第16問
A 社は技術者によって設立された中堅企業で、ハイテクエレクトロニクス製品を 生産している。これまでマトリックス組織を採用して、既存製品のバージョンアッ プを通じて新製品を次々に市場に投入し成長してきた。この間、トップマネジメン トは経営戦略を策定する際に、技術者であるプロダクトマネジャーから 年先まで の投資計画と利益計画を毎年提出させ、彼らと対話することを通じてどの製品分野 に予算を配分するかの全社的な投資決定をしてきた。一方、機能マネジャーには、 複数の製品を生産するのに同じ工程技術が使えることなどから、原価計算を行い、 その後に算定される利益率に応じて生産的経営資源を配分する権限を与えてきた。 既存製品のバージョンアップによる新製品開発も成熟段階に達したため、既存の マトリックス組織のもとで、これまでの製品とは不連続な技術による新製品の事業 化に乗り出した。この製品の利益率は既存の製品群に比べて高かったので、機能マ ネジャーは積極的に生産的経営資源を新規事業分野に配分し始めたが、この企業全 体の利益率は低下してきている。 A 社の全社的な利益率の低下の背後にあると考えられる問題に関する記述とし て、最も不適切なものはどれか。
- ア 既存製品のバージョンアップが新製品に結びつく段階では有効に機能したマト リックス組織が、既存製品とは不連続な技術に基づく新規事業を遂行するには障 害となった。
- イ 既存製品のプロダクトマネジャーは 年計画を毎年提出していたため、トップ マネジメントが近視眼的な学習に陥ってしまい、利益率の低い既存事業に投資を 続けてしまった。
- ウ 機能マネジャーが、新製品の方が利益率が高いことを知りつつ、その全社的な 投資戦略に対する意味をトップマネジメントに伝えなかったため、トップマネジ メントが迷信的学習に陥ってしまった。
- エ 機能マネジャーに生産的経営資源の配分権限を与えていたが、投資決定権限を 与えていなかったために、機能マネジャーが傍観者的学習に陥ってしまい、企業 全体として最適な資源配分ができなくなっていた。 DKJC-1C
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正解:エ
解答:エ
A社の全社的利益率低下の背後にある問題として最も不適切なものを選ぶ問題。ポイントは、既存製品の延長で機能したマトリックス組織と、機能マネジャーが利益率(短期的指標)に基づき資源配分する仕組みが、不連続な新規事業の遂行では機能不全を起こした点にある。
- ア(○・適切):既存製品のバージョンアップでは有効だったマトリックス組織が、不連続な技術に基づく新規事業の遂行には障害となった。問題の本質を捉えており妥当。
- イ(○・適切):毎年の計画提出により、トップが既存事業の枠内で近視眼的学習に陥り、利益率の低い既存事業への投資を続けてしまった可能性。問題点として妥当。
- ウ(○・適切):機能マネジャーが新製品の高利益率の全社戦略上の意味をトップに伝えず、トップが迷信的学習(誤った因果理解)に陥った可能性。問題点として妥当。
- エ(×・最も不適切):機能マネジャーには生産的経営資源の配分権限が与えられており、現に高利益率の新規事業へ積極的に資源配分を行っている。したがって「投資決定権限を与えられず傍観者的学習に陥った」という記述は事実関係と矛盾し、利益率低下の説明として最も不適切。
よって エ。