第1問
これまで高い評判を受けていたメーカーの製品が、あるとき、急にその評判を落 としてしまうことがある。評判を落とす直接的な原因は、顧客からのクレームの多 発やクレーム対応のまずさなどであるが、クレームが発生するまでに、しばしば既 に企業内部に幾多の問題が潜んでいることがある。また、問題が発生する状況は業 種によって異なることが多い。次の記述のうち、クレームを発生させる可能性が最 も高いものはどれか。
- ア ある家電メーカーでは、部品の標準化やモジュール化を徹底して製品の構造設 計の簡素化を推し進めながら、製品検査とクレーム対応の現地化を図るために、 海外の生産拠点での仕様の一部変更を認めるようにした。
- イ 技術の分かるマネジャーによる市場対応を図るために、生産技術に支障がない ように注意して、エンジニアリング部門から営業部門や事務部門への配置転換を 進めている。
- ウ これまでクレーム等の消費者対応はすべて本社での対応であったが、販売増大 とともに事務処理が滞るようになったので、クレーム情報は本社に報告するが、 重大なクレーム以外の日常的な消費者対応は営業拠点に委ねることにした。
- エ 自社の清涼飲料水の売り上げが急拡大しているので、自動化ラインの工場を立 ち上げて、従業員を募って量産体制に入った。
- オ 高い品質で知られる中堅部品メーカーでは、収益性をさらに高めるべく、手間 とコストのかかる品質検査を公的検査機関に依頼するとともに、賃金の高い熟練 技術者に代わって若手従業員を新規に雇用し、個々の業績評価を賃金に連動させ るように人的資源戦略を転換した。 ― 1― ◇M3(295―52)
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正解:オ
解答:オ
〔リード〕クレーム(品質トラブル)を発生させる可能性が最も高い施策はどれか、を問う。品質管理・人的資源管理の整合性の観点から、品質保証の弱体化につながる選択肢を見抜く。
- ア(×):部品の標準化・モジュール化や構造設計の簡素化は品質の安定化・作りやすさに寄与する。海外拠点での仕様一部変更を認める点はリスク要素だが、製品検査とクレーム対応を現地化して体制を整えており、クレーム発生を直接高めるとは言い切れない。
- イ(×):技術の分かるマネジャーを市場対応に充てる配置転換は、生産技術に支障がないよう注意しており、顧客対応力の向上に資する。クレーム多発の直接原因とはなりにくい。
- ウ(×):販売増大に伴い日常的な消費者対応を営業拠点に委ね、重大クレームは本社に報告する仕組みは、事務処理の停滞を解消し迅速な対応を可能にする合理的分権であり、クレームを増やす要因とは言いにくい。
- エ(×):売上急拡大に応じて自動化ライン工場を立ち上げ量産体制に入るのは需要対応として自然で、自動化は品質の均一化にも寄与する。クレーム多発の直接要因とは断定できない。
- オ(○):高品質で知られる部品メーカーが、手間とコストのかかる品質検査を外部の公的検査機関に丸投げし、品質を支えてきた賃金の高い熟練技術者を未経験の若手に置き換え、さらに個人業績を賃金連動させた。品質保証の中核である自社検査と熟練の技能を同時に失い、短期業績志向のインセンティブが品質より数量・コストへ走らせるため、品質低下とクレーム発生の可能性が最も高い。
よって オ。