第12章 統計・データ分析と表計算
この章のねらい 経営情報システムの最終章です。ここは、いわば「データを"見る目"を鍛える」分野です。 平均や標準偏差といった基礎統計から、相関・回帰、仮説検定、そして近年出題が急増している AI・機械学習、さらに実務で毎日触れる表計算ソフト(Excel)の絶対参照・相対参照まで、 数字とデータをあつかう道具を一気に押さえます。
過去問での出方:この分野は毎年 第22〜25問あたり(試験の最後のかたまり)で 3〜4問まとめて出ます。数と割合の計算問題(平均・分散・回帰)と、 用語の定義問題(第1種/第2種の誤り、教師あり/なし学習、ハルシネーションなど)が半々です。 計算は電卓なしでも解ける易しい数字が多く、手順さえ覚えれば得点源になります。 さらに、AI・生成AIの用語はR02以降ほぼ毎年顔を出す"伸びしろ論点"です。
12-0 この章の地図
この章は、「データを整理して要約する(基礎統計)」→「2つの量の関係を調べる(相関・回帰)」→ 「一部から全体を推測する(推定・検定)」→「大量データから知恵を引き出す道具(AI・機械学習・Excel)」 という順に、だんだん道具を増やしていきます。
12-1 データの種類と代表値・散布度 … 尺度水準/平均・中央値・最頻値/分散・標準偏差
│ (データを1つの数字に要約する)
12-2 相関と回帰分析 … 相関係数/単回帰・最小二乗法/相関≠因果(★頻出)
│ (2つの量の関係を調べる)
12-3 確率と統計的推定・検定 … 正規分布/点推定・区間推定/仮説検定・p値
│ 第1種・第2種の誤り(★引っかけの定番)
│ (手元の一部から全体を推測する)
12-4 データマイニング・AI・機械学習 … 教師あり/なし/回帰・分類・クラスタリング
と表計算ソフトの活用 生成AI・ハルシネーション/絶対参照・相対参照
(大量データから知恵を引き出す実務の道具)
まずは 12-1 で「データを1つの数字にまとめる」ところから始めましょう。
12-1 データの種類と、代表値・散布度
まずデータには「4つの種類(尺度)」がある
同じ「数字」に見えても、統計では扱ってよい計算がデータの種類ごとに違います。 この分類を 尺度水準(しゃくどすいじゅん) といい、4つに分かれます。下にいくほど「情報が濃く」なります。
| 尺度 | 何を表すか | 例 | 平均は出せる? |
|---|---|---|---|
| 名義尺度 | ただの区別・ラベル(順序に意味なし) | 性別、血液型、都道府県コード | ✕(最頻値だけ) |
| 順序尺度 | 順番には意味があるが、間隔は不均等 | アンケートの5段階評価、成績の松竹梅 | ✕(中央値まで) |
| 間隔尺度 | 間隔(差)が一定。ゼロは「便宜的」 | 温度(℃)、西暦 | ○(差の計算はOK) |
| 比率尺度 | 間隔が一定+ゼロが「本当の無」 | 身長、体重、売上、金額、人数 | ○(比=倍の計算もOK) |
💡 見分けのコツ:「0が"何もない"を意味するか」で間隔尺度と比率尺度を分けます。 温度0℃は「熱がゼロ」ではない(=間隔尺度、だから"20℃は10℃の2倍暑い"とは言えない)。 一方、売上0円は「売上が本当にゼロ」(=比率尺度、だから"1000円は500円の2倍"と言える)。
代表値:データを「1つの数字」に要約する
たくさんの数字を「だいたいこのへん」と1点で言い表すのが代表値です。3つ覚えます。
| 代表値 | 定義 | ひとことで | 外れ値(極端な値)に |
|---|---|---|---|
| 平均値(Mean) | 全部を足して個数で割る | いちばん一般的な"ならし" | 弱い(引っぱられる) |
| 中央値(Median、中位数) | 小さい順に並べたときのまん中の値 | 順位でまん中 | 強い(影響されにくい) |
| 最頻値(Mode、モード) | いちばん多く出てくる値 | 一番人気の値 | 強い |
平均と中央値がズレるのがポイントです。たとえば年収のように「一部の高所得者」がいると、 平均は上へ引っぱられ、「平均以下でも順位は上位半分」ということが起こります。
年収の分布(右にすそ野が長い)
人数
│ ██
│ ████
│ ██████ ← 大多数はこのへん
│ ████████
│ ██████████ ▁▁▁▁▁▁▁ ← 少数の高所得者が右に長く伸びる
└──┴────┴────┴────┴─────→ 年収
中央値 平均値
(まん中)(右に引っぱられて中央値より大きい)
⚠️ 混同注意:「平均を下回る=下位半分」ではない 「私の年収は平均を下回っているから、順位では下位半分だ」——これは誤りです。 順位のまん中は中央値であって平均ではありません。分布が右に偏っていれば、 平均未満でも中央値より上(=上位半分)ということが起こります(R02 第23問の事例2)。
散布度:データの「ばらつき」を測る
代表値だけでは「みんな似た値か、バラバラか」が分かりません。そこでばらつきの大きさを測ります。
- 分散(Variance):各データが平均からどれだけ離れているか(偏差)を2乗して平均したもの。
- 標準偏差(Standard Deviation):分散の平方根(ルート)。元のデータと同じ単位に戻るので実務で使いやすい。
- 四分位数:データを小さい順に4等分する区切り。第1四分位数(25%)・第2四分位数(=中央値・50%)・第3四分位数(75%)。
- 四分位範囲(IQR)=第3四分位数−第1四分位数。まん中50%の広がりで、外れ値に強いばらつき指標。
分散・標準偏差の計算手順(ステップで)
例として、5つのデータ 2, 4, 4, 6, 4 の分散・標準偏差を求めます。
① 平均を出す:(2+4+4+6+4) ÷ 5 = 20 ÷ 5 = 4
② 各データの「偏差(平均との差)」:
2−4=−2、 4−4=0、 4−4=0、 6−4=2、 4−4=0
③ 偏差を2乗する:(−2)²=4、 0、 0、 2²=4、 0
④ 2乗の合計(偏差平方和):4+0+0+4+0 = 8
⑤ 分散 = 偏差平方和 ÷ 個数 = 8 ÷ 5 = 1.6
⑥ 標準偏差 = √分散 = √1.6 ≒ 1.26
⚠️ ばらつきの比較は「標準偏差の大小」だけでは決められない 平均が違う2つのデータを比べるときは、変動係数(CV)=標準偏差 ÷ 平均を使います。 例:A店(平均40・標準偏差10)→ 10÷40=0.25、B店(平均100・標準偏差20)→ 20÷100=0.20。 標準偏差はB店が大きいのに、相対的なばらつきはA店のほうが大きいのです(R02 第23問の事例3)。
📝 過去問はこう出る(R06 第22問) 中小企業白書の「経営者年齢の相対度数分布・累積相対度数分布」の表を読み、最頻値と中央値を判定する問題。 - 最頻値=相対度数が最大の階級(一番割合が高い年齢層)。 - 中央値=累積相対度数が50%を初めて超える階級(下から数えてちょうどまん中の人がいる層)。 表から階級を拾って比べるだけで解けます。正解は「2000年・2005年の中央値(55〜59歳)は、 2010年以降のどの中央値(60〜64歳)よりも小さい」。 → R06 第22問
12-2 相関と回帰分析
相関:2つの量が「一緒に動くか」を見る
相関とは、「片方が増えると、もう片方も増える(or 減る)」という2つの量の連動の強さです。 これを −1 〜 +1 の1つの数字で表したのが 相関係数(r) です。
r = +1 r ≈ +0.5 r ≈ 0 r ≈ −0.5 r = −1
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
・ ・ ・ ・・ ・ ・ ・ ・ ・
・ ・ ・ ・ ・・ ・ ・ ・ ・
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
完全な正の相関 正の相関やや 相関なし 負の相関やや 完全な負の相関
(右上がり) (右上がり) (バラバラ) (右下がり) (右下がり)
- r が +1 に近い:強い正の相関(片方が増えると片方も増える)。
- r が −1 に近い:強い負の相関(片方が増えると片方は減る)。
- r が 0 に近い:ほとんど相関なし(バラバラ)。
【超重要】「相関」と「因果」は別物
これは本章でいちばん問われる考え方です。相関係数が高くても、 それは「一緒に動いている」という事実にすぎず、「片方が原因でもう片方が結果」だとは言えません。
- 例:「アイスの売上」と「水難事故の件数」には強い正の相関があります。 でもアイスが事故を"起こす"わけではありません。両方とも「気温(暑さ)」という共通の原因で動いているだけです。 この裏に隠れた共通原因を 交絡因子(こうらくいんし) と呼びます。
⚠️ 混同注意:相関 ≠ 因果 「売上高と気温の相関係数が0.855と高いので、売上を決める原因は気温である」——これは誤り(R02 第23問の事例1)。 相関が強いことと、原因・結果の関係があることは、まったく別の話です。試験の定番の引っかけです。
回帰分析:関係を「式(直線)」で表す
回帰分析は、相関のある2つの量の関係を y = a + bx という式(回帰式)で表す手法です。
- x(説明変数・独立変数):原因側とみなす量(例:販売促進費)。
- y(目的変数・従属変数):結果側とみなす量(例:売上高)。
- b(回帰係数・傾き):xが1増えるとyがどれだけ増えるか。
- 説明変数が1つなら単回帰、2つ以上なら重回帰といいます。
この直線を、実際のデータ点とのズレ(残差)の2乗の合計が最小になるように引く方法を 最小二乗法(さいしょうにじょうほう) といいます。「一番よくフィットする直線」を機械的に決める方法です。
売上 y
│ ・
│ ・/ ← 残差(点と直線の縦のズレ)
│ ・/・ この縦ズレの2乗の合計が
│ /・ 最小になる直線を引く=最小二乗法
│ /・
│/
└──────────────→ 販売促進費 x
回帰直線 y = a + bx
📝 過去問はこう出る(H29 第24問) 「販売促進費」と「売上高」の散布図を見せて、関係式を求める分析手法を選ばせる問題。 正解は 回帰分析。2変数の関係を式にするのが回帰です。 引っかけの選択肢は、因子分析(多数の変数の背後の共通因子を探す)、 クラスター分析(似たもの同士をグループ化)、コンジョイント分析(商品属性の重要度を測る)—— いずれも「2変数の関係式を作る」手法ではありません。 → H29 第24問
回帰の分析結果(分散分析表)の読み方
過去には、回帰の出力表からt値・F値・データ数を計算させる問題も出ました。公式を2つだけ覚えます。
- t値 = 回帰係数 ÷ 標準誤差(その説明変数が効いているかの目安。絶対値が大きいほど有意)
- F値 = 回帰の平均平方 ÷ 残差の平均平方(モデル全体が意味を持つかの目安)
- 単回帰では 使用データ数 = 全体の自由度 + 1
📝 過去問はこう出る(H21 第24問) 不動産価格を床面積で説明する単回帰の出力表から、正しい読み取りを選ぶ問題。 - 床面積のt値 = 0.343 ÷ 0.075 ≒ 4.6(=非標準化係数÷標準誤差)→ 正しい。 - F値 = 378023 ÷ 18126 ≒ 20.9(「約2.0」は誤り)。 - 使用データ数 = 全体の自由度36 + 1 = 37(「36」は誤り)。 - 標準化係数は説明変数だけに出る値で、定数項(切片)には出ない。 → H21 第24問
12-3 確率と統計的推定・検定の基礎
正規分布:統計の「基本の山」
正規分布は、平均を中心に左右対称の釣り鐘型(ベルカーブ)になる、もっとも基本的な分布です。 身長や測定誤差など、自然界の多くのデータがこの形に近くなります。
█
███
█████ ← 平均を中心に左右対称
███████ 山のてっぺん=平均=中央値=最頻値(一致する)
███████████
████████████████
─────┼──────→
平均μ
← 68% → 平均±1標準偏差 に約68%
← ─ 95% ─ → 平均±2標準偏差 に約95% が入る
- 「平均 ± 1標準偏差」に約68%、「平均 ± 2標準偏差」に約95%のデータが入る、という性質が有名です。
- 平均0・標準偏差1に変換した正規分布を標準正規分布といい、検定表(z表)はこれを使います。
推定:手元の一部(標本)から、全体(母集団)を推測する
全数を調べられないとき、一部(標本)を取り出して全体(母集団)を推測するのが推定です。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 母集団 | 本当に知りたい対象全体(例:全国の受験者200人全員) |
| 標本 | そこから取り出した一部(例:無作為に選んだ10人) |
| 点推定 | 母集団の値を1つの値でズバリ推定する |
| 区間推定 | 「たぶんこの範囲に入る」と幅(信頼区間)で推定する |
点推定のポイント:母平均は標本平均でそのまま推定しますが、 母分散を推定するときは、偏差平方和を「個数 n」ではなく n−1 で割った 不偏分散 を使います。 (n で割ると、母分散を少し小さめに見積もってしまうクセがあるため、n−1 で補正します。)
点推定の計算手順(ステップで)
例:受験者200人から10人を抽出したら得点が 2, 2, 4, 5, 5, 7, 8, 8, 9, 10 だった。 母平均と母分散(不偏分散)の推定値は?
① 母平均の推定値 = 標本平均
合計 = 2+2+4+5+5+7+8+8+9+10 = 60
平均 = 60 ÷ 10 = 6.0 ……母平均の推定値
② 各データの偏差(平均6.0との差):
−4, −4, −2, −1, −1, 1, 2, 2, 3, 4
③ 偏差を2乗:16,16,4,1,1,1,4,4,9,16 → 合計 = 72(偏差平方和)
④ 母分散の推定値(不偏分散)= 偏差平方和 ÷ (n−1)
= 72 ÷ (10−1) = 72 ÷ 9 = 8.0 ……母分散の推定値
⚠️ ここが引っかけ:n(=10)で割ると 72÷10=7.2 になりますが、これは標本分散であって 不偏分散ではありません。母分散の推定は必ず n−1 で割る——この1点が正誤の分かれ目です(R04 第24問)。
📝 過去問はこう出る(R04 第24問) まさに上の計算がそのまま出題されました。正解は「母平均6.0、母分散(不偏分散)8.0」。 7.2(n で割った標本分散)を選ばせるのが定番の罠です。 → R04 第24問
仮説検定:「その差は偶然か、意味のある差か」を判断する
仮説検定は、「観察された差が、たまたま(偶然)なのか、それとも本物の差なのか」を確率で判断する手続きです。
- 帰無仮説(きむかせつ・H0):「差はない/効果はない」という打ち消したい仮説を立てる。
- 対立仮説(H1):「差がある/効果がある」という本当に主張したい仮説。
- 帰無仮説が正しいと仮定したとき、手元のデータ(かそれ以上の差)が起こる確率(p値)を計算する。
- p値が有意水準(例:5%)より小さければ、「偶然にしては起こりにくすぎる」として帰無仮説を棄却し、対立仮説を採用する。
- p値:「帰無仮説が正しいとしたら、この結果はこれくらいの確率でしか起きない」という値。小さいほど「偶然では説明しにくい=有意」。
- 有意水準(危険率、α):棄却の基準ライン。通常5%(0.05)や1%(0.01)。
第1種の誤り・第2種の誤り(★超頻出)
検定の判断には、2種類の間違いがあります。ここは毎年のように問われる最重要ポイントです。
| 帰無仮説は本当は真 | 帰無仮説は本当は偽 | |
|---|---|---|
| 検定で棄却した | 第1種の誤り(α)❌ 「あわてもの」の誤り |
正しい判断 ○(=検定力) |
| 検定で採択した | 正しい判断 ○ | 第2種の誤り(β)❌ 「ぼんやり」の誤り |
- 第1種の誤り:帰無仮説が真なのに棄却してしまう(=「差がないのに、差があると早合点」)。あわてものの誤り。
- 第2種の誤り:帰無仮説が偽なのに採択してしまう(=「差があるのに、見逃す」)。ぼんやりの誤り。
- 有意水準(危険率)= 第1種の誤りを犯す確率。
- 検定力(検出力)= 偽の帰無仮説を正しく棄却できる確率 = 1 −(第2種の誤りの確率β)。
💡 覚え方:「あわてて(第1種)棄却しすぎ」「ぼんやり(第2種)見逃す」。 そして 「危険率(有意水準)=第1種」 をセットで暗記。この3点で組合せ問題はほぼ解けます。
📝 過去問はこう出る(R04 第23問) 第1種/第2種の誤り・有意水準・検定力の定義を組み合わせる問題。正しいのは 「a:第1種=真の帰無仮説を棄却」「c:第2種=偽の帰無仮説を採択」「e:有意水準=第1種の誤りの確率」。 検定力を「第1種の誤りの確率」とした選択肢(g)は誤り——検定力は偽の帰無仮説を棄却できる確率です。 → R04 第23問
⚠️ 少数のサンプルの「5ポイント差」で断定しない 「100人ずつの調査で新メニューが5ポイント高評価だったから、置き換えれば売上が伸びる」——これは誤り(R02 第23問の事例4)。 55人と60人程度の差は標本誤差の範囲内かもしれず、統計的に有意とは言えません。「差の大きさ」だけでなく 「その差が偶然でないか(検定)」を確認する必要があります。
12-4 データマイニング・AI・機械学習と表計算ソフトの活用
意思決定を支えるデータ活用の道具立て
大量のデータから知恵を引き出すには、いくつかの道具が組み合わさります。用語をセットで押さえます。
| 用語 | ひとことで言うと |
|---|---|
| データウェアハウス(DWH) | 各業務のデータを目的別・時系列に統合して蓄えた、意思決定専用の"大倉庫" |
| データクレンジング | 生データの汚れ(形式バラバラ・欠損・単位違い)を整えて解析できる形にする |
| OLAP | スライシング・ダイシング・ドリルダウンなど対話的な多次元分析の仕組み |
| データマイニング | 大量データから、人が気づかない未知の規則・パターンを発掘する |
📝 過去問はこう出る(R01 第16問) 記述と用語の対応づけ問題。「基幹DBとは別に目的別に統合蓄積」=データウェアハウス、 「形式統一・欠損値補完・単位統一」=データクレンジング、 「スライシング・ダイシング・ドリルダウンで多次元分析」=OLAP。 → R01 第16問
機械学習の全体像:3つのタイプ
機械学習は、AI(人工知能)を支える中心技術で、データからルールを自動で学ぶ仕組みです。大きく3つに分かれます。
| タイプ | 学習の仕方 | 代表的なタスク・用途 |
|---|---|---|
| 教師あり学習 | 正解ラベル付きデータで学ぶ | 分類(迷惑メール判定・手書き文字認識)、回帰(数値予測) |
| 教師なし学習 | 正解ラベルなしデータで学ぶ | クラスタリング(似た者同士のグループ分け)、予測・傾向分析 |
| 強化学習 | 試行錯誤し、報酬が高くなる行動を学ぶ | ゲーム・ロボット制御・自動運転 |
ここが最頻出の切り分けです。用語を「何を予測するか」で整理しましょう。
- 分類(Classification):カテゴリ(離散値)を予測する。例:「迷惑メールか否か」。→ 教師あり
- 回帰(Regression):連続値(数値)を予測する。例:「来月の売上は何円か」。→ 教師あり
- クラスタリング(Clustering):正解なしでデータを似た群に分ける。→ 教師なし
⚠️ 混同注意:クラスタリング と 分類 どちらも「グループに分ける」イメージですが、正解ラベルの有無が決定的な違いです。 - 分類=あらかじめ決まった正解ラベル(例:スパム/非スパム)に振り分ける=教師あり。 - クラスタリング=正解なしで、データの似ている度合いから自然にグループを作る=教師なし。
📝 過去問はこう出る(R04 第15問) 機械学習の手法と学習区分の組合せ問題。正しいのは 「b:クラスタリング=データをグループに分ける教師なし学習」「c:分類=カテゴリ型変数を予測する教師あり学習」。 クラスタリングを「教師あり」、回帰を「教師なし」とした選択肢は誤りです。 → R04 第15問
📝 過去問はこう出る(R02 第11問) 穴埋め問題。「正解ラベルあり(迷惑メールフィルタ)=教師あり学習」「ラベルなし=教師なし学習(予測・傾向分析)」 「ニューラルネットワークを多層化して発展させた技術=深層学習(ディープラーニング)」。 → R02 第11問
決定木・回帰の評価指標
- 決定木(けっていぎ):「Yes/No」の質問を枝分かれで重ねて分類・予測する、結果が見て分かりやすい手法。
- 回帰モデルの精度は、予測値と実際の値の誤差の小ささで測ります。名前と定義をセットで覚えます。
| 指標 | 読み方 | 中身 |
|---|---|---|
| MSE | 平均二乗誤差 | 誤差を2乗して平均 |
| RMSE | 二乗平均平方根誤差 | MSEの平方根(元データと同じ単位に戻る) |
| MAE | 平均絶対誤差 | 誤差の絶対値の平均 |
📝 過去問はこう出る(R07 第25問) 回帰タスクの穴埋め。「回帰=教師あり学習」「誤差の二乗の平均=MSE」「その平方根=RMSE」 「誤差の絶対値の平均=MAE」。(MAPE・WAPEは"割合"の指標なので本問の定義には合いません。) → R07 第25問
生成AI(Generative AI)の注意点
近年は生成AI(文章や画像を作り出すAI)とそのリスクが頻出です。用語を押さえましょう。
- ハルシネーション(hallucination=幻覚):生成AIが、もっともらしいが事実に基づかない・存在しない情報を作り出してしまう現象。
- 混同しやすい類似現象:
- モデル崩壊:AIが生成したデータをAI自身が学習して精度が下がる/多様性が失われる。
- データドリフト(分布シフト):学習時と本番運用時とで、入力データの傾向がズレていく。
- プロンプト・インジェクション:生成AIに特殊な指示を紛れ込ませ、意図しない動作や情報開示をさせる攻撃。
📝 過去問はこう出る(R06 第24問) ハルシネーションの定義を選ぶ問題。正解は「事実に基づかない情報や実際には存在しない情報をAIが生成する現象」。 モデル崩壊・データドリフト・擬人化・エコーチェンバーなど、別の現象の説明が引っかけで並びます。 → R06 第24問
📝 過去問はこう出る(R07 第20問) AIシステムへの攻撃の穴埋め。「入力に微小ノイズを加えて誤判定させる=敵対的サンプル攻撃」 「入力と出力を分析して学習データを推測する=モデル反転攻撃」 「生成AIに特殊な指示を与えて意図しない挙動を起こす=プロンプト・インジェクション」。 → R07 第20問
表計算ソフト:絶対参照と相対参照(実務直結・計算頻出)
最後は、診断士の実務でも毎日使う表計算ソフト(Excel)の参照方式です。計算問題として毎年のように出ます。
- 相対参照(例:
B2):式を複写(コピー)すると、コピーした方向に合わせて参照先がずれる。 - 絶対参照(例:
$B$2):$を付けた部分は固定され、複写してもずれない。 - 複合参照(例:
B$2や$B2):行だけ固定・列だけ固定。$は「固定したい側」に付ける。
$ の付き方 複写したときの動き
─────────────────────────────────
B2 (相対) … 行も列も、複写方向にずれる
$B$2 (絶対) … 行も列も固定(ずれない)
B$2 (行だけ固定) … 列はずれる/行(2)は固定
$B2 (列だけ固定) … 行はずれる/列(B)は固定
考え方のコツ:「複写しても常に同じ場所を参照したいところに $ を付ける」。
絶対参照・相対参照の考え方(ステップで)
例:各年度の売上(B列)を、基準の2000年度(B2セル)で割って「増減割合」を出したい。 C2に式を入れ、C3〜C10へ下方向に複写する。C2に入れる式は?
① 分子(各年度の売上)は、行が下にずれてほしい → 相対参照のまま「B2」
② 分母(基準の2000年度)は、複写しても常にB2を指してほしい
→ 下方向の複写では「行」がずれるので、行を固定する → 「B$2」
③ よって C2 に入れる式は =B2/B$2
これを下に複写すると、C3は =B3/B$2、C4は =B4/B$2…となり、
分子だけが各年度に変わり、分母は常に基準年に固定されます。
📝 過去問はこう出る(H23 第5問) まさに上の問題。正解は
=B2/B$2。 分母をB$2とし、行を固定して常に基準年(2000年度)を指すのがポイント。=B$2/B2(割り算が逆)や=B2/$B2($Bは"列"固定で行が動いてしまう)は誤り。 → H23 第5問📝 過去問はこう出る(R01 第4問) 縦横2方向に複写する応用問題。「為替レート(A列)×ユーロ金額(第2行)」を計算する表で、 正解は
=$A3*B$2。レートは列をA固定・行は可変($A3)、金額は行を2固定・列は可変(B$2)。 「どの方向に複写しても正しく計算される $ の付け方」を、行・列それぞれで考えるのがコツです。 → R01 第4問💡 ピボットテーブル:表計算ソフトで、大量のデータをドラッグ操作だけで集計・クロス集計できる機能。 「地域×商品別の売上合計」などを、関数を書かずに一瞬で作れます。OLAPの多次元分析を手元でやるイメージです。
この章のまとめ(試験直前チェック)
- ☐ 尺度は名義・順序・間隔・比率の4つ。0が"本当の無"かで間隔尺度と比率尺度を区別
- ☐ 代表値=平均・中央値・最頻値。平均は外れ値に弱い、中央値・最頻値は強い
- ☐ 「平均を下回る=順位で下位半分」ではない(順位のまん中は中央値)
- ☐ 分散=偏差の2乗の平均、標準偏差=その平方根。ばらつき比較は変動係数(標準偏差÷平均)
- ☐ 最頻値=相対度数が最大の階級/中央値=累積相対度数が50%を初めて超える階級
- ☐ 相関係数 r は −1〜+1。相関≠因果(共通原因=交絡因子に注意)
- ☐ 回帰分析は関係を y=a+bx で表す。直線は最小二乗法で決める(説明変数1つ=単回帰)
- ☐ t値=係数÷標準誤差、F値=回帰の平均平方÷残差の平均平方、単回帰のデータ数=全体自由度+1
- ☐ 正規分布は左右対称。平均±1SDに約68%、±2SDに約95%
- ☐ 母分散の点推定は不偏分散(n−1で割る)。n で割ると標本分散(引っかけ)
- ☐ 第1種の誤り=真の帰無仮説を棄却(あわてもの)/第2種=偽の帰無仮説を採択(ぼんやり)
- ☐ 有意水準(危険率)=第1種の誤りの確率/検定力=1−β(偽を正しく棄却できる確率)
- ☐ 教師あり=ラベルあり(分類・回帰)/教師なし=ラベルなし(クラスタリング)
- ☐ 回帰の評価指標:MSE(二乗平均)・RMSE(その平方根)・MAE(絶対値平均)
- ☐ DWH(統合蓄積)・データクレンジング(整形)・OLAP(多次元分析)・データマイニング(規則発掘)
- ☐ 生成AIのハルシネーション=事実でない・存在しない情報の生成(モデル崩壊・データドリフトと区別)
- ☐ Excelの $ は固定したい側に付ける。複写して常に同じ場所を指したいところに絶対参照
この章に対応する主な過去問
| 年度・問 | 論点 | リンク |
|---|---|---|
| R06 第22問 | 最頻値・中央値(度数分布) | 問題 |
| R02 第23問 | 統計量の解釈(相関≠因果・変動係数など) | 問題 |
| H29 第24問 | 回帰分析(関係式を求める手法) | 問題 |
| H21 第24問 | 単回帰モデルの分析(t値・F値) | 問題 |
| R04 第24問 | 点推定による母平均・母分散(不偏分散) | 問題 |
| R04 第23問 | 仮説検定(第1種・第2種の誤り) | 問題 |
| R04 第15問 | 機械学習(クラスタリング・分類) | 問題 |
| R02 第11問 | 機械学習(教師あり・教師なし・深層学習) | 問題 |
| R07 第25問 | 回帰タスクの評価指標(MSE・RMSE・MAE) | 問題 |
| R06 第24問 | 生成AIのハルシネーション | 問題 |
| R07 第20問 | AIシステムへの攻撃 | 問題 |
| R01 第16問 | 意思決定支援(DWH・OLAP・データマイニング) | 問題 |
| H23 第5問 | 表計算の絶対参照・相対参照 | 問題 |
| R01 第4問 | 表計算の絶対参照・相対参照(縦横複写) | 問題 |
全12章、おつかれさまでした 🎉
これで「経営情報システム」の全12章が完結です。ハードウェア・ソフトウェアの基礎から、 データベース、ネットワーク、システム開発、セキュリティ、そして本章の統計・AIまで、 現代の経営を支える情報技術の全体像を一通り学びました。
情報システムは範囲が広く、用語も次々に新しくなりますが、 「基礎概念(なぜそうなるか)」を押さえておけば、新しい用語も"どの引き出しの話か"が見えてきます。 本テキストで身につけた土台は、2次試験や実務のDX・AX(AI活用)支援でもそのまま生きてきます。
巻末付録のご案内
さらに得点を伸ばすために、次の付録もご活用ください。
- 付録A 頻出略語・用語ミニ辞典:本文に登場したIT略語(RAID・OLAP・MSE など)を五十音/アルファベット順で一覧。直前の総復習に。
- 付録B 計算問題の解法パターン集:稼働率・2進数変換・IPサブネット・稼働率・そして本章の統計計算(分散・不偏分散・回帰)など、手順つきでまとめた計算ドリル。
- 付録C 年度別・論点別 過去問インデックス:H19〜R07の全問題を、章・論点ごとに引ける早見表。「あの論点をもう一問解きたい」ときの入口に。
学習の完走、本当におつかれさまでした。合格を心よりお祈りしています。