企業経営理論 H22年度 第30問

第30問

明治40年から続く豆腐製造業を継いだA 氏は、豆腐市場における価格競争の激 化や原料価格の高騰によって、ここ数年の間、減収減益に悩まされており、A 氏の 豆腐工場は、今や廃業の危機に直面している。そこでA 氏は既存の製品分野であ る豆腐製品を脱コモディティ化させるとともに、自社の資源を有効に活用できそう な新たな製品分野として手作りドーナツの製造に目をつけ、事業の再建を目指して いる。現在、A 氏は、自社製品のブランド化とそのための資金調達に向けて、日夜 奔走している。 以下はA 氏が計画しているブランド構想についてのシナリオの一部であり、融 資を相談している金融機関に対する説得材料でもある。このうち、最も不適切なも のはどれか。

  1. A 氏は、取引先の有力チェーン小売企業の棚の好位置により多くの新製品の フェイス獲得を図るため、その交換条件として同チェーンの安価なPB 商品のた めの専用生産ライン増設への投資を検討している。
  2. A 氏は製品による差別化だけでなく、自社製品の販売経路(チャネル)や営業手 法による差別化機会を検討しているが、経験価値が重要となるドーナツの製造販 売ではフランチャイズ方式による小売店舗網の構築を計画している。
  3. 持続的な競争優位を確立するためには、自社の内部だけでなく、外部の環境を しっかり把握しないといけないが、後者を分析するにあたっては競合に加え、異 業種の市場の観察から市場創造の構想を練ることが欠かせない。
  4. 消費者が、自社の製品の属性を識別し、明確に差別化されたものであるという 知覚イメージをもつことがブランド化の要であるから、商品説明のためのコミュ ニケーションの基本として産業財の営業を参考にしようと計画している。
  5. 豆腐の製造販売での新製品のブランド化を目指すにあたって、A 氏は活気ある 多くの商店街の空き店舗に簡易直営店を出店する計画を立てている。これは配送 車両の積載率向上にもつながる。 ― 38― ◇M3(295―89)
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正解:

解答:ア

〔リード〕脱コモディティ化と自社ブランド化を目指すA氏のブランド構想。「最も不適切」を選ぶ。A氏の目的は価格競争からの脱却=差別化・ブランド化であり、これと矛盾する施策(安価なPB=コモディティ化を助長する投資)が不適切となる。

  • ア(×・最も不適切=正解):有力チェーンの棚の好位置・フェイス獲得の交換条件として、同チェーンの「安価なPB商品」専用生産ラインの増設に投資することは、低価格・没個性のコモディティ生産に経営資源を割く行為であり、自社製品の脱コモディティ化・ブランド化という目的に真っ向から反する。価格競争に再び巻き込まれ、ブランド化シナリオを毀損する。最も不適切。
  • イ(○):製品差別化に加え、チャネルや営業手法による差別化機会を検討し、経験価値が重要なドーナツでフランチャイズ方式による小売店舗網を構築する計画は、ブランド体験を通じた差別化として合理的。適切。
  • ウ(○):持続的競争優位の確立には内部資源だけでなく外部環境の把握が不可欠で、競合に加え異業種市場の観察から市場創造を構想することは妥当。適切。
  • エ(○):消費者が製品属性を識別し差別化された知覚イメージをもつことがブランド化の要であり、その丁寧な説明・コミュニケーションのために産業財営業(説明型・関係構築型の営業)を参考にする発想は理にかなう。適切。
  • オ(○):新製品のブランド化にあたり、活気ある商店街の空き店舗に簡易直営店を出店する計画は、ブランド露出・顧客接点の確保に資し、配送車両の積載率向上という効率改善にもつながる。適切。

よって 最も不適切なものは

#競争戦略#経営資源・RBV#組織構造#製品・ブランド戦略#プロモーション

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