第4問
中小企業診断士であるあなたは、X 株式会社の全株所有者である甲社長から相談 を受けた。以下は、あなたと甲社長との会話の一部である。この会話を読んで、下 記の設問に答えよ。 甲社長:「私もだいぶ高齢になったので、そろそろ引退しようと思っているんです が、会社にはどうも適当な後継者がいないんですよ。それで、どうしよう かと思っていたら、どうもY 株式会社が引き継いでくれそうな感じなん です。 私が持っている100パーセントの株式をY 株式会社に譲渡しようかと 思ったのですが、当社は、若干ですが、不動産の賃貸業もやっていますか ら、Y 株式会社に引き継いでもらうとしても本業だけにして、不動産の賃 貸業は残しておこうかと思うんです。 賃貸業でもちょっとした収入になりますから、私の生活の足しにもなりま すし、私一人でできますから。そういったこともできますかね。」 あなた:「事業譲渡、会社分割の方法で可能になると思いますよ。」 甲社長:「事業譲渡というのは、分かるのですが、会社分割というのを使うとどう いう形に進めるわけですか。」 あなた:「 A 」 甲社長:「なるほど。事業譲渡と会社分割なら、どちらの方がいいわけですか。」 あなた:「どちらにも一長一短ありますし、Y 株式会社の都合にもよりますから、 何ともいえません。」 甲社長:「じゃあ、このつの方法で、何か違うところがあるのですか。」 あなた:「ありますよ。例えば、 B 」 ― 4― ◇M5(743―120) (
設問1
) 会話の中の空欄Aに入る文章として最も適切なものはどれか。
- ア 不動産業をX 株式会社に残して、会社分割の方法によって、本業を行う子 会社を作ります。それから、その子会社の株式をY 株式会社に譲渡します。
- イ 本業をX 株式会社に残して、会社分割の方法によって、不動産業を行う子 会社を作ります。その子会社設立と同時に、その子会社の株式全部をY 株式 会社に割り当てます。
- ウ 本業をX 株式会社に残して、会社分割の方法によって、不動産業を行う子 会社を作ります。それから、X 株式会社の株式をY 株式会社に譲渡します。
- エ 本業を分割して、当然にY 株式会社の一部門とすることができますから、 その結果、甲社長もY 株式会社の株主となることができます。 (
設問2
) 会話の中の空欄Bに入る文章として最も適切なものはどれか。
- ア 事業譲渡の場合は、金銭が対価でなければなりませんが、会社分割の場合 は、法律上、Y 株式会社の株式が対価でなければなりません。Y 株式会社に とっては、会社分割の方が、資金手当が必要でない点がメリットとなります。
- イ 事業譲渡の場合は、譲渡した部分は、Y 株式会社の一部として組み込まれま すが、会社分割の場合は、法人格を保ったまま、会社ごと、Y 株式会社の子会 社になります。
- ウ 事業譲渡の場合は、譲渡の対価は当然にY 株式会社から甲社長に支払われ ますが、会社分割の場合は、譲渡の対価は当然にY 株式会社からX 株式会社 に支払われることになります。
- エ 事業譲渡の場合は、取引先も従業員も当然にY 株式会社に引き継がれます が、会社分割の場合は、取引先や従業員から個別の同意が必要となります。 ― 5― ◇M5(743―121)
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正解: 設問1 ア 設問2 イ
解答:設問1=ア、設問2=イ
〔リード〕全株を保有する甲社長が、本業はY社に引き継がせ、不動産賃貸業は自分の手元に残したい。事業譲渡・会社分割の使い方とその差異を問う。
設問1(空欄A=ア)
甲のニーズは「本業をY社へ、不動産業は自分(X社)に残す」。会社分割(新設分割)を使う場合、X社(不動産業+甲が保有)を存続させつつ、本業を切り出して子会社を新設し、その子会社株式をY社に譲渡すれば、本業はY社グループへ移り、不動産業を含むX社は甲の手元に残る。
- ア(○):「不動産業をX社に残し、会社分割で本業を行う子会社を作り、その子会社株式をY社に譲渡する」。甲の希望(本業をY、不動産業は自分)に合致する正しい手順。
- イ(×):本業をX社に残し、不動産業を子会社化してその株式をY社に割り当てる構成。Y社に渡るのが不動産業となり、甲の希望(本業をYへ)と逆。
- ウ(×):本業をX社に残したうえでX社株式をY社へ譲渡すると、不動産業も含むX社全体がY社に移ってしまい、甲が不動産業を手元に残せない。
- エ(×):会社分割で本業を「当然にY社の一部門」とでき甲がY社株主になる、というのは制度として不正確で、甲の意図(不動産業の独立保有)にも合わない。
設問2(空欄B=イ)
事業譲渡と(株式譲渡を伴う)会社分割の差異を述べる選択肢を選ぶ。
- ア(×):事業譲渡の対価が金銭でなければならない、会社分割の対価は法律上Y社株式でなければならない、というのは誤り。事業譲渡の対価に法律上の限定はなく、会社分割の対価も金銭等が認められる(対価の柔軟化)。
- イ(○):事業譲渡では譲渡対象がY社の一部として組み込まれるのに対し、本スキーム(子会社を作り株式をY社に譲渡)では、対象事業が法人格を保ったまま会社ごとY社の子会社になる。両者の本質的な差異を正しく説明している。
- ウ(×):対価の支払先について、会社分割(子会社株式の譲渡)で甲ではなくX社に当然支払われると断ずるなど、本スキームの整理として不正確。
- エ(×):取引先・従業員の承継関係が逆。事業譲渡は特定承継であり、契約・従業員の移転には個別の同意が必要。会社分割は包括承継で個別同意なく承継されうる(労働契約承継法による保護はある)。説明が事業譲渡と会社分割で逆になっている。
よって 設問1=ア、設問2=イ。