第27問
次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。 ある金曜日の夕方、機械部品メーカーの代目経営者のY さんは取引先とのミ ーティングを終えると足早に家電専門店チェーンの大型店舗に立ち寄った。この店 舗は駅に隣接したショッピング・センターJSCKのテナントとして出店している。 Y さんは、取引先が国際展開をしていることがきっかけで自社の創業以来はじめ て海外市場へのアプローチに着手した。海外のエージェントとのリアルタイムの会 議を円滑に行うために、翻訳機能付きの電子手帳の購入を検討している。 いくつかの商品を比較している最中に、Y さんのスマートフォンにe メールが 送られてきた。この家電専門店チェーンのウェブ店舗からのものだった。メールを あけてみると、数日前にY さんがスマートフォンを使ってこの小売業者のウェブ 店舗で検索し、「お気に入りJbookmarkK」に登録していた電子手帳の詳細情報が記 載されている。また、このSC 内店舗での売場の位置と ① 実際にこの商品を購入し、 使用している消費者によるレビューが紹介されている。メールを見ながら売場に移 動し、この電子手帳を手に取ってみるとY さんが今必要としている機能が満載の 商品であることが分かった。 Y さんはおもむろにこの商品の型番をスマートフォンに入力し、検索をかけて みた。すると、別の家電専門店のウェブ店舗では全く同じ商品が5,000 円安い価格 で販売されていることが分かった。Y さんは、早速この電子手帳をスマートフォ ンサイト経由で注文し、クレジットカードで決済した。また、このネットショッピ ングで ② Y さんは購入額の10 %のポイントを獲得した。日曜日の朝、Y さんは電 子手帳を受け取り、あれこれ操作を試し、海外エージェントとのミーティングで想 定されるフレーズを学習した。 DKJC-1C 32 J
設問1
K 文中に示すY さんの行動に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- ア Y さんはSC 内の家電専門店チェーンの店舗に立ち寄った際にこのチェーン のウェブ店舗からe メールを受け取ったことで、AIDMA でいえばM JMemoryKにあたる内容を活性化することができた。
- イ Y さんは金曜日の夕方にSC 内の家電専門店チェーンの店舗に立ち寄る前 に、このチェーンのウェブ店舗で翻訳機能付きの電子手帳を網羅的に検索して いたので、買い物出向前に明確なブランドの選好マップが形成されていたとい ってよい。
- ウ Y さんは店頭で受け取ったe メールを読むとすぐさま商品関連情報を検索 し、電子手帳の購買にいたる意思決定を行った。この一連の流れの中でY さ んはコミュニケーションに対する消費者の反応J購買Kプロセスモデルのひとつ であるAISAS に含まれるすべてのステップを踏んでいたといえる。
- エ 今回のY さんの電子手帳の購買プロセスの一部にも見られたような、「実際 の店舗で商品の実物展示を体験してから、より低い商品価格と消費者費用で同 じ商品を購入することのできるウェブ店舗を探してそこで購買を行う」タイプ の行為は一般にブラウジングJbrowsingKといわれている。 J
設問2
K 文中の下線部①に示す「消費者によるウェブ上のレビュー」は、情報化時代にお けるある種の口 クチ コミとしてとらえることができる。顧客満足と口コミに関する記 述として、最も適切なものどれか。
- ア Y さんが最終的に電子手帳を購入した家電専門店のウェブ店舗では、購入 後の返品・交換時の送料や手数料を無料にするサービスを提供している。この サービスは消費者の認知的不協和をできる限り軽減・解消することを意図した ものであるといえる。 DKJC-1C
- イ 一般に消費者は満足時よりも不満足時に多くの口コミを行うといわれてい る。とくに消費者による熟知性が高いブランドでは、ネガティブな口コミによ って消費者の購買意図が顕著に低下する効果が見られるため注意が必要であ る。
- ウ 高水準の顧客満足が実現すると既存顧客の忠誠顧客化による反復購買が行わ れるようになるだけでなく、満足顧客による口コミが新規顧客の獲得を支援す るようになる。新規顧客獲得費用は既存顧客の維持費用よりも一般的に低いた め、企業は積極的に優良顧客による口コミの影響を活用することが望ましい。
- エ 顧客満足の理論によれば、顧客満足・不満足の程度は事前の期待度とは関係 なく、対象商品の品質の良しあしの水準によるという点が強調されている。 J
設問3
K 文中の下線部②は、セールス・プロモーションJSPKに関連する記述である。 SP に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- ア 1970 年代までは日本のメーカーにおいてSP 費が広告費を上回る状況が続い ていたが、この30 年間に数多くの企業がグローバル企業へと成長したことも あり、両者の比率が逆転している。
- イ Y さんが以前に同じ家電専門店チェーンの実店舗でスマートフォンを購入 した際、専用ケースをおまけとして受け取った。この種のSP は長期的なブラ ンド忠誠の醸成を支援する効果を持つ。
- ウ 購買金額の一定割合が付与されるポイントサービスは、主として将来の値引 きを約束するSP であり、顧客の再来店を促す役割を果たしている。
- エ メーカーによるインセンティブは消費者のみをターゲットとしており、具体 的な活動には特売価格の提供、景品コンテスト、サンプリング、POP 広告な どがある。 DKJC-1C
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正解: 設問1 ア 設問2 ア 設問3 ウ
解答:設問1=ア、設問2=ア、設問3=ウ
オムニチャネル時代の購買行動・口コミ・セールスプロモーション(SP)に関する事例問題。
〔設問1〕Yさんの行動に関する記述として最も適切なもの。
- ア(○):以前お気に入り登録していた商品の詳細情報がメールで届いたことで、AIDMAのM(Memory:記憶)にあたる内容を活性化させた、という説明は妥当。
- イ(×):検索はしていたが「明確なブランド選好マップが形成されていた」とまで断定はできない。比較検討中の段階であった。
- ウ(×):AISAS(Attention→Interest→Search→Action→Share)のうち、購入後の共有(Share)まで行った描写はなく、「すべてのステップを踏んだ」は誤り。
- エ(×):実店舗で実物を確認してからより安いウェブ店舗で購入する行為は「ショールーミング」であり、「ブラウジング」は誤称。
よって設問1は ア。
〔設問2〕顧客満足と口コミに関する記述として最も適切なもの。
- ア(○):返品・交換時の送料や手数料を無料にするサービスは、購入後に生じる認知的不協和を軽減・解消する意図を持つ、という説明は正しい。
- イ(×):「熟知性が高いブランドではネガティブ口コミで購買意図が顕著に低下する」とは限らない。むしろ熟知ブランドは既存の好意的態度により悪評の影響を受けにくい面がある。断定が不適切。
- ウ(×):「新規顧客獲得費用は既存顧客の維持費用よりも一般的に低い」が誤り。一般に新規獲得費用の方が高い。
- エ(×):顧客満足は「事前の期待と実績との比較」で決まる(期待不一致モデル)。「事前の期待度とは関係なく品質水準による」は誤り。
よって設問2は ア。
〔設問3〕セールス・プロモーション(SP)に関する記述として最も適切なもの。
- ア(×):「1970年代まで日本でSP費が広告費を上回り、その後逆転した」という事実関係の記述は誤り。
- イ(×):おまけ(プレミアム)の付与は短期的な販売促進手段であり、「長期的なブランド忠誠の醸成を支援する」とまではいえない。
- ウ(○):購買金額に応じて付与されるポイントサービスは、実質的に将来の値引きを約束するSPであり、顧客の再来店・再購買を促す役割を果たす。正しい。
- エ(×):メーカーのインセンティブ(トレード・プロモーション)は流通業者も対象とする。「消費者のみをターゲット」とするのは誤り。
よって設問3は ウ。