除は故意・重過失なら無効(納得・署名しても無効)
  • ☐ 損害賠償額の予定・違約金は「平均的損害を超える部分だけ」無効(全体無効ではない)
  • クーリング・オフ:訪問販売・電話勧誘は8日/マルチ・特定継続的役務は20日通信販売には適用なし
  • ☐ 通信販売=返品条件の表示がなければ8日以内・自己都合で返品(法定返品権)
  • ☐ 景表法の表示に口頭のセールストークも含む/比較広告は一律禁止でない/優良・有利誤認に故意過失は不要
  • 不実証広告規制=合理的根拠資料を出さないと優良誤認表示とみなされる
  • ☐ 課徴金:自主申告は2分の1減額(全額免除でない)/除斥期間5年
  • ☐ 懸賞の限度額:共同=最高30万円・総額3%/一般=最高10万円(5,000円以上)・総額2%

この章に対応する主な過去問

年度・問 論点 リンク
H22 第14問 特定商取引法(訪問販売・通信販売の返品) 問題
H26 第5問 景品表示法における表示の定義・不実証広告規制 問題
H29 第18問 製造物責任(製造物の範囲・責任主体・期間制限) 問題
H29 第19問 消費者契約法(消費者の範囲・免責条項の無効) 問題
H29 第20問 景品表示法の課徴金制度 問題
R02 第21問 BtoC電子商取引と定型約款(改正民法) 問題
R03 第5問 景品表示法・懸賞による景品類の限度額 問題
R05 第18問 製造物責任(無過失責任・拡大損害) 問題
R05 第19問 景品表示法における表示・不実証広告規制 問題
R06 第23問 消費者契約法(不当条項の無効) 問題
R07 第23問 製造物責任法(欠陥の定義・期間制限) 問題

次章予告 ▶ 第10章「倒産処理と事業再生」 ここまでは「取引で消費者を守るルール」を見てきました。次章では、会社が経営に行き詰まったときの ルール——倒産処理(破産・民事再生・会社更生・特別清算)事業再生を扱います。 「清算型か再建型か」「どの手続で誰が主導するか」という視点で、各手続の違いを整理していきます。