第18問
会社法では、株式会社は株主との合意により当該会社の株式(以下「自己株式」と いう。)を有償で取得することができると定めている。それに関連した以下の設問に 答えよ。 なお、本問で想定している会社は、株式会社で取締役会設置会社であるが、会計 監査人設置会社ではない。また、発行する株式には、譲渡制限が付されており、異 なる種類の株式はなく、市場価格がないものとする。 (
設問1
) 会社法では、株式会社は株主との合意によりすべての株主に申し込み機会を与 えて自己株式を有償で取得することができると定めている。 このような有償取得を行うに当たって、会社法で定められた手続きや方法およ び財源規制についての説明として、最も不適切なものはどれか。
- ア このような有償取得では、あらかじめ株主総会で株式の取得に関する事項を 決議しなければならない。この決議は臨時株主総会でもよいが、取得すること ができる期間は、次回の定時株主総会の期日を越えることはできない。
- イ このような有償取得では、その都度、取締役会で取得する株式の数、株式 株を取得するのと引換えに交付する金銭等の内容等およびその総額、株式の譲 り渡しの申し込みの期日を決定し、株主に通知しなければならない。
- ウ このような有償取得では、当該行為により株主等に対して交付する金銭等の 帳簿価額の総額は、当該行為がその効力を生ずる日における分配可能額を超え てはならない。
- エ このような有償取得では、譲り渡しの申し込みの期日において、株主の申込 総数が、株式会社が決定した取得総数を超えるときは、取得総数を申込総数で 除して得た数に株主が申し込みをした株式の数を乗じて得た数の株式の譲り受 けを承諾したものとみなされる。 ― 26― ◇M5(557―139) (
設問2
) 会社法では、株式会社は株主との合意により特定の株主から自己株式を有償で 取得することができると定めている。 この場合、特定の株主だけが株式を会社に売却できるのでは、株主平等原則を 損なうおそれがある。このため会社法では、他の株主に、当該特定の株主に加え て自己をも売主とするよう請求できる権利(以下「売主追加請求権」という。)を定 めている。 この規定についての説明として、最も不適切なものはどれか。
- ア 会社が、株主の相続人からその相続により承継した自己株式を取得する場合 には、売主追加請求権の規定は適用されない。ただし、当該相続人が株主総会 ですでに議決権を行使した場合はこの限りではない。
- イ 会社が、その子会社の有する当該会社(親会社)の株式を取得する場合には、 売主追加請求権の規定は適用されない。
- ウ 特定の株主から自己株式を有償で取得することについて、売主追加請求権の 規定を適用しない旨を定款で定めることができる。この定めをするには、株主 総会の特別決議が必要となる。
- エ 特定の株主から自己株式を有償で取得するときには、あらかじめ株主総会の 特別決議が必要である。この場合には、特定の株主は議決権を行使することが できない。ただし、特定の株主以外の株主の全部が議決権を行使することがで きない場合はこの限りでない。 ― 27― ◇M5(557―140)
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正解: 設問1 ア 設問2 ウ
解答:設問1=ア、設問2=ウ
〔リード〕株式会社による自己株式の有償取得(会社法155条以下)に関する問題。いずれも「最も不適切なもの」を選ぶ。取締役会設置会社・会計監査人非設置・譲渡制限・市場価格なしという前提。
【設問1(すべての株主に申込機会を与える取得=ミニ公開買付け型)=アが最も不適切】 すべての株主に申込機会を与えて自己株式を有償取得する場合、まず株主総会の決議(普通決議)で取得する株式の数・取得対価の総額・取得期間(1年以内)等の枠を定め(会社法156条)、各回ごとに取締役会で取得条件を決定し株主に通知する(会社法157条・158条)。財源規制として分配可能額を超えてはならない(会社法461条)。申込総数が取得総数を超える場合は按分により譲受けを承諾したものとみなす(会社法159条2項)。
- ア(○=最も不適切=正解):「取得することができる期間は次回の定時株主総会の期日を越えることはできない」という記述が誤り。会社法156条1項の取得枠の決議で定められる取得期間は1年を超えることができないのであって、「次回の定時株主総会の期日まで」と限定されているわけではない。
- イ(×=適切):その都度取締役会で取得株式数・対価の内容と総額・申込期日を決定し株主に通知する、という手続は会社法157条・158条に合致し適切。
- ウ(×=適切):交付する金銭等の帳簿価額の総額は効力発生日の分配可能額を超えてはならない、という財源規制(会社法461条)は適切。
- エ(×=適切):申込総数が取得総数を超えるときは按分(取得総数を申込総数で除した数に各株主の申込株式数を乗じた数)で譲受けを承諾したものとみなす、という規定(会社法159条2項)は適切。
【設問2(特定の株主からの取得・売主追加請求権)=ウが最も不適切】 特定の株主からの自己株式取得は、株主総会の特別決議を要し、当該特定株主は原則として議決権を行使できない(会社法160条・309条2項2号)。他の株主には自己も売主に加えるよう請求できる売主追加請求権がある(会社法160条3項)。相続人等からの取得や子会社からの取得については売主追加請求権の規定の適用除外がある(会社法162条・163条)。
- ア(×=適切):相続人から相続により承継した株式を取得する場合は売主追加請求権の規定が適用されない(会社法162条)。ただし当該相続人が既に株主総会で議決権を行使した場合等は除く、という点は適切。
- イ(×=適切):子会社が有する親会社株式を親会社が取得する場合(会社法163条)は売主追加請求権の規定が適用されない、という点は適切。
- ウ(○=最も不適切=正解):売主追加請求権の規定を適用しない旨を定款で定めるには、株主全員の同意を要する(会社法164条2項)。「株主総会の特別決議で足りる」とする記述が誤り。
- エ(×=適切):特定の株主からの取得には株主総会の特別決議が必要で、当該特定株主は議決権を行使できない(ただし特定株主以外の全部が議決権を行使できない場合を除く)、という点は会社法160条4項に合致し適切。
よって 設問1=ア、設問2=ウ。