財務・会計 H23年度 第17問

第17問

次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。 なお、以下では、市場は完全で、税金や取引コストは存在しないものとする。 E 社では現在、今期の配当政策を検討中である。E 社は、全額自己資本からなる 企業で今期末において現金1,000万円と固定資産9,000万円を保有している。E 社 の固定資産からは毎期900万円の営業利益があげられており、次期以降も同額の営 業利益が期待されている。E 社では減価償却費を営業活動維持のために全額設備投 資にあてており、また運転資本の増減もなく、減価償却費以外の費用はすべて現金 支出であるため、上記の営業利益はフリーキャッシュフローに一致する。E 社の現 在の株価は100円であり、発行済み株式数は100万株である。 (

設問1

) E 社が現在保有する現金を全額配当した場合、配当支払後の株価を説明する記 述として、最も適切なものはどれか。

  1. 現金配当を行った場合、株価は配当前と配当後で変化しない。
  2. 現金配当を行った場合、株価は配当前と比較して10円下落する。
  3. 現金配当を行った場合、株価は配当前と比較して10円上昇する。
  4. 現金配当を行った場合、株価は配当前と比較して20円上昇する。 ― 12― ◇M2(688―37) (

設問2

) E 社が現在保有する現金を全額現金配当した場合と株100円にて当該現金を 自己株式の買戻しにあてた場合とでは、既存株主が得る価値にどのような影響が あるか。既存株主が得る価値に与える影響の説明として、最も適切なものはどれ か。

  1. 現金配当を行った場合と自己株式の買戻しを行った場合との間で、既存株主 が得る価値に差異は生じない。
  2. 現金配当を行った場合の方が自己株式の買戻しを行った場合よりも、およそ 10%ほど既存株主が得る価値が高くなる。
  3. 現金配当を行った場合の方が自己株式の買戻しを行った場合よりも、およそ 10%ほど既存株主が得る価値が低くなる。
  4. 現金配当を行った場合の方が自己株式の買戻しを行った場合よりも、およそ 20%ほど既存株主が得る価値が高くなる。 ― 13― ◇M2(688―38)
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正解: 設問1 設問2

解答:設問1=イ、設問2=ア

〔完全市場(税・取引コストなし)ではMM配当無関連命題が成立し、配当政策は株主価値に影響しない。配当を支払えばその分だけ企業価値(株価)が下落し、株主の富の総額は不変。自己株式取得も完全市場では配当と等価。〕

設問1(イ)

  • 配当前の企業価値=株価100円×100万株=1億円(現金1,000万円+固定資産の事業価値9,000万円に対応)。
  • 現金1,000万円を全額配当すると、企業価値はその分減少し9,000万円となる。
  • 配当後の株価=9,000万円/100万株=90円。配当前100円から 10円下落
  • ア(×):変化しない、は誤り。配当分だけ株価は下落する。
  • イ(○):10円下落する。
  • ウ(×):10円上昇は誤り。
  • エ(×):20円上昇は誤り。

設問2(ア)

  • 完全市場では、現金配当と自己株式の買戻し(時価@100円)は、既存株主が得る価値に差異を生じない(MM理論)。
    • 現金配当:株主は配当10円(1株)+配当後株価90円=合計100円相当を保持。
    • 自己株式買戻し:1,000万円÷100円=10万株を取得。残存株式数90万株、企業価値9,000万円→株価は100円のまま。応募株主は現金100円、非応募株主は株価100円を保持。
  • いずれの方法でも既存株主の富は1株あたり100円相当で不変。
  • ア(○):両者に差異は生じない。
  • イ・ウ・エ(×):いずれも「10%高い/低い」「20%高い」と差異が生じるとするが、完全市場では差異は生じない。

よって 設問1=、設問2=

#財務諸表・会計基準#キャッシュフロー#資金調達・配当政策#企業価値評価

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