企業経営理論 H19年度 第9問

第9問

次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。 日本企業が海外への直接進出を始めた1960年代から1970年代には、欧米の企業 と異なる海外直接投資の特徴がみられた。現在ではそれらの特徴も薄らぎ、日本企 業はグローバルな事業展開を目指すようになっている。そして親企業の海外展開に ともなって、系列の中堅・中小企業も海外進出することは最早当たり前になってき た。さらに、 ASEAN や中国などへは中堅・中小企業が独自に進出することも珍し くない。 しかし、東アジアでは 日本の中堅・中小企業が得意とする分野で現地企業の技術 水準が上昇してきており、分業関係が複雑化していることに注意しておかなければ ならない。 (

設問1

) 文中の下線部で指摘されている日本企業の海外への直接進出の特徴に関する 説明として、最も不適切なものはどれか。

  1. 高度成長期の日本企業の基本戦略は、拡大を続ける巨大な国内市場への対応 にあったため、海外進出よりも輸出による海外市場開拓を志向する傾向が強 かった。
  2. 電機産業では商社のあっせんで現地パートナーの工場や施設を利用したり、 現地の工場団地に入居したりして初期投資を節約しながら海外進出するといっ た商社参加型の進出が多くみられた。
  3. 日本企業の海外子会社は本国志向が強く、現地人の幹部登用が少なく、日常 業務では日本語が多く使われるなど、現地への適応は欧米に比べて遅れた。
  4. 米国が先進国のヨーロッパにまず初めに海外直接投資したこととは対照的 に、日本企業は東南アジアや中南米諸国など発展途上国への海外直接投資が数 多く試みられた。 ― 10― ◇M3(023―51) (

設問2

) 文中の下線部のような進出の理由として最も適切なものはどれか。

  1. 近年、進出企業の多いベトナムでは、外資優遇策、低廉な工業用地、質の高 い勤勉な若い労働力などが外資を引き付けているが、概して産業インフラが十 分に整っていない場合が少なくない点に注意が必要である。
  2. これらの地域では既に多くの日本企業が進出しているので、それらの企業を 通じて原材料や中間財のほとんどすべてを必要な量だけ安価に現地調達でき、 また、現地国にも供給企業が多数存在するので、安定した操業を確保できるこ とが進出の魅力になっている。
  3. 中堅・中小企業では商社をパートナーにした海外進出が多く見られるが、こ れは商社を通じて不足する海外進出ノウハウを補完できることや、自前で現地 市場情報を直接に入手したり、海外進出のノウハウを習得できるなどのメリッ トがあるからである。
  4. 東アジアでは急拡大する現地市場が外資に開放されているが、注目の集まる 中国では流通網が整っているのでそれを利用したマーケティング活動が可能で あることが、中堅・中小企業の中国進出に拍車をかけている。 ― 11― ◇M3(023―52) (

設問3

) 文中の下線部のような状況に関する説明として、最も不適切なものはどれ か。

  1. 現在の中国の電機分野をみると、台湾企業等の指導を受けて、金型製作や圧 縮・押出・射出成形の技術が急速に向上し、日本の技術水準を上回ってきたた め、この領域への日本からの進出ができなくなった。
  2. 現地企業との分業関係が発展しにくいのは、自社の技術やノウハウの漏洩 (ろうえい)防止への拘泥、取引先が日系企業であることなどのためであるが、 その結果日本企業の現地との交流が乏しく、現地化が遅れる要因になってい る。
  3. この地域の電子組立・実装技術は高度であり、コンピュータなどの電子機器 については世界の生産センターになりつつあるが、すり合わせ技術タイプの自 動車については先進国の技術指導を受け入れる段階にある。
  4. 日系企業は現地で一貫生産体制をとることが多く、工程分業をする場合でも 日系企業をパートナーに選択する傾向が強いが、台湾や韓国の企業は現地企業 との取引関係を強めながら、現地化を推進している。 ― 12― ◇M3(023―53)
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正解: 設問1 設問2 設問3

解答:設問1=イ、設問2=ア、設問3=ア

設問1(1960〜70年代の日本企業の海外直接進出の特徴として最も不適切なもの)

〔リード〕当時の日本企業の海外直接投資の特徴として誤っている記述を選ぶ。

  • ア(×=適切):高度成長期は拡大する巨大な国内市場への対応が基本戦略で、海外進出より輸出志向が強かった。妥当。
  • イ(○=最も不適切):商社あっせん型の海外進出が多くみられたのは主として繊維・雑貨など労働集約型・中小企業の進出であり、「電機産業」で典型的という限定は事実に合わない。よって最も不適切で正解。
  • ウ(×=適切):日本企業の海外子会社は本国志向(エスノセントリック)が強く、現地人幹部登用が少なく日本語が多用されるなど現地適応は欧米より遅れた。妥当。
  • エ(×=適切):米国が先進国欧州へ投資したのと対照的に、日本は東南アジア・中南米など発展途上国への直接投資が多かった。妥当。

よって

設問2(中堅・中小企業が独自にASEAN・中国へ進出する理由として最も適切なもの)

  • ア(○):進出企業の多いベトナムは外資優遇策・低廉な工業用地・質の高い勤勉で若い労働力が魅力だが、産業インフラが十分整っていない場合が少なくない点に注意が必要。現実に即した適切な記述。
  • イ(×):「原材料・中間財のほとんどすべてを必要な量だけ安価に現地調達でき、供給企業も多数存在し安定操業を確保できる」とまでは言えず、現地調達の難しさが課題となるのが実態。過大評価で誤り。
  • ウ(×):本問の下線部は「中堅・中小企業が独自に進出する」状況を問うており、商社をパートナーにした進出を理由とするのは独自進出の説明として整合しない。誤り。
  • エ(×):中国の流通網が整っておりそれを利用したマーケティングが容易、とするのは当時の実態に反し誇張で誤り。

よって

設問3(東アジアでの分業関係複雑化に関する説明として最も不適切なもの)

  • ア(○=最も不適切):中国で金型・成形技術が向上してきたのは事実だが、「日本の技術水準を上回り、この領域への日本からの進出ができなくなった」とまで断定するのは過度で誤り。よって正解。
  • イ(×=適切):技術・ノウハウ漏洩防止への拘泥や取引先が日系であることなどから現地との交流が乏しく、現地化が遅れる要因となっている。妥当。
  • ウ(×=適切):当地域は電子組立・実装技術が高度で電子機器の生産センターになりつつある一方、すり合わせ型の自動車では先進国の技術指導を受け入れる段階にある。妥当。
  • エ(×=適切):日系は一貫生産体制や日系企業をパートナーに選ぶ傾向が強いが、台湾・韓国企業は現地企業との取引を強め現地化を進めている。妥当。

よって

#国際経営#組織構造#マーケティング戦略

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