第7章 税務と税効果会計
この章のねらい この章では、会社が払う税金(とくに法人税と消費税)が、会計・簿記のうえでどう扱われるかを学びます。 ポイントは「会計のもうけ(利益)と、税金の世界のもうけ(課税所得)は、実はズレている」という一点です。 このズレをどう調整するかが「税務調整」、ズレを会計のうえで橋渡しするのが「税効果会計」です。
過去問での出方:財務・会計では、税金がらみは毎年のように1〜2問出ます。パターンは3つに分かれます。 ①法人税の課税所得・税額を計算させる問題(R05第6問・R07第3問)、 ②税効果会計の考え方や仕訳・金額を問う問題(H20・H23・H26・H29・R01・R04・R05・R07第9問と最頻出)、 ③消費税の仕訳・納付税額の問題(R02第9問・R07第3問)。 とくに税効果会計は難しく見えますが、「一時差異か永久差異か」「資産か負債か」を切り分ける型さえ覚えれば 得点源になります。計算も税率を掛けるだけの単純なものが多く、やった人が確実に取れる分野です。
7-0 この章の地図
この章は、「税金の世界のルール(法人税の基礎)」→「会計と税金のズレをつなぐ技術(税効果会計)」→ 「消費税の記帳のしかた」という順に進みます。まず全体像をつかみましょう。
7-1 法人税の基礎 … 益金・損金・課税所得、別表での調整
│ 交際費・貸倒引当金・欠損金(永久差異と一時差異の入口)
│
7-2 税効果会計 … ★最頻出。会計と税務の「ズレ」=一時差異
│ 繰延税金資産/負債、法定実効税率、評価性引当額
│
7-3 消費税の会計処理 … 税抜方式/税込方式、課税・非課税、納付税額の計算
- 7-1が土台です。「益金・損金・課税所得」と「加算・減算の調整」が分かると、7-2の税効果が一気に見通せます。
- 7-2が本丸(過去問11問中7問が税効果)。ここに時間をかけましょう。
- 7-3は仕訳と割り算。パターンが決まっており、取りこぼしを防ぐ分野です。
7-1 法人税の基礎 ― 会計の利益と「課税所得」は別物
まず結論:もうけの数え方が2つある
会社のもうけには、実は2つの数え方があります。
| だれのため | もうけの呼び方 | 計算式 | |
|---|---|---|---|
| 会計 | 株主・銀行など(会社の実態を示す) | 利益(税引前当期純利益) | 収益 − 費用 |
| 税務 | 税金を計算するため | 課税所得(かぜいしょとく) | 益金(えききん) − 損金(そんきん) |
- 益金=税務上の「収入」。会計の「収益」とほぼ同じですが、少しズレます。
- 損金=税務上の「経費」。会計の「費用」とほぼ同じですが、やはり少しズレます。
- 法人税は、この課税所得に税率を掛けて計算します。
💡 いちばん大事なイメージ:会計の利益と課税所得は「ほぼ同じだけど、少しだけ違う」。 だから、会計の利益をスタートにして、違う部分だけを足し引き(調整)して課税所得を出します。 この足し引きを 税務調整 と呼びます。
税務調整 ― 会計の利益に「加算・減算」して課税所得を出す
実務では、会計の利益から出発して、法人税の申告書(別表四という書類)の上で調整します。 調整には次の2方向があります。
税引前当期純利益(会計のもうけ)
+ 加算(益金算入・損金不算入) ← 会計では引いたが税務では経費と認めない など
− 減算(益金不算入・損金算入) ← 会計では収益にしたが税務では収入としない など
────────────────────────
= 課税所得
× 税率
= 法人税額
- 加算:課税所得を増やす方向。例)会計上は費用にしたのに、税務では損金と認めてもらえない(=損金不算入)。
- 減算:課税所得を減らす方向。例)会計上は収益にしたのに、税務では収入に数えない(=益金不算入)。
つまずきポイント:会計用語と税務用語の対応
初心者がまず混乱するのが用語です。次の対応をおさえましょう。
| 会計のことば | 税務のことば | 意味 |
|---|---|---|
| 収益 | 益金 | 入ってくるもうけ |
| 費用 | 損金 | 出ていく経費 |
| 利益 | 所得(課税所得) | 差し引きのもうけ |
⚠️ 混同注意:法人税は「益金 − 損金」で計算します。 R06第9問では「所得の金額は収益の額 − 所得控除の額」という選択肢が誤りとして出ました。 「所得控除」は個人の所得税で使う言葉で、法人税の課税所得の計算には出てきません。ここは引っかけ頻出です。
交際費・受取配当金 ― 「永久にズレたまま」の項目(永久差異)
税務調整の代表選手が 交際費 と 受取配当金 です。
- 交際費の損金不算入:会社の接待交際費は、税務では原則として一部(または全部)を経費に認めません。 → 会計では費用にしているので、その分を加算します。
- 受取配当金の益金不算入:他社からもらった配当は、二重課税を避けるため税務では収入に数えません。 → 会計では収益にしているので、その分を減算します。
この2つは、一度ズレたら将来にわたって二度と一致しません。こういうズレを 永久差異(えいきゅうさい) と呼びます。 「永久にズレたまま」なので、後で出てくる税効果会計の対象にはなりません(ここが超重要。7-2で再登場します)。
貸倒引当金・減価償却の超過額 ― 「いつか解消するズレ」(一時差異)
一方、将来いつか帳尻が合うズレもあります。代表が 貸倒引当金 と 減価償却の限度超過額 です。
- 貸倒引当金の繰入限度超過額:会計では「貸し倒れに備えて」多めに引当金を積んでも、 税務では限度額までしか損金に認めません。超えた分は当期は加算(損金不算入)。 でも、実際に貸し倒れた将来には損金と認められるので、将来は減算されて帳尻が合います。
- 減価償却の限度超過額:会計上の耐用年数が税務より短い(=会計で早く多く費用計上する)と、 超えた分は当期は加算。でも償却が進む将来に取り戻せます。
このように今はズレても将来解消するズレを 一時差異(いちじさい) と呼びます。 一時差異こそが、次に学ぶ税効果会計の対象です。
💡 覚え方:ズレには2種類。 永久差異(交際費・受取配当金)=二度と直らない → 税効果の対象外。 一時差異(貸倒引当金超過・減価償却超過)=いつか直る → 税効果の対象。 「永久はダメ(対象外)、一時はOK(対象)」と覚えます。
繰越欠損金 ― 赤字は将来の黒字と相殺できる
ある年に赤字(欠損金)が出た場合、その赤字を将来の黒字(課税所得)と相殺して、 将来の税金を軽くできます。これを 繰越欠損金の繰越控除 といいます。
- 青色申告法人なら、開始日前10年以内(平成30年4月以後開始事業年度。改正前は9年)に生じた欠損金を繰り越せます。
- 繰越欠損金は「将来の税金を減らす」効果があるので、後で見る繰延税金資産を生みます(一時差異に準じる扱い)。
📝 過去問はこう出る(R06 第9問) 法人税の基本を問う「最も適切なもの」問題。正解は 「内国法人は納税地の所轄税務署長の承認を受けた場合、確定申告書を青色申告書により提出できる」。 引っかけは、①繰越欠損金は「損金算入できない」(→ 10年以内なら繰越控除できるのでバツ)、 ②所得は「収益 − 所得控除」(→ 益金 − 損金が正しい)、 ③法人税率は「資本金と無関係」(→ 中小法人には軽減税率があるので関係あり、バツ)。 → R06 第9問
📝 過去問はこう出る(R05 第6問)― 課税所得と法人税の計算 税引前当期純利益800,000円から、税務調整して法人税額を求める計算問題。手順は次の通りです。
税引前当期純利益 800,000 − 受取配当金の益金不算入 △24,000 ← 減算(益金にしない) + 交際費の損金不算入 +36,000 ← 加算(損金にしない) − 前期の貸倒引当金の損金算入 △10,000 ← 減算(当期に損金と認められた) ───────────────────────── = 課税所得 802,000 × 税率20% = 法人税 160,400円正解はイ(160,400円)。加算と減算の向きを取り違えると別の選択肢に誘導されます。 「益金不算入・損金算入=減算」「損金不算入=加算」を機械的に当てはめれば確実です。 → R05 第6問
7-2 税効果会計 ― 会計と税務の「ズレ」を橋渡しする ★最頻出
なぜ税効果会計が必要なのか
7-1で見たように、会計の利益と課税所得はズレます。すると困ったことが起きます。 損益計算書の「税引前当期純利益」と「法人税等」の対応が、ちぐはぐになるのです。
たとえば、会計上の利益は少ないのに、税務調整で課税所得が大きくなると、 「利益は小さいのに税金は大きい」という見た目のアンバランスが生まれます。 これを直して、会計の利益に見合った税金の額に調整して表示するのが 税効果会計 です。
税効果会計の一言定義:会計上の利益と、それにかかるべき税金とをきちんと対応させるための会計処理。 一時差異に税率を掛けた金額を、繰延税金資産または繰延税金負債として貸借対照表に載せ、 相手勘定を 法人税等調整額 として損益計算書で調整します。
一時差異は2種類 ― 「将来減算」と「将来加算」
税効果の対象は一時差異だけ(永久差異は対象外)。その一時差異はさらに2つに分かれます。 ここが税効果会計の心臓部です。
| 種類 | 意味(将来どうなるか) | 生む勘定 | 代表例 |
|---|---|---|---|
| 将来減算一時差異 | 解消する将来に課税所得を減らす(=将来の税金が減る) | 繰延税金資産 | 貸倒引当金・賞与引当金の損金不算入、減価償却超過額、繰越欠損金 |
| 将来加算一時差異 | 解消する将来に課税所得を増やす(=将来の税金が増える) | 繰延税金負債 | 積立金方式の圧縮記帳、その他有価証券の評価差益 |
💡 覚え方:「減算 → 資産、加算 → 負債」。 将来税金が減る(うれしい・お得)→ その権利は 資産(繰延税金資産)。 将来税金が増える(払う義務が残る)→ それは 負債(繰延税金負債)。 「お得は資産、宿題は負債」とイメージすると迷いません。
金額の出し方 ― 一時差異に「税率」を掛けるだけ
繰延税金資産・負債の金額は、とてもシンプルです。
繰延税金資産(または負債)= 一時差異の金額 × 法定実効税率
この法定実効税率とは、法人税・住民税・事業税をひっくるめた「実質的な税率」のことです(試験では問題文で「実効税率30%」などと与えられます)。
【計算例:減価償却超過額】 - 備品1,200千円、会計の耐用年数4年(定額法)、税務の耐用年数6年、実効税率30% - 会計上の減価償却費:1,200 ÷ 4年 = 300千円 - 税務上の損金算入限度額:1,200 ÷ 6年 = 200千円 - 償却超過額(将来減算一時差異):300 − 200 = 100千円 - 繰延税金資産:100千円 × 30% = 30千円
会計で早く(多く)費用にした分は、税務では今は損金と認められず課税所得が増えますが、 将来の年度で取り戻せます。だから「将来減算一時差異」→ 繰延税金資産を計上します。
📝 過去問はこう出る(R01 第8問) まさに上の計算例そのものが出題されました。正解はア(繰延税金資産30千円)。 「繰延税金負債」とした選択肢(ウ・エ)は、資産と負債の向きを取り違えたひっかけ。 会計の耐用年数のほうが短い(早く費用計上)→ 将来減算 → 資産、と押さえれば一発です。 → R01 第8問
仕訳のかたち ― 相手勘定は「法人税等調整額」
繰延税金資産・負債を計上するときの相手勘定は、必ず 法人税等調整額 です。
【繰延税金資産を計上するとき】(将来の税金が減る効果を資産計上)
(借)繰延税金資産 ×× (貸)法人税等調整額 ××
- 貸方の法人税等調整額は、損益計算書で法人税等を減らす方向に働きます。
【計算例:繰越欠損金の税効果】 - 当期に繰越欠損金400万円、実効税率30% - 繰延税金資産 = 400万円 × 30% = 120万円
(借)繰延税金資産 120 (貸)法人税等調整額 120
📝 過去問はこう出る(R04 第7問) 中小法人が繰越欠損金400万円を計上したときの仕訳。正解は ウ(借)繰延税金資産120/(貸)法人税等調整額120。 ひっかけは、①欠損金全額400を繰越利益剰余金で処理する(→ 税効果は税率分だけなのでバツ)、 ②繰延税金負債にする(→ 将来の税金が減る効果なので資産が正しい、借方・貸方が逆)。 「欠損金 → 将来減算に準じる → 資産、金額は税率分だけ」と覚えます。 → R04 第7問
法人税等調整額の金額 ― 期中の増減から求める
貸借対照表の繰延税金資産・負債が期中にどれだけ増減したかから、その期の法人税等調整額を計算する問題もあります。
法人税等調整額 =(繰延税金負債の純増)−(繰延税金資産の純増)
- 繰延税金資産が増える、または繰延税金負債が減ると、法人税等を減らす方向(マイナス)に働きます。
【計算例:H20第8問】
| 期首残高 | 当期計上 | 当期取崩 | 純増 | |
|---|---|---|---|---|
| 繰延税金資産 | 360 | 140 | 60 | +80(=140−60) |
| 繰延税金負債 | 250 | 50 | 90 | −40(=50−90) |
- 法人税等調整額 =(負債の純増 −40)−(資産の純増 +80)= −120千円(△120)
📝 過去問はこう出る(H20 第8問) 損益計算書の「法人税等調整額」の空欄を求める計算。正解はア(−120)。 資産の純増と負債の純増を取り違えるとイ(−40)に引っかかります。 「資産の増加・負債の減少は税金を減らす(マイナス)」という向きを固定しておきましょう。 → H20 第8問
永久差異は対象外 ― ここが最頻出のひっかけ
7-1で学んだ通り、永久差異は税効果の対象になりません。試験はこれを繰り返し狙います。
| 項目 | 差異の種類 | 税効果は? | 生む勘定 |
|---|---|---|---|
| 受取配当金の益金不算入 | 永久差異 | 対象外(何も生じない) | ― |
| 交際費の損金不算入 | 永久差異 | 対象外(何も生じない) | ― |
| 貸倒引当金の限度超過額 | 将来減算一時差異 | 対象 | 繰延税金資産 |
| 減価償却の限度超過額 | 将来減算一時差異 | 対象 | 繰延税金資産 |
📝 過去問はこう出る(H29 第6問) 税効果会計の「最も適切なもの」問題。正解は エ「税法の損金算入限度額を超える減価償却費は、繰延税金資産を増加させる」(将来減算一時差異)。 ひっかけは、①受取配当金の益金不算入で繰延税金負債(→ 永久差異で対象外なのでバツ)、 ②交際費の損金不算入で繰延税金資産(→ 同じく永久差異で対象外、バツ)、 ③貸倒引当金の超過額で繰延税金資産が「減少」(→ 将来減算なので増加、向きが逆)。 「永久差異は税効果なし」を突く問題の典型です。 → H29 第6問
📝 過去問はこう出る(H23 第8問)― 用語の定義 税効果会計の記述問題。正解は ア「重要性が乏しい一時差異等については、繰延税金資産・負債を計上しないことができる」(重要性の原則)。 ひっかけの整理がそのまま良い教材になります。 ・棚卸資産の評価損(損金不算入)→ 将来「減算」一時差異(イは「加算」としてバツ) ・連結会社間の債権債務消去で貸倒引当金を減額 → 将来「加算」一時差異(ウは「減算」としてバツ) ・税効果の「法人税等」には法人税・住民税に加え、事業税(所得割)も含む(エは「法人税と住民税」だけとしてバツ) → H23 第8問
賞与引当金の増加分 ― 「差額」だけ動く
繰延税金資産は毎期末の一時差異に応じて計上し直します。前期からの増加分だけが当期の変動になります。
【計算例:R07第9問・肢ウ】 - 前期末:賞与引当金3,000千円が損金不算入 → 繰延税金資産 3,000 × 30% = 900千円 - 当期末:賞与引当金3,300千円が損金不算入 → 繰延税金資産 3,300 × 30% = 990千円 - 当期の増加額 = 990 − 900 = 90千円
📝 過去問はこう出る(R07 第9問) 実効税率30%前提の税効果会計。正解はウ(上の賞与引当金の計算で増加90千円が正しい)。 ア・イは減価償却の一時差異で、資産/負債の区分や金額を誤らせるひっかけ。 なお解説にある通り「税務上の定額法は残存価額をゼロとして計算する」点にも注意します。 「今期末の残高 − 前期末の残高 = 当期の増減」という差額でとらえる感覚が問われました。 → R07 第9問
(発展)評価性引当額 ― 「回収できそうにない分」は資産から除く
繰延税金資産は「将来の税金が減るお得」を資産にしたものです。でも、将来そもそも黒字が出そうにない会社なら、 その「お得」を使い切れません。使えない見込みの分は資産から差し引きます。この差し引く金額を 評価性引当額 と呼びます。
- 回収可能性(将来の課税所得の見込み、タックスプランニング等)が低いほど、評価性引当額(控除額)は増える。
- 逆に、将来の黒字がしっかり見込めるほど、控除は少なくて済む。
📝 過去問はこう出る(H26 第3問) 評価性引当額の記述問題。正解は ア「将来における課税所得の減少は、評価性引当額の増加を招く」。 将来の課税所得が減る → 繰延税金資産を回収できる見込みが減る → 回収不能分(評価性引当額)が増える、という理屈です。 「タックスプランニングは評価性引当額に影響しない」(→ 回収可能性の判断材料なので影響する、バツ)などがひっかけ。 → H26 第3問
⚠️ 現行基準の注記:税効果会計の基本的な考え方(一時差異×実効税率)は本章の通りですが、 開示・分類などの細目は基準改正で見直されています。試験対策としては、一時差異と永久差異の切り分け、 将来減算=資産/将来加算=負債、金額=差異×税率という骨格を確実に押さえれば十分に得点できます。
7-3 消費税の会計処理 ― 税抜方式と税込方式
消費税のしくみ ― 「預かって、納める」
消費税は、会社がお客さんから預かった消費税(仮受)から、仕入や経費で支払った消費税(仮払)を差し引いて、 差額を国に納める、という仕組みです。
納付税額 = 仮受消費税(売上で預かった分)− 仮払消費税(仕入で払った分)
これは、事業者が最終的に負担するわけではなく(負担するのは消費者)、 会社は「通り道」として税金を預かって納める立場だ、という点がポイントです。
記帳のしかたは2つ ― 税抜方式と税込方式
消費税の記帳には、税抜方式と税込方式の2つがあります。
| 方式 | 消費税の扱い | 仕入・売上の金額 | 消費税の勘定 |
|---|---|---|---|
| 税抜方式 | 本体と消費税を区別する | 本体価格のみ | 仮払消費税・仮受消費税を使う |
| 税込方式 | 消費税込みで記帳 | 税込金額をそのまま | 別建てしない(納付時に租税公課など) |
税抜方式が原則的な処理で、試験でもよく問われます。消費税を本体からきちんと分けるのがポイントです。
仕訳例 ― 税抜方式で仕入れる
税込19,800円(消費税率10%)の商品を現金で仕入れた場合。
- 本体価格 = 19,800 ÷ 1.1 = 18,000円
- 消費税 = 19,800 − 18,000 = 1,800円(仕入なので 仮払消費税)
(借)仕 入 18,000 (貸)現 金 19,800
仮払消費税 1,800
📝 過去問はこう出る(R02 第9問) まさにこの仕訳が出題されました。正解はア(仕入18,000/仮払消費税1,800/現金19,800)。 ひっかけは、①消費税を「租税公課」で処理(→ 仮払消費税が正しい、イはバツ)、 ②税込19,800をそのまま仕入に(→ これは税込方式の仕訳、税抜では区分するのでウはバツ)、 ③仕入なのに「仮受消費税」(→ 仕入は仮払、エはバツ)。 「仕入は仮払、売上は仮受」を絶対に取り違えないことです。 → R02 第9問
納付税額の計算 ― 仮受から仮払を引く
税抜方式では、期末に「仮受消費税 − 仮払消費税」で納付税額を計算します。 仕入れた商品が期末に売れ残っていても、消費税は仕入れた時点の仮払で全額計算する(在庫かどうかは関係ない)点に注意します。
【計算例:R07第3問】 - 仕入:1個1,100円(税100円含む)× 1,000個 → 仮払消費税 100 × 1,000 = 100,000円 - 売上:1個1,650円(税150円含む)× 800個 → 仮受消費税 150 × 800 = 120,000円 - 消費税の納付税額 = 仮受120,000 − 仮払100,000 = 20,000円
同じ資料から所得金額も計算できます(法人税と消費税を1問で聞く出題)。
- 売上(税抜):800個 × 1,500円 = 1,200,000円
- 売上原価(税抜):800個 × 1,000円 = 800,000円(在庫200個は資産計上され原価に入らない)
- 所得金額 = 1,200,000 − 800,000 = 400,000円
📝 過去問はこう出る(R07 第3問) 法人税の所得金額と消費税の納付税額を同時に問う問題。正解はア(消費税の納付税額は20,000円)。 ポイントは2つ。①消費税は仕入全量(1,000個)の仮払で計算する(在庫分も含めて払っている)。 ②所得の計算では売上原価は売れた800個分だけ、在庫200個は資産に残る。 「納付40,000円」「所得200,000円・440,000円」は、在庫の扱いや税抜処理を誤らせるひっかけです。 → R07 第3問
(補足)課税取引と非課税取引
すべての取引に消費税がかかるわけではありません。非課税取引の代表を押さえておきましょう。
- 課税取引:商品の販売、サービスの提供など、通常の事業取引。
- 非課税取引:土地の譲渡・貸付、利息(貸付金の利子)、住宅の家賃、行政手数料など。 「消費」になじまない・政策的に配慮するものが非課税とされます。
この章のまとめ(試験直前チェック)
- ☐ 会計の利益(収益−費用)と税務の課税所得(益金−損金)は別物。益金−損金で覚える
- ☐ 課税所得 = 税引前利益 + 加算(損金不算入・益金算入)− 減算(益金不算入・損金算入)
- ☐ 永久差異=交際費・受取配当金(二度と直らない)→ 税効果の対象外
- ☐ 一時差異=貸倒引当金・減価償却の超過額など(将来直る)→ 税効果の対象
- ☐ 将来減算一時差異 → 繰延税金資産(将来の税金が減る=お得は資産)
- ☐ 将来加算一時差異 → 繰延税金負債(将来の税金が増える=宿題は負債)
- ☐ 金額 = 一時差異 × 法定実効税率。相手勘定は法人税等調整額
- ☐ 法人税等調整額 =(負債の純増)−(資産の純増)。資産の増加・負債の減少は税金を減らす
- ☐ 繰越欠損金は繰延税金資産を生む(10年以内繰越控除)。金額は税率分だけ
- ☐ 評価性引当額=回収できそうにない繰延税金資産の控除。将来課税所得が減ると増える
- ☐ 消費税:税抜方式は本体と消費税を区分、仕入は仮払・売上は仮受
- ☐ 納付税額 = 仮受消費税 − 仮払消費税(在庫があっても仕入は全量で仮払計算)
- ☐ 非課税取引=土地の譲渡・貸付、利息、住宅家賃など
この章に対応する主な過去問
| 年度・問 | 論点 | リンク |
|---|---|---|
| H20 第8問 | 税効果会計(法人税等調整額の計算) | 問題 |
| H23 第8問 | 税効果会計(将来減算・加算、重要性) | 問題 |
| H26 第3問 | 税効果会計の評価性引当額 | 問題 |
| H29 第6問 | 税効果会計(永久差異と一時差異の切り分け) | 問題 |
| R01 第8問 | 繰延税金資産・負債(減価償却の差) | 問題 |
| R02 第9問 | 消費税の仕訳(税抜方式) | 問題 |
| R04 第7問 | 繰越欠損金の税効果(繰延税金資産) | 問題 |
| R05 第6問 | 税効果会計と法人税の計算(課税所得) | 問題 |
| R06 第9問 | 法人税の基礎(青色申告・繰越欠損金) | 問題 |
| R07 第3問 | 法人税の所得金額と消費税の納付税額 | 問題 |
| R07 第9問 | 税効果会計(一時差異の増減) | 問題 |
次章予告 ▶ 第8章「キャッシュフロー計算書」 本章までの損益計算書・貸借対照表に続き、第三の財務諸表 キャッシュフロー計算書(CF計算書) を扱います。 「利益は出ているのにお金がない(黒字倒産)」を見抜くための、営業・投資・財務の3区分、 直接法・間接法、そして頻出の間接法での調整(減価償却費の足し戻しなど)を学びます。