経営法務 H21年度 第10問

第10問

A 株式会社とB 株式会社は、それぞれが有する専門技術を生かして新規のシス テムを共同開発することを模索し、まずは秘密保持契約を締結して相互に技術情報 を相手方に開示しようと合意した。この秘密保持契約に関する記述として最も適切 なものはどれか。

  1. 秘密保持契約において相互に開示したデータや情報について、契約終了後、開 示した当事者の請求に基づいてそれらを破棄または返却するなどの条項を設けな くとも、開示した当事者は受領した当事者に対し、所有権に基づきデータ・情報 の破棄又は消去を請求できる。
  2. 秘密保持契約は、共同開発が本格化した場合に締結される共同開発契約等の本 契約とは別個に締結されるものであるから、本契約とは別途、秘密保持の対象と なるべき情報が授受される期間や当該情報の秘密を保持すべき期間などの条項を 定めることができる。
  3. 秘密保持契約は、秘密を保持すべき義務を課すものであるが、故意又は過失に より秘密を開示されたことによって生ずる損害が明確に立証できないためにいわ ゆる紳士協定であるともいわれ、相手方が万一契約違反をした場合であっても、 他の法令に違反しない限りは相手方に対し何ら権利を主張できない。
  4. 平成17年(2005年)に改正された新不正競争防止法により、共同開発を目的と して開示された情報について、情報を受領した当事者に対し年間秘密保持義務 が課されたので、あえて秘密保持契約を締結する必要はない。 ― 15― ◇M5(557―128)
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正解:

解答:イ

〔リード〕共同開発の前段階で締結する秘密保持契約(NDA)に関する問題。契約自由の原則のもと、秘密保持契約は本契約(共同開発契約)とは別個に締結でき、秘密情報の授受期間や秘密保持義務の存続期間などを自由に定めることができる。

  • ア(×):「破棄・返却条項を設けなくとも所有権に基づきデータ・情報の破棄又は消去を請求できる」は誤り。情報・データそれ自体は無体物であり民法上の所有権の対象とならない。開示者が返却・破棄を請求するには、契約上そのような条項を設けておく必要がある。
  • イ(○):秘密保持契約は共同開発契約等の本契約とは別個に締結されるものであり、本契約とは別途、秘密情報が授受される期間や秘密保持期間などの条項を定めることができる、という説明は契約自由の原則に照らし正しい。
  • ウ(×):「損害が立証できないため紳士協定にすぎず、契約違反があっても何ら権利を主張できない」は誤り。秘密保持契約は法的拘束力のある契約であり、違反すれば差止めや損害賠償(債務不履行責任)を請求しうる。損害賠償額の予定(違約金)条項を設けることも一般的。
  • エ(×):「平成17年改正の新不正競争防止法により受領者に当然に秘密保持義務が課されたから、あえて秘密保持契約は不要」は誤り。不正競争防止法による営業秘密の保護を受けるには秘密管理性等の要件を満たす必要があり、当然に契約不要となるわけではない。秘密保持契約を締結する実益は失われない。

よって

#会社の種類・設立#株式・機関#不正競争・独禁法#民法・契約・PL

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