第10問
企業の海外進出とその戦略対応に関する次の文章を読んで、下記の設問に答え よ。 アジアの途上国は次々に経済的に自立し、新興工業国としてめざましい発展を続 けている国も少なくない。このようなアジアの経済成長に対応すべく、エレクトロ ニクス産業や自動車産業を中心に現地への進出が相次いでいる。とくに巨大な市場 となった ① 中国では激烈な企業間競争が繰り広げられている。 しかし、わが国のエレクトロニクス産業は劣勢に立たされることが多いのに対し て、自動車産業は市場への浸透を高めている。そうしたなかで、近年、中国での成 功事例を踏まえて、 ② リバースイノベーションの重要性が指摘されている。
設問1
5 文中の下線部①のように中国市場の激しい競争のなかで、外資企業は成功をお さめる製品やサービスを輩出している。それらの企業の戦略行動には注目すべき いくつかの特徴が見られる。そのような特徴に関する記述として、最も不適切な ものはどれか。
- ア 合弁企業では現地のパートナー企業の中国人を董事長と総経理に登用して、 本国からの社員の派遣を行わないことによって、中国社会や市場への浸透を図 る例が多くなっている。
- イ 富裕層をターゲットに先進国の高品質で高価格の製品を輸出して、ステイタ ス・シンボルに訴える顕示的な消費を促している。
- ウ ボリュームゾーンと呼ばれる巨大な大衆市場向けに、現地生産による低価格 商品を投入して、価格競争を挑んでいる。
- エ 有名ブランドながら、中国人好みのデザインや色彩、ネーミングにこだわっ たきめ細かい現地向けの商品政策を展開している。
- オ 流通販売網を独自に整備し、現地の販売拠点に向けて魅力的な報償制度を設 けたり、現地販売員に顧客志向のホスピタリティを訓練しながら売り上げを伸 ばしている。 DKJC-1C
設問2
5 文中の下線部②のリバースイノベーションに関する記述として最も適切なもの はどれか。
- ア 所得の高い先進国で先進的な技術の製品の普及を図り、その製品のライフサ
- イ クルにあわせて、次第に所得の低い途上国への輸出を行い、やがて現地生産 に切り替えるイノベーション戦略である。
- ウ 先進国で開発された製品を、途上国の開発拠点で現地向けに開発し直し、現 地の生産販売を図りつつ、それを先進国モデルへと進化させるイノベーション 戦略である。
- エ 対抗機種の性能を分析したり、それを分解したりして、技術特性を調査する ことから着手するイノベーション戦略である。
- オ 通常とは逆にサプライヤー側からの開発提案を受け入れて、アセンブラーが サプライヤーと共同で製品開発に取り組むイノベーション戦略である。
- 本国の研究開発部門でユーザーフレンドリーな製品の開発を行い、それを現 地に持ち込んで、グローバルにイノベーション成果の普及を図るイノベーショ ン戦略である。 DKJC-1C
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正解: 設問1 ア 設問2 イ
解答:設問1=ア、設問2=イ
設問1(中国市場で成功する外資企業の戦略行動の特徴。最も不適切なもの)
〔リード〕成功事例の共通点は、現地市場への適応(ボリュームゾーン対応、現地向け商品政策、独自流通網整備など)。一方で経営の要職を完全に現地任せにして本国から人を派遣しない、という記述は実態と整合しない。
- ア(×・最も不適切):合弁で董事長・総経理を現地人に登用し、本国からの社員派遣を一切行わない例が多い、というのは実態に合わない。本国は経営管理や技術移転のため社員を派遣するのが一般的で、不適切。
- イ(○):富裕層向けに高品質・高価格品を投入し顕示的消費に訴える戦略は見られる。適切。
- ウ(○):ボリュームゾーン(大衆市場)向けに現地生産の低価格品で価格競争を挑む。適切。
- エ(○):有名ブランドでも中国人好みのデザイン・色彩・ネーミングなど現地向けのきめ細かい商品政策を展開。適切。
- オ(○):独自の流通販売網整備、報償制度、現地販売員へのホスピタリティ訓練など。適切。
よって設問1は ア。
設問2(リバースイノベーション。最も適切なもの)
〔リード〕リバースイノベーション(ゴビンダラジャン)は、途上国・新興国の現地ニーズ向けに開発した製品を、やがて先進国へ逆流(リバース)させて普及させるイノベーション戦略。
- ア(×):先進国で普及させた製品を製品ライフサイクルに沿って途上国へ輸出・現地生産していくのは従来型の「プロダクトサイクル(順方向)」であり、リバースの説明ではない。
- イ(○):途上国の開発拠点で現地向けに開発し直し、現地で生産販売しつつ、それを先進国モデルへと進化(逆流)させる。リバースイノベーションの定義として適切。
- ウ(×):対抗機種を分解・分析して技術特性を調べるのは「リバースエンジニアリング」であり、別概念。
- エ(×):サプライヤー側からの開発提案を受けアセンブラーと共同開発するのはデザイン・イン等の話で、リバースイノベーションではない。
- オ(×):本国R&Dで開発した製品を現地へ持ち込み普及させるのは従来型のグローバル展開であり、リバースの説明ではない。
よって設問2は イ。