第4問
次の均衡GDP の決定に関する文章を読んで、下記の設問に答えよ。 総需要AD が消費C 、投資I 、政府支出G 、経常収支(輸出X -輸入M )から構 成される経済モデルを想定する。すなわち、 AD =C +I +G +X -M である。 ここで、消費関数と輸入関数はそれぞれ、 C =C0+c(Y -T) M =M0+mY として与えられ、Y はGDP または国内所得、C0は独立消費、c は限界消費性向、 T は租税収入、M0は独立輸入、m は限界輸入性向である。なお、租税収入、投資 支出、政府支出、輸出はおのおのT =T0、I =I0、G =G0、X =X0とする。 他方、所得の処分は、 Y =C +S +T として示される。ここでS は貯蓄である。 このとき、下図のように、 X -M 線と(S +T)-(I +G)線の交点E において 生産物市場が均衡し、均衡GDP はY0の水準に決定される。また、 X -M 線また は(S +T)-(I +G)線がシフトすれば、それによって均衡GDP や経常収支の水 準も変化する。 ― 4― ◇M1(023―6) (
設問1
) 文中の下線部について、最も適切な記述の組み合わせを下記の解答群から選 べ。 a(S +T)-(I +G)線の縦軸の切片は、投資の水準が大きいほど上方に位置 する。 b X -M 線の縦軸の切片は、輸出と独立輸入の大きさに依存する。 c 均衡点E では、OA に相当する経常収支の赤字が生じている。 d 限界消費性向c が大きいほど、(S +T)-(I +G)線は、より緩やかな形状 で描かれる。 e 限界輸入性向m が小さいほど、X -M 線は、より急な形状で描かれる。
- ア aとc
- イ aとe
- ウ bとd
- エ bとe
- オ cとd (
設問2
) 文中の下線部について、最も適切な記述の組み合わせを下記の解答群から選 べ。 a 減税は(S +T)-(I +G)線を上方にシフトさせる。 b 政府支出の増加は(S +T)-(I +G)線を下方にシフトさせ、均衡GDP の 増加と経常収支の悪化を引き起こす。 c 投資の増加は(S +T)-(I +G)線を下方にシフトさせ、均衡GDP の増加 と経常収支の改善を引き起こす。 d 独立輸入の増加はX -M 線を下方にシフトさせ、均衡GDP の増加と経常 収支の悪化を引き起こす。 e 輸出の増加はX -M 線を上方にシフトさせ、均衡GDP の増加と経常収支 の改善を引き起こす。
- ア aとc
- イ aとe
- ウ bとd
- エ bとe
- オ cとd ― 5― ◇M1(023―7) (
設問3
) 経常収支に関する記述として、最も適切なものの組み合わせを下記の解答群か ら選べ。 a アブソープション・アプローチでは、経常収支はGDP と国内需要(内需)の 差額に等しい。 b 経常収支が黒字の場合、財政収支が赤字であれば、民間の貯蓄と投資の差額 は必ずプラスになる。 c J カーブ効果が発生しない場合、為替レートの増価は経常収支を改善させ る。 d J カーブ効果が発生する場合、経常収支は為替レートの減価によって一時的 に改善するが、時間の経過とともに悪化する。
- ア aとb
- イ aとc
- ウ aとd
- エ bとc
- オ bとd ― 6― ◇M1(023―8)
▼ 解答・解説を見る
正解: 設問1 ウ 設問2 エ 設問3 ア
解答:設問1=ウ、設問2=エ、設問3=ア
設問1(正解:ウ=bとd)
〔リード〕45度線分析を応用した(X-M)線と(S+T)-(I+G)線の図の性質を問う。両線とも縦軸に金額、横軸にYをとる。
- a(×):(S+T)-(I+G)=(S₀-cがらみのSの増加項)…の切片は、投資I₀が大きいほど(I+G)が大きくなり下方に位置する。投資が大きいほど切片は「下方」へ動くので「上方に位置する」は誤り。
- b(○):X-M=X₀-(M₀+mY)=(X₀-M₀)-mY。縦軸切片は(X₀-M₀)であり、輸出X₀と独立輸入M₀の大きさに依存する。正しい。
- c(×):図でOAは均衡点における経常収支の値を示すが、均衡点Eでは黒字(X-M>0の正の値)として描かれており、「赤字」とする記述は誤り。
- d(○):(S+T)-(I+G)線の傾きは貯蓄の増加分に関わり、限界貯蓄性向(1-c)に対応する。限界消費性向cが大きいほど1-cは小さく、傾きが緩やかになる。正しい。
- e(×):X-M線の傾きは-m(右下がり、傾きの大きさはm)。限界輸入性向mが小さいほど傾きは「緩やか」になる。「より急な形状」は誤り。
正しい記述はbとd。よって ウ。
設問2(正解:エ=bとe)
〔リード〕各線のシフトと均衡GDP・経常収支への影響を問う。(S+T)-(I+G)線が下方シフトすると均衡GDPは増加、X-M線が上方シフトすると均衡GDPは増加する。
- a(×):減税(T₀減少)はTを減らし(S+T)-(I+G)を小さくするため、同線を「下方」にシフトさせる。「上方にシフト」は誤り。
- b(○):政府支出Gの増加は(I+G)を増やし(S+T)-(I+G)線を下方シフトさせる。これにより均衡GDPは増加し、所得増で輸入Mが増えるため経常収支は悪化する。正しい。
- c(×):投資Iの増加は(S+T)-(I+G)線を下方シフトさせ均衡GDPを増加させる点は正しいが、所得増で輸入が増えるため経常収支は「悪化」する。「改善」は誤り。
- d(×):独立輸入M₀の増加はX-M=(X₀-M₀)-mYの切片を下げるため、X-M線を下方シフトさせる。下方シフトは均衡GDPを「減少」させ経常収支を悪化させる。「均衡GDPの増加」は誤り。
- e(○):輸出X₀の増加はX-M線の切片を上げ上方シフトさせる。均衡GDPは増加し、経常収支も改善する。正しい。
正しい記述はbとe。よって エ。
設問3(正解:ア=aとb)
〔リード〕経常収支に関する諸概念(アブソープション・アプローチ、貯蓄投資バランス、Jカーブ効果)の正誤を問う。
- a(○):アブソープション・アプローチでは、経常収支=GDP(Y)-国内需要(アブソープション、A=C+I+G)。すなわち経常収支はGDPと内需の差額に等しい。正しい。
- b(○):貯蓄投資バランス式(S-I)+(T-G)=経常収支(X-M)。経常収支が黒字(>0)で財政収支が赤字(T-G<0)なら、(S-I)は経常収支黒字分に財政赤字分を加えた値となり必ずプラス。正しい。
- c(×):Jカーブ効果が発生しない場合、為替レートの増価(円高)は輸出を減らし輸入を増やすため経常収支を「悪化」させる。「改善させる」は誤り。
- d(×):Jカーブ効果とは、為替の減価(円安)が当初は経常収支を一時的に「悪化」させ、時間の経過とともに「改善」する現象。記述は改善と悪化が逆で誤り。
正しい記述はaとb。よって ア。