第4章 CVP分析(損益分岐点分析)
この章のねらい 財務・会計の中でも、毎年ほぼ確実に1〜2問が出る超・頻出テーマがこの「CVP分析(損益分岐点分析)」です。 CVPとは Cost(原価)・Volume(販売量)・Profit(利益) の頭文字で、 「売上(=販売量)が変わると、利益はどう動くか」を数式で扱う道具です。
この章は、覚える公式そのものは多くありません。カギは、費用を「変動費」と「固定費」の2つに分けるという たった1つの発想です。この分け方さえ体にしみこめば、損益分岐点も、目標利益の売上高も、安全余裕率も、 ぜんぶ同じ考え方の"横展開"で解けます。計算問題が中心なので、手を動かして解けば確実に得点源になります。
過去問での出方:損益分岐点売上高そのものの計算(H22・H27・R04・R06)、 目標利益を達成する売上高(H20・H30)、安全余裕率(H21・H25)、損益分岐点比率・変動費率をからめた指標(H23・R02)、 用語・関係式を問う理論問題(H24・R03)と、出題パターンは決まっています。 パターンごとに「解き方の型」を持てば、初見の数字でも落ち着いて解けます。
4-0 この章の地図
この章は、まず費用を2つに分ける準備をし、そこから「損益分岐点」を求め、 最後に「目標利益」や「安全度の指標」へと広げていきます。すべては限界利益率という1つの比率でつながっています。
4-1 変動費・固定費と限界利益 … すべての土台(費用の2分解/限界利益率)
│
4-2 損益分岐点売上高の計算 … ★最重要 公式=固定費 ÷ 限界利益率
│
4-3 応用の指標たち
├ 目標利益達成売上高 …(固定費+目標利益)÷ 限界利益率
├ 安全余裕率・損益分岐点比率 … いまの売上に「どれだけ余裕があるか」
└ 経営レバレッジ … 固定費が大きいほど利益は増減が激しい
まず1つだけ、この章で最も大切な公式を先に貼っておきます。あとは全部この応用です。
★この章の心臓:損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ 限界利益率
4-1 変動費・固定費と限界利益
まず費用を「2種類」に分ける
CVP分析のすべては、費用(原価)を次の2つに分けることから始まります。
| 種類 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| 変動費 | 売上(生産・販売の量)が増えると比例して増える費用 | 材料費、仕入原価、出来高払いの外注費、変動販売費 |
| 固定費 | 売上が増減しても一定で変わらない費用 | 家賃、正社員の給料、減価償却費、固定販売費・一般管理費 |
- 変動費は「たくさん作れば作るほど、たくさんかかる」費用。
- 固定費は「作っても作らなくても、じっとかかり続ける」費用。
💡 覚え方:変わる費用=変動費、動かない費用=固定費。名前がそのまま性質を表しています。
変動費率と限界利益率 ― この章の"通貨"
売上高に占める変動費の割合を 変動費率、残りの割合を 限界利益率 と呼びます。
売上高(100%)
├─ 変動費 … 変動費率(例 60%)
└─ 限界利益 … 限界利益率(例 40%) ← 1 − 変動費率
- 変動費率 = 変動費 ÷ 売上高
- 限界利益率 = 1 − 変動費率 = 限界利益 ÷ 売上高
限界利益率は「売上が1円増えたとき、そのうち何円が"もうけの元手"として手元に残るか」を示します。 この比率が、これから何度も登場するこの章の通貨です。
限界利益(=貢献利益)とは
限界利益 = 売上高 − 変動費
限界利益は「売上からまず変動費だけを引いた、固定費を回収するための元手」です。 限界利益で固定費をぜんぶ回収しきると、そこからが利益になります。
売上高
− 変動費
─────────
= 限界利益(貢献利益)
− 固定費
─────────
= 営業利益
- 限界利益 = 貢献利益 と呼ぶこともあります(ほぼ同じ意味で使われます)。
- 限界利益が固定費より小さいうちは赤字、ちょうど等しくなる点が「損益分岐点」(→4-2)です。
つまずきポイント:「貢献利益」には狭い意味もある
事業部の業績評価などでは、「貢献利益」をもう一段しぼった意味で使うことがあります。H24 第9問がこれです。
- 限界利益 = 売上高 − 変動費(変動費だけを引いたもの)
- 貢献利益(セグメント・マージン) = 売上高 − 変動費 − 個別固定費 … その事業部に直接かかる固定費(個別固定費)まで引いて、「全社共通の固定費を回収し、 さらに全社利益に貢献する度合い」を測る利益。
つまり「共通固定費を回収し、利益獲得に貢献する度合い」を問われたら、答えは 売上高 − 変動費 − 個別固定費です。「売上総利益(売上−売上原価)」や「限界利益(売上−変動費だけ)」を選ぶと 引っかかります。
📝 過去問はこう出る(H24 第9問) 「共通固定費を回収し、さらに利益獲得に貢献する度合いを示す利益額」を選ぶ問題。 正解は エ:売上高 − 変動費 − 個別固定費(=貢献利益・セグメント・マージン)。 「売上高−売上原価(=売上総利益)」「売上高−変動費(=限界利益だけ)」「売上高−変動費−管理可能固定費(=管理可能利益)」は、 それぞれ別の利益概念でバツ。"個別固定費まで引く"のが貢献利益、と押さえましょう。 → H24 第9問
4-2 損益分岐点売上高の計算 ★最重要
損益分岐点とは
損益分岐点(BEP:Break-Even Point) とは、利益も損失もちょうどゼロになる売上高のことです。 「これだけ売れば、少なくとも赤字にはならない」という最低ラインを示します。
損益分岐点では、限界利益がちょうど固定費と等しくなります(限界利益 = 固定費)。ここから公式が導けます。
損益分岐点では:限界利益 = 固定費
限界利益 = 売上高 × 限界利益率 だから
売上高 × 限界利益率 = 固定費
↓ 両辺を限界利益率で割る
売上高 = 固定費 ÷ 限界利益率
★損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ 限界利益率(=固定費 ÷(1 − 変動費率))
図解:損益分岐点のグラフ
タテ軸に金額、ヨコ軸に売上高(または販売量)をとると、次のような図になります。
金額
│ 総費用線(固定費+変動費)
│ /
│ / ← ここから上が利益(売上>総費用)
│ 売上高線 / ●損益分岐点(売上高=総費用)
│ / /
│ / / ← ここまでが損失(売上<総費用)
│ / /───────────── 固定費(横一直線)
│ //
└──────────────────────── 売上高
- 売上高線は原点から右上がりの直線。
- 総費用線は、固定費の高さ(横線)から出発し、変動費のぶん右上がりになる直線。
- 2つの線が交わる点が損益分岐点。ここより右(売上が多い)は利益、左(売上が少ない)は損失です。
解き方の型:損益分岐点売上高(3ステップ)
① 費用を変動費・固定費に分ける → ② 限界利益率を出す → ③ 固定費 ÷ 限界利益率
この3ステップだけです。R06 第12問の数字で実際にやってみます。
【例題:R06 第12問(設問1)】 売上高=@1,000円×30,000個=30,000,000円、変動製造原価@550円、変動販売費@50円、 固定製造原価6,000,000円、固定販管費3,000,000円。損益分岐点売上高は?
- ステップ①(費用の区分)
- 1個あたり変動費 = 変動製造原価550 + 変動販売費50 = 600円
- 固定費合計 = 固定製造原価6,000,000 + 固定販管費3,000,000 = 9,000,000円
- ステップ②(限界利益率)
- 変動費率 = 600 ÷ 1,000 = 0.6 → 限界利益率 = 1 − 0.6 = 0.4
- ステップ③(損益分岐点売上高)
- 損益分岐点売上高 = 固定費9,000,000 ÷ 限界利益率0.4 = 22,500,000円
📝 過去問はこう出る(R06 第12問) 設問1の損益分岐点売上高は、上のとおり 22,500,000円(ウ)。 設問2は「1個あたり営業利益150円を達成する販売量」で、 販売量Qとして 営業利益 = 限界利益400Q − 固定費9,000,000 = 150Q を解き、 250Q = 9,000,000 → Q = 36,000個(エ)。「1個あたり利益」を売上ではなく販売量の式で扱うのがコツです。 → R06 第12問
損益計算書(P/L)から解く場合
問題によっては、変動費率が直接書かれておらず、損益計算書から自分で区分します。手順は同じです。H25 第8問を見ます。
【例題:H25 第8問】 売上高20,000千円。変動製造費用5,000/固定製造費用9,000/変動販売費3,000/固定販売費800/一般管理費1,000(すべて千円、一般管理費は固定費)。安全余裕率は?(まず損益分岐点を出す)
- 変動費 = 変動製造5,000 + 変動販売3,000 = 8,000千円
- 固定費 = 固定製造9,000 + 固定販売800 + 一般管理1,000 = 10,800千円
- 限界利益率(貢献利益率)= (20,000 − 8,000) ÷ 20,000 = 0.6
- 損益分岐点売上高 = 10,800 ÷ 0.6 = 18,000千円
- (安全余裕率は4-3で:(20,000 − 18,000) ÷ 20,000 = 10.0%)
⚠️ 混同注意:割るのは「限界利益率」、変動費率で割らない 損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ 限界利益率(=1−変動費率)。 R03 第12問は、この定義そのものを問いました。「固定費を変動費率で除して求める」という選択肢は誤りです。 割るのはいつも限界利益率。ここを取り違えると答えが大きくズレます。
販売価格が変わったら?(単価が動く問題)
価格を変えると限界利益率が変わるので、損益分岐点も動きます。H22 第9問がこのタイプです。 ポイントは「1個あたりの変動費は変わらない」という前提を使うことです。
【例題:H22 第9問】 現状:価格2,000円・数量400個で売上800千円、変動費320千円、固定費360千円。 販売価格を1,700円に下げたら、損益分岐点売上高はいくら変化するか。
- 現状:1個あたり変動費 = 320千 ÷ 400個 = 800円。変動費率 = 800÷2,000 = 0.4 → 限界利益率0.6。 損益分岐点売上高 = 360 ÷ 0.6 = 600千円。
- 値下げ後(変動費800円/個は不変):限界利益率 = (1,700 − 800) ÷ 1,700 = 900/1,700。 損益分岐点売上高 = 360 ÷ (900/1,700) = 360 × 1,700 ÷ 900 = 680千円。
- 変化 = 680 − 600 = +80千円(値下げで限界利益率が下がり、損益分岐点は上昇)。
📝 過去問はこう出る(H22 第9問) 正解は +80(イ)。値下げすると「1個あたりのもうけ(限界利益)」が減るので、 固定費を回収するのにより多く売らねばならず、損益分岐点は上がるという感覚が大切です。 → H22 第9問
4-3 目標利益達成売上高・安全余裕率・損益分岐点比率・経営レバレッジ
損益分岐点(利益ゼロの点)が分かれば、あとは「利益を出したい」「いまどれだけ余裕があるか」へ広げるだけです。
(1)目標利益を達成する売上高
利益ゼロの損益分岐点は「固定費だけを回収する」点でした。目標利益を出したいなら、 回収すべき金額に目標利益を足すだけです。
★目標利益達成売上高 =(固定費 + 目標利益)÷ 限界利益率
H30 第11問(設問1)で確認します。
【例題:H30 第11問(設問1)】 売上高240,000千円、変動費96,000千円、貢献利益144,000千円、固定費104,000千円、営業利益40,000千円。 目標営業利益55,000千円を達成する売上高は?
- 貢献利益率(限界利益率)= 144,000 ÷ 240,000 = 0.6
- 目標売上高 =(固定費104,000 + 目標利益55,000)÷ 0.6 = 159,000 ÷ 0.6 = 265,000千円
⚠️ よくある誤り:目標売上高を「損益分岐点売上高 + 目標利益」としてはいけません(R03 第12問の誤答選択肢)。 正しくは(固定費+目標利益)を限界利益率で割る。目標利益は"限界利益で稼ぐ"ので、割り算が必要です。
経常利益や営業外項目がある場合も考え方は同じです。H20 第12問は、営業外収益・費用を含めて 必要な限界利益を組み立てます。
【例題:H20 第12問】 売上高100,000、営業費用合計86,500(うち固定費21,500)、営業外収益3,200、営業外費用6,900、経常利益9,800。 目標経常利益10,500を達成する売上高は?
- 変動費 = 86,500 − 21,500 = 65,000 → 変動費率 = 65,000 ÷ 100,000 = 0.65 → 限界利益率 = 0.35
- 必要限界利益 = 固定費21,500 + 営業外費用6,900 − 営業外収益3,200 + 目標経常利益10,500 = 35,700
- 目標売上高 = 35,700 ÷ 0.35 = 102,000千円
📝 過去問はこう出る(H20 第12問) 正解は 102,000(ア)。営業外収益は"プラス側なので引く"、営業外費用は"マイナス側なので足す"。 「回収すべき金額(=分子)」を正しく組み立てれば、あとは限界利益率で割るだけです。 → H20 第12問
(2)安全余裕率
安全余裕率は、「いまの売上が、損益分岐点よりどれだけ上にあるか(=どれだけ売上が落ちても赤字にならないか)」を示します。 大きいほど余裕があり、安全です。
★安全余裕率 =(実際売上高 − 損益分岐点売上高)÷ 実際売上高
H21 第8問で計算してみます。
【例題:H21 第8問】 売上高8,000,000円(10,000個×800円)、変動費5,000,000円、固定費2,700,000円。安全余裕率は?
- 限界利益率 = (8,000,000 − 5,000,000) ÷ 8,000,000 = 0.375
- 損益分岐点売上高 = 2,700,000 ÷ 0.375 = 7,200,000円
- 安全余裕率 = (8,000,000 − 7,200,000) ÷ 8,000,000 = 800,000 ÷ 8,000,000 = 10%
📝 過去問はこう出る(H21 第8問 / H25 第8問) H21・H25とも安全余裕率は 10% が正解。手順は共通で、①限界利益率 → ②損益分岐点売上高 → ③(売上−損益分岐点)÷売上、の3段。 H25では固定費を「固定製造+固定販売+一般管理」ともれなく合算するのがカギでした。 → H21 第8問 / H25 第8問
(3)損益分岐点比率
損益分岐点比率は、実際売上に対して損益分岐点が占める割合です。小さいほど良好(赤字になりにくい)。
★損益分岐点比率 = 損益分岐点売上高 ÷ 実際売上高 安全余裕率 = 1 − 損益分岐点比率(両者は足すと100%になる裏返しの関係)
- 損益分岐点比率が低い=損益分岐点までまだ余裕がある=赤字リスクが低い。
- 安全余裕率とは「1から引けばもう一方が出る」関係です。逆数(1÷比率)ではない点に注意(R03の引っかけ)。
H27 第10問・R02 第21問は、前期と当期を比べて「損益分岐点比率が改善/悪化した理由」を問う応用でした。 理由の切り分けが山場です。
【例題:H27 第10問(設問2)】 前期:売上24,000・変動費14,400・固定費7,200 → 変動費率0.60・限界利益率0.40。 今期:売上28,000・変動費15,400・固定費9,000 → 変動費率0.55・限界利益率0.45。
- 前期の損益分岐点 = 7,200 ÷ 0.40 = 18,000 → 損益分岐点比率 = 18,000÷24,000 = 75.0%
- 今期の損益分岐点 = 9,000 ÷ 0.45 = 20,000 → 損益分岐点比率 = 20,000÷28,000 ≒ 71.4%
- 今期は比率が低下=改善。固定費は7,200→9,000と増えており(悪化要因)、 改善の主因は変動費率が0.60→0.55へ低下したこと。
📝 過去問はこう出る(H27 第10問 / R02 第21問) H27設問1の今期・損益分岐点売上高は 20,000千円(エ)、設問2は「改善は変動費率の低下による(エ)」。 一方R02 第21問は、損益分岐点売上高が前期・当期とも2,000万円で変わらないのに、 売上が2,500→2,400へ減ったため損益分岐点比率が悪化した、というパターン(設問2=売上の減少による(ア))。 「比率=損益分岐点÷売上」なので、分子(固定費・変動費率)だけでなく分母(売上)の変化でも動くのがポイントです。 → H27 第10問 / R02 第21問
指標どうしのつながり(H24 第11問)
ここまでの指標は、実はきれいな1本の式でつながります。H24 第11問が問うたのは次の関係です。
売上高利益率 = 安全余裕率 × 限界利益率
- 利益 = 限界利益率 ×(売上高 − 損益分岐点売上高)です。両辺を売上高で割ると、
- 売上高利益率(利益÷売上)= 限界利益率 ×(売上−損益分岐点)÷売上 = 限界利益率 × 安全余裕率。
📝 過去問はこう出る(H24 第11問) 空欄補充で「A=B×C」の関係を選ぶ問題。正解は A:売上利益率、B:安全余裕率、C:限界利益率。 「安全余裕率」と「損益分岐点比率」を取り違えると成立しません(安全余裕率=1−損益分岐点比率)。 → H24 第11問
変動費率を"逆算"する(H23 第11問)
指標が与えられて、そこから変動費率を逆算させる問題もあります。指標の関係式を使ったパズルです。
【例題:H23 第11問】 損益分岐点比率75%、売上高営業利益率10%、営業利益1,600万円。変動費率は?
- 売上高 = 営業利益1,600万 ÷ 売上高営業利益率0.10 = 16,000万円
- 安全余裕率 = 1 − 損益分岐点比率0.75 = 0.25
- 限界利益 = 営業利益 ÷ 安全余裕率 = 1,600万 ÷ 0.25 = 6,400万円 (∵ 営業利益 = 限界利益 × 安全余裕率)
- 限界利益率 = 6,400 ÷ 16,000 = 0.40 → 変動費率 = 1 − 0.40 = 60%
📝 過去問はこう出る(H23 第11問) 正解は 60%(ウ)。「限界利益率40%」を答えてしまう引っかけ(イ)に注意。 問われているのは変動費率=1−限界利益率です。指標の関係式(営業利益=限界利益×安全余裕率)を使いこなせるかがカギ。 → H23 第11問
(4)経営レバレッジ(発展)
経営レバレッジは、「固定費が大きい会社ほど、売上が少し動くだけで利益が大きく動く」という性質のことです。 「てこ(レバー)」のように、売上の変化が利益に増幅されて効く、というイメージです。
経営レバレッジ係数 = 限界利益 ÷ 営業利益
- 固定費の割合が大きい(設備投資型の会社など)ほど、経営レバレッジ係数は大きくなります。
- レバレッジが大きいと、好況で売上が伸びれば利益は大きく増える一方、 不況で売上が落ちれば利益は大きく減る(ハイリスク・ハイリターン)。
- 逆に変動費中心の会社は、売上が動いても利益はゆるやかにしか動きません(低リスク・低リターン)。
💡 直感で覚える:固定費は「売れても売れなくても出ていく重し」。 だから固定費が重い会社は、いったん損益分岐点を超えると利益が一気に伸び、 割り込むと損失も一気にふくらむ。固定費が大きい=レバレッジが効く、と結びつけましょう。
直接原価計算との関係(R04 第12問)
CVP分析は、費用を変動費・固定費に分けて考える 直接原価計算 と相性が抜群です(詳しくは原価計算の章)。 R04 第12問は、直接原価計算の営業利益と損益分岐点をまとめて問いました。
【例題:R04 第12問】 1個あたり変動費 = 直接材料240+直接労務160+変動製造間接100+変動販売100 = 600円。 単価1,000円 → 1個あたり貢献利益 = 400円(貢献利益率40%)。固定費 = 固定製造間接200,000+固定販管50,000 = 250,000円。 生産1,000個・販売800個。
- 設問1(直接原価計算の営業利益):直接原価計算では固定製造原価を在庫に配賦せず、その期の費用にします。 だから販売量800個ベースで計算。営業利益 = 貢献利益(400×800) − 固定費250,000 = 320,000 − 250,000 = 70,000円。
- 設問2(損益分岐点売上高):250,000 ÷ 0.4 = 625,000円(=625個×1,000円)。
📝 過去問はこう出る(R04 第12問) 設問1=70,000円(ウ)、設問2=625,000円(ウ)。 ポイントは、直接原価計算では生産量ではなく販売量で貢献利益を計算すること (固定費は期間費用なので在庫に含めない)。ここが全部原価計算との最大の違いです。 → R04 第12問
この章のまとめ(試験直前チェック)
- ☐ 費用を 変動費(量に比例)/固定費(一定) に分けるのがすべての出発点
- ☐ 限界利益 = 売上高 − 変動費、限界利益率 = 1 − 変動費率
- ☐ ★損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ 限界利益率(変動費率で割らない!)
- ☐ 目標利益達成売上高 =(固定費 + 目標利益)÷ 限界利益率(損益分岐点+目標利益ではない)
- ☐ 安全余裕率 =(実際売上 − 損益分岐点売上)÷ 実際売上(大きいほど安全)
- ☐ 損益分岐点比率 = 損益分岐点売上 ÷ 実際売上(小さいほど良好)/安全余裕率 = 1 − 損益分岐点比率(逆数ではない)
- ☐ 売上高利益率 = 安全余裕率 × 限界利益率(H24)/営業利益 = 限界利益 × 安全余裕率
- ☐ 損益分岐点比率は分子(固定費・変動費率)でも分母(売上)でも動く(H27=変動費率低下で改善/R02=売上減で悪化)
- ☐ 問われているのが変動費率か限界利益率かを最後に確認(1−で取り違えない/H23)
- ☐ 貢献利益 = 売上 − 変動費 − 個別固定費(限界利益とは別。共通固定費回収の貢献度/H24第9問)
- ☐ 経営レバレッジ = 限界利益 ÷ 営業利益。固定費が大きいほど大きく、利益の増減が激しい
- ☐ 直接原価計算では固定製造原価は期間費用。CVPは販売量ベースで計算(R04)
この章に対応する主な過去問
| 年度・問 | 論点 | リンク |
|---|---|---|
| H20 第12問 | 目標利益達成売上高(営業外項目あり) | 問題 |
| H21 第8問 | 安全余裕率 | 問題 |
| H22 第9問 | 販売価格変化と損益分岐点売上高 | 問題 |
| H23 第11問 | 変動費率の逆算(各指標の関係) | 問題 |
| H24 第9問 | 貢献利益(セグメント・マージン) | 問題 |
| H24 第11問 | 売上利益率=安全余裕率×限界利益率 | 問題 |
| H25 第8問 | 安全余裕率(費用区分) | 問題 |
| H27 第10問 | 損益分岐点売上高・比率の改善要因 | 問題 |
| H30 第11問 | 目標利益達成売上高・利益計画 | 問題 |
| R02 第21問 | 損益分岐点比率の悪化要因 | 問題 |
| R03 第12問 | 損益分岐点分析の用語・定義 | 問題 |
| R04 第12問 | 直接原価計算とCVP分析 | 問題 |
| R06 第12問 | 損益分岐点売上高・目標利益の販売量 | 問題 |
次章予告 ▶ 第5章「原価計算」 本章のCVP分析を支えていた「変動費・固定費」の考え方をさらに掘り下げます。 材料費・労務費・経費の分類、個別原価計算と総合原価計算、そして本章で顔を出した 直接原価計算と全部原価計算の違い(固定費を在庫に含めるか)を、仕訳と計算でしっかり固めます。