企業経営理論 H25年度 第10問

第10問

次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。 中小企業が同族経営である場合、戦略的問題に関する意思決定は創業者と創業者 一族が中心となり、外部の利害関係者の影響力は限定的であることが多い。 老舗と呼ばれる中小企業B 社は、代々受け継ぐ製法や技法による生産品を中心 にリピーターとなる顧客の支持を得ている。株式上場はしていないがその検討をし ており、諸外国のガバナンス機構も調査している。 B 社は、新しい品目や製造プロセスの改良に関して、外部から技術導入や人材の 中途採用を実施してきたが、創業者以来の価値観や行動規範の理解を第一に求め、 創業者の直系の現社長と役員の過半数を占める創業者一族の同族経営として従業員 との一体感を重視してきた。危機的な状況も乗り切ってきたが、最近では、過去に 危機からB 社を救った伝統的な考え方に基づく事業戦略の策定がうまくいかなく なってきた。 J

設問1

K 老舗の中小企業B 社の組織文化に関する記述として、最も不適切なものはど れか。

  1. 創業以来の歴史では、創業者の選択した戦略的な問題の解決法が効果を発揮 してきたため、その解決法が常套手段として繰り返し用いられて組み込まれて いる。
  2. 創業以来の歴史において、外部から導入した製造プロセスの改良技術に基づ き、技術関係部門同士の連携による問題解決が定型化されている。
  3. 創業以来の歴史において、外部から招いた人材のほとんどは意思決定プロセ スに同化し、創業者一族の戦略を十分に理解するようになった。
  4. 創業者とその一族の経験した過去の事業戦略の成功が、現在の戦略上の失策 の原因になっているのに、誰も認めようとしない。
  5. 組織として確立した問題解決法は、創業者の意向を大きく反映したものであ り、特定の問題解決や特別任務の遂行への対処が求められた創業期に生まれて いる。 DKJC-1C J

設問2

K 文中の下線部に関して、コーポレートガバナンスとその改革に関する記述とし て、最も不適切なものはどれか。

  1. B 社のような同族経営では、株式公開によって事業規模の拡大とともに株式 の分散化が生じ、創業者一族の影響力が低下し、機関投資家などの比重が高ま ることを懸念する場合が多い。
  2. メリカ型のガバナンスにならった改革では、社長の権限の分散と牽制が鍵 であり、指名委員会、報酬委員会、監査委員会の設置などが企図されている。
  3. 多くの株主が株式を手放すことで経営者責任を問い、経営者を交代へ追い込 むウォールストリートルールは機関投資家が多くの株を所有する現実の下では ほとんど期待できない。
  4. 現在の会社法の委員会設置会社制度で業務遂行を委ねられる執行役員は、代 表取締役の指揮下で業務執行の一部を担当する。
  5. ドイツ型のガバナンスでは、株主総会で選出された株主と労働者の代表から なる監査役会が最高決定機関として取締役の任免と監督を行うが、形式的には 株主と労働者が主権を分かち合っている。 DKJC-1C
▼ 解答・解説を見る

正解: 設問1 設問2

解答:設問1=イ、設問2=エ

老舗同族企業B社を題材に、組織文化(過去の成功体験の固定化=コア・リジディティ)とコーポレートガバナンスを問う。いずれも「最も不適切なもの」を選ぶ。

【設問1】B社の組織文化(最も不適切) B社は「創業者の成功体験に基づく問題解決法が常套手段化し、近年それが機能しなくなった(成功の罠)」状況。本文と整合する記述が適切、整合しない記述が不適切。

  • ア(○):創業者が選んだ解決法が効果を発揮してきたため常套手段として繰り返し組み込まれている、は本文の状況(成功体験の固定化)と整合。適切。
  • イ(×・最も不適切):B社の強みは創業者一族の価値観・行動規範であり、外部導入技術については「価値観の理解を第一に求めた」とある。「技術関係部門同士の連携による問題解決が定型化されている」とまでは本文から読み取れず、組織文化の説明として最も不適切。
  • ウ(○):外部から招いた人材の多くが意思決定プロセスに同化し創業者一族の戦略を理解するようになった、は「価値観の理解を第一に求めた」同族経営の文化と整合。適切。
  • エ(○):過去の戦略的成功が現在の失策の原因になっているのに誰も認めない、はコア・リジディティ(成功の罠)の典型で本文と整合。適切。
  • オ(○):確立した問題解決法が創業者の意向を反映し、創業期に生まれたものである、は本文と整合。適切。

【設問2】コーポレートガバナンス(最も不適切)

  • ア(○):同族経営の株式公開では株式分散により創業者一族の影響力が低下し機関投資家の比重が高まることを懸念しやすい。適切。
  • イ(○):アメリカ型ガバナンス改革は経営者権限の分散・牽制が鍵で、指名・報酬・監査の三委員会設置が企図される。適切。
  • ウ(○):多くの株主が株を手放して経営者責任を問う「ウォールストリート・ルール」は、機関投資家が大量保有する現実では大量売却が困難で機能しにくい。適切。
  • エ(×・最も不適切):委員会設置会社の執行役は取締役会(取締役会の決定)から委任を受けて業務執行を担う者であり、「代表取締役の指揮下」で動くわけではない(そもそも委員会設置会社には代表取締役は置かれず、代表執行役が置かれる)。記述が制度と異なり最も不適切。
  • オ(○):ドイツ型は株主と労働者の代表からなる監査役会が取締役の任免・監督を行い、形式上は株主と労働者が主権を分かち合う。共同決定制度の説明として適切。

よって 設問1=イ、設問2=エ

#経営戦略・全社戦略#企業統治・CSR#組織文化・組織学習#人的資源管理

← 企業経営理論の一覧へ戻る